陽が射さなくて薄暗い寝室へ引っ張り込まれてからも、腕のリボンは解いてもらえないままだった。
自分じゃ確認できないけど――銀ちゃんてば、どんな縛り方してるんだろう。
少しでも拘束を緩めたくて肩や腕をもぞもぞさせてみても、上半身の窮屈さは変らない。
背中が自然と反り返ってるせいで、赤く染まった胸の先は上を向いてつんとしてる。
こうして向き合わされてると、まるで自分から銀ちゃんに突き出してるみたい。
「・・・銀ちゃん。これ、やだ・・・」
「んー?」
「・・・腕・・・はやく、解いて。おねが・・・は、恥ずかし・・・っ」
途切れ途切れにつぶやきながら潤んだ目で見上げたら、寝間着を脱ごうとしてる銀ちゃんの動きが止まる。
あたしたちが座ってるのは畳じゃなくて、銀ちゃんが押入れからどさっと引きずり落とした布団の山の上。
枕や毛布までまとめて落としたせいでソファの座面くらいの高さになってるそこは、ぐらぐらしてて不安定で、
ちょっと動こうとしただけで前へ転がり落ちそうになる。
なのに銀ちゃんは面白がって、うつむいて泣きべそかいてるあたしをめいっぱい首を傾げて覗き込んでくるから、
唇を噛んでそっぽを向いた。
・・・動けないってわかってるくせに。そういう意地悪しないでよ。
――いくら見てるのが銀ちゃんだけでも、死にそうなくらい恥ずかしいよ。腕をしっかり縛られてるせいで、隠したくても隠せない。
ただでさえやらしい服をお腹までずり下げられちゃって、胸はすっかり露わになってる。
エプロンドレスやパニエの裾は下腹あたりまで捲れ上がってて、どろどろに濡れた恥ずかしいところを隠してくれるのは白いガーターの薄いレースだけ。
それだって透かし模様入りの小さな飾り布だけで、何の目隠しにもなってない。
銀ちゃんの視線でかあっとのぼせ上ったせいで、全身の肌が桃色を帯びる。
そんな身体をどうにかして隠したくて腰を捩って逃げようとしたら、肩を掴んで止められた。
つんと尖った赤い先に素早く顔を寄せられて、逃げる間もなくそこを吸われる。
触れられたとたんにふるっと弾んだあたしの胸を、いつも重そうな瞼をさらに伏せた目が嬉しそうに眺めた。
「・・・っとに反応いいよなぁ。ちょーっとちゅーしただけなのによー」
「ぅうう・・・ばかぁ、ぁん、なめちゃ、やぁ」
「無理無理、無理だって。こーんな旨そうなもん前にしてんのに食わねーとか無理ー」
「ゃ・・・ん・・・ぁ」
肩を掴んだ手のひらが肌を滑って、服を脱がされた二の腕を撫で下ろす。
外されたブラやメイド服がぐちゃっと重なってる胸の下から、火照った色に変わった膨らみを両手で持ち上げられた。
大きな手のひらにすっぽり包まれて撫で回されて、尖った先を指の間に挟まれる。くにゅ、くにゅって回しながら捏ねられる。
敏感なそこはあっというまに固くなって、くにゅって捏ねられるたびにじぃんと痺れが広がっていって、
「はぅ・・・も、ゃめ、ぎっ・・・」
「それによー、いくらご主人さまとメイドさんプレイだからってしてもらうばっかじゃ不公平だろぉ?
身体使ってきもちいいご奉仕してくれるメイドさんに、何かご褒美やらねーとな。てーことでちゃん、今からたっぷり可愛がってやるから」
「そんなの、ぃ、らな・・・・・・っぁ、やだぁ、ゃん・・・」
本当にどうしちゃったんだろう、あたし。ちょっと弄られてるだけなのに、どうしてこんなにきもちよくなっちゃうの。
身動きできない背中を震わせて、後ろに倒れちゃいそうなくらい上半身を逸らして、頭の芯までぼうっとさせる甘い疼きに呑み込まれてく。
だめ、やだ、ってうわごとみたいに口走ったら、銀ちゃんは意地悪っぽく口端を上げてにんまり笑って、
「んだよ、だめなのこれ。へー、こんだけいい声でよがってんのにイヤなんだぁ。んじゃーこれとかどーよ」
ぴんって強めに弾かれて、何度も何度も繰り返された。
「なぁ。これもだめ。きもちよくねーの」なんて甘い声で責められても、だめ、なんて短い言葉でさえ言えないくらい感じちゃって何も言い返せない。
くにくに、って先を転がされて、ふにゅ、ふにゅ、って手のひら一杯を使って膨らみを揉みしだかれる。
汗でしっとりしてるせいですごくいやらしく見える膨らみは、銀ちゃんが求めるとおりにかたちを変えながら弄られ続けた。
「――・・ぁは・・・ぁ・・・・・は・・・ゃ・・・くぅぅ、解いてぇ・・・・・っ」
男の人の硬い爪先が敏感なところをかすめるたびに、上半身を震わせる強い刺激が背筋を昇る。
弱りきった声が何度も口から飛び出して、喘ぎっぱなしですっかり渇いちゃった喉が苦しくなる。
――身体中をふわふわさせてる快感の名残りが、お腹の底から熱をじわじわ上げてくるのが自分でもわかる。
あたしは銀ちゃんの手に乱されながら腰をくねらせて、「ゃだ、やめて」って半泣きで頼んだ。
