――ひさしぶりに口にしたごはんを時間をかけてゆっくり食べ終えたら、自ら勝手に押しかけてきた自称派遣看護師さんは頼んだことを次から次へと実行してくれた。
あたしに解熱剤を飲ませると、まずは台所へ行って食器やお鍋の片付けを。 その次は、散らかってた寝室の片付けを。 取り込んだままベッドの上に放置してた洗濯物の片付け・・・は頼んでないけど、むしろそれは放置していいって断ったんだけど、満腹になって睡魔に襲われたあたしがぐっすり眠ってる間にどれもこれもきっちり畳まれてしまった。 今思えば、下着もあるからやらなくていいよって言っちゃったのがいけなかったんだよね。 「下着」そのひとことにふわふわ跳ねまくった天パ頭の毛を逆立てる勢いで反応したセクハラ看護人は、そこからキモく崩れたデレデレ笑顔が止まらなかった。 食べ終えたお粥の鍋を持っていそいそとうきうきと台所に向かう足取りときたら、いつもかったるそうにのそのそ歩く銀ちゃんにしてはいつになく軽快っていか、今にもスキップしそうだった。
ああこわい、あたしが寝てる間にあのブラとショーツはどう扱われてたんだろう。 きっと両方とも食い入るよーな目で見られちゃったんだろうな。 畳んでくれたのは別に男の人が好きそうなえっちっぽい下着でもなければ特に可愛い下着でもないんだけど、それでもなぜか銀ちゃんは目の色変えて飛びつくんだもん。 これまで何度も目撃したけど、あの時の銀ちゃんは何度見てもどん引きするよ。 滅多に煌めかない目をきらきらさせて今にもヨダレたらしそーな顔であたしの地味ブラや地味ぱんつを拝んでるあの姿、こわすぎて夢に見そうだよ。 獲物を手に入れて興奮してはぁはぁしてるケダモノだよ・・・!
・・・っていう聞くも語るもおそろしい話はさておき、自称看護師さんの家事の手際はすごーく手早くて要領がよかったみたいだ。
眠ってたのは2時間くらいなのに、その間にリビングやお風呂のそうじ、あたしが風邪をひいたって聞いてお見舞いに来てくれた大家さんに病状を説明してついでに世間話もして、それから新聞屋さんの勧誘への対応もして、大家さんから貰ったお花は花瓶を探して寝室に飾って、二日ぶんの郵便物が溜まってた一階の共同ポストの中身の回収も済ませて、
・・・・・・なんなのその板についた主婦力。万事屋でもその能力を発揮してくれたら、新八くんだって助かると思うんだけど。 目が覚めてそんな話を聞かされながら体温を計ってみると、熱は37.7度まで下がってた。 ぐっすり眠れて気分もすっきり、寝る前は痛かった喉も腫れが引いたのかひりひり感が薄くなってた。
よかった、これなら明日には仕事に行けるかも。おいしいお粥で身体が温まって、寝てる間にいっぱい汗を掻いたからかな。 肌に貼りつくパジャマの布地が湿ってるのがちょっと気持ち悪いけど、銀ちゃんが帰ってから着替えればいいよね。 なんてことを思いながら、買ってきてもらったお水で水分補給しつつぼーっとしていたら――ほわほわしたいい気分に浸ってたのも束の間、次のピンチが訪れた。 頼んだことをひととおり終えてしまった銀ちゃんが、次は洗濯するって言い出したからだ。 しかもこのセクハラ看護師さんときたら、そこにとんでもない要求を付け足してきた。今着ているあたしのパジャマも洗うから脱げ、って。 身体拭いてやっから、なんてお風呂場からタオルと洗面器まで持ち出して、ベッドの端まで避難して顔中ぴくぴく引きつらせて慄くかわいそうな病人(=あたし)ににまにまとにたにたとにやにやと――!



