※上 → 旧 下 → 新。 お名前変換は入ってません 07 土方十四郎。   甘味の適量 「んん〜〜、やっぱ美味しいっっっ!!最高っ!」 「へえ。そんなに旨ぇのかィ。」 「うんっ!すっごく美味しい!久しぶりだから、よけいに美味しいかも〜〜。」 前の席に座った総悟が、物珍しそうに店内を見回してる。 甘味処としてはなかなか広めな店内は、どこを見ても女のひとだらけ。 開店と同時に、全部の席が埋まってた。 店の外に顔を向けた総悟を眺めながら、手元のあんみつをスプーンで口に運ぶ。 ああ、幸せ。 ほんっっっと美味しいんだよね、ここのあんみつ。 甘味ハンター涼音さんのあんみつランキングでは、ここのあんみつが文句なしのNo.1。 餡も寒天ももちろん美味しい。 でもね、とにかくコレ。コレですよ。このツヤツヤと輝くような、濃褐色の自家製黒蜜! コレが凄いの。江戸一番のまろやかさだよ?食べないと損だよ? 江戸中の甘味処で食べつくしたけど、これに敵うあんみつなんてどこにもなかったもん。 ああ美味しい、生きててよかったなあ、あたしっ! ・・・と、感動に目を潤ませながらまたひとくち。 副長に拾われて、真選組に入って数ヶ月。 この店に来るのも、かなり久しぶり。 周りが男だらけの生活だと、自然とこういうところから足が遠のいちゃうもんだよね。 「女の甘味に賭ける執念てのは、てえしたもんだぜ。  さっき開店したばかりだってのに、もう行列が隣の店まで続いてるじゃねえですかィ。」 「うん、いっつもこうなんだよね、この店。  せっかく入れたんだから、総悟も何か頼めばよかったのに。」 「如月。喋ってねえでさっさと食え。」 隣に座った人が、独り言みたいにブツブツぼやいてる。 あたしを拾ってくれた恩人。副長の土方さんは、ずっと居心地悪そうにテーブルに頬杖をついている。 居心地が悪いっていうより、イライラしてるのかもしれないけど。 「ったく。んだよ全席禁煙てよ。  煙草くれェ吸わせろってんだ。これだから女の溜まる店は」 「ええ〜〜、いいじゃないですか、もうちょっと待ってくれたって。  せっかくだから、ゆっくり味わいたいんですっ」 「ちっ。・・・今行かねえと一生後悔するとか何とかぬかすから、何事かと思やァ。  ただの甘味屋じゃねえか。」 「あっ、ちょっ、何ですか副長。・・・もしかして、馬鹿にした!?  今、馬鹿にしたでしょ!?この究極のあんみつを!!」 「違げーよ。  俺が馬鹿にしてんのは、口から黒蜜垂らしてる緩みきったツラの女のほうだ」 「もおっ、ぜんっっぜんわかってないんだからあ。  ここのあんみつはねえ、特別なんですよっ!あんみつの中のあんみつ、キングオブあんみつなの!  江戸で一番人気なの!午前中に来ないと売り切れちゃうんだからぁ!!  ほらほらァ、見てくださいよっ。この自家製黒蜜のとろける甘さをっ」 ガラスの器からひとくち掬って、副長の口に突きつける。 突き出されたスプーンを手で避けて、いつも冷静な副長がなぜかあわてて目を剥いた。 「っっ!なっ、バカヤロっ、ァにすんだ、てめっ」 「ああっ、こぼれたァァァ!何するんですか!  どーしてよけるんですか、副長!?もったいなァい!ダメじゃないですか、ちゃんと食べてくださいっ!!  こーんなに美味しいものを悪食マヨラーにあげるなんて、究極の味をドブに捨てるよーなもんなのにィ!」 「おいコラ。お前、今、何気にヒトの口をドブ扱いしただろう」 「いいから食べてくださいってば!  ひとくち食べてみれば、副長だってもう二度とこのあんみつを馬鹿に出来なくなりますよっ!  ほらあ、ゴチャゴチャいわずに試してくださいっ。はいっ、あーんっ」 「なっっっ、バカ、テメっ、何だよあーんてよォ、ガキに喰わせんじゃねェんだぞ!!  つーか俺ァ、あんみつがどーこう言ってんじゃ」 「いいじゃないですか、ひとくちくらい。黙っておとなしく食べてくださいっ。はい副長、あーんっ」 「だァァァ、聞け!だから俺は、その、アレだ、女がてめえの食いかけを軽々しく、・・・・ってオイ、  口か?そこは俺の口か!?そこ口じゃねーだろ、目だろ!!目ェェェ!!!」 「やめときなァ、涼音。  こういうモンは、土方さんみてえな田舎出の無粋者の口にゃ合わねェのさ。」 「フン。テメエも同じ穴のムジナじゃねえか」 「俺ァ土方さんとは違いまさァ。」 スプーンを持ったあたしの手を握ると、総悟は自分の口へそれを運んだ。 ぱくん、とひとくち。 スプーンを咥えたまま、なぜか副長を見てニヤリと笑う。 元から険しかった副長の目が、さらに険しくなって総悟を睨んでる。 「ね、どう?総悟。美味しい?」 「ああ。こいつァたしかに旨ェや。  ま、俺ァ、涼音がくれるモンなら何でも旨ェけど。」 「あははっ、何それェ。ね、総悟も食べたら?」 「ああ。頼んでくらァ」 総悟が立ち上がって、食券を買いにカウンターに向かう。 副長は、難しい顔をして黙ったまま。 怖いだけのひとじゃないってことは、拾ってもらった身としてはよくわかってるんだけど。 ここじゃ煙草も吸えないし。 早く食べ終わって、外に出たほうが良さそうな気配にみえる。 隣を気にしながら、あたしはスプーンをせっせと口に運び続けた。 「如月。」 「はい?」 スプーンを咥えたまま振り向いたら、そこにはすでに手があった。 副長の手が、あたしの顔に伸びてきた。 何だかわからないまま見ていた親指の先が、あたしの口許にそっと触れた。 そこから唇へ向かって、つうっと撫で上げる。 「ふ、副・・・」 あたしの唇に触れた指には、つやつやした黒蜜が付いていた。 ちらりとあたしを見ながら、副長がそれを口に含んだ。 目が合ったけれど、どうしていいのかわからない。 指先の感触に驚いてしまって、しかも、その指が。 何を言ったらいいのか、どんな顔をしたらいいのか。わからない。 副長が険しい顔のまま、舐めた指を眺める。 「旨えっつーか。甘え。」 「・・・おっ・・・美味しい、ですか?」 「さあな。ま、甘味なんてこんなもんだろ。」 どうしてだろう。 目を逸らしてくれない。 いつもはこんなに、じっと見たりしないのに。 そんなに見ないでほしい。 頬が。勝手に赤くなるから。 「・・・そ・・・そう、ですか。  ・・・・あ、あの。副長のぶんも・・・追加で頼みましょうか?」 「要らねえよ。んな甘ェもん、趣味じゃねえ。」 「・・・でも。今、食べたじゃないですか。・・・趣味じゃないのに。」 「お前がしつこく食えっつうから、食ってやったんじゃねえか」 「・・・・だからって、そ、・・・そんなところから食べなくっても。」 「てめえみてえにバクバク食えるか。男にゃ甘味なんて、このくれえが丁度なんだよ」 そう言いながら、またあたしの唇をこするように拭った。 拭った指が、また副長の口に入る。 二度目の指先の感触に、あたしの頬はもっと赤くなった。 何も言えずに目を逸らして、残りのあんみつを口に入れる。 だけど。 「・・・・副長のせいですよ。」 「あァ?」 「なんか、もう・・・びっくりしちゃって・・・・・  あんみつの味が、全然わかんなくなっちゃった・・・」 フン、と鼻先で笑うような、低い声がした。 副長は、まだこっちを見てるらしい。・・・恥ずかしくって、目が合わせられないけれど。 「また来りゃいいだろ。次は奢ってやる。」 「・・・イヤですっ。副長とはもう、ぜったい絶対、ここには来ませんからっっ!」 「んだと、テメ。奢るっつってんだろ」 「だってぇ!こ、こんなことされたら、また味がわかんなくなるじゃないですかあァァ!!」 おわり。 副長と甘味処。似合わない 団子屋ならともかく。ケーキ屋とか もっと似合わなさそう。 似合わない場所にいる土方さんって 結構好きなんです。マヨラ13の遊園地とか 拍手ありがとうございました!!  2008/08/28/ ***

