「・・・銀ちゃ・・・・・・?」
「あと二回くれーで済ませてやろーと思ったけどー・・・・・・あーもぉやめやめ、やめたっっ。
こっから別ステージ突入な。銀さんガチで野生に還るから。一切我慢してやんねーから」
「っっぁ・・・!」
急に銀ちゃんが揺さぶりをかけてくる。
弱いところを捏ねられて、ぐっと突かれる。下半身が腰から爪先までが、電流を流されたみたいに痙攣を起こす。
ずるりと手荒く、先端が抜け出る寸前まで引き抜かれて、
「あぁんっっ!・・・あっ、めぇっ、ぁっ、ぁあっ、ぁあんっ、ぃっ、あぁぁああ・・・!」
銀ちゃんをきゅうっと絞ろうとしてるあたしの奥の、いちばん深くて感じちゃうところ。
触れられただけで全身が痺れ上がっちゃうそこを狙ってがつがつと、破ろうとするみたいな強さで突き上げられる。
突かれるたびに熱い飛沫がお腹まで飛び散る。
強すぎる衝撃で責められ続けたらわけがわからなくなってきて、汗で湿った癖っ毛の頭を夢中で抱きしめて髪を引っ張る。
やだ、壊れちゃう、って掠れた涙声で悲鳴を上げても、銀ちゃんは動きを止めてくれない。打ちつけてくる動きは激しくなるばかりで。
自然と反り上がって逃げようとする腰を指が食い込む強さで掴まれて、ぐっっ、って強引に下げて戻されて――
「――ひぅ・・・・〜〜っっっ!」
さっきまでよりも硬さが増した銀ちゃんの先に貫かれる。思いきり仰け反らせた喉の奥で呼吸が止まる。
爪先まで痺れさせる鈍い快感に、頭の芯まで埋め尽くされてる。
硬直して息が止まりかけたあたしががくりと背中を崩れさせてしなだれかかると、それを待っていたみたいに銀ちゃんは腰を上げる。
あたしを抱きかかえたままで、どさりとお布団の山に突っ伏した。
お布団がもこもこと折り重なってるだけのやわらかすぎて不安定な台座に、腰を上げかけた正座みたいな格好で座り直す。
んんっ、って喉を晒して仰け反って、汗が滲んだ分厚い肩を力が入らない手で押し返したけど――。
やだ。なにこれ。苦しいよ。
上着を脱いだ上半身と硬い太腿に挟まれて、身体を二つに折り曲げられてる。
窮屈で身動きも出来ない姿勢に息が詰まる。くるしくって大きく息を吸い込めば、お腹を埋め尽くした熱い杭がどくりと高く脈打った。
そのわずかな動きにも感じちゃったあたしの中は、きゅうぅぅっ、ってうねりながら銀ちゃんを欲しがって締めつける。
蜜がじゅわりと溢れ出て、火照ったそこをもっと熱く潤していって――
「んぅ・・・んっ、ぁ、めぇっ、ひ、ゃあ」
「ダメじゃねえだろ、こんだけ熱くてぐっちゅぐちゅなのに何がダメなんだよ。・・・ぁあもー、・・・っだよこれぇ。たまんねぇ・・・」
「〜〜〜ああぁんっ」
閉めきったた障子戸がうっすらと紅い夕陽を落とす暗い部屋の中に、ぐぶ、ずちゅ、って濁った音が響き続ける。
銀ちゃんの動きは止まらなくて、意識を奪われそうな衝撃の余韻に浸るような時間さえくれない。
快感の果てまで一気に追い詰めようとする激しい動きに浚われて、がくがくと腰を震わせる。
突かれるたびに身体が押し上げられていって、じきに頭が畳に落ちた。
「っっあ、ぎんっ、ちゃ、ぅごいちゃ、めぇぇ・・・っ」
「・・・ねーわ。アレはねーわ。あんあん啼いてよがって「ご主人さまぁ、教えてえぇ」とか何それヤバすぎんだろ」
「ゃ、あ、そんな、言ってな、っやぁんっ、っま、待っっ・・・!」
はぁっ、て荒々しい息を吐いた銀ちゃんに太腿を掴み上げられる。脚を両脇に抱え込まれて、
「言いましたぁ、銀さんしっかり聞きましたぁ。
・・・つーかあのよー、こんだけ強烈にムラっとさせられたらよー、・・・動かねぇとか、男は、無理、なんだって・・・っ」
「――っぁああ・・・・・・っっ!」
半分抜けかけてた銀ちゃんの先端が、勢いをつけて奥を抉る。
早くて乱暴な抜き挿しを、息もつけないくらいに繰り返される。そのたびに後ろ頭や背中が畳とこすれて、ずっ、ずっ、ずっ、て音が鳴る。
頭に血が昇っちゃいそうな姿勢にされたあたしは、がっしりした両腕で上下に大きく揺さぶられて、貪られ続けた。
じゅぶじゅぶと水音は鳴り続けて、漏れ出したしずくは肌を伝ってお腹やお尻をとろとろに濡らす。
ずん、ずんって狭まったところにぶつけられると、それだけで全身が痺れ上がる。宙に浮いた足先が何度も跳ねて、イっちゃうたびにぴんとしなって。
短く呻きながら腰を衝き動かす銀ちゃんが恍惚とした表情でぶつけてくる、どうしようもなく甘い快感に何度も震える。きもちよさが全身に広がっていく。
何もかも忘れたみたいな動きでずんずん突かれて濁った水音をこぼすそこから、天井を向いて跳ね上がった足の爪先までいっぱいにされて――
「っあっっ、〜〜らめぇっ、・・・っちゃうぅぅっ・・・ぁああ〜〜っ!」
「っっは、・・・・・ぁあ、やっべぇ、マジ気持ちいい・・・、――っ」
「ひ・・・・あぁん、・・・・・・っぎ・・・ぎんちゃあぁぁ・・・っ」
自分から出てるとは思えないくらいに甲高くて乱れきった泣き声と、どんどん荒くなっていく銀ちゃんの息遣いとが暗い部屋の中で重なり合う。
お互いの呼吸や動きに合せようとしてるみたいに混ざり合って、絡まり合って、弾んで、高まって、深まって、融け合ってひとつになっていく。
ああ、だめ、頭がおかしくなっちゃいそう。気持ちよすぎて変になっちゃう。涙でぼうっと滲んでる銀ちゃんの姿が、うっすら白みはじめてる――
「ゃあ・・・これ・・・だめ、だめぇえ・・・っ」
「・・・・・・。なぁ、見て」
「ぁ、っ、・・・・・・――っっ」
ほら、って顎をくいっと上げられる。そこがぼんやり目に映った瞬間、っっ、って顔中を真っ赤にして息を呑んだ。
銀ちゃんの腕で大きく開かされた脚の間。
充血して膨れ上がった大きなものが、じゅぶじゅぶと粘液を掻き出しながら蕩けきったそこを出入りしてる。
びっくりして声も出なくてただ唇を震わせているうちに、銀ちゃんの動きが徐々に変わる。ゆっくりと、浅めに中を掻き回されるようになった。
濡れた入口を広げるような動きに腰が跳ねる。狭まってる内側を先端で掻き混ぜるみたいにして捏ね回される。