「やだ、やだやだやだっっ。ぜったい着替えなんてしないからね、こっち来るなド変態ぃぃっ」
「はいはい抵抗しねーの。汗掻いただろぉ、きれーに拭いてやっから」
「やだっぜったいやだぁ、身体拭くくらい自分でできるしっっっ」
「んなこと言ってぇ、出来ねーだろぉ、身体だりーんだろぉ。今も起きただけでフラフラしてんじゃん」

ぼすっ、と勢いよくベッドに腰を下ろしてのっしのし這い寄ってきた銀ちゃんの手が、チュニック風なパジャマの上着の裾をくいくいくいくいしつこく引っ張る。 やめてよ、おなか見えちゃうじゃん。 こっちも裾をぐいっと引き返して、痴漢まがいな看護師さんの顔を睨みつけて、ぼすっ、ぼすぼすっ、ぼすっっ。 傍にあったピンクのクッションを振りかぶって、思いきり何度もぶつけてあげた。
だけどおそろしいことに――クッションがぽろっと落ちた影から現れた銀ちゃんの顔は、胡散臭いくらいに爽やかに笑ってた。 ただしその右手にはいつのまにか例の白衣と聴診器が握られてたし、口から飛び出た言葉といえば、およそ爽やかさには程遠い超最低なセクハラ発言だったけど。

「んじゃー早速脱いでみよっかぁ! 下着の上に白衣もいーけどとりあえず全裸な、下着なしで白衣も捨てがたいけどとりあえず全裸な! 全裸になって聴診器胸に当てられて「いやぁんつめたあぃ、聴診器じゃなくて先生の手で確かめてえぇ」な!」
「喉に聴診器詰め込まれたいの銀ちゃん。ていうか人の話聞いてた?あたしやだって言ってるじゃんっ」
「んだよそんなにやなの、白衣と聴診器。そんならいーわ、これ無しでいーわ」
「――っちょっっ、なっ何して、っっ!?」

言うが早いが銀ちゃんは聴診器と白衣をぽいぽい投げる、かぁっと目を光らせると同時で動く。 万事屋では見かけたこともないやけにキレのいい動作で立ち上がると、ひゅんっっ。 風を切る勢いですばやくあたしの背後に回って、がばっっ。
見た目より筋肉質で太い腕が目にも止まらない速さで胸とお腹に巻きついてきて、一瞬でがっちり羽交い絞めに。 それと同時で図々しい左手がパジャマのズボンのウエストゴムをわしっと握ってずるんと下げて、ブラとお揃いの淡いブルーのショーツが丸出しに。 あまりの早さについていけなくて数秒遅れで驚愕したあたしは、ぎゃあああああぁああっ、とマンション中に響き渡ってそうな色気のかけらもない絶叫を上げた。 じたばたじたばた、ぼすぼすぼすっっ。 唯一動ける脚を振り上げてベッドを蹴ってクッションを蹴って、だけどどーやっても後ろの痴漢を振り解けない!

「〜〜やゃやややだばかっ何すんのっっ、やだからね絶対お医者さんごっこなんてしないからね!放せ放してえぇっ」
「暴れんなって、病人は素直に世話されてりゃいーの。 つーか銀さんのスイッチ入れたのお前だからね。あんないじらしいこと言われたら余計に世話焼きたくなるからね」
「ぅにゃぁあ!〜〜〜ややややめっ」
「だめですー、が脱ぐより俺が脱がせたほうが早ぇーしよー。 脱いで身体冷えたらまた熱上がっちまうだろ、さっさと済ませてやっからじっとしてろって」
「済ますってちょっ、っっっっっ!」