だけど、やっぱり聞いてもらえない。さっき机の上でしちゃった後の色っぽさや倦怠感がまだ漂ってる眠そうな目が、にぃっと不敵に細められて、
「解いてやるって。が上手に出来たらな」
「・・・・・・ほん・・・と・・・?」
「ほんとほんとー、信じろって。だからさっき言ったあれ、やってみて」
ささやいた唇がほっぺたにやわらかく触れて、すぐに離れて、また触れて。
涙の跡をなぞるみたいにして目元までを撫で上げると、火照った舌先が瞼の縁に残ったしずくをぺろっと掬う。ちゅ、ちゅ、ってこめかみや耳たぶを啄んでくる。
キスしてる間に肩や腕を大きく動かして、銀ちゃんは素早く服を脱ぎ落とす。
あっというまに脱いだ寝間着は、背後にある箪笥のほうへばさっと豪快に投げ捨てられた。
汗で濡れた顔を傾げて迫ってきた銀ちゃんが、はぁ・・・っ、って苦しそうで荒い吐息をこぼす。
と思ったら後ろ頭を抱えられて、あたしを食べようとしてるみたいな勢いで唇を塞ぐ。
噛みつくみたいなキスで口をこじ開けられて歯列を舌になぞられて、んんっ、って喘いで顔を逸らしても、上顎の裏まで伸びてきた舌に撫でられる。
弱いところをざらついた感触でくすぐられたらぞくぞくしちゃって、ふあぁ・・・、って甘えた声が漏れる。
舌先で絡め合った熱いしずくが口端から漏れる。
すこしずつ冷めながら首へ伝って、膨らみが剥き出しになった胸の先まで滴り落ちる。
つうっと肌を滑っていくのはほんの一滴の冷たさなのに、さっき吸われたときのかんじがまだ残ってるそこは、じぃん、って痺れて。
縛られて身じろぎも出来なくなってる背中をしならせながら、弱い快感が駆けていく。
「〜〜〜・・・っ・・・」
漏れそうになった声は全身を強張らせてこらえたけど、――銀ちゃんは気づいたみたい。
くく、って笑った唇が離れて、顎下の薄い皮膚をぞくぞくさせるようなやわらかい舌遣いで下りていって、首筋を這う。
もっと下がって辿り着いた胸を、舌や唇で嬲られるようになった。
「ふえぇぇ・・・そん、な、しちゃ、だめぇ・・・」
ぴん、って尖ったところを濡れた舌先で弾かれるたびに、かぶりを振って涙を散らした。
縛られてるから遮ることも押し返すこともできなくて、弱いところをしつこいくらいに狙ってくる銀ちゃんの舌を泣きながら受け止めるしかなくなってしまう。
しまいには腰が砕けてきて座っていられなくなって、爪先までぶるぶる震わせながら布団の山に倒れてもがいた。
達したばかりで感じやすくなってるお腹の奥から、熱くて変なかんじが奔り出てくる。
――あぁ。やだ。・・・・・・これって――
「っやめ、はなし、てぇっ」
「ん。どしたぁ」
「・・・あっ、や、ゃらぁ、出、ちゃ・・・っ!」
太腿や爪先に力を籠めてこらえても、下半身がぶるっと揺れる。
大きな手のひらに揉みしだかれてる胸が、口の中でくちゅくちゅ食まれてるその先が、我慢できずにびくんって跳ねる。
どろり、と一気に溢れ出たのは、銀ちゃんがあたしの中に吐き出した白い粘液。
腰の下でざわざわ鳴ってるしわくちゃなシーツや毛布の端をぬるりと濡らして、銀ちゃんとあたしのが混ざり合った濃密な匂いを放って染みていく。
くちゅくちゅって舐め回してた胸の先から光る糸を引いて離れながら、銀ちゃんがゆっくり上半身を起こして。
「あーあー布団汚しちまってぇ、どろっどろじゃん。ダメだろメイドさん、せっかくご褒美やったのにぜーんぶお漏らししちまってよー」
「・・・っ!?ち、ちがっ・・・!」
「胸いじられんの好きだもんなぁは、良すぎてイっちまったんだろ。つーかお前、今日反応良すぎ」
なに、そんなに感じちまうの、縛られてると。なぁ。どーなんだよ。教えろって。
笑みを含んだ低い声が何度も、間に荒い吐息を挟みながら問い詰めてくる。
お腹や腰のラインを味わうようにゆっくり撫で下ろしてから、太腿を掴む。膝頭を高めに持ち上げられて、脚が片方だけ上がる。
ショックすぎて涙目で絶句してるあたしを上げた脚越しに眺めながら、ちゅ、ちゅ、って膝頭や太腿の内側にキスを落として、
「なーなー、実は縛られるのも悪くねーんだろ。イヤイヤ言いつつ恥ずかしいことやらされんのが結構癖になってきてんじゃねーの。
ほらほら正直に言ってみろって、何なら脚も縛ってやろーかメイドさん」
「〜〜〜〜ち、ちがぅもん、そんな・・・っ。ふえぇ・・・銀ちゃん、きらぃ・・・!」
「ははっ、悪りー悪りー、冗談だって。もう言わねーから泣くなって」
頭を上げた銀ちゃんが、どこかせつなそうに顔を歪めて笑う。
顔を半分覆っちゃうくらい乱れてたあたしの髪のぐちゃぐちゃなところを指先で解く。
すっかり汗ばんで湿った流れを、おでこや耳元を指先でくすぐりながら何度か撫でつけてくれた。
「――そろそろ機嫌直してくんね。お詫びにうんと可愛がってやっから、な」
泣きすぎて腫れてきた赤い瞼に唇を落とすと、銀ちゃんはまた頭を下げる。あたしの太腿に顔を寄せた。