抜き挿しされるごとにぐっしょり濡れていって、もうこれ以上何も入りそうにないくらいにみっちり埋められてて、いやらしく欲しがって喘いでる。
見ていられなくて顔を逸らそうとしたら、ほっぺたを押さえて戻された。銀ちゃん、見せつけたいんだ。あたしに、これを――
「なぁ。わかる。俺が抜こーとするとよー、もっとちょーだいって吸いついてくんだわ。・・・っとに可愛いよなぁ・・・」
「ぅう・・・やぁ。ゃだぁ・・・っ」
――見てるだけで泣きたくなっちゃう。顔から火が出ちゃいそうだ。銀ちゃんの目にもこれが見えてるって思うと、すごく、すごく恥ずかしい。
なのに、そのどうしようもない恥ずかしさはあたしの身体中を熱くさせて、さらに感じやすくさせてしまう。
恥ずかしさを感じれば感じるほど、銀ちゃんの熱で擦り上げられてるそこは収縮する。とろとろ蜜を溢れさせて悦んでしまう。
これだけでも意識が霞むくらいきもちよくなっちゃうのに、銀ちゃんは啄むだけの甘いキスを繰り返しながら何度も何度もつぶやいた。
「ん、・・・可愛い。、可愛い。もっと声聞かせて。なぁ、――」
せつなそうにもどかしそうに繰り返される「可愛い」がすごく嬉しい。荒い呼吸の合間に、って呼ばれるたびに、胸がきゅんとしてしまう。
溢れ返る嬉しさは血みたいに全身を巡っていって、あたしの身体はもっと銀ちゃんに従順になった。
ほんのちょっとした銀ちゃんの動きにも甲高い声が我慢できないくらいの快感を覚えて、びくびくと全身が跳ねる。
たまに気まぐれみたいにお腹の底をどっと突かれて、突かれるたびに鈍い快感に押し上げられる。そのたびに涙がぽろぽろこぼれる。
もう何もかも手放して泣きじゃくりたくなった。
――・・・・・・・でも。だめ。だめなのに。銀ちゃん、動いちゃ、だめなのに――
「〜〜〜・・・っやぁ、めぇ、はなし、てぇ」
「だーめー。だめですー。いいかんじにドS心をくすぐられたけどー、お前メイド失格。可愛いすぎて失格ー」
「だめぇ、うご、ちゃ、らめぇ・・・!あ、ぁたし、が、するの・・・っ」
「だめだって。がおねだりしてきたんじゃん。どーやったら俺がイクか教えてくれって、えっろいおねだり顔でよー。
・・・なぁ。知りてーんだろ、上手な男のイカせ方」
さんざん焦らしてくれたご褒美に、今からたっぷり教えてやるよ。
耳やうなじをぞくぞくさせる艶めいた声を、言い聞かせようとするみたいにゆっくりした口調で注がれる。
震えるあたしを薄目で眺めて、銀ちゃんはごくりと息を呑む。「…あーあー、やらしい顔しちまって…」ってつぶやいて、うっとりした表情で満足げに笑う。
笑った唇から赤い舌が伸びてきて、反り返ったあたしの首筋を舐める。
ぶるっ、って胸を震わせてあたしが小さく達したら、腰の動きはまた早く大きくなった。
がつ、がつっ、って早い動きで突き上げてくる銀ちゃんの顔から、大粒の汗が流れ落ちる。
突かれるたびに上下に弾むあたしの胸で、熱いしずくはぴちゃっと跳ねた。
ぽたぽた、ぽた、と続けて滴ったそれを肌に擦り込むみたいにして撫で回されて、めちゃくちゃに揉まれて、赤く染まった先に齧りつかれる。
ぐちゅ、じゅ、って唾液を絡めるみたいにして吸われて、「ん。うめぇ」って漏らした口の中で歯を立てられる。
お腹を奥まで埋められた状態で甘噛みされて、舌先に強く弾かれて、銀ちゃんを締めつけてる中がきゅんって縮む。
あぁん、って腰をしならせて身悶えしたら、
――腰の下で布団が崩れる。ぐらりと大きく身体が揺れて、中を埋め尽くしていた硬さがずるりと一気に抜けて、
「ひぁ――・・・・・・ぁああん!」
濡れた内壁を引きずられる感覚に悲鳴を上げた瞬間に、頭から畳に転がり落ちる。
何が起きたのかもわからないまま、あたしは冷たい畳にぐったり伏せた。
「・・・っあ・・・・・・・・・・はぁ・・っ、はぁ・・・っ・・・」
乱れきった呼吸が、心臓が高鳴ってる胸が苦しい。
うつぶせに落ちた全身が震えてる。脱力しきった手足の先まで、甘い快感が回っていく。
ものすごく疲れきってて、目を閉じたらすぐに眠っちゃいそうだ。
なのに、すぐに銀ちゃんの腕が追いかけてくる。
両腕で抱かれたお腹をぐいっと引き寄せられて、腰を後ろに突き出すようにして背後から抱かれた。
両側から太腿の内側のやわらかいところを掴まれて、左右に大きく割り広げられて、
「ふぁぁ・・・ゃあ・・・も・・・・・むりぃ・・・っ」
「んー、俺も止めるの無理」
「んっ、ぎっ、ゃあっっ」
「止めようにも止まんねーんだわ。・・・あーんなかわいーこと言われちまったら、我慢なんてできねぇって――」
脚を崩した正座みたいな格好で畳に座った銀ちゃんは、脚を大きく開かされたあたしをぐいっと腰から引き寄せる。
隠しようもなく広げられたところを張りつめた熱でずぶりと割って、ずんっっ、と奥まで突き立てた。
「・・・・〜〜〜〜っあぁああ・・・っ!」
衝撃の強さと質量の大きさに震え上がって、背中が弓なりに反り返る。目の前にぼんやり見えていたものすべてが、絶頂で真っ白に弾け散る。
全身を突き抜けた衝撃から抜け出せずにぶるぶる震えているうちに、汗の匂いが濃くなった重たい上半身に押し潰すみたいにして圧し掛かられる。
腿の上に乗せたあたしの背中に、肩やうなじや首筋に、銀ちゃんは何度も唇を落とす。
きつめに押しつけて鬱血した痕を残しながら、ぱんっ、ぱんって濡れた腰をぶつけてあたしを揺さぶる。
脚をうんと開かされた恰好で後ろから挿されてるから、突き上げられる深さがさっきよりも増してる。ずん、って先端で抉られるたびに息が止まる。
涙が溢れる。このままでいたらお腹が壊されちゃいそうだ。
ほっぺたを流れた涙が首を伝って、銀ちゃんの腿に押しつけてる胸までこぼれて染み込む。はぁっ、はぁっ、って荒い呼吸を繰り返しながら、抜き挿しは絶え間なく延々と続いて、どんどん激しく、乱暴になって――
「っく、ひっ・・・・・・おねが・・・やめてぇ、ごしゅじ、さまぁ・・・っ」