ぷち、ぷちぷちぷち、ぷちっ。
大きな手は太い指を滑らかに動かして、あたしの視界の真下に並ぶボタンを瞬く間に外していく。 全部のボタンが外れると、上着の前がはらりと肌蹴た。
うつむけばすぐ真下に、さっきも一度銀ちゃんの目に晒された淡いブルーのブラ。 こうして上から見るとやけに白っぽく映るお腹も、ズボンを脱がされてショーツだけになっちゃったお尻も、しっかりあたしの視界に入る。 何これ、たった一瞬でここまで脱がされちゃうなんて。 言葉も出ないくらい唖然として自分の身体を見つめてた間、銀ちゃんの手は一度あたしのお腹から外れてごそごそと後ろ手に何かを探していた。 間もなくその手が戻ってきて、素肌を晒したあたしのお腹に濡れたタオルを押しつける。 ほわほわとあったかい蒸気を昇らせてるそれで円を描くみたいにして拭くと、次はその手がブラの下からカップの中まで潜り込んできて――

「っぎ、銀ちゃんっっ」
「何もしねーって、拭くだけだって」

そう言うと横から顔を押しつけてきて、パジャマが肌蹴てる肩のところに、ちゅ、って軽くキスを落とした。 あわててもがくあたしを左腕一本で抱きしめたまま、ぐい、とブラをずり上げる。 揺れて現れた右の膨らみをタオル越しに包み込まれてしまって、ふにゅ、ってやわらかく握られて、

「っ・・・!」

それだけで感じちゃったあたしがぴくんと背筋を震わせたら、吐息みたいな笑い声をうなじのあたりに吹きかけられて。

「んだよ、どーした。寒いの」

わざとすっとぼけて尋ねてくるから顔を背けて無視したのに、銀ちゃんはそこに何度も指を潜らせて揉んだ。
うねうねと動く指がやわらかいところに沈むたびに、びくびく、びくんって背中が揺れる。 そのままむにむにと指先を埋もれさせるみたいな手つきで弄られたら、ごはんを食べさせてもらった時みたいにあたしの身体はじわじわと熱くなり始めた。 タオルの濡れた感触を通して揉みしだかれて、はぁ、はぁ、って吐息がこぼれる。 胸の先に――銀ちゃんの指の間に挟まれたところに、身体中の感覚が集中していく。 タオルの繊維で擦られただけでもどかしくて、たまに布地越しの指先に押されたら声を上げちゃいそうになった。
つんと尖ってきたそこが、濡れた布地を押し上げてるのが目でわかる。
「大丈夫大丈夫。そーっとやるから。熱上がんねーよーにそーっと撫でるだけだから」
なんて銀ちゃんはあたしのほっぺたに何度もキスしながら言い訳するけど、これのどこが「そーっと撫でるだけ」なんだろう。
それに、熱ならとっくに上がってるよ。 ただでさえぼーっとしてる頭にはどんどん血が集まってきてるし、触られたところだってすっごく熱い。 それどころか、触れられてないところだって熱い。 触られるほどに膨れ上がるもどかしさで疼き始めたお腹の奥も、ズボンを脱がされて肌寒くなってきた脚の間も――

ー。どう、きもちいい」
「〜〜っ。・・・もち、く、な・・・っ」
「ふーん。じゃあここは。ここも拭いていい」
「んんっ」

タオルごと胸を握ってる手の中指の先が、ちょん、ってほんの軽く膨らみの中心を押し上げる。
どうしよう、唇を噛みしめても声が漏れちゃう。 力ずくの拘束をどうにか振り解いて、やっと自由になった左手で喘ぎ声が漏れる寸前だった唇を覆う。 だけど――タオルの中に隠れてる感じやすいところをつんと押されたら肩が跳ねて、ひぁん、って鼻にかかった甲高い声を上げてしまった。 それを見た銀ちゃんはまたくすくす笑って、濡れタオルの上から眺めてもうっすらと赤いそこを人差し指の先でくるくると撫で回し始めた。

「っぁん、っ、ふ・・・ぁ、あぁ、っん」
「はは、拭いてやってるだけなのに声止まんねーじゃん。ここ弱ぇーもんなぁ、は」
「銀、ちゃあっ」
「んー?」
「も、ゃめ・・・〜〜あんっ、やっっ、だめ、それ、やぁ、ぁあんっっ」