膝頭から腰のほうまで、ガーターベルトの線に沿わせて熱い唇が這いあがってくる。
太腿を両方掴まれて開かされて、肌を滑ってきた唇が蕩けきった蜜口をそうっと塞ぐ。
ちゅう、ってやわらかい動きで吸われてぺろぺろされて、あぁっ、って我慢できずに身体が震え上がった。
はぁっ、って熱く、獣みたいに荒々しく漏れた吐息を吹きかけられる。
何をされても感じてぞくぞくしちゃうあたしは、弱りきった声で泣きながらかぶりを振り続けた。
滴ってきた蜜をぴちゃぴちゃと舐められて、とろりと濡れた芽を剥かれて、身体中のどこよりも一番感じちゃうやわらかいそこを舌先で器用になぞられる。
うわずった声を震わせながらがくがく跳ねるあたしの腰を片腕で抱きしめながら、銀ちゃんはもう片方の腕でお尻を撫でる。
ガーターベルトの飾り布の中へ手を這わせて、ふっと笑って、
「・・・すっげ。たっまんねぇよなぁ。ただでさえ濡れまくっててエロいのによー、これのおかげでエロさ十倍増しだわ」
感心してるんだか呆れてるんだかわかんないかんじで笑われて、恥ずかしくって泣きたくなった。
だけど銀ちゃんがまた火照ったところを舌で嬲り始めてしまったら、暗い天井を突き抜けてしまいそうな甲高い声を響かせて啼くことしかできない。
じっとり濡れて肌に纏わりついてくる純白のレースの内側で、熱い手が焦らすみたいにゆっくり動く。
丸みを大きく掴まれてむにゅって揉まれて、割れ目を広げるみたいにして指を後ろから差し込まれて、
「あぁっ。やっ、っひ、広げちゃ、ゃあ」
「やーっぱいーよなぁミニスカ。いーよなぁ、濡れ濡れの太腿にガーターベルト。なぁーんかあれだわ、見てるだけでしゃぶりつきたくなるっつーかぁ」
「んちゃ、ぎっ、っひぁ、〜〜んぅ、っあ、ゃんっ、ぁあん」
「かっわいー声ぇ。な、もっと声出して。さっきみてーによー、ご主人さまぁ、って呼んでみな」
「っあ、ゃだ、も、ゃあぁ・・・っ」
「呼んで。なぁ、さっきは上手に呼べただろ。呼んでくんねーと腕解いてやんねーけど、いーの」
「ぁっっ、だめえ、ゃだっ、なか、いれちゃ、だめえぇっ、あぁ・・・っ!」
割れ目にぬるりと滑り込んできた熱は浅いところを舐め回しながら蛇みたいにうにゅうにゅ動いて、弱いところを責めてくる。
何度も何度も腰が跳ねる。背中が痺れて反り上がって、とてもじっとしていられない。
お布団の山からあと少しで転げ落ちそうになったところで、銀ちゃんはようやく太腿を離して。
「・・・なぁ、もう我慢できねーんだけど。そろそろいーだろメイドさん。ご主人さまのお願い、きいてくれるよな・・・?」
濃い影で染まった表情が口端を緩めて、ぐったり放心してるあたしに誘いかけるように微笑する。
とろりと濡れてかすかに光ってた口端を、大きくて指が長い手がごしっと拭う。
部屋は暗いし、涙目になった視界はぼんやり潤んだまま。それでも、うっすら光る銀ちゃんの髪や身体の輪郭はくっきり映る。
あたしの倍は太い腕や、引き締まった胸やおなかも、しっかり目に飛び込んでくる。
――いつもなら、ここで必ず目を逸らすのに。
きもちよすぎておかしくなっちゃうくらいに弄られたせいで、頭がぼうっとしてるのかな。
逞しい上半身がすっかり露わになった姿に、あたしは焦点が合ってない目でぼんやり見惚れた。
銀ちゃんを何度も受け止めたせいでせつない疼きが止まらないお腹の底から、はぁ、はぁ、って熱い呼吸が上がってくる。
渇いた喉からこみ上げてくる乱れた息遣いを押し殺しながら、溜め息みたいな細い声で尋ねた。
「・・・できたら、解いてくれる・・・?」
「解く解く。すーぐ解いてやるって」
薄暗い中でぼうっと光る髪は、汗に濡れた目元を隠してる。
その向こうからあたしをじいっと見つめてくる眼差しは、ぞくぞくしちゃうくらい熱っぽい。
腰のくびれを強く掴まれたら、それだけで身体がしなって震えてしまった。
そのままぐいっと抱き上げられて、膝を立てて座り直した銀ちゃんの上から、腰を跨ぐ格好で下ろされる。
ついさっき、びくびく震えて達したはずの銀ちゃんなのに、くちゅ、って押し上げてきた先端はすっかり硬さを取り戻してる。
――銀ちゃん、あんなに――あたしのお腹いっぱいに出したのに・・・嘘みたい。さっきと同じくらい張りつめてる。
押しつけられるだけで判るこの硬さが、銀ちゃんがあたしを欲しがってくれてる証拠なのかな。
そう感じたらどきどきして、恥ずかしくて。でも――こんなに欲しがってもらえるんだって思ったら、身体中の血が熱くなった。
くちゅ、ぐちゅ、って押し上げられるたびに声が出る。押されたそこからとろとろと何かが蕩け落ちて、銀ちゃんの先から根元までを白く濡らす。
銀ちゃんに呑み込まされた白濁の残りだ。焦らされ続けてる腰の奥から、甘いもどかしさが這い上ってくる。ぶるっ、って大きく身体が波打って――