08  土方くんと銀八っつあん。

三者面談の前日にお母さんがパーマかけに行く確率って結構高い

(3Z三巻 個人面談設定。)



「涼ちゃんよォ」

「何ですか銀八センセ」

「先生なァ、思うんだけどな?個人面談ってーのはよ。基本マンツーマン方式なモンじゃね?」

「・・・あたしもそう思います」

「だろォ?だよなァ?個人面談っつーくれえだよ?教師と生徒が一対一、師弟水入らず。
 コレが正しい面談方式ってモンだよ」

「はい。」

「な?そう思うだろ?つーことだ、涼ちゃんの後ろで仁王立ちしてるマヨ方くん。ハイ退場」

「誰がマヨ方だァァ!!」

「いーじゃねーかよ野郎の呼び方なんてよォ。どーでもいんだよマヨ方だろーがマロ方だろーが」

「(プッ)」

「涼音!何吹き出してんだ、テメ!」

「ゴ、ゴメン、つい想像しちゃって…(麻呂な眉毛の土方くんを)」

「ってそーじゃねえ!俺の呼び方なんてどーでもいんだよ!」

「だな。呼び方以前にまずテメーの存在自体からしてどーでもいい。
 つか何。なんでいるんだオメーはよ。オメーの面談はもう終わっただろ。なんだよこの変則三者面談。
 ほら、さっさと出てけ消え失せろ。つか3Zから出てけ。ONE PIECE学園に転校しろ」

「ァああ!!?んだとォォテメっ」

「ちょっ、土方くん!ダメだよ、曲がりなりにもここじゃ先生なんだからァ!!」

「そーだそーだ。ここじゃ曲がりなりにも先生よ?俺。んだよその言い草は」

「るせェ!!曲がりなりにも教師が、てめえのクラスの生徒に手ェ出そうとしてんじゃねえェ!!」

「んじゃ始めっか、涼ちゃんと俺の、初の愛の共同作業。題して『高校教師禁断の愛 みだらな個人面談』な」

「んだよその売れねーエロビデオ的タイトルはよ!」

「で、涼ちゃんの悩みはァ、えー。風紀委員副委員長のストーカー行為について、か」

「ハイ。ホント、困ってるんです(溜息)」

「オイィィ!いつ俺が近藤化したァァ!!」

「してるじゃん!(さらに溜息)約束もしてないのに毎朝迎えに来るしィ。
 昼休みは友達とゴハン食べるのもダメとか言うし。帰りは部活が終わるまで待ってるし。休みの日だってさー。
 どんだけ暇なのかってくらい、どこでもついてくるじゃない。トイレと女子更衣室についてこないのが不思議なくらいだよ」

「・・・だっ、それはっ。違げーだろ!!」

「違くないですゥ!!何?何なの!?コレがストーカー行為じゃなかったら何?何の嫌がらせ!?」

「・・・・だからそれは、・・・お前が!」

「めっちゃ迷惑してるんですけど!土方くんのおかげであたし、友達がガタ減りしてんだけど!
 アンタが「近寄るんじゃねえ」って目で睨みまくるから、誰も近寄ってこないんですけど!!」

「・・・るっせえ!!テメーがバカなこと言ってっからだろォ!?」

「だァかあらあァ!!バカバカ言うなって言ってんでしょォ!!?
 てゆーかいつ言った?あたしがいつ、どんなバカを言いました!?」

「・・・・アレだ」

「なによ。」

「・・・この前。カラオケ屋で。志村姉に言ってたじゃねえか。言っただろ!」

「だからァ、何を!」

「・・・言ったじゃねーか。・・・その。アレだ!次に告ってきた奴と、
 ・・・相手を問わず自動的に付き合うとかなんとかよォ!!!」

「・・・・・・・」

「マジでか!!」

「・・・いやっ、俺は。その・・・そういう乱れた風潮は、風紀委員として断固取り締まるべきだと」

「・・・なんだ。聞いてたんだ。・・・何も言わないんだもん。聞こえてなかったのかと思ってた」

「や、違っ、別に俺は。聞くつもりは・・・偶然聞こえちまったんだよ!悪りィかよ!」

「涼ちゃんんん!?アレか、そのナイスルールは告ってきたのが教師でも適用されんの!!!?」

「・・・そーですね。ホントは3Zの男子オンリーのつもりだったんだけど。
 いーですよ。銀八センセは特別枠ってことで。高校教師 禁断の愛ってことで」

「うォお!!?マジで!!!?」

「て、てっっめえェェ何ぬかして、コラ!!涼音!!!」

「や、マジで!?後でやっぱナシとか言わね!!?」

「ええ、いいですよ。もういいんです、もォ呆れたし。(溜息)…もォどーでもいいし。
 ・・・ホントは。ウチのクラスで一番目つきの悪いマヨラー限定のつもりだったんですけど。」