撫で回されると腰が勝手にいやらしく捩れて、ぴん、と爪先で繰り返し何度も弾かれたら身体中が痺れる。 剥き出しにされたショーツの奥で、何かがとろりと蕩け出す。 それと同時で二本の指先できゅって摘まれたら弱い電流みたいな刺激が駆け抜けていって、羽交い絞めにされた身体は弓なりにしなってぶるぶる震えた。

「ふ、拭くだけって・・・ゃん、どこ、さわっっ」
「どこって胸だけど、の胸。ちょっと苛めてやっただけで硬くなっちまう、ちゃんの敏感なとこー」

やらしーな、お前のここ。
火照りきった妖しい声を耳打ちするみたいに注がれたら、もう腰に力が入らない。 あん、やぁ、って唇から飛び出る声が止まらなくて、息が上がって胸がくるしい。 そのうちに左胸も掴まれて、タオル無しで直に触れてきた手は膨らみを揉み潰すみたいに手荒く動く。 やわらかく包み込まれる右の胸と、激しい手つきで形を変えられ続ける左胸。 その両方の敏感なところを指先でくにくに捏ねられて、声も身体の震えもこらえきれない。 あたしは自分を後ろから抱きかかえてる身体にくったり凭れかかって、ショーツしか履いてない自分の腰を泣きそうな目で見つめた。 弄られてるのは胸なのに、どうして――ぎゅっと太腿を擦り合わせてる脚の間が熱い。銀ちゃんの手が蠢くたびに、そこも痺れてきゅんと疼く。 胸を弄られるたびにお腹の奥深くにじわじわ溜まっていくその感覚がせつなくて、だけど自分じゃどうにも出来ない。 おずおずと後ろへ視線を流せば、横からほっぺたを押しつけてる顔がこっちを見てる。何を考えてるのかよくわかんない、とぼけた笑みを浮かべた目と視線が合う。
――言えない。言えないよ。触ってほしい、なんて口にしたら恥ずかしくて死んじゃう。
そう思っただけで、脚の間の熱い部分がきゅんと疼く。 自分でもはしたないと赤面しちゃう想像のせいで、せつない感覚はもっと大きく膨れ上がってしまったみたいだ。 「何、どーしたぁ」って尋ねられて、あわてて銀ちゃんから顔を逸らす。 そこからはもう目を合わせるだけでも恥ずかしくてたまらなくて、後は銀ちゃんの思うままに胸を弄られ続けるしかなかった。

「・・・はぁ、ふ・・・ぁん、ゃあ、ゆび、やだぁ・・・っ、」
「なぁー。今日はブラ外したほうがよくね」
「ん・・・やっ」
「寝るときにこーいうもんで締めつけてっと苦しーだろ。外したほうが楽になれるって」

息苦しかった胸をさらに窮屈にしていた淡いブルーの布地を、右胸の膨らみを握る中指の先がつんつんする。 「外そーな、これ」って愚図る子供でもあやすような優しい声でささやくと、銀ちゃんはようやく腕の力を緩めてくれた。 真横からあたしをしげしげと眺めて、
「あー、悪りー。苦しかった?やりすぎた?」
ひょっとして熱上がった、って眉をひそめて尋ねられて、力なく頷く。
熱い。熱いよ。熱すぎて頭の芯までぼうっとしてる。頭の中も口の中も、どこもかしこもすっごく熱い。なのに背中がぞくぞくする。 いつのまにか溢れてた涙でしっとり濡れていた瞼を、きゅっと瞑る。ああ、頭が重い。首に力が入らない。 ぐらりと傾いた頭は銀ちゃんの胸に崩れ落ちたけど、すぐに頬を覆った大きな手でくいと斜め上を向かされた。 はぁ、はぁ、って息が乱れきってる唇に、覆い被さってきた銀ちゃんの唇が重なる。 くちゅくちゅ音を立てて舌に絡みついてくる深いキスで、火照った頭の中まで掻き回される。 大きな両手で抱えらえた頭は乱れた髪を梳くみたいにして撫でられて、大事そうに触れてくれる手の気持ちよさにうっとりしてたら―― 脱力しきってる身体をぎゅっと抱きしめられて、かと思えば、なぜか前へと倒されてしまった。

