「――ぁあ、んっ、っぎ、ちゃあ・・・・・・んっ、ゃ・・・あっ」
呼んでも呼んでも返事がない。
太腿に触れてくすぐってくる癖っ毛を夢中でぎゅーぎゅー掴んでも、熱い舌先は動き続ける。
あたしの