「ん・・・ぁあ・・・っっ」
「ー。ほら、やって見せてくんね。自分で奥まで挿れてみな」
「んっ・・・でもぉ・・・ぁあ、んっ」
「んぁー、まぁ俺が動いてもいーんだけど、向こうで調子に乗って腰振り過ぎちまったからよー。さすがに痛てーんだわ、脚」
苦笑いしながらつぶやく声には辛そうなかんじが滲んでて、眉をきつめに寄せた顔は、笑ってるけどしんどそう。
それでも背中に回された力強い腕は、膝立ちになってるあたしの身体が倒れないようにしっかり支えてくれてる。
くちゅ、ぐちゅ、っていたずらに腰を揺らして押しつけてくる銀ちゃんの熱さを身体の中心で感じながら、あたしはとろんとした表情で銀ちゃんを見つめる。
はぁ、はぁ、ってせつない呼吸を繰り返しながら口を開いた。
「ぎん、ちゃ・・・」
「ん。何」
「・・・あの・・・ね・・・・・・ど・・・したら・・・んちゃ・・・きもち、ぃ・・・の・・・?」
「・・・・・・へ?」
呆けた声でつぶやいた銀ちゃんが、頭の中が真っ白になるくらいびっくりした人みたいにぽかーんとした顔になる。
かと思ったらその顔が少しずつ強張っていって、じいーっと、じとーっと、あたしの身体の奥まで見透かしそうな遠慮がない目つきで見つめられた。
・・・変なの。銀ちゃんて、たまによくわかんない。そこまで驚くようなことなんて言ってないのに。
「え、どしたの。どーしちまったのこの子」ってかんじで唖然と眺められるのがすごーく不思議で、首を傾げて見つめ返した。
「・・・銀ちゃ・・・へんな顔ぉ。ど・・・して、おどろく、のぉ・・・?」
「・・・・・・へ?いや、だーかーらー、どーしてってお前ぇ・・・」
目の前の事態がまだ信じられません、ってかんじの呆けきった顔のまま、しどろもどろに銀ちゃんは口を開いた。
めずらしく見開いた目に疑問を浮かべてあたしをしげしげと眺め回しながら、
「いや、いやいやいや驚くだろ驚くって。お前の口からそーいう積極的な台詞聞くの初めてなんだけど」
「――って・・・。ぎんちゃ、・・・けが、ぁたしのせいで、したの・・・に。
ぃたく・・・ても、・・・たし、・・・なにも、して、あげられな・・・っ。・・・から。だから、きょう、は・・・っ」
(あたしが、してあげる。)
くったりと分厚い胸にもたれて、呂律が回らない口でぽつりとささやく。白っぽく光る癖っ毛がふわふわ掛かってる耳元に唇を押し付ける。
吐息混じりに「ねえ、銀ちゃん」って呼びかけたら、銀ちゃんの腰はなぜかびくりと大きめに動いた。
いきなりだったその動きでぐちゅりと擦られて、押し上げられたあたしの入口がきゅうって縮んで腰がくねる。
ぁあん、って鼻にかかった甘え声が耳に押しつけた唇から漏れ出て、はぁ、はぁって息が弾む。
――まだちょっとしか入ってないのに。全身がふわふわして火照りきってて、びくびく疼いてるお腹の奥が灼けそうに熱い。熱すぎて何も考えられなくなりそう。
「・・・ね、だから。・・・・・・どしたら・・・い・・か、銀ちゃ・・・おしえて・・・?」
伝えたいことがもっと、たくさん、胸の中に溢れ返るくらいにたくさんあってもどかしいのに、身体が疼いて苦しくって、口にできたのはそれだけだった。
瞼が重たげな目が表情を変えて、何か言いたげに口が開く。じいっとあたしを見つめた銀ちゃんは、何か言いたげな顔のまま黙り込んで、
――それから、ふっと目尻を緩ませた。
にんまり口端を上げて笑う顔は、どこかくすぐったそうで、でも、楽しそうで。
すっと伸びてきた手が、顎の下の感じやすくてやわらかいところに触れてくる。
まるで遊びたい盛りの子猫に構うみたいに、指先で弄ぶみたいにして撫でながら、
「やりてーよーにやってみな。が何してくれても、俺ぁ嬉しいだけだから」
「・・・・・・うれしぃ・・・の・・・?」
「そらぁ嬉しいって。マジで嬉しいって。男の裸見ただけで真っ赤になっちまうおぼこい子が、俺のために自分からしてくれんだぜ。それで嬉しくならねー男なんていねーだろ」
「そ・・・なの・・・ぉ?」
「そーそー、そーいうもんなの。バカで単純な生き物だからよー、男ってのは」
こつん、って汗で滑るおでこをくっつけられる。
迫ってきた顔に素早く唇を重ねられて、息遣いが弾んでる呼吸ごと呑み込まれた。
すうっと顎下から耳までを撫で上げた手に、濡れて冷たくなったほっぺたを包まれる。
よしよし、って小さい子をあやすみたいになでなでしてくる手のひらはあったかくて、胸がきゅんとして熱くなった。
――やっぱりお子ちゃまなのかな、あたしって。こうやって撫でられてると、目の奥がじわぁっと潤んでくる。
ちょっと泣きたいくらいにしあわせな気分になっちゃうよ――
「・・・んじゃ、やってみて。さっき俺がやった通りでいーからよー」
「っ・・・ぅ、ん・・・っ」