「ふぇぇ・・・ぎ・・・ちゃぁ・・・?」
「ん、待って。ブラ外してやっから」

ぎ、ってベッドが小さく軋む。 うつぶせにされた顔や肩、胸もお腹もふわふわしたお布団に埋もれて沈む。汗で湿ってるパジャマの上着が、するりと下へ引き下ろされる。 途端に肩や背中まで冷えが回ってぶるぶる身震いしていたら、背中の上のほう――背筋のあたりに、ちゅ、と熱を押しつけられた。
かさついた熱い感触。銀ちゃんの唇だ。
「・・・ぅおっ、やっべぇわこのポーズ。鼻血もんのえろさだわ。あーあーどーするよ、マジでヤりたくなってきたんだけど」
溜め息混じりにもごもごとつぶやいた唇はちゅ、ちゅ、って短いキスを繰り返しながら背中を這い降りていった。 ブラのホックを器用に噛んで、
――ぷちっ。
鎖骨までずり上げられてた布地がふっと緩んで、上着の袖ごとストラップを引き下ろされて――気付けばもう、上半身には何一つ身に着けていない。
お布団にぐったり倒れ伏したあたしの背後で、銀ちゃんがもぞもぞと動き始める。 ベッドをゆらゆら上下に揺らしながら起き上がると、わずかに開いてた脚の間――淡いブルーの薄布で包まれたそこに、いきなり手が触れてきた。 谷間を探り当てられてつうっと指先でなぞられたら、肩がびくんと震え上がる。熱いものがじんわりと滲む。 太い指先を布地ごとぐにゅって押し込まれると、奥をびくびく疼かせてたそこはきゅうぅっと縮み上がってさらに疼いた。

「っあ、んな、ゅ、びっ、うごかしちゃ、っゃあ、ぁああ・・・っ」
「動かしたほうがきもちーんだろ、先っぽしか入れてねーのにすげぇ濡れるし。 なぁ、お前のここどーなってるかわかる。触るとどんどん溢れてくるんだけど。つか濡れすぎてここだけ透けてっから、すげぇやらしい」
「ひぅ、あんっ・・・やぁ、んな、ぃわな、でぇ・・・っ」
「はは、言ってる傍からとろとろ溢れてくるし。なぁー、何でこんなになってんの。もっとここ弄ってきもちよくしてぇ、って俺におねだりしてんの」
「ぁん、ち、ちがっ」

背中を捩って否定しても、大きな手はショーツをぐいと掴んで引き下ろす。
パジャマのズボンと一緒にたちまちに右足から引き抜かれてしまったら、布の感触が纏わりついてるのはもう左の足首だけだ。 お腹に腕を回されて、そのまま抱き起すようにして引っ張られる。 すると両膝がかくんと曲がって、真後ろに座ってた銀ちゃんの腿の上に脚を左右に広げる格好で座らされてしまった。 あわてて太腿を閉じようとしたけど、間には銀ちゃんの両脚があって――

「〜〜・・・っ!やだぁ、や、こんな・・・やぁ、はずかし・・・っ」
「恥ずかしくねーって。めちゃくちゃ可愛いって」

お尻の両側を掴まれて、ずず、って胸の膨らみがお布団の上を引きずられる。 曲がっていた膝を立てさせられたら、今度は太腿の裏側を掴まれた。
脚のいちばんやわらかいところを握った大きな手が、素肌をゆっくり撫で上げる。 それだけでぞくぞくして鳥肌が立って、脚から力が抜けそうになった。お布団に突かされた膝が、小刻みに揺れる。 開き気味にさせられたお尻もがくがく震える。あぁ、顔から火が出そう。 これじゃ何も隠せない。きっと何もかも銀ちゃんには見えちゃってる・・・!