「だーめー。色っぺー声で泣いて頼んでもだめですー。メイドさんは銀さんのもんですー、今日は一晩中離しませんー」
「・・・・・っうぅ〜〜〜!」
冷たくて硬い畳目にずっ、ずっ、って顔や胸を擦られながら、あたしの身体は銀ちゃんの早すぎる律動に飲み込まれていく。
全身が快感に犯されてびくびく震えて強張って、呼吸も満足にできなくなる。
もう泣きじゃくる余裕すら奪われてしまった。どのくらいの間、そうしていたんだろう。
すごく長くも思えたし、ほんの短い時間だった気もする。
熱い杭で貫かれるごとに頭の中までぐちゃぐちゃに押し混ぜられていくようで、時間も場所もわからなくなる。
自分が何をしているのかさえわからなくなって、短い悲鳴みたいな喘ぎ声を上げながらずぶずぶと突かれるだけになった。
ただ、高温に炙られた鉄みたいな滾った熱を身体の奥底で感じさせられるだけ。他のことは何ひとつ感じられなくなる。
銀ちゃんを感じること以外、何も出来なくなる。
無意識に何かに縋ろうとしていつのまにか宙に伸ばしてた指の爪先まで、銀ちゃんに支配されて服従させられていく――
「っひ、ぅ、んっ、んんっ、ぁんっ、・・・ちゃ・・・んっ、もぅ、らめぇ、ぎん、ちゃあん・・・!」
――突き上げられ続ける苦しさはじきに快楽に塗り替えられて、あたしは蕩けきった甘え声で銀ちゃんを呼んだ。
その声に反応したのか、銀ちゃんの動きが急に止まる。っっっ、って唸って、限界まで滾ったものを最奥までずんっと押し込む。
いやらしく収縮を繰り返してたあたしの中は、痙攣したみたいにぎゅうぅっと銀ちゃんを絞り上げた。
余裕を失くした喘ぎ声に「っ」って呼ばれて、左右からお腹に腕を回されて。
銀ちゃんの匂いと汗と熱に包まれたら、むせかえりそうなくらいのしあわせと心地良さが胸をいっぱいにする。
繋がったところに長い指が伸びてきて、蕩けたそこに指先を潜らせてやわらかく掻き分けていく。
芯を持って膨れ上がったちいさな芽をゆっくり撫でて、くちゅくちゅと捏ねる。
銀ちゃんを咥えてる狭い中が待ち焦がれてた刺激を喜んで、背筋の震えがもう止まらない。
知らないうちにあたしは銀ちゃんに腰を押しつけて、もっと、って自分からおねだりするみたいに揺らしてた。
畳に涙を擦りつけてうわずった声を振り撒いて、じゅぶ、じゅぶ、って部屋中に響く音と水飛沫を散らしながらあたしを貪る銀ちゃんの激しさに酔い痴れる。
きもちよすぎて我を忘れて「もっとぉ」なんて腰をくねらせながらおねだりしたら、腰を強引に持ち上げられて、がつがつとめちゃくちゃにぶつけて荒らされるようになった。
「んんぅ、っっや、ゃらぁ、ぎっ、銀ちゃぁ、はげし・・・っ!」
「・・・あぁ、まーた溢れてきたし。なぁこれ、そんなに好きなの。後ろからヤると乱れっぷりが違うよなぁ、お前」
「〜〜〜って・・・ちゃ、の、いっぱ・・・いっぱい、当たっ・・・!ああ、も、だめぇっ」
「ダメですー、まだ始めたばっかだろ。淫乱メイドさんが感じすぎておかしくなっちゃうとこ、もっと見せて」
張りつめた先端が感じちゃうところを行き来して、快感にうねる内壁を乱暴に抉る。
繋がってるところや奥に隠れた芽も、気遣いを失くした荒い指の動きにぐちゅぐちゅ嬲られて弄ばれる。
そこから全身に回っていく痺れは深すぎて強すぎて、なのに甘くてきもちよくって。
身体中の力が抜けていく。銀ちゃんの目の前ではしたなく開かされたお尻や太腿の裏側に、熱い蜜がとろとろと伝う。
そのうちに背筋に力が入らなくなって、上半身が畳にぐったり崩れ落ちる。
ただ銀ちゃんの動きに揺さぶられて腰をがくがく震わせるだけになって、何度も何度も泣きじゃくりながら達してしまった。
「っう・・・っく、っっく、ふぇぇ・・・ぁあっ、・・・ぃっ、ぁあんっ、ぁああ・・・!」
「・・・・・・。なぁ、きもちいい。もっとイきてーだろ・・?」
「っっあ、ん、あぁん、・・・・・・・・・もち、ぃ・・・っ、ぎ、ちゃあ・・・っ」
「――ん。俺も。なぁ、メイドさん、ご褒美やるから全部飲んで――」
「っん・・・!」
ぎゅううっ、って背骨が折れちゃいそうな強さで抱きしめられて、じゅぶっっ、って粘った音を立てて大きく引き抜かれる。
すぐに戻ってきた先端に、お腹を突き破りそうな強さで貫かれて――
「〜〜っっぎっ、ちゃぁあ・・・!あっっ、ああぁっ」
「――っ。・・・出る、、・・・・・イく、っっ」
「っっぁああ〜〜・・・・・・っ!!」
ずんっ、と鈍い衝撃が広がると、絶頂は突然襲ってきた。
何の意志もない人形みたいに揺らされていたあたしの身体は、頭がおかしくなりそうなきもちよさと衝撃に逆らうこともできずにただ銀ちゃんに犯される。
力なくぶるぶると打ち震える。
もうこれ以上入れたら壊れちゃう、ってくらいに先端をぎゅうぎゅう捻じ込むと、銀ちゃんはどくんって跳ね上がって熱を放った。
一瞬で爆ぜた熱は、どくどくどく、って絶頂に痺れきってるお腹まで一瞬で流れ込んできて――
「っっう、く――ぁ・・・・っ」
「あ、ぎっ、ちゃ・・・っ。・・・ぁ、あ、あぁ、ぁ、やぁ、まだ、っ・・・・・・・・っ」
机の上で抱かれたときよりも長く激しく注がれて、お腹の奥までじんわり感じる流れの熱さにくらくらした。
狭い中を熱と快感でいっぱいに満たしながら、びくびくって震わせながら、銀ちゃんが後ろからぎゅうっと抱きしめてくる。
、ってよびかけてくれる熱い声に耳を埋められる。
労わろうとしてるんだって判るやわらかい手つきで身体中に触れられて、顔を寄せられて頬ずりされる。
髪がぐしゃぐしゃに乱れた頭を、何度も愛おしげに撫でられた。
やさしい手つきで触れられたせいで緊張が一気に緩んじゃって、急に眠気が襲ってくる。とろんと瞼を閉じかけたら――
「――なぁ、わかる、。お前のナカ、俺に吸いついて離れなくなってんだろ」
「・・・ぅ・・・ん・・・・・・?」
「これな。これ。やーらけーのにきゅうぅぅっていっしょけんめい締めつけてくれて、熱くってとろっとろで、・・・・・・ほんっと、マジで、最高。