掴まれた腰を前後左右に動かされて、下から押し上げてくる銀ちゃんの先でぐちゅぐちゅ擦られる。
割れ目を押し上げてくる杭の先は燃えそうに熱い。もどかしそうにびくびくしてる。
早く奥まで入らせろ、って責めるみたいに繰り返されたらあたしはなんだか怯んでしまって、下げかけた腰をあわてて浮かせてしまった。
「ちゃーん、固くなりすぎ。身体がっちがちじゃん。大丈夫だって、怖くねーから腰下げて」
「ぅう・・・だってぇ・・・」
「んだよ、そこまで怖ぇーの。・・・んぁー、まぁ初心者だもんな、しゃーねーか。じゃあ挿れる前に馴らしてやるわ」
「っっ・・・!っは、ぁ・・・っ、ゃあ、ふあぁ・・・ん」
大きく張り出した先端から、筋が浮くくらいに張りつめた逞しいものの根元までに沿って、蕩けた割れ目を何度も何度も擦り上げられた。
ああ、これって――電話の後で机に押しつけられたときの、あれと同じだ。
擦り上げられてるところは苛められてもただ喜ぶだけで、銀ちゃんの先を引っかけられて乱暴な刺激を与えられるたびに熱を上げて蜜をこぼす。
腰を引いて逃げようとしたけど、腰骨に指が食い込むくらいにがっちり抱かれて、じゅぶ、じゅぶ、って泡立った音を立てて往復されたら、
膝立ちになった脚が崩れそうなくらいきもちよくって――
「〜〜ゃぁっ、うご、ちゃ、ゃらぁっ、ぃっっ、いっちゃ・・・・・っっあ・・・!」
――あたしがするって、言ったのに。
何もかも忘れて夢中になってるみたいに銀ちゃんは腰を揺らし続けて、奥に隠れたやわらかい芽が潰れちゃうくらいに擦り上げてくる。
結局あたしは何もできずによがるだけで、あぁっ、って啼いたら背筋が反って、ぎゅっと瞑った瞼の端から涙が流れて頬を濡らす。
電流みたいなせつなさと快感が、頭の天辺まで突き抜けていった。
苦しそうに眉を寄せて動きを止めた銀ちゃんが、はーっ、って辛そうなため息を吐いて、
「・・・だーめだって、ご主人さまより早くイっちまったらよー」
まだご奉仕の途中だろぉ、いけないメイドさん。
熱に浮かされたみたいな目つきでぼうっとあたしを眺めてから、顎に指を掛けてくいって上げて、
「失敗したから後でお仕置きな」
「ふぇ・・・ってぇ、らって、銀ちゃん、がっっ・・・」
「銀ちゃんじゃねーだろ。ほら、言ってみな。今日は何て呼ぶんだっけ」
耳元に吐息を吹きかけながら、甘い声音で詰め寄られた。震える首筋に跡が残りそうな強さで、ちぅっ、って肌を絞るみたいに吸いつかれる。
何かをお腹の奥で我慢してるような押し殺した声の響きが、銀ちゃんがあたしをすごく欲しがってるんだって教えてくれる。
でも・・・・・・どうしよう。目元に何度も唇を落としてくる銀ちゃんとおずおずと視線を合わせて、またためらって視線を外して、
「それ・・・やぁ。ど、しても、ぃわなきゃ・・・だめ・・・?」
「そ。どーしても、な。言ってくんねーと許してやんねー」
「はぅ・・・んっ」
ちく、って歯を立てて甘噛みしてくる銀ちゃんの唇に、「なぁ、言えって」って低くて艶めいた声で迫られる。
それでも泣きそうな顔で黙ってたら、銀ちゃんの眉がへなぁっと下がって、あーあー、って呆れたような笑みで表情を崩す。
「そこまで恥ずかしがるこたぁねーだろぉ」とか「今日だけだから」とか、打って変わった猫撫で声で宥められた。
でも・・・・・・それでも口が動かない。もじもじしちゃう。どうしてもためらっちゃう。
――わかってるよ、あたしだって。
えっちな経験が少ないせいでいつもお子ちゃま扱いされてるあたしだけど、そんなお子ちゃまでもこのくらいはわかるよ。
こんなの、子供のおままごとと同じ。ただのごっこ遊びなんだって。
「ご主人さま」って呼ぶように強要されるのも、メイド服を着せられたのも同じ。どれもお遊びなんだってわかってる。
けど、何度言わされても恥ずかしいものは恥ずかしいし――・・・・・・これってあたしの考えすぎ、なのかな。
ある意味、裸を見られるよりも恥ずかしいことさせられてるような気がするんだけど――
「――呼んで。なぁ。」
「っ・・・!」
考え込んでぼうっとしてたら、汗で湿った銀ちゃんの手に耳を掴まれる。
一瞬で舌を耳穴に差し込まれる。ぐちゅぐちゅ、ぴちゃぴちゃ、って音を立てて舐められた。
舌の熱さにも、頭を埋めるいやらしい水音にも感じちゃって、腰の震えが止まらなくなる。
そこへ追い打ちをかけようとするみたいに、「、呼んで」って甘ったるくて物欲しげな声を吐息といっしょに注がれる。
焦らされてばかりで収縮しきったあたしの中が、早く欲しいってびくびく波打ち始める。
火照りきった頭の中から理性が消えて、涙で濡れた視界がうっすら白みはじめて、下から突き上げてくる熱に、ぐちゅ、って深めに割り込まれて――
「ぁあん・・・!ゃらぁ、これぇ・・・っ」
「――なぁ、呼んで。余計な力抜いて、頭空っぽにして、俺の言う通りにしてみろよ。うんときもちよくしてやるから」