「「・・・(土方&銀八)はァ?」」

「コイツあたしのことどう思ってるのかなあ、ちょっとカマかけてみよーかなあ的なカンジで
 ワザと聞えよがしに言ってみたんですけど。もういいです。
 乱れた風潮がどーとか言ってるし。全然通じてないし。女の子の気持ちなんてちっともわかんないみたいだし」

「・・・・・・・・・涼音・・・」

「いい響きですよね禁断の愛って。風紀バカには一生わかんないだろーけど。
 先生とこっそり付き合う、って結構憧れてるコ多いし。スリルあるし。ドラマみたいで楽しいかも!」

「オイィィィ!!!」

「土方くんには関係ないでしょ。風紀委員だからってヒトの恋愛まで取り締まれると思うなよ!?」

「っっ、だからアレは!ストーカー行為とか、そんなんじゃねえ!
 つ、つまりその、他のヤツに先を越されねーように見張って・・・や、イヤだから!!」

「・・・なによ今頃。遅いよ!もォタイムアウトね!!今頃言っても間に合わないのォ!無効ですゥ!!」

「涼音!!待てオイ!」

「しつけーぞマヨ方ァ。涼ちゃんはもォ気が変わったんだよ、テメーはもォ過去の男なんだよ。諦めろや!
 てことでこっから先は本格的に個人面談だから。
 今からここは生徒相談室という名のラブファクトリーだからハイマヨ方くん退場ォォ!!」

「テメーは黙ってろやァァ!このド腐れ教師ィィィィ!!!」


おわり。

シリーズとやってるコトは同じですね もし3Z書くなら 銀八っつあん主役がいいかなあ
拍手ありがとうございました!!  2008/10/11/



* * *



09 万事屋+沖田山崎。

ファミレスのメニューを選ぶようには 人との縁は選べない


新しく見つけたバイト先、かぶき町のカフェで働き始めて三日目。

土方さんにも知り合いにも、誰にも一切頼らずに、自力で見つけた新しい仕事。

心機一転、頑張るぞ!・・・・・と思っていたのに。


「・・・・あのね?総悟」

「何でェ、涼音」

「だからね。お店に遊びにおいで、とは言ったよ?」

「だから来てるじゃねェですかィ」

「うん、だからね。遊びに来てとは言ったけど。誰も一日入り浸れとは言ってないんだけど」

「そいつァ、俺より先に上のヤツに言ってやりなせェ」

「・・・あの。山崎くんも。ちょっと休憩したら?」

「いえいえ、お構いなく。隠密活動のときは常にソーセージを携帯・・・
 ってええェェェ!!?涼音さんっ、どーして気づいたのォォ!!?」

「・・・や、バイトのコたちが、真っ黒いスパイダーマンが天井に張りついてる、って。
 みんな怯えてるんだけど」

「何をやってんでェ山崎ィ」

「どーなってんだよオメーラ。腐ってるよケーサツの看板下ろせよ。
 国家権力傘に着てやりたい放題じゃねーか。
 隊長は堂々とサボってるし、監察は天井に貼りついてるし、ゴリラは放し飼いだしよォ」

「旦那は存在そのものが放し飼いじゃねェですか。あんた、どーやってココに辿り着いたんでィ」

「俺?俺ァあれよ、俺と涼ちゃんは、運命の糸で繋がってっからよ。
 このコがどこにいたって勝手に引き寄せられるんだよ、カラダがそーゆうふうに出来てんの」

「へーえ、そうでしたか。最近ずっと、背後にチャランポランな気配を感じてたんですがねェ。
 イヤ、ありゃあ俺の気のせいか」

「銀さん・・・最近やたらに姿を消すと思ったら。沖田さんを追いかけ回してたんですかあんた」

「ずっとオトコのケツ追っかけてたアルか?銀ちゃん、禁断の果実の味を知ってしまったアルか!?」

「神楽ちゃん、そういう心配はいらないから。健全すぎるくらいに女好きだからね、銀さんは。」

「イヤァァ!銀ちゃんが遠い世界へ行ってしまうヨ、この性悪オトコと欲望の甘い罠に溺れてしまうヨォォ!!」

「遠い世界へ逝っちまったのはオメーだろ。そろそろ帰ってこい。つか、どこで仕入れてくんだその知識」

「○泉社ハゲ丸文庫ネ、資源ゴミの日に拾ったヨ!
 オトコ同士のハードでエゴイスティックで恥辱にまみれた愛憎劇が、
 小悪魔美少年と敏腕刑事と英国執事が淫らな三角関係で身もココロも虜にされるラブボンバーね!!」

「す、凄い本拾ったんだね、神楽ちゃん・・・」

「そんな本拾っちゃダメだよ、神楽ちゃん。これから資源ゴミの日は、僕が出しに行くからね」

「私に隠れてこっそりエロ本拾ってくるのか、新八!?マミーはお前をそんな息子に育てた覚えはないネ!」

「いや、僕もBL本に夢中なマミーに育てられた覚えないんだけど!」

「あ、そこのブサイクな姉ちゃん。水のおかわり持ってきてくだせェ。
 薄めねーとまずくて飲めねェんでさァ、ここのコーヒー」

「あ、そこのブサイクな姉ちゃん。俺にも水のおかわり持ってきて。
 砂糖十杯くれー入れといてくれる、糖分で薄めねーとまずくて飲めねーからよォ、ここの水」

「・・・・・・あのう。二人とも。おかわりならあたしが持ってくるから。
 他の人じゃなくてあたしに言ってくれる?それに今のヒト、・・・ここの店長なんだけど。
 あの。誰のおかげとは言わないけど。毎日めっちゃ睨まれてるんだけど。肩身狭いんだけどあたし」

「あっ、もしもしィ、副長ォ!スンマセン涼音さんに見つかっちゃいましたァァ!」

「・・・・・・あのう。みんな、来てくれるのはホントに嬉しいんだけど。
 ・・・注文しないんなら帰りやがれ?」


おわり。

「純愛」で入りきらなかったネタです この後副長が乗り込んできたとか来なかったとか。 
拍手ありがとうございました!!  2008/11/24/




* * *
  
10 坂田銀時。

真冬の定番


「やっぱ冬って言ったら、炬燵で蜜柑とお茶だよねー」
「イヤイヤイヤ、古りィよ。何だよそのチョイス。古すぎだろォ?
いまどきのお茶の間定番三点セットったらよー、もーちょっとこォ、何かあるだろォ?
んな昭和のお茶の間の匂いがしそーな三点セット、磯○家でしか揃わねーよ」
「しっかり揃ってるじゃんココに、目の前に。昭和の香り三点セットが」