「ぅう・・・やぁ、も、あし、力、はいんな・・・っ」
「だめですー、ちゃんと腰上げといて。ここもうとろっとろだし、きれいにしてやんねーと」
「――ひぅ・・・っ!」

脚の間へ伸びた手が、無防備に晒された熱いところにつぷりと指を突き入れた。
仰け反った背中は後ろから覆い被さってきた胸に潰されて、逞しい腕で腰をきつく抱きしめられる。 硬い異物に広げられる感覚に震えてるうちに、ずぷ、ずぷ、じゅぷんっ。 節がごつごつと硬い銀ちゃんの指は狭くて濡れた内壁を掻き分けるみたいにして進んでいって、付け根まで一気に押し込まれた。 指を入れられたのは脚の間なのに、頭のてっぺんまで痺れが一瞬で突き抜ける。 あんっ、と声を上げてお布団にしがみつくと、ずるっ、と素早く引き抜かれて。 かと思えばまた指を戻されて、ずっ、ずっ、ずっ、って中の壁に指先の硬さを擦りつけるような動きで突かれて、

「ぁああっ」
、いい子だから素直に言ってみ。お前さぁ、ほんとはこうして欲しかったんだろ」
「ぁあ、やっ、ちがぁ、っはぁ、あっ、あぁ・・・っ」

深くてやわらかいところにぐっと突き付けられた指が素早く引き抜かれて、蕩けて感じやすくなった中を掻き乱しながら往復する。 銀ちゃんの指の動きは最初からすごく激しくて、声を殺したくても我慢できない。
強すぎる刺激で湧いた涙がぽろぽろこぼれて、顔を押しつけてるお布団のカバーをじっとりと湿らせていく。 ぐちゅ、くちゅ。粘った音が途切れることなく自分の中から溢れくる。 耳を塞ぎたくなるその音にもっと羞恥心を煽られても、目の前のお布団に縋りついた手は早いリズムで押し込まれる指の動きに力を失くして、弱いところを押し上げられて、二本に増えた指で中をさらに広げられてもただ震えるだけで――

「ゃあ、ぎ、っっあ、はげし・・・っ、ぁはぁ、あぁん、めぇ」
「お前何度も見てたじゃん、ここ。なーんかせつなそーな顔してたじゃん。 銀ちゃんここも触ってぇ、って目ぇして俺のほうも見ただろぉ」
「み、見てないっ」
「いやいや見たって。銀さんを見る目がえろくて蕩けてたんだって」

どーせは無意識にやってんだろーけどー、あれ見せられたらこっちはたまんねーわ。
ぼそりとつぶやいた銀ちゃんはもどかしそうな溜め息をついて、指をずるりと引き抜いた。 腰から手を離されて、がくんと銀ちゃんの脚の上に崩れ落ちる。 かちゃかちゃ、かちゃ。後ろからベルトを外す音が響いて、次にしゅるん、と何か擦れたような音が。 かと思えば頭の後ろで衣擦れの音がざわめいて、ぱさっ。背中に何かなめらかな布を被せられた。 苦しい姿勢ではぁはぁ喘ぎながら、どうにか横を向いてみる。 するとよく知ってる香りが鼻先まで届いて、肩からさらさらと滑り落ちていく白い布地が目に入る。これ、銀ちゃんの着物だ――

「ぎんちゃ・・・なに、して・・・」
「んー?が寒そーだから。被せちまうと胸見えねーからつまんねーけど、このままにしとくとまた熱上がっちまいそーだし」
「き、着替え、させるって・・・!」
「だよなー、寝間着脱がせる前はそのつもりだったんだけどよー。 まぁお医者さんごっこ断られちまったから、そのぶん何かいたずらしてやろっかなぁとか思ってたけどー。 つっても早く服着ねーと身体冷えるし、ちょっと遊んだらふつーに着替えさせとくつもりだったんだわ。 けどよー、無理じゃね」