「っあ、あ、ああぁ・・・・・・・・・・・・・ごしゅじ・・・さま・・・あぁ」
――あぁ。言っちゃった。
口に出した傍から、すごく大切なものを失くしちゃったような、取り返しがつかないことをしちゃった後のような、どうしようもない虚脱感と喪失感に襲われる。
それと一緒に、どうしてなのかよくわからない、頭の芯まで蕩かすような甘い気持ちよさも襲ってきた。目の前にくらくらめまいが走る。
・・・どうして言っちゃったんだろう。恥ずかしいこと口走ってるってわかってるのに、じゅぶ、って深めに押し込まれたらもうそれだけで降参しちゃった。
逆らえなかった。あとは顔から火が出てもおかしくないくらい淫らな声が、立て続けに口から漏れてくるだけで――
「ん。じゃあ次な。そのまま腰下ろして――挿れてみな。自分で」
「あんっ、で、もぉ・・・っ、ぎ、ちゃあ・・・」
「おいおいィ、銀ちゃんじゃねーだろ。今日は何て呼ぶのメイドさん」
「ああんっ。〜〜めっ、だめぇ、ぐちゅぐちゅ、しちゃ、やあぁん、ごしゅじん・・・さまぁ・・・!」
呼んで、って迫られるたびに、馴らされた身体は銀ちゃんに応えたがってぶるりと震える。
濡れた音を上げながら滾った熱を擦りつけられて、あたしの身体は抵抗なんて忘れていく。
恥ずかしくっておかしくなっちゃいそうなのに、身体はちっとも嫌がってない。
頑丈さも硬さも自分とは全然違うごつごつした腰の上でもどかしく揺らされるうちに、灼けた鉄の塊みたいに熱い銀ちゃんに蕩かされて、いつしか唇が勝手に動いて。
耳を塞ぎたくなるくらいに淫らな声で、うわごとみたいに呼び続けてた――
「――っああ・・・ごしゅじ・・・さまぁ。ぁん、あぁっ、ご主人、さまぁあっ」
「ん。。・・・なぁ、いい子だから腰下ろせって。もう先っぽ咥え込んでんだろ。もっときもちよくなりてーだろ。なぁ――・・・」
「っぅ、う・・・ん・・・・・っ」
息が上がって乱れる呼吸を唇を噛んでこらえながら、震える下半身に力を籠める。
たどたどしく、少しずつ、小刻みに、銀ちゃんの大きさに怯えながらゆっくり腰を下ろしていった。っっ、って銀ちゃんが息を詰める。
あたしを見上げて苦しそうに眉を下げて笑うと、繋がったところに視線を戻す。
濡れそぼったそこを指先でゆるゆる撫でながら、表情が強張り気味だった顔を嬉しそうにふっと緩めた
「・・・やらしい身体になったよなぁ。最初は挿れるだけで一苦労だったのによー、今は咥えただけでとろっとろ溢れさせちまうし」
「ふぇえ、やだぁ、触っちゃ、ゃらぁ、見な、でぇ・・・っ」
「素直じゃねーなぁうちのメイドさんはぁ。ほんとは俺に見られたほうが感じるくせにー」
「ちが・・・ちがぅも・・・そんな、あたし、そんな・・・っああ、ぅ」
じわ、じわ、って中の襞を広げながら銀ちゃんが小刻みに押し上げてくる。
銀ちゃんの大きさや熱を感じた狭い入口はびくびく疼きながら広がっていって、腰の震えが止まらない。
あたし、ほんとにしてるんだ。こんな、自分から銀ちゃんを挿れようとしてるなんて――
ずちゅ、って泡立った音を鳴らして銀ちゃんが入ってくるたびに、恥ずかしくって死にたくなる。
上を向いてそそり立ったものはすごく長くて猛々しく見えるし、あたしの入口をぎちぎちに埋めた先端はすごく大きい。
無理だよ、こんなの入らない。見てるだけで泣きたくなる。
だけど入口をぐちゅぐちゅされたせいで中はたっぷり潤んでるから、大きく張り出した先をやっとの思いで呑み込ませれば、
後はびっくりするくらいなめらかに、ずぶずぶと突き進んでいった。ひぃん、って弱い声で泣いた唇がぶるぶる震えて、
「ぁあっ、っっは、〜〜は、いっちゃ、あぁ・・・・・・!」
「――奥まで、沈めて。俺のが全部入るまで――」
「ぁああ――・・・っ!」
最後にずん、って奥を突かれる。
突かれた瞬間に背中がぶるって跳ね返って胸が揺れて、頭の芯まで迸ってくるような熱い快感で全身が満たされてく。
与えられた衝撃と中を埋めた銀ちゃんの早い脈を感じて、なんだかすごく嬉しくなる。きゅうぅ、って喜んで締めつけてるのが自分でもわかる。
――どうしよう。思ったよりもずっと、ずっときもちいい。でも、挿れられただけでこんなになっちゃうなんて。
おかしいくらい感じちゃう自分が、どうしようもなく恥ずかしい。どうしてこんなに感じちゃうんだろう――
「これでも十分きもちいーけどー。・・・な。もっときもちよくなりてーだろ」
「〜〜ぁあっ!」
少しだけ腰を持ち上げられる。
途中まで引き抜かれて悲鳴を上げたら、硬く張った先で擦り上げるみたいにして弱いところを狙われた。
「このへんな。が弱ぇーとこ」
低めた声でそう言って、ぐちゅ、ぐちゅ、ってその場所を教え込むみたいに何度か擦ってから、銀ちゃんはあたしを揺らす動きを止める。
「な。わかった?でよー、ここのー・・・」