ココは磯○家でもあたしの家でもない。銀ちゃん家だ。
あたしたちの目の前には、真冬を彩る定番三点セットが揃ってる。
炬燵はヌクヌクとあったかいし、その上にはお茶と食べ終わった蜜柑の皮が並んでいる。

「思いきり揃ってるじゃん、昭和の香り漂ってるじゃん。銀ちゃんが揃えたんだよこの三点セット」
「んだよ、蜜柑買ってきたのは桜だろォ。俺ァ茶しか出してねーよ。
・・・お?つかよー、蜜柑もォ無いんだけど。無いの蜜柑。銀さんまだ一個しか食ってねーんだけど」
「まだあるよ、台所に置いてあるの。明日神楽ちゃんが帰ってきたら」
「いーよいらねーよ神楽のぶんはァ。バレねーよーに証拠隠滅すりゃあいいんだろ?
俺らで全部食っちまえばいーじゃん。いーから持って来いって全部」

ほらほら、と急かされて、あたしは仕方なく立ち上がった。
ちなみに銀ちゃんは、あたしが来てからまだ一度も炬燵を出ようとしない。
面倒臭がりだし寒がりだしデリケートだから、炬燵から出たら凍え死ぬんだよって言う。
炬燵の半径30センチから離れる気がしねー、とまで言ってたけど。トイレはどうする気なんだろう。

さっき台所に置いた蜜柑を何個か胸元に抱いて、あたしは炬燵へ戻ろうとした。
そこでふと、さっきの会話を思い出した。

「ねえ、銀ちゃーん」
「んー?」
「炬燵と蜜柑とお茶じゃなかったらあ、何なの?
銀ちゃんの定番お茶の間三点セットって、何?」
「そりゃお前、アレだよ。まずは定番つーか大本命っつーか、やっぱ炬燵だろォ」
「うんうん、まーね。そこは外せないよねー」
「だよなァ。で、次はァ」

ずっとテレビに固定されたままだった銀ちゃんの目が、こっちを向いた。じーっとあたしを見た。
手が、ヒョイヒョイと指であたしに合図をしてくる。
こっち来い、って合図かな。何だろう。

「え、ひゃっっ!?」

戻ったあたしを抱きかかえると、銀ちゃんは膝の上に座らせた。
横抱きに座らされて、持っていた蜜柑ごと銀ちゃんの腕の中に収まってしまった。

「炬燵ときたら次は桜ちゃんだろ、やっぱ」
「・・・・そ・・・・そう、なの?」
「そーそー。寒みィときの必需品だろ?ヌクいし柔らけーし、気持ちいーし」
「・・・・・・銀ちゃんキモいし。顔崩れてるし」

キモい呼ばわりも気にせずに、銀ちゃんは頬をスリスリさせてくる。
ああ、なんて締まりのない顔。嬉しそうにニヤついてるし。

バカだ。ホントにバカだよこいつ。
でも、あたしはこのバカ以上にバカだな。うん、間違いなくバカだ。
実は今のくだらないひとこと、かなり嬉しかったんだもん。
まあ、どれだけ嬉しくたって言わないけどね。
銀ちゃんすぐ調子に乗るから。むしろ言われてなくても調子に乗ってみせます、くらいのヒトだから。

「やーっぱ桜ちゃんでしょ。俺的には炬燵以上に外せないからね。で、最後のひとつはァ」

言いながら炬燵から片足を突き出して、足先を伸ばす。
指先が、炬燵の横に置かれていたものを挟んで抑えた。
そのままズリズリこっちへ引っ張ってくる。

「やっぱコレだろォ?」

足の指で器用に引き寄せられたティッシュの箱が、あたしの目の前に据えられる。

「・・・え。コレが三つ目?」

コクコク頷いた銀ちゃんは、なぜかあたしから蜜柑を奪い取り始めた。
しかも妙にいそいそと、なんだか嬉しそうに。
・・・・・・・・・・・・。
と、いうことは。
銀ちゃんの真冬を彩る必須アイテム・お茶の間三点セットとは。
つまりそれは、炬燵と、あたしと。・・・・目の前の、コレ。

「・・・・・・・・・・・・・・・」
「炬燵とお前が揃ったらよォ、我慢出来ねーだろ?つーかこれこそ真のお茶の間最強トリオ?
ヌクいわエロいわ気持ちいーわでティッシュ使い放題?んなモン誰が炬燵から出るかっつーのォ!!
イヤもォこの三つがあったら天国だね天国。他に何にもいらないからね銀さんは」
「・・・・・・・銀ちゃん?」
「ん?どーした?俺と一緒に行くだろォ?
今日は邪魔者もいねーしよォ。桜ちゃんの好きなだけ、何度でも連れてってやるよ?天国に」

イヤだって言われても連れてくけどなァ、とあたしの胸に断りも無しに手を突っ込んでくる。
ムニムニと楽しそうに揉みながら、銀ちゃんはへらあっと笑った。
がしっとその手を掴み、あたしは銀ちゃんの鳩尾に拳を繰り出した。

「そんなに行きたきゃティッシュと一緒に行って来いィィィ!!!!」


おわり。

炬燵入りたいなと思ってたら浮かんだ下ネタ。新年一発目に出す拍手が コレって…
・・・・・ 拍手ありがとうございました!! 2009/01/01/





   ***
11 土方十四郎 + 沖田総悟。

エンゲージリングに必要なのは硬い石じゃない 硬い意志だ


その日。彼はとある有名ジュエリーショップに足を運んでいた。
目的は指輪の購入。涼音には内緒だったが、彼女へのプレゼントを選ぶために。

涼音の喜ぶ顔を見たいという思いもある。が、単なるプレゼント以上の目的もあった。
贈った指輪を涼音に嵌めさせておくことで、誰から見ても一目でわかる所有権を主張しておきたかったのだ。
この場合の指輪とは、猫の首に飾る鈴付きの首輪のようなもの。いわゆる害虫避けの意味を持つ。
「これは俺のもんだ、手を出すな」という牽制をかけるための、小道具の役割を果たすもの。
目につきそうな派手目なものを、これ見よがしに左手薬指に嵌めさせておけばいいだろう。
いや、ぜひそうさせよう。そのほうが虫除けとしての効力も、格段にアップするはずだ。

そう考えて彼女が好きなブランドを選び、店まで来てはみたのだが
男にとっては慣れない買い物でもあるし、何を選んでいいものかわからない。
女性の店員に声を掛けて事情を説明、お任せでショーケースから指輪を数個出してもらった。