・・・・・・・・・・や、つーかよー。あれな。あれだわ、・・・後でキモいとか言われそーだけどー・・・」
(・・・こーしてると、がぜーんぶ俺のもんになったって気がすんだわ。)
甘いのにどこか照れ臭そうな声を、まるで内緒話でもするみたいにうなじにぼそぼそっと押しつけられる。
ぞくぞくって背筋が震える。嬉しくって、嬉しすぎて、涙がほろっとこぼれおちた。
えっちの最中にいじめられたり、やらしい言葉でからかわれたりはしょっちゅうあるけど、
・・・・・・こういうこと言われたのって・・・・・・・はじめて、じゃないのかな。
胸の中がじーんと熱くなってくる。お腹に回された大きな手に自分の手を重ね合わせて、きゅっと握る。うん、って小さく頷いた。
――うるさいくらいにぺらぺらと、人一倍よく回る口があるくせに、大事なことに限ってぜんぜん口にしてくれない天の邪鬼な銀ちゃん。
たまにしか本音を打ち明けてくれない、ひねくれ者な銀ちゃん。
そんな銀ちゃんを誰よりも好きになってしまったあたしには、きまり悪そうに、途切れ途切れに語りかけてくる声が、
ちょっとたどたどしい口調で漏らされた本音が、他の何よりも大切な宝物みたいに思えちゃう。
好き、って言ってもらえたときと同じくらい嬉しいかも。
・・・・・・あたしがそんなふうに感じてるなんて、銀ちゃんはきっと気付いてないんだろうけど。
まぁ、気づかれたら気付かれたで困るんだけど。
普段はつんつんしてて可愛げがないあたしがそんな乙女なことできゅんきゅんしてるなんて、絶対、死んでも知られたくないし。
それに、――銀ちゃんが気づいちゃったら、例の天の邪鬼が発動しそうだし。さっきみたいな珍しい本音なんて、恥ずかしがって二度と言ってくれなくなりそうだもん。
だからこれは、あたしの、あたしだけの、秘密のお楽しみってことにしよう。
この先もずーっと黙っておいて、思い出してはふわふわした甘い気分に浸って、一人でにやにやして楽しもうっと――。
「――ー。おーいぃ、返事してー。生きてるちゃーん」
「・・・・・・えっ。 ぅ、うん、だいじょうぶ・・・っ」
後ろにいる銀ちゃんと目が合わないのをいいことにほっぺたを赤く染めてぽーっとしてたら、静かすぎて心配されちゃったみたいだ。
我に返って辺りを見たら、部屋の中はまっくらになっていた。
左右に目を向けてから真正面を見たら、さっき転がり落ちた布団の山が目の前に。
ところどころが濡れて光って見えるそれを目にしちゃったら、畳の上で組み敷かれてる自分のあられもないポーズがだんだん気になってきた。
胸の下で折り重なったメイド服をもじもじしながら引き上げて、そわそわした落ち着かない視線を何度か背後に流してみる。
・・・困る。困るよ。お腹の中がまだじんじんしてる。
銀ちゃんのをまだお腹の奥で受け止めてて、それがすっごく熱いんだもん。・・・そろそろ離れてくれないかなぁ――
「・・・ぎ。銀ちゃん。あの。・・・・・・・あのね。ぇえと・・・、」
こんな格好で顔を合わせるのは、かなり、めちゃくちゃ恥ずかしい。
それでも仕方なく肩をごそごそ動かして、後ろへ振り向こうとした。
そしたらぎゅうぅぅ――って強く、羽交い絞めにするみたいに抱きつかれて、
「ぇ、ぎ、ぎんっ」
「身体痛かっただろ。わりー。妙に勢いづいちまったっつーかぁ、つい・・・・・・・・なぁ、嫌んなった?」
「そ、それは・・・ちょっと、痛かった・・・けど。でも、いゃ、とかじゃ・・・・っ」
「ん。じゃあメイドさん。もっと甘えても、いぃ」
「・・・・・・っ!?っちょ銀ちゃ、ぇ、ゃ、わわわ、っ!」
ええっ、って目を剥くよーな力の強さと唐突さで、がばっ、って腰から持ち上げられた。
ぐらっ、って大きく姿勢が崩れて、あたしと繋がったままで銀ちゃんがひょいっと立ち上がる。
驚きすぎて目を剥いてあわあわしてる間に、今度は布団の山に落とされて。
ぼふっ、と顔や胸から着地して、汗ばんだ素肌がふわふわしたやわらかさに埋もれていって、
「大丈夫大丈夫、次は優しくしてやるから。が痛てぇ思いしねーよーに気ぃつけるからぁ」
「――っ、次って、っう、ぅそっ、待っっ」
「無理だって待てねーって。こんなんエロすぎて辛抱できねーって」
「っっ!?ぇ、えろ・・・っ!?」
びっくりして叫んだ瞬間、スカートをパニエごと掴まれる。
がばっ、と盛大に背中へ捲り上げられて、肌寒い部屋の冷気に晒された腰がぞくぞくっと震え上がった。
顔を真っ赤にして悶絶してるうちに、銀ちゃんの手がそろそろーっと背中から腰へ滑ってくる。
呑み込まされてる中がうずうずしちゃうようなやらしい手つきが、すべてを晒してる裸のお尻を楽しそうに撫で回しながら、
「いやいやお前は自覚してねーんだろーけどー、銀さんから見ると鼻血もんのエロさだからねこれ」
「〜〜〜なっっ、・・・や、ゃだぁ・・・うそ・・っ」
「考えてもみろって、バックで突っ込まれたまんまの淫乱メイドが恥ずかしそーに振り返って呼んでくれんだよ?
しかもよーイく寸前まで「ぁあん激しいのすきぃぃっ、もっと欲しいですうご主人さまぁん」なーんてかんじであんあん喘いでた子にだよ?」
「そんなこと言ってな・・・!っぁ、や、そこ、ゃ・・・っ」
「いやいや言ってたって。あぁんもっとぉぉ、ってかわいー声で泣いて乱れまくってたじゃん」
「ふええぇっ・・・だめぇぇ、っっ、そこ、さわっちゃ、めぇ・・っ」
太腿に伸びるガーターベルトの細い線を、熱い指の先がつーっとなぞる。
指に絡ませて肌から剥がしたそれをくいっと跳ね上げられて、ぱちんっ、って肌を弾かれた。
何度もイかされて感じやすくなってる身体はぞくぞくぅって震え上がって、
「ひぅ、っ」
「お、いー声ぇ。これなこれ、ミニスカにガーターってこの組み合わせがよー、またやべーんだわこれが。
後ろから見ると絶景っつーかエロすぎっつーか。なぁ毎回履いてくんねミニスカ。お前脚きれーだし、肌もすっべすべでたまんねーんだけど」
「っな、撫でちゃ、ぁん、だめぇっっ。っっまって、ぁっ、ぎんっ――・・・・!」
――うそ。・・・そんな、うそ・・・!