押さえ気味な色っぽい声を耳に注がれて、ぐぐ、って深めに割り込むみたいに柔らかくて感じやすいところに押しつけられる。
どこにも逃げられなくて銀ちゃんを受け止めるしかないあたしの腰は、強すぎる快楽にぶるぶると悶えて蜜を零した。
濁った白と透明さが混じり合ったそれが銀ちゃんの腰までとろとろ流れて、「うわ、えっろ・・・」って息苦しそうに銀ちゃんはつぶやく。
他の誰も触れたことがないやわらかい中の、特に奥まってる敏感なところ。そこに狙いをつけて、ずっ、ずっ、って小刻みに擦られる。
張り出した先で押し込むように刺激されたら全身が痺れ上がって、背筋が弓なりに反り上がって、
「〜〜〜ぁあ・・・っ!」
「ここだろ、ここ。ここにぐちゅぐちゅされっと啼いて喜ぶもんなぁ、うちのメイドさんは。な、わかった?ここに当たるよーに動かしてみな」
「ぅごく・・・て・・・・・・・そ・・・な、ゎ・・・わかんなぁ・・・っ」
「やってるうちに判るって。な、やって。どう弄ると良くなるか教えてやっから」
上手にヤれたらご褒美やるから。
甘い声で言い聞かせるみたいにささやかれて、あたしはすぐに降参した。
うん、って力無く頷いて、痺れきってる腰を泣きながら上げて、おそるおそる下ろしてを繰り返す。
銀ちゃんがちょっと身じろぎするだけで、あん、ぁあんっ、って声が跳ねる。いちばん深い奥まで届くと、突かれたそこがずくんって疼く。
銀ちゃんにされるよりもうんと鈍くて弱い感覚しか上がってこないのに、なんだかすごく感じてしまう。
自分から腰を振ってるって思うと――今までしたことがない、すごくはしたないことしてるって思うと、ほんのちょっとの刺激にも感じちゃって涙が出る。
こんなに気持ちよくなっちゃうなんて、――どうしよう。これだけでおかしくなっちゃいそう――
「――あぁ、そぅ、腰回して。・・・そーそー、上手いじゃん。一番奥に先っぽ当たってんだろ。当てたまんま回してみな」
「ぁあ、あっ、あっ、ぁんっ、ぁあんっ・・・」
「そろそろイきそーじゃね。なぁ、さっきみてーなごほうび欲しいだろ。メイドさん、何て頼むんだっけ」
「っああぁっ・・・・・・・・・ほ・・・し・・・・・・で・・・すぅ・・・ごしゅじ、さまぁあっ」
「ほら言えたじゃん。っだよ、泣くなって。んな顔されっともーっとイジメたくなっちまうから」
ちゅ、ちゅ、って汗で湿ったおでこや涙ぐんだ目元を愛おしそうに啄んでから、銀ちゃんは縛られてる腕のほうへ手を這わせてきた。
あたしが熱い肩に顔を押しつけて啜り泣いてる間に、しゅる、って滑るような音が鳴って、
「――はい、腕解いたぁ。な、これでいい」
「ぅ・・・んっ」
「なぁー。自分で動いて、自分でイって。出来るよな。銀さんの上で可愛い声で啼きながらイッちまうとこ、見せてくれるよな・・・?」
おかしそうな笑みを含んだ、蕩けそうに熱い声で迫られた。
後ろ手に拘束されてた腕がはらりと解ける。それと同時で、窮屈だった肩や背中も自由な動きを取り戻す。
やっと自由になった腕は、リボンで縛られていたところがひりひりした。だけど、そんなこと気にしてるような余裕はもう残ってない。
痛みには構わずに、両腕で銀ちゃんの首にひしっと抱きつく。
胸もお腹もぎゅっと思いきり押し付けて、しっとり濡れたお互いの肌が吸いつくくらいにくっついた。
隙間なく重なり合ってる身体の熱さや、お腹を奥まで埋め尽くしてるものの震えや心臓の動きまで伝わってくる。
――嬉しい。やっと自分から腕を伸ばして、だいすきな人と抱きしめ合えることが――これ以上ないくらいに銀ちゃんを感じられることが、すごく嬉しい。
自然と微笑んだ唇から、はぁ・・・っ、ってうっとりした溜め息がこぼれおちた。
「・・・・・めぇ、んちゃ、は、っもぅ、うごいちゃ、だめぇ・・・っっ」
へ、って意外そうに目を見張った銀ちゃんを見つめたまま、はーっ、って深めに息をつく。唇を強く噛みしめる。
泣きじゃくりたいのを我慢して顔を歪めながら、あたしは慎重に、でも出来るだけ早く、震える膝に力を入れて腰を上げていった――
「――っあ・・・!」
甲高くて鼻にかかった嬌声と、じゅぷっ、っと勢いづいた音が暗い部屋に同時に広がる。
っっ、って眉をしかめた銀ちゃんが、声にならない声で呻く。
甘い喪失感と動きを止めてしまいそうになる気持ちよさを我慢しながら、勢いよく腰を下ろす。
じゅぶ、じゅぷ、って淫猥な音を部屋中に響かせながら、同じことを夢中で何度も繰り返す。
銀ちゃんが入ってる狭い中でずぶずぶと濁った水音を上げながら、硬く反り返った銀ちゃんに擦りつけるみたいに、上下に腰を動かし続けて――
「あ、ぁあ、あん、ぎんちゃあっ、あぁっっ、〜〜・・・っ!」
「――っ、く、・・・ははっ、すっげぇ、どこまで締めつけてくんだよ。なぁ、もしかしてよー、自分から挿れたから?