ひととおりの説明を受けてから、彼はその中のひとつを選んだ。
花のかたちに模られた、ちりばめられた小粒のダイヤが目映く輝くもの。
いくぶん少女趣味で子供っぽくはある。だがまあ、そのほうがあいつの好みには合うだろう。
それを手にした店員が「こちらでよろしいですか」とにこやかに確認してきた。
頷こうとしたそのときに背後から肩を叩かれ、彼は自然と振り返る。
振り返ったことを後悔したくなった。そこに立っていたのは、ここにいるはずのないニヤけ面だった。

「総悟・・・て、テメっ、いつからそこに!!」

「なに、最近あんたの様子が浮わついて見えるのがどうも気になってましてねェ。
屯所からずっと後をつけて来たんでさァ。こいつァひょっとして、虫の知らせってヤツですかねェ」

「どこが虫の知らせだ。使い方間違ってんぞ。
虫の知らせってえのはな。たとえば、臨終間際のくたばりかけたジジイを相手に使う台詞
・・・ってオイ。何を刀抜こーとしてんだ、テメ」

「いやァ気にしねえで下せェ。
なに、臨終間際のくたばりかけたジジイの期待には、さっそく応えてやらなきゃと思いやしてね」

「誰がジジイだ。つかテメーが俺を臨終間際に追い込みてーだけだろーが!
さっそく斬りかかってくるんじゃねェェ!!」

「なんでェ、その言い草は。人の親切は無碍に扱うもんじゃありやせんぜ、土方さん。
ま、覚悟が決まったらすぐに言って下せェ。いつでもどこでも息の根止めてさしあげますぜ」

「俺ァ一生そんな覚悟はしねえ」

「へーえ、ダイヤの指輪ですか。女に贈るには定番だが。そいつはよしたほうがいい」

「うっせェ出てけ、今すぐ帰れ。誰がテメーの口車になんざひっかかるか」

「あれっ。土方さんともあろうお方が、知らねェんですかィ。
男が女に贈るダイヤの指輪に込められた、真の意味を」

「真の意味だ?んだよそりゃ」

「マジで知らねェんですか。しょーがねーなァ。いいですか土方さん。
ダイヤモンドってえのは天然石の中では一番硬てェ、硬度の高い石だってェこたァ知ってるでしょう」

「フン。そのくれー常識じゃねえか。知ってるに決まってんだろ」

「それのついた指輪を、惚れた女に婚約や結婚のときの贈り物として渡して、女の拳に嵌めさせておく。
そいつァつまり、その男と結婚してみたら浮気しただの、稼ぎが少なすぎて生活が大変だのって不満が出たときに
その女がムカついたら、どうぞその世界一硬い石で俺を思う存分殴って下せェ。
・・・・・ってェ意味の、よーするに生死を賭けた意志表示なんでさァ」

「はっ。んだよそりゃ。馬鹿かてめえ。んなくだらねえヨタ話、ガキでも信じるっかってえんだ」

総悟の野郎。モノが指輪となったらさすがに焦ってやがる。
下手な作り話を即席にでっち上げてまで、俺がこれを買うのを阻止したいらしい。

口許を笑いに歪めながら、ふと土方は応対してくれている店員の女性と目を合わせる。
すると彼女の表情がさっと曇った。
何かに動揺したのか、持っていた指輪のケースを取り落としそうになる。
さっきまでのにこやかな接客ぶりがまるで嘘のようだ。
凝視してくる土方の目線に怯えているかのような、強張った顔で目を逸らされてしまった。
それを見てしまった土方の表情も、見る見るうちに引きつって強張り始める。

「・・・・・・・・(イヤ。オイ。・・・マジで?)・・・・・・・・・」

「いえ、あのっ、お、お客様?もちろん、ダイヤモンドも婚約指輪や結婚指輪にはお薦めですが。
指輪をお贈りになるのは、今回が初めてということですし。
こ、今回は、お相手の方の誕生石の指輪をお選びになるのは、いかがでしょう!?」

「涼音は3月生まれ。誕生石はルビーでさァ」

「・・・っっ、んなこたァテメーに言われねえでも解ってんだよ!
おい姉さん。これは止めだ。代わりにそっちの、ルビーのついたやつを」

「ああ、ダメダメ。っとにアンタときたら、姫ィさんの好みってもんを知らなすぎでェ。
誕生石は誕生石だが、赤は涼音の好みにゃ合わねェんでさァ。そんなことも知らねェんですかィ」

「っっ、うっせェてめーはちょっと黙ってろ!そのくれー俺ァ知ってんだよ!
今のはだから・・・アレだ、その、ちょっとド忘れしてただけだ!
いや姉さん、ルビーも止めだ。止めてその奥の青い」

「青ねェ。ああ、そいつもいけねェや。今年の涼音のアンラッキーカラーでさァ」

「っっバッッカヤロ、今のはわざとだ!わざとに決まってんだろォ!?
わざと青選んで、テメーを試してみたまでだ!そのくれー俺が知らねーとでも思ったか、あァァ!!?」

「声がミョーにうわずってますぜ、土方さん」

「悪いが姉さん、今のは無しだ!その手前にあるヤツを」

「ええっ、マジですかィ土方さん。そいつだけは選んじゃいけねえや。最悪ですぜ。
涼音は死んだじいさんの『紫色のモンだけは決して身につけるな』って遺言を、今も固く守ってるんでさァ。
おやっ。もしかしてアンタ、涼音から聞いてねェんですかじいさんの話を」

「なっっ、バっっ、バーカ、んなわけねーだろーがァ!
逆だ逆!総悟ォ、テメーあっさり引っ掛かりやがったな!
違げーよ今のはアレだ、テメーをハメるためのフェイントだァァ!」

「そいつァ気が合いやすねェ。実は俺も今のはフェイントでさァ」

「バーカてめーこそひっかかってんじゃねえか!
俺のはなあ、フェイントを掛けると見せかけてテメーのフェイントを外すという
二段構えで高度なフェイントを」

「イヤイヤ、笑わせるねィ。アンタこそしっかり引っかかってますぜ。
俺だってアンタのフェイントに引っかかったフリをしたと見せかけて
実はその裏を突いたフリをするという、
高度なフェイントをかけるフリをして実はそれもフェイクに過ぎないという」

「長すぎんだろワケわかんねーよ!つかソレ結局何もしてねえだけだろーがァァ!!」




* * * * * * * *


「・・・・・でよ。なんだかんだ張り合って結局買えずじまいに終わる、
ってえのが今年の初夢だったんだが」

「へーえ。さすが土方さん。新年早々面倒くせェ、うっとーしい夢だぜ」

「っせーよ。ったくよォ。
初夢までテメエがからんでくるなんざ、たまったもんじゃねえな。
縁起が悪りィったらありゃしねえ。正夢にならねェように、神社で厄祓いでもしとくか」