混乱しきってるあたしの腰を抑えつけて、銀ちゃんが満足そうに息を吐く。
やんわり締めつけてくる内壁の感触や熱さを楽しもうとしてるみたいに、ゆっくり先端を捻じ込んでいく。
途端にうねってきたあたしの奥をぐちゅりと押して、また引いて、また押して。
ぐっ、ぐっ、って小刻みに動かされて短い嬌声を止められなくなった頃には、さっきまでの長すぎる行為なんてなかったような硬さと勢いでお腹を埋め尽くされてしまった。
中に感じてるものの先端がどくんと跳ねて、びくびくと蠢きはじめる。
銀ちゃんの粘液でどろどろになったあたしの中に、放たれる前よりも欲しがっているような淫らな疼きを呼び覚ましながら――
「ぁ、あんっ、まっ、んっゃああ・・・っ」
「――っあ・・・・・・、まぁ、脚は痛ってぇけどー。どーにかなんだろ、もぉ知らね」
中を潤してた熱い粘液を、ぐちゅりと蜜口から押し出される。すっかり滾った熱い塊に、奥をぐぶって一突きされて、
「ぁああっっ・・・!あぁ、はぁ・・・んっ」
「朝まで抱かせて。なぁ。だめ。だめならやめるけど・・・っ」
ぐっ、ぐっ、てゆっくり大きく突かれたら、汗の匂いと逞しい腕に包まれた身体中がせつなく痺れる。
腰を抱いた腕に胸を持ち上げられて、突かれるリズムに合わせた動きで揉みしだかれて、尖った先を責められて。
あたしは逆らう気もすっかりなくして、蕩けるような気持ちよさに溺れていった。
熱くて湿った首筋がぴったり寄り添ってきて、ぐりぐり、って横から頭を擦りつけられる。
目元やこめかみにしっとり貼りついて汗を伝わせる白銀の髪が、こっちを流し見る火照ったまなざしに浮かんだ欲情の色が、視界の端でちらちら光る。
ちゅう、って涙で塩辛くなったほっぺたに吸いつかれて、耳をちろちろと舐められる。
、すき。
ささやいてくれる甘い声にうっとり浸る。
すき、銀ちゃん、すきぃ、って熱に浮かされて弱りきった声を上げながら、何度も後ろから貫かれる。頭がぐらぐらするくらい揺さぶられる。
その後でまた体位を変えられて、最後は脚を開ききってるすごく恥ずかしい格好でイかされてしまった。
胸やお腹に出されて、その後でもう一度中に出されて、お腹の中が銀ちゃんの熱で溢れ返ってどろどろ流れ出てきても、何度も何度も繰り返される。
獣みたいな猛々しさで突き上げられる。
頭がおかしくなっちゃうくらいに絶頂がずーーっと続いて、声が嗄れるまで啼かされて。
力なく喘ぐだけの唇を奪われて、のめり込んできた熱に口内を掻き乱されてる間に意識が飛んで。
その後でどんなことをされたのかは、何も、ひとつも、覚えてない――。
「――で。僕たちが居ないのをいいことに、女性が丸一日寝込んじゃうよーな何をしてたわけですかあんたは」
「最低ネ、最低ヨこの強姦魔。が虫の息になるほど何をしたアルか!」
――「ガチで野生に還る」なんて宣言されたとおり、ケダモノに還った銀ちゃんに気を失うほど好き放題にされた次の朝。
いつになく静かだった万事屋に、聞き慣れたにぎやかな声が戻ってきた。
二日ぶりにお仕事復帰した新八くんに、お城から戻った神楽ちゃん、そして定春。
万事屋じゃ一生貰えそうにない高級ドッグフードをそよ姫さまからお土産としてもらってきた巨大なペットは、もこもこでまっしろな尻尾をふりふりしながらお皿に顔を突っ込んでる。
そんな定春が居間の隅で美味しいご飯を満足そうにはぐはぐしてる傍には、呆れきった顔した新八くんと神楽ちゃんが。
まったく悪びれた様子もなくソファでふんぞり返って鼻なんかじほじってる銀ちゃんを、真上からガミガミ叱りつけてる。
二人がこの部屋に入ってきたときの反応は、二人が二人とも同じだった。
二人とも入口で立ち止まって、きょとんと目を見開いた顔中で「えっ。どーいうこと、何で!?」って、疑問と驚きを投げかけてきたんだけど――
「オイ吐け。吐けこのエロ魔人、女の敵っっ。いったいに何をしたアルか、か弱い女の子にどんだけ無理させたアルか。
返答によっては私が斬滅してやるネ!秀吉さまあああああっ御許可をををををを!」
「いや神楽ちゃん、どこで覚えてきたのその大絶叫」
「そよちゃんと遊んだゲームに出てくる戦国武将ネ。変な髪型だったアル!」
自由気ままに毛先が跳ねまくってる頭をわしっと掴んで神楽ちゃんが叫ぶ。
じとーっと銀ちゃんを睨んでる澄んだ青い瞳には「見るのも汚らわしいネ!」ってはっきりくっきりと書いてある。
まるでゴキブリやウジ虫を見るよーな目、・・・なんて例えたら、銀ちゃんショック受けて泣いちゃうかも。
・・・・・・だけど。だけどさ。うん、まぁそーだよね、これを見たらそーなるよね。
あたしが新八くんや神楽ちゃんの立場だったとしても、同じような反応しちゃうはず。
それにしても――ほんと、銀ちゃんってば信じられない。とても同じ人間とは思えないよ。未知の生命体レベルで謎だよ。
昨日までは立つだけで痛そうで脚を引きずってた怪我人の容態は、今朝になったら激変してた。しかも、妙に生気に満ちていた。
いつにないくらい血色がいいし、普段はのそーっとしてて全くやる気がなさそうな動作に、見たことがないやる気とキレが垣間見えてるし。
昨日のあれがよっぽど楽しかったのか、人の顔見るたびにやらしいかんじで思い出し笑いするし。
今にもよだれ垂らしそうなしあわせそーな顔で抱きついてくるし。暇さえあればうへへへへ〜〜、って顔中でれでれに崩してるし・・・!