やらしーことして興奮しちまった・・・?」
「ってぇ、だってぇ、〜〜〜ああっ、やぁん、きちゃうぅ、んちゃ、もぅ、い・・・ちゃぅう・・・っ!」
「ん。イッて。このままイけよ」
「〜〜〜ゃ。やらぁ・・・だめぇ・・・・・・・っ。だめなのぉ・・・っ」
はぁ、はぁ、って苦しい呼吸で泣き喘ぎながら、汗が滴る熱い首筋にしがみつく。
支えてくれてる銀ちゃんにぎゅうっと身体を押しつけて、腰をぶるぶる震わせる。
意識をぜんぶ持っていかれそうな気持ちよさをやり過ごそうと、必死で、ぽろぽろ涙をこぼしながら耐えきって、
「らって・・・・・・・・ご奉仕、らもん・・・・・ごほ・・・し・・・するの。あたしが、銀ちゃ、を、・・・きもちよく、してあげ・・・の」
お腹をみっちり埋めてる銀ちゃんの熱がくるしくて、くるしいのと同じくらいきもちいい。
渇ききった喉が干からびて声が掠れる。頭の芯がぼうっと霞む。熱い。熱すぎて何もまともに考えられない。
ひっく、ひっく、って嗚咽が奥からこみ上げてくる。
「・・・・から、・・・・・・っと、ぉしえて・・・?ご主人さまぁ・・・・」
――あたし、どうしてこんなに泣きじゃくってるんだろ。どうしてこんな恥ずかしいこと口にしてるんだろ。
お酒なんて一滴も入ってないのに、気がついたら、まるで酔っちゃってるみたいな呂律の回らなさでつぶやいてた。
動きを止めた銀ちゃんの肌に、つうっ、って汗がひとしずく流れていく。
目の前を過ぎていく透明なしずくを無意識に目が追って、あたしは何も考えずにそれを舌先でぴちゃりと撫でた。
すると、身体を支えてくれてる腕になぜか力が籠る。ぎゅ―――っ、って息苦しくなるくらい抱きしめられて。
「・・・あーあーあー・・・っっだよそれぇ・・・」
「・・・・・っ・・・?」
どうしたんだろ、銀ちゃんがびくりともしなくなった。まるで急に全身が固まっちゃったみたいに――
「・・・ど、したの・・・・・・?ぎ・・・ちゃあ・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・ね、おしぇ、て・・・・・・どしたら・・・い・・・のぉ・・・?ご主人、さまぁ・・・っ」
「・・・・・・ったく、何なの。っだよこのかわいー生き物。どーしたらもこーしたらもねーよ。てか、どーすりゃいーんだか俺が教えてほしーくれーだっつーの・・・」
ちょっとぶきみなくらいに黙りこくってた銀ちゃんが、ぼそぼそぼそっと小声を漏らす。
抱きしめられてるあたしにも聞き取れないくらいの、低くてはっきりしないひとりごとみたいな声。
口調はなんだか動揺してるっていうか、ところどころ上擦ってる。
そのうちに、あたしの倍の太さはありそうな逞しい二の腕や肩がなぜかぶるぶる揺れ始める。がちっ、と肩を掴まえられて、
「ゃん、ぃたぁい、ぎんちゃぁ・・・」
「・・・・・・や、アレな。一応訊くけどぉ・・・自分がどんだけ危ねーおねだりしたか、わかってんのちゃん」
「あぶな・・・ってぇ・・・?」
「・・・そのとろ〜〜んとした声、わかってねえだろ。・・・・・・・・あ〜〜〜もう・・・・・ったく!
ちぇっ。っだよ。あーあー、銀さんをどんだけ夢中にさせる気だよ、お前よー」
「・・・・・・っっ!」
――銀ちゃんの胸板にむにっと押しつけてる膨らみの奥で、どきっと心臓が高鳴った。
荒い口調に舌打ちつきだったけど、そんなこと言われたらどきっとしちゃうよ。
とくとく心臓を弾ませながら銀ちゃんの表情を横から覗き見ようとしたら、銀ちゃんは顔を伏せてたあたしの首筋からぱっと離れる。
なぜかじとーっと、ものすごく恨めしげに睨まれてしまった。
いっそ殺気立ってるみたいに見えなくもないくらい切羽詰まった表情は、普段はだらしなく緩みきってる口元がとんでもなく不満そうに食い縛られてて――