銀さん、お前のせいでスイッチ入っちまったからね。
髪を手で避けられたうなじに、低めた声を吐息ごと吹きかけられる。全身がぞくぞくして腰が揺れる。 後ろから顔を寄せられて、さっきとは違う感触が――すこし汗ばんだ熱い肌が背中を覆う。 銀ちゃん、いつのまにか中のインナーも脱いじゃってる。こうしてぴとってくっつかれると、ちょっとだけ汗の匂いがする。 ああ、でも、あたしだって――ううん、きっとあたしのほうがひどい。昨日からシャワーも浴びてないのに。

「んん、やぁ、やだぁ。おふろ、はいって、な・・・っ」
「あれっ、思い出しちゃった?いやいや大丈夫だってはどこもいー匂いするって。 つーかそんなに恥ずかしそーににされるとかえって興奮すんだけど」
「〜〜っっ、なっ、なにそれ・・・っ。銀ちゃ、て、何でそゅこと、平気で・・・っ。ばかっ、ばかばか、へんたいぃっ」
「こら、あんま動かねーの。熱出てる時に動くといつもの倍は体力使うんだぜ。知ってた?」
「し・・・し、らな、――っん、」
「力抜いて、。俺に任せていい子にしてたら気持ちよくなれるから。な?」

聞いただけで腰がふにゃりと崩れてしまいそうになるとびきり甘い声でささやかれて、身体が芯からきゅうぅって疼く。 腰を掴んだ銀ちゃんの手にころんと身体を転がされて、右向きの姿勢で寝かされた。 左の脚だけが高く持ち上げられる。 うんと広げられた脚の間に、身体をゆっくり伏せながら銀ちゃんが顔を近づけてくる。 ぎ、ぎ、って一人用のベッドが二人ぶんの重みに軋む。横向きにされた身体がわずかに上下しながら、ふわふわとあったかいお布団の感触に沈み込んでいく。 高く上げた左脚は、太腿が閉じられないように膝のところをぐっと握られて。 お布団に投げ出された右の脚にも、手を掛けられて膝を曲げさせられて。 、ってもう一度呼ばれたらそれだけで寒気がぞくぞく這い上がって、ぬるい蜜がとろとろこぼれて脚やお尻まで濡らしていった。 ちゅ、ちゅ、って濡れた蜜口の周りに唇を落とされたら中がきゅうっと収縮して、ずくずく疼いて止まらない。
――違う。寒いのは風邪の寒気のせいじゃない。あたしの身体、早く、早くって銀ちゃんを欲しがって震えてるんだ。 熱く蕩けたいやらしいところがどんなふうに震えてるのか、きっと銀ちゃんにはぜんぶ見えちゃってる。 そう思ったら、身体中が甘くて息苦しいせつなさで縛られて。銀ちゃんだけが触れられる身体の奥がかぁっと火照って、せつなくてたまらなくて。 死にたいくらい恥ずかしいのに、どうしても我慢できなくて――

「・・・っく、ふぇえ・・・っあ、ゃあ、やだやだぁ、ぎ、ちゃぁ、はやくぅ・・・・・・っ」

ぽろぽろぽろぽろ、涙の粒がほっぺたを転がってお布団を濡らす。
ああ、あたしどうかしちゃってる。こんなはしたない格好で、自分からいやらしいおねだりをするなんて。
喉の奥からこみ上げてくる嗚咽を唇を塞いで噛み殺してたら、銀ちゃんははぁっと荒れた吐息を漏らしながらぐいと左の腿を押し上げた。 さらに大きく開かせて顔をそこに割り込ませると、縦に割り広げるような動きで舐め上げる。