「そうですかィ。いや、それなら神社まで行くこたあねェでしょう。安心してくだせェ土方さん。
その縁起の悪りィ夢が現実にならねェように、俺がこの場で正夢化を阻止してあげまさァ」

「おう、そーか、っていきなり斬りかかってくんじゃねーぞコルアァァァ!!
てか!コレもある意味正夢じゃねーかァァ!!」


おわり。

「4ジゲン」ネタ。いやこれ通説としてアリなんじゃないかと。
読んで以来 周囲の人の結婚指輪がでかいダイヤ付だったりするとつい想像する…
拍手ありがとうございました!! 09/01/30/



***
12 土方十四郎。

何でも「アレ」で済まそうとするのは老化現象の第一歩らしいです


* * * * * 3月3日 涼音の誕生日 夜のファミレスにて * * * * *


「えーとォ、あたしはねー、あ、これこれ、オムライスっ。
 美味しいんですよここのチーズオムライス。土方さんは?」

「カツ丼。大盛」

「えぇー。またァ?おとといもその前もカツ丼だったのに。たまには他のも食べたらいいのにぃ。
 ね、これは?アボガドハンバーグだって、美味しそう!これ食べたい、これにしよっ」

「勝手に決めるな。つか、それァてめーが喰いてえだけだろォが。俺ァカツ丼が喰いてーんだよ。
 おら、さっさと店員呼べ。それ押せ」

「ええー、なによォ。お腹すいてるからってそんなに怒らなくたっていいじゃないですかぁ。
 ハイハイハイ、今すぐ呼ぶよ呼びますよっっっ」

♪ピンポーン♪


「涼音」

「はい?」

「・・・・その。お前、あれだ。・・・・・・・いーのかよ。要らねェのか」

「?いらねーのかって、何が?」

「・・・・・・・・だからよ。
 何か、メシの他に。・・・・・欲しかねえのかって話だ」

「はァ。メシの他って?」

「いや、つまり、今日は・・・・・お前の、あれだろ。
 俺ァ、女が選ぶもんも好みも解ったもんじゃねえからよ。要るなら何でも言っとけ」

「・・・・え、土方さん・・・・・・・・・。
 あれって、あの。・・・・・・えっ、でも。・・・・ええっ、いいの?」

「あァ。・・・まあ、たまにはな。」

「ええええェ!!うそっ、ホントに?ホントに何でもいーの?何選んでも、いいの!?」

「うっせーなァ、このくれえではしゃいでんじゃねーよ( ← と言いつつ実は喜んでます)」

「だってぇ!嬉しいんだもん!初めてだもんっ、土方さんにそんなこと言ってもらったの!!」

「お客様、お待たせいたしましたァ!ご注文はお決まりですか?」

「えーと、カツ丼の大盛とチーズオムライスで!
 いつものマヨネーズも付けてください、業務用特大ボトルの」

「はいっ、カツ丼がおひとつ、チーズオムライスがおひとつ」

「それとォ、ベリーベリースペシャルサンデーと季節のフルーツパフェとキャラメルソースのワッフルと
 マンゴーのミルクレープとクラシックショコラとバナナヨーグルトシェイクと抹茶白玉あんみつ。
 あっ、ワッフルにバニラアイス乗せてください!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「はいっ、ご注文繰り返させていただきます、ベリーベリースペシャルサンデーがおひとつ、
 季節のフルーツパフェがおひとつ、キャラメルソースのワッフルが・・・・・・・」

「やーん、嬉しいっ!!!ありがとう土方さんっっっ!!
 あたしね、小さい頃からずっと夢だったんですよファミレスでスイーツ食べ放題するのが!!!」

「イヤ。・・・だからよ、・・・・・・・・・・・・(溜息)・・・・・・・・」





* * * * * 3月14日 ホワイトデー 夜のコンビニ 雑誌コーナー前 * * * * *


「おい、涼音。いつまで読んでんだ。帰るぞ」

「んー。もうちょっとー。あと5分待ってくださいよー。」

「んなもん、さっさと買って後で読みゃあいいだろーが」

「んー、でもー。今月あんまりお金無いし、立ち読みで済ませたいんですけど。
 ・・・あっ。これ、モデルの◎☆×ちゃんがつけてたのと同じだ!可愛いっっ!」

「・・・・・・・・・・・」

「いーなァこれっ。ずっとこういう可愛いリング欲しかったんですよねー。
 屯所にいた頃はシンプルなのしか付けられなかったもん」

「・・・・・・・・・・・」

「ほらぁ、これこれ、可愛いくないですかこれ。いーなあ、持ってないんですよねこーゆーの。
 飾りが大きいリングって、刀振り回してるうちに取れちゃいそうでこわいじゃないですかあ」

「・・・・・・おい」

「えー、もうちょっと待ってくださいってばー。あと少しー。もう3分だけ待ってくださいってばー」

「そいつでいいのか」

「は?そいつって?」

「・・・・その、あれだ。これでいいのかって聞いてんじゃねえか」

「えっ」

「いや、だからな。これァ、あれだ、この前のあれも兼ねてだからな?この前のあれァ、お前が。
 ・・・・・・結局うやむやで終わっちまったしよ。まあ、その。・・・たまには買ってやる」

「・・・・・えーー!!うそっ、いいの!?ほんと?ほんとに!?」

「うっせえんだよ。デケー声出すなっつってんだろ。
 つか、何度も言わせんじゃねー( ← と言いつつやっぱり喜んでます)」

「うんっっ、ありがとう土方さん!!!ねえねえっ、チロルチョコも買っていい?」

「ああ。ま、そのくれえなら
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ?」

「わーいっ、嬉しいっっ。さすが副長サマ、太っ腹だなあもォっ!ほんとはねっ、毎月買ってるんですよこの雑誌!
 でも今月は新しい着物買っちゃったしー、お昼ゴハンも倹約しててー。あっ、ねえねえ!
 プリンは?プリンも買っていい?」

「イヤ。だからよォ。・・・・・・・・・・・(溜息)・・・・・・・・・・・・・」



おわり。

ファミレスで甘味放題 大人になってもフツーに夢です。続き書きたい 番外で出せるかなあ
拍手ありがとうございました!!  2009/03/14/ riliri

***




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***



16 3Zで銀八せんせ。

ご近所の目線はほどほどに気にしとこう、ほどほどに



「先生。先生ってばー。ねえ、起きてよー。あけましておめでとう、今年もよろしくね」

「あぁ〜〜〜〜?・・・・・・・・・・ふぁああぁあァ(大欠伸)・・・・・あんだよおォ。もォ新年かよ。
っかしーなぁ、さっきまで紅白見ながらビール飲んでたはずなのによー。あれだわ、サブちゃん見ながらスルメ喰ってなかったっけ、俺」