「それにしても銀さん、三日でここまで快復って・・・どーいうことですか。ほんとにあんた怪我したんですか。
さんのメイド姿見たさに僕らを騙したんじゃないでしょーね!?」
腕を組んで仁王立ちした新八くんが、ずいっと顔を寄せて銀ちゃんに詰め寄る。
・・・・・・うんうん、そーだよね。仮病疑惑ももっともだよ。あたしだってまだ半信半疑なくらいだよ。
これだから銀ちゃんっておそろしい。脚にヒビが入ってからほんの三日しか経ってないのに、もう普通に歩けちゃってるんだもん。
時にケダモノレベルな馬鹿力や底無しの体力を発揮してみせるあたしの彼氏は、快復力までケダモノレベルだったみたいだ。
昨日はあんなに脚を痛めつけるよーな姿勢や動きを続けてたくせに、あたしが目を覚ましたときには、けろっとした様子で物干し場に立って洗濯物なんか干していた。
「いやいやまだだって、まだ痛てーこたぁ痛てーんだって」
なんて本人は言ってたけど、傍目にはちっとも痛そうなかんじに見えない。
朝からふつーに動き回ってたし。ふつーに台所に立って朝ごはんなんか作ってくれたし。
とても骨にヒビが入ってる人とはおもえない運動量だよ。お料理してたときなんて、台所から余裕の鼻唄まで聴こえたくらいで。
なのに――銀ちゃんはこんなに元気なのに、あたしときたらズタボロで。
立ち上がるのもやっとなくらいに足腰がくたびれきってて、居間のソファで毛布被って寝込んじゃってる有様で。
朝からやたらに元気だった銀ちゃんに手取り足取りでお世話されてて、寝かされたソファの上からほとんど動けない。
かろうじて自力で出来ることといえば、トイレに行くことくらい・・・かな。
あまりに脚がふらついてるから、脚にぐるぐる包帯巻いてる「自称」怪我人に入浴のお世話までしてもらったくらいだ。
なのに――なのに、銀ちゃんときたら・・・・・・!!
「銀さん、やめてくれませんかその顔。ずーっとニヤけっぱなしでキモいんですけど。何がどーしてそんな顔なんですか」
「んなもんアレだろ、何ったらナニだろ。ナニをナニしてナニしたんだろ。まぁアレだわつまり、おめーらガキどもには聞かせらんねーめくるめくR指定タイムがよー」
「ストーップ!神楽ちゃんの前ですよ、それ以上は口にしないでくださいっっ」
「なーなーー、そーだよなぁっ。邪魔なガキどもがいねーおかげで二人っきりで楽しかったよなあぁっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ほら見ろ新八ぃ、も楽しかったって言ってんだろぉ。目がひしひしと訴えてんだろぉぉ」
「違いますよ今のはどう見ても「死ね!!!」って目ですよ。そうですよねさん」
「違いますー今のは「銀ちゃん愛してるっ」って目ですー!なー、そーだよなぁっちゃあぁん」
膝枕してるあたしの頭をなでなでしてた銀ちゃんが、こっちを覗き込んでにへらぁ〜〜っと笑う。さりげなく、少しずつ、手の位置を移動させていく。
その手が胸めがけて驚異の速さで伸びてきた瞬間、あたしはごろんと横を向く。ついでに銀ちゃんの顔めがけて、思いっきり肘突きを繰り出した。
「っっっがごぉっっ」っておかしな声で呻いた銀ちゃんが鼻を押さえてじたばた暴れる、涙目でもがく。
頭上でむせび泣いてる情けない声は無視して、あたしはもぞもぞ動いて起き上がった。3日ぶりに着た普段着の着物の衿元や帯を直しながら、
「・・・ほんと、油断も隙もないんだから。新八くん神楽ちゃん、この痴漢の言うことはぜんぶ無視していーからね」
「ねーねーー、ナニをナニしてナニするって何アルか。ナニって何アルか、お前は知ってるアルか新八」
「神楽ちゃん・・・実はほとんど知らないくせに大人の会話にガンガンツッコんでいくのやめよーよ。そーいう事は僕に訊かれても困るからね・・・!」
「うーん、よくわからないけど・・・つまりいたいけな少女と童貞メガネには言えないいかがわしいことしてたアルか。やっぱり強姦魔ネ、通報するネ新八。警察呼んでしょっ引いてもらうネ!」
「通報はだめだよ神楽ちゃん。銀さんこんなんでも社長だからね、社長が強姦で逮捕されたら万事屋の信用が地に堕ちちゃうからね。ああさん、お茶どうぞ」
「うん。ありがと、新八くん」
新八くんが淹れてくれたお茶を貰って、淹れたての熱さをふーふーしながらちびちび飲み込む。
もちろん、鼻を押さえて痛そうに震えてる悪質な痴漢のこれ見よがしな構ってオーラは完全無視だ。
昨日の今日だからって調子に乗るな、ばーかばーか、銀ちゃんのばーか。
「・・・とにかく少しは反省してくださいよ、銀さん。・・・そ。その、何ていうか、つまり・・・」
これまでの銀ちゃんの言い分で、おおよその事情を理解してくれたみたい。
あたしのほうをちろっと眺めて、新八くんが気まずそうに咳払いする。
湯気を昇らせる小ぶりな湯呑を銀ちゃんに差し出して、呆れきったような顔でソファの対面に座る。
自分用に淹れたお茶を口許へ運ぶと、ためらいながら切り出した。
「僕はともかくとしても、神楽ちゃんの教育上よくないし。・・・・・・・そ。その。僕が言う事じゃないですけど、さんだって、その・・・!」
「・・・?お前らの話はよくわからないアル。何が私の教育に悪いアルか」
「いーんだよ俺はぁ、俺はに何しようがいーの、は俺のもんだからいーのっ。どーだうらやましーだろそこの童貞メガネ」
「うらやましいどころか呆れますよ。どんだけ傲慢なこと言い出すんですか銀さん」
女性をモノ扱いしないでください、って新八くんが嘆かわしげに溜め息をついてお茶を啜る。
だけど銀ちゃんは、人の話なんて聞いてもいなかったみたい。やけに自慢げな顔してあたしの肩を引き寄せると、
――ちゅっ。
止める間もなく近づいてきた唇で、ほっぺたに軽く触れられて――
「特に今日は100%銀さんのもんだからね。
昨日はくんずほぐれつた――っぷり可愛がってやったからよー、身体中どこもかしこも髪の先から爪の先まで銀さんのアレでトゥルントゥルンに潤ってるからね」
「「ぷっっっっっはあぁぁぁっっっ」」
新八くんとあたしが同時で、盛大にお茶を吹き出した。
手からこぼれ落ちた湯呑がお茶を撒き散らす、ひっくり返って床に転がる。
ああ苦しい、喉詰まる・・・!二人揃ってげほげほとひっきりなしに咳込んで、喉を押さえてごほごほ、げほげほ。
あたしは着物の袂をごそごそ探ってあわててハンカチを出して、口を押える。お茶が飛び散ったソファの上でうずくまって、涙が出るほど咳込んだ。
そしたら「おいおい大丈夫かぁ」なんてすっとぼけた声出した人に背中をぽんぽん叩かれちゃって、
「んだよどしたぁ、二人揃って顔赤くしちまって。え、そんなにあっちーのこのお茶」
「違ううぅぅぅぅ!!〜〜〜ししししねっ、今すぐしんじゃえエロ天パっっっ」
「新八ー、どーしてが銀ちゃんのアレでトゥルントゥルンになるアルか。ていうかアレって何アルか」
「僕に訊かないで神楽ちゃんんん!銀さんもいい加減にしてくださいっっ、っっななな何てことをノロケ出すんですかっっっ」
メガネと顔からぽたぽた雫を垂らしながら、首まで真っ赤にした新八くんが声を震わせて叫ぶ。
・・・・・・し・・・信じられない。信じられないよ銀ちゃん、急になんてこと言い出すの。恥ずかしすぎて息が止まりそうだよ、今にも悶絶しそうだよ・・・!