「――っぁああっっ」
「っは・・・やべぇ。いつもあっちーけど、すげーわ今日は・・・」
「あっ、あ、ぁあ、あぁぁんっ、ゃらぁ、ぎっ、ひ、ぁあんっ、〜〜〜・・・っ!」

感じすぎて腰を大きく跳ね上がらせても、お布団にしがみついて上へ逃げようとしても、左脚を掴んだ手が許してくれない。 蕩けきったあたしの中へ差し入れられた銀ちゃんの舌は、まるで何か別の生き物みたいに蠢いてすごく熱い。 震える入口に先を突き入れるようにして繰り返し乱暴に往復して、きゅうぅって狭まってくる内壁を広げながら奥へ奥へと潜ってくる。 そうやって銀ちゃんが深いところへ這い進むたびに、とろとろ滴るぬるい粘液が溢れ出る。 溢れさせてるところをじゅるりと吸われて、強い刺激に腰が跳ねる。 それでも左脚は力強い手で固定されてるから、腰が跳ねても伸び上がっても銀ちゃんの唇が離れない。 浅いところをぬるぬると擦り上げる熱いものが、何度も何度も往復する。 形を変えながら潜り込んでくるやわらかい熱に繰り返し擦られて、擦られるほどに奥が疼いて、気持ちよくて。 でも、逃げ出したいくらい恥ずかしい。自分がどんなに淫らで蕩けきった顔をして銀ちゃんの前で脚を開いてるのかと思うと、頭の中が燃えそうに火照った。 だけどそんな恥ずかしさすら、銀ちゃんがお腹の奥に送り込んでくる刺激と混じり合えば快感に変わる。 どんどん恥ずかしさが薄れていって、身体中を満たす気持ちよさに捻じ伏せられていく。 そのうち何ひとつまともに考えられなくなって、ただ自分の内側の感じやすいところへ入り込もうとしてる銀ちゃんの熱さだけを追いかけてしまう。
腰をくねらせても頭を振っても頭がおかしくなっちゃいそうなその気持ちよさからは逃げられなくて、両手できつく覆った口からは甘えた喘ぎ声が漏れてしまう。

「っぎんひゃ、ぁあん、ぎっ、やぁ、も、いっっ、きもち、ぃ、のぉ、だ、めぇぇ・・・っ」

すると銀ちゃんはなぜか舌の動きを止めて、閉じられないように抑えつけてたあたしの左脚を自分の肩に乗せてしまった。
「・・・っ。あぁ、もう、何なのお前。マジで挿れてぇ・・・」
なんだか悔しそうな舌打ちが聞こえて、ぼうっと霞んだ視界の真ん中にこっちを見下ろす銀ちゃんが映る。
涙の膜の向こう側。ゆらゆら揺れる表情が見えない。
ぎんちゃん、って泣きながら手を伸ばして触れようとしたら、腰を軽く持ち上げられて。 割れ目の先にある小さな芽に、ぐにゅ、って強く舌を押しつけられる。 あんっ、ぁあああんっっ、って悲鳴じみた甲高い嬌声が跳ね上がる。 舌先の焼けそうな熱さでぐちゅぐちゅ乱暴に揉み潰されたら、ただでさえ敏感になってたそこはたちまちに痺れ上がって。 っっ、って息が止まったその瞬間、目の前がぱぁっと白く染まる。 ふぁ、って宙に身体が浮き上がるような、ふしぎな感覚が襲ってくる。
銀ちゃん、銀ちゃん――
いくら呼んでも泣き喚いても髪を掴んでも、いちばん感じちゃう弱いところを責め上げてる熱い舌は止まってくれない。 鋭く突き抜ける快感の波に身悶えて背中を浮かせて仰け反ったあたしは、汗と涙でしっとり濡れたお布団の上でびくびく震えながら達してしまった。




「猛毒いちごシロップ #2」
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text *riliri Caramelization  2015/10/10/       next →