「あたしに訊かれてもわかんないよ、今来たんだもん。でも、先生の前髪にスルメの足が絡まってるから多分そうなんじゃないの」

「あっそ。はいはい、そんじゃーまぁ、一応けじめっつーか、新年の挨拶でもしておくか。
おめっとーさん、桜。こっちも今年一年よろしくってことで。―――、おやすみぃ」

「ちょっっ、先生!!?」

「ぁあ?何。」

「どーして寝ちゃうのォ!可愛い彼女が振り袖着て来たのにー。そーじゃないでしょ、ここはすぐに跳ね起きて
初詣に行くところでしょ?てゆうか先生、今が何時なのかわかってる?もうお昼だよ、もうすぐ十二時なの!」

「え。十二時ィ?マジでか。もう十二時なの?んだよー。もっと早く起こしに来いって。初笑い演芸大会
見逃しちまったじゃねーかよォ。・・・・・んぁ?・・・・・何、桜ちゃん。この手は何ですか」

「何って、新年の初おねだりでしょ。可愛い彼女にお年玉ちょうだい、先生」

「桜ちゃああぁ――ん?そーいうことはぁ、薄給教師じゃなくてパパにねだるよーにってお母さんに習わなかったぁ?
いや、つーかよー、年末の忘年会だ何だで俺、マジで金ねえんだけど。桜さあ、パパに貰ったやつで俺に甘酒奢ってくんね?」

「えぇえー。やだ」

「いーじゃねーかよー、少しくれーよー。可愛い彼氏のささやかなおねだりじゃねーかよぉ」

「無理。寝癖にスルメが刺さってる彼氏を可愛いとか思えないから」

「いーじゃねーかよスルメくれーよー。刺さったスルメごと愛してくれんのが愛情深い彼女ってもんだろォ?
・・・・・・・・あ、そーそー、そーいやーよー。俺も桜におねだりっつーかぁ、頼みがあるんだけど」

「え。何、頼みって・・・・・・・・・・・・(ハッとして)!!
ダメだよ先生。いくらお金に困ってるからって、あたしのお年玉はあげないからね!」

「やめてくんない。やめてくんないその目。新年早々、先生をタチの悪りいヒモ男みたいな目で見ないでくれる?
いくら何でも先生、大人だからね。しかも教師だからね。元教え子から金巻きあげたりしないからね」

「えぇー!ウソォ!ウソだぁ!ダメだからね、騙されないからねあたし!?だって先生ならやりかねないもんっっ」

「あのさ桜ちゃん。先生、新年早々泣いてもいいかなあ・・・・・・いや、まあ、それはそれで後でじっくり話し合うとしてだな。
そーじゃなくてよー。その「先生」っつー呼び方なんだけどなぁ。いい加減にどーにかしてくんね?その呼び方」

「・・・・・・?」

「卒業してもうすぐ一年経つんだしよー。そろそろ「先生」はねーだろ。もう担任教師と女子高生でもねえんだし?
つーかお前さあ、全然気づいてねーみてーだから、今までは放っといたけどよー。・・・そろそろなぁ。俺も人目が痛てーんだわ」

「人目・・・・?何のこと?いいじゃん別に、先生で。あたしは元教え子だし、先生は先生なんだもん」

「お前はいいかもしれないけどな、俺はマズいの。かなーりマズいの。
一応こんなんでも高校の教師だって、ここの周囲でも知れ渡ってるわけだしよー。ご近所さんの目ってもんがあんだろォ?
最近よー、しょっちゅうお前と近所のスーパーだのコンビニだの行ってっからさー。淫行教師だと思われてんだけど」

「えっ。・・・・・マ。マジで」

「おー。マジでマジで。この前もよー、大家に探りいれられちまってよー。休日まで先生に会いに来られるなんて、
勉強熱心な生徒さんですねえ、なーんてよー。昨日もゴミ捨てに行ったら大家と向かいのババアに妙な目で見られるしさあ。
どっちも顔は笑ってんだけどさあ、目が笑ってねんだよなー」

「・・・・・!!」

「誤解されても仕方ねーよなァ。俺はいい年こいたおっさんだし、桜はロリ顔っつーか童顔だし。女子大生には見えねーもんなァ。
まァ、そーいうことだから。とにかくヤベーわアレは。そのうち俺、教育委員会に呼び出し食らうんじゃねーの、ハハハ」

「ハハハ、じゃなあいいいィ!」

「つーことで、だ。俺が口煩いババアどもの目を誤魔化す、完璧なご近所対策を用意したから。
桜ちゃんはこの計画にしっかり従うように」

「し、従う!だって。だって、そんなのいやだよ。もし先生が、あたしのせいでクビになっちゃったら・・・・・・
・・・・・ごめんね、先生。あたしね、やっと先生と外で歩けるようになったのが嬉しくて。先生がそんなふうに
見られてるなんて・・・・・・どうしよう。あたしのせいで先生が・・・・・・・」

「あー、はいはい、泣かない泣かない。いーって別に。桜の気持ちはちゃんとわかってるからね、俺は」

「・・・・・・・うん。でもぉ」

「いーからいーから。大丈夫だから。な?俺に任せておけって。
とりあえずな、呼び方はぁ、・・・・そーだなァ。銀八せんせ、にしとくか」

「・・・・・・?それじゃ今と変わらないじゃん」

「いーんだよ、最初はそれくらいがいーの。つか、こっちもなァ。なんつーか、慣れねーっつーかよー。
いきなり名前で呼ばれると気恥ずかしいだろ。見た目こんなんでも、中身はいい年こいたおっさんだからさー」

「そ、そっか。わかった。じゃあ・・・・・・・・・・・・っ。・・・ぎ、銀八、・・・先生?」

「おっ、いーねぇ!いーじゃん、初々しいっつーか、なーんか恥じらってるカンジ?
でもアレだわ、「先生」じゃなくて「せんせ」で止める。な?ここ結構大事だから。小さいようで大きな違いだから。な?
呼ぶ時は上目遣いが必須ね。声も高めで、甘えたカンジな。そのほうがキュンとくるから、俺が」

「そ・・・それじゃご近所対策にならないしっ。先生の萌えとヤバさが増すだけじゃないっっっ」

「あー、いーのいーの。大丈夫だって、俺の言うとおりにしとけば問題ねーから。すべてうまくいくから。
んじゃ、まず最初はコレな。ご近所対策の必需品、その1な」

「・・・・・・・・・・・え。・・・先生。もしかして、これ」

「そーそー、これなぁ、懐かしーだろォ?神楽の瓶底メガネな。昨日あいつんとこ行って借りて来たんだわ。
今日から俺んちに来る時は、必ずコレかけてくるよーに」

「・・・・・・・・・はぁ?」

「まぁまぁ、いーからいーから。とにかく最後まで聞けって。で、次な。次はァ・・・・・・・、おー、あったあった。
次はコレな。ご近所対策の必需品その2な」

「・・・・・・・・・・・先生。あのさ。・・・コレも見覚えがあるんだけど。このカバン、もしかして」

「あ、何。もうわかっちゃった?さっすが俺の彼女な、勘がいいなァ桜は。それな、昨日猿飛に言って持って来させたんだわ。
見ろよほら、懐かしくね?猿飛の通学カバン。俺の写真ベッタベタ張りまくってるヤツな。あー、そーいやーよー、あの変態、
電話切って三分で職員室の掃除用具入れから出てきやがってよー。しょーがねーから二度と使えねーよーにセメント塗っといたわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「中も開けてみ?あー、そうそう、それな。それ、おとといマヨ方から強奪してきたヤツな。
去年あいつが使ってた、国立文系の入試対策問題集な。これから外で俺に話しかけるときは、常にそれを開いておくよーに。
あとな、俺に話しかける前に、忘れずに「先生、ここが解けないんですけど」って、メガネをクイッと上げてから
前置きするよーに。その問題集なァ、ちょーっと煙草臭せーんだけどさァ。まぁそこは我慢しといて。・・・で、次はコレだな」

「せっ。先生!?・・・・何で。どーいうこと。どーしてこれが先生の家に!?」

「あ、何。何だよ、やっぱりわかっちゃった?そーそー、これな、お前の制服。去年まで着てたあのセーラー服な。
どーよ、懐かしくね?昨日こっそりお前んちに行って、お母さんに出してもらったんだわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「しっかしよー、いつ会ってもすげーなァ、お前のお母さん。ご近所対策だって説明したらノリノリで出してくれてよー。
あたしも娘と一緒にセーラー服着てみたいわー、なーんて言われたんだけどよー。いやー、丁重にお断りしといたわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「これがご近所対策その4な。これから俺ん家に来る時は、必ずこれ着て来るよーに。で。コレがその5。最後のダメ押しな。
ご近所対策最後の切り札っつーか、誰がどんな目で見ても一目でわかる、最終防衛ラインだから。コレは必ず連れてくるよーに」

「・・・・・・・・・・・・せ。先生?」

「んァ?何」

「・・・もしかしたら、今のはあたしの聞き間違いかもしれないから、一応聞いておくけど。
何。どーいうこと。連れてくるって、何を」

「だーからァ。連れてくるんだって。お前が今日持ち帰って、明日からこいつを連れてここに来るの。
コレな、コレ(押し入れを開ける)」

「!!!エ、エリザベス!!!?・・・・・・・・!!???なっっ、何でぇ?何でここに!?」

「どーよこいつ。こいつも懐かしいだろォ?昨日ヅラに借りてきたんだわ」

「・・・・・・・・・・・先生。あのさ。・・・・・・てゆうかあたしも、もう訊きたくもないんだけどさ。
何。どーいうこと。ヅラに借りてきたって」

「あァ、そーそー、これな、借りたっつってもな、今ここにあるコレは外側だけな。
中のオッサンは先にお前んちに行ってるからね。今頃はお前んちでお母さんと雑煮でも食ってんじゃねーの」

「はァあぁああああ!!?」

「いっやー、どーよコレ。これでどっから見ても完璧だわ。
今日から桜は『担任教師のストーカーで外でも問題集を手放さないガリ勉で 常にバケモノ連れ歩いてる危ない変態女子高生』
っつーことで。な?どーよこの完璧な作戦。いっや――、何かもうスゴくね。何かもォあれだな、自分が怖いわ。
いやーさすがだわ、冴えてるわ俺」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「そーだ。桜さあ、お前、せっかく振り袖着てんだからよー。ホラ、帯グルグル解いて「あ〜〜れ〜〜」ってヤツ?
せっかくだからアレやっとこーぜ、アレ。それからお前のセーラー服な。終わったらアレに着替えてもう一回アレな。
俺がガッコの保健医で、桜が教師を淫らな道に引き込むインラン女子高生な。
まァ、お前が制服着たくねーんならさー、アレでもいいけど?上に俺の白衣着て、中は下着だけとか」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「はいはい、んじゃ早速脱いでみよっか。グルグルいっとこーか。いっやー、やっぱ日本の正月は振り袖だよな。
今年はいい正月だわ。マジ萌えるわ、マジで懐かしいわコレ。お前に制服着せてアレすんのも卒業式以来だからァ」

「・・・・・・・・イヤ。あのさ。だからさ。・・・・・先生?」

「あれっ。ァんだよ、ダメじゃん、直ってねーじゃん。そーじゃねーだろ?銀八せんせ、だろォ?
語尾は必ず、せんせ、で止めんの。声は高めで、甘えたカンジな。はい復唱」

「・・・・・・・・ぎ、銀八・・・・・せんせ?」

「そーそー、やっぱいーわソレ。たまんねーわ、最高だわそれ。で?何?」

「何って。・・・・・・・・・・・」

「あぁ?・・・何、どーしたのお前。もう目が潤んでるんだけど。もしかしてアレか?もう感じちゃってんの?
ァんだよ、新年早々やらしーおねだりだなぁ。んじゃ遠慮なく、いっただきまー」

「うっさい。退け。どきやがれ、変態教師」

「・・・・・ちょっ。桜?・・・じゃなくてぇええぇ、さ、桜さーん?いやいやいや、どーしたのその顔。
マジで怖いんだけどその顔。えっ、何。どこ行くの。・・・・・桜さんんん?
イヤイヤイヤイヤ!何やってんのォ!?何でこの寒みーのに窓開けて・・・、イヤ、ちょっっ」

「大家さ―――――んんん!!!!110番してええぇ!!ご近所のみなさんんんん!助けてくださいィィィ!
変態淫乱教師に襲われるうううぅぅ!!!」


おわり。

たしか去年の今頃も 銀さんで下ィお礼夢書いてたよーな。・・・一年たっても進歩がな・・・・・・フガフゴゴ
拍手ありがとうございました!!  2009/12/27/ riliri





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