ほら、神楽ちゃんがこっち見てるし。純真無垢な青い目がじーっと見てるし。
「ねぇねぇー、くんずほぐれつって何アルか」なんてことを尋ねたそーにガン見してるし!!
顔を真っ赤にしながらも非難の目を向ける新八くん。同じく真っ赤な顔を拭きながら絶句してるあたし。
そして、期待と好奇心が籠められたきらきら視線を向けてくる神楽ちゃん。
そんな三者三様な視線を向けられても、銀ちゃんたら普段通りに眠そうな顔してしれっとしてる。
あたしの頭を自分の肩にこてんと倒して乗せてから、テーブルにどんっと包帯で巻かれた脚を乗せる。見てるこっちがびっくりしちゃうくらいのふてぶてしさで言ってのけた。
「いーじゃねーかよーぜーんぶ事実なんだからよー、ノロケて何がわりーんだよー。それに俺ぁおめーらガキどもと違って大人だからよー、
どんだけナニをナカでナニしてナニが出来ても大人としての責任くれー果たせんだよ。下ネタの一つ二つで煩く言われるよーな筋合いどこにもねーっつーの」
「〜〜〜もうやだもうっ、信じらんない、信じらんないぃ!ていうか銀ちゃんっ、そーいう偉そうなせりふはせめて毎月家賃払えるよーになってから言いなよっっ」
「ちゃんそこは黙っといてくれる。そこは大人の体面っつーか、体裁ってやつを考えてくれる。なんか色々台無しになるから」
「何言ってんですか、家賃も払えないマダオに大人の体面なんてあると思ってるんですか!?・・・ああもう、銀さんのせいでびしょ濡れだよ・・・!」
「汚れたところは触らないでください。顔洗ったら僕が掃除しますから」
曇ったメガネを外して拭くと、新八くんは疲れきったかんじで肩を落として居間を出ていく。
「そーだ、そよちゃんがお菓子くれたネ。にもあげるヨ」
ぱたぱたぱた、って軽い足音を響かせて、神楽ちゃんが後に続く。
くぅん、と定春が一声鳴いて、もこもこした大きな身体をのそっと起こす。ゆったりした足取りで居間を出て、ちいさなご主人さまの後を追った。
居間にいるのはあたしたちだけ。二日ぶりに戻ってきたにぎやかさが、少しだけ遠ざかってる――
「――あーあー、やーっと静かになったぜ。どーしてああも騒々しいのかねぇあいつらは」
「よく言うよ。誰のせいで騒々しかったと思ってるの、銀ちゃん」
――ほんと、よく言うよね。本当は二人が戻ってきてうれしいくせに。
なんて思って、心の中で舌を出してたら――銀ちゃんは肩に腕を回してきた。
えっ、って驚いてまばたきしてる間に抱き寄せられて、白っぽい前髪の合間から見下ろされて。
何か言いたげに唇を開いた顔があまりに近すぎて、とくん、って心臓が高く跳ねる。
――え、うわ、な、なななななっ、何するの銀ちゃん。新八くんたちがいつ戻ってくるかわかんないのに・・・・・・!
「――っな、なにっ」
「・・・なぁなぁあれ、あのガーター。次はいつ着けてくれんの」
耳に唇をくっつけてこしょこしょと、内緒話でもするみたいに抑え気味な声を注がれた。
ひっ、って声と肩が同時に跳ねて、ぼっ、と一瞬で染まったほっぺたがじわじわじわーっと熱くなる。
――うぅぅ、耳がすっごくくすぐったい。銀ちゃんてばもう、油断も隙もないんだから・・・!
「っ・・・・・・つ、次とか、ないから。あんなのもう二度と着けないからっ」
「そう言わずに履いてくんね。お前いい脚してるし、ミニスカすげー似合ってたしぃ。
まぁ、何ならあれだけどー。二度目は嫁に来るときのアレでもいーけど」
「――・・・・・・・・・・・・・・へ・・・?」
「いやだからアレなアレ。ひらひらした真っ白れードレスとー、頭に被る薄いアレ。
あれ着る時に着けるだろぉ、ガーターをよー。それまでとっておくっつー手もあるけど」
「・・・〜〜〜なっ。ななな、何それいきなりっ、〜〜ぃっ、意味わかんないしっっ」
「新婚初夜にアレ脱がすっつーのも悪かねーよなああぁ」
なんて、耳に唇を触れさせたままで銀ちゃんがくすくす笑う。
ぺろ、って舌先で舐められたら、くすぐったさにぞくぞくした甘さが混じって、
――ずるいよ。こんなときにそういうことされたら、どうしていいかわかんない。
肩に置かれてた重たい腕が、二の腕を撫でる。
くすぐったさに震える背筋をわざとゆっくり滑り下りて、腰をきゅうっと強めに抱いた。自分のほうへ引き寄せながら、
「いやいやいや、いきなりでもねーだろぉ。ここ2、3日ずーっと二人きりだったじゃん。嫁に来る予行演習みてーなもんじゃん。
昨日はくんずほぐれつアレをアレしてお互いをより深――く知ったことだしよー、もそろそろその気になってくれんじゃねーかなぁーっと」
「そ、そそそ、そんなっ・・・・・・ていうかどこ触ってんの変態、エロ天パっ、痴漢盗撮犯強姦魔っっ、――ゎ、ち、ちょっ・・・!」
後ろからぴっとりくっついてきた銀ちゃんは、さらにあたしを引き寄せた。
そのまま抱きかかえられて、ふっ、と腰が浮き上がる。
何するの、って目を丸くしてる間に、大きく開いた銀ちゃんの脚の間に座らされて。
なぁ、、って耳元で低くささやかれたら、熱くなりかけていたあたしの身体は途端に昨日の銀ちゃんを思い出してしまった。
――胸がとくとく高鳴って、だんだん力が抜けていく。ゆっくり腕が動いて、少しずつ、少しずつ――じわじわ抱きしめられていって――
「なぁ、やなの。俺のために着てくんねーの、あの真っ白いやつー」
「・・・・・・そ。そそそ、そんな、ドレス、とか・・・か・・・勝手に話進めよーとしないでよっ。銀ちゃん傲慢だよ、自分勝手だよっ」
「そーだよー知ってんだろぉ、俺ぁ自分勝手なの。勝手に話進めてその気にさせて、が俺から離れらんねーよーにしてーんだよー」
じわ、じわって銀ちゃんの身体で包まれていく。後ろから迫ってきた熱い身体で、がっしりした骨太な腕で包まれてく。
やんわりと背中に押しつけられた硬い胸が、あたしの自由を狭めていく。
――なぁ。いーだろ、。なぁ――
懇願するような響きでささやきかけてくる吐息みたいな声に、全身を甘く縛られる。
とん、と顎を乗せられた肩上あたりで衣擦れが起きて、ざわざわ、ざわざわ、って落ち着かない音で鳴って耳を埋める。
なぁ、どーなの、って耳をふにっと噛まれたら腰の奥が熱く疼いて、びくんと背中を揺らしてしまって。
顔を拭いたハンカチを手の中で揉みくちゃにしながら、どぎまぎしながら瞼を伏せる。なんだかすごく追い詰められた気分で口を開いた。
「・・・・・・べ。べつに。やじゃ・・・なぃ・・・けど・・・・・・っ」
「ん。んじゃーOKってことで。はい決定ー」
「〜〜〜えっっ。ちょ。ちょっ・・・!」
「んだよいーじゃん、イヤじゃねーんなら決定したも同然だろぉ。アレも着てくれんだろぉ、ガーター込みで」
「ガーターはOKしてないぃぃ!」
ていうかおかしくない?おかしいよね? OKなんて言ってない。いやじゃない、って言っただけじゃん!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも。その。あの・・・、
「・・・・・・・・なっっ。なにそれ。な。なななななな、・・・・・・・・〜〜〜〜っ!」
・・・・・・かぁ〜〜〜っ、と真っ赤に染まり始めたほっぺたを押さえて、深ーくうつむいてハンカチを握りしめて、もじもじ、もじもじ。
本当は、まぁ、その、実は・・・・・・急に言われてびっくりしちゃって素直になれなかっただけっていうか。
内心では「あの真っ白いやつ」を着るのがいやだなんて、1ミリたりとも思ってない。
それどころかたまらなく嬉しくってどきどきで、心臓が口から飛び出しそうなくらいに弾んでて。
今にもふわふわ浮き上がっちゃいそうなくらい浮かれてる自分を押さえるだけで精一杯っていうか・・・!
で、でも・・・・・・そんな・・・なんだかこれ、恥ずかしいよ。
それに急すぎて、尻込みしちゃうよ。話についていけないんだよ。そう、なんていうか・・・アレがまだ出来てないんだもん。
心の準備っていうものが・・・・・・!!
「まぁ今すぐにってぇ話でもねーし、先に二度目のガーター姿見せてくれてもいーんだけどー。何なら今日でも明日でもいーんだけどー」
「それは履かないって言ってるじゃんっっ。〜〜〜ぉ、おかしいよ、銀ちゃん話早すぎっ。そーやって勝手に決めちゃうのって傲慢だよっ」
「あーはいはい、そーだよーそーですよー。どーせ傲慢変態エロ天パ野郎ですが何かー」
「ま、またそーやって、開き直って・・・!」
「開き直ってねーって、認めてるだけだって。お前やあいつらに変態だの痴漢だの言われたって別に気になんねーしぃ」
「少しは気にしなよ銀ちゃん・・・」
いや、そこは気にしようよ。ほんのちょっとでいいから気にしてほしいよ。
新八くんがここに居たら激しく同意してくれそうなことを思いながら、あたしは小さく溜め息をついた。
全部が全部とは言わないよ。せめて変態だの痴漢だの呼ばれちゃうよーな行為だけでも、反省してやめてほしいんだけど。
じゃないとこの先が、――この先の自分の身が思いやられるから。昨日なんてかなり本気で死ぬんじゃないかって思ったんだから・・・!
「いーのいーの。そのくれーでいーんだよ、俺ぁ。傲慢で自分勝手で変態エロ天パ野郎で、家賃もろくに払えねーマダオでもよー。・・・それでも、――」
(――それでも、ここにあるもんくれーはどーにか護っていくからよー。)
少し低めに声を落として、あたしをぎゅ―って抱きしめて。――ついでに付け足すみたいに、銀ちゃんは言った。
すきな人に抱きしめられる息苦しさと甘酸っぱい嬉しさを全身で感じながら、あぁ、ってあたしは心の中でつぶやいた。
とくん、って心臓が高鳴って、きゅん、って不意打ちでやってきた嬉しさに胸をしめつけられる。
――昨日のことを思い出したから。今の銀ちゃんが、なんとなく昨日の銀ちゃんと重なったからだ。
ひとりごとみたいなぼそぼそっとした口調には、どこか本音らしい響きが混ざってた。
それは――昨日と同じ声。あのときとよく似通った声だった。後ろから抱きしめて照れ臭そうに打ち明けてくれた、あのときの声と。
どうしても確かめたくなって戸惑いながら振り向いてみれば、銀ちゃんはあまり見たことがない、どこか遠くを眺めてるような表情をしてた。
しばらくぼうっと見惚れていたら、細められた目が視線に気付いて。ふ、っと目尻を緩めて笑う。あたしもつられて微笑んだ。
銀ちゃんにとってはどうってことない表情なのかもしれない。どうってことない言葉なのかもしれない。
そんな気がするし、多分そうなんだろうけど、・・・・・・でも。
――あたしは、こんな表情が見れただけで嬉しくなっちゃう。
普段は見れない銀ちゃんを見せてもらえたみたいで。また少し、銀ちゃんに近づけたみたいで。
だいすきな人と共有出来る大切な思いが、またひとつ増えたみたいで。あたしだけが知ってる銀ちゃんがまたひとつ増えたみたいで、すごく、すごーく嬉しくなっちゃう。
・・・・・・そう思える人に会えて、よかった。
心の底からそう思った。身体中を満たしてくれる、しあわせな気持ちを噛みしめる。
腰を支えてくれる腕に体重を預けて、ゆっくり瞼を閉じながら寄り添ってみる。
銀ちゃんの腕の中は――誰よりもすきな人の腕の中は、広くてあったかくてがっしりしてて。
こうしてもたれかかってるだけでうっとりしちゃうくらい、心地よくって。
ここがあたしの居場所なんだなぁって、全身でそう感じさせてくれる。
ここがあたしの世界の中心になる場所。他のどこにいるよりもしあわせな、たったひとつの特別な場所だから――
――だから、銀ちゃん。これからもずっと、ここで銀ちゃんを感じさせてね。
だいすきな人をとびきり近くで感じられる嬉しさを、――とびきり近くから笑いかけてもらえる嬉しさを、独り占めさせてね。
あたしがこの腕の中から離れられなくなっちゃうように――
「――つーことでよー。二度目のアレは他の奴らには見せねーでくれる。俺にだけ見せてくれよな、お姫さま」
おずおずと視線を上げれば、こっちを見つめて細めた目にはとぼけた笑みが浮かんでる。
頭の芯まで火照らせたあたしは、新八くんたちが戻ってきたらどうしようかなぁってどきどきしながら向きを変えた。
自分を囲う腕にやわらかく腕を絡めて抱きつく。
がっしりした二の腕に顔を埋めると、皺だらけでよれよれな寝間着の上から甘い誓いのキスを落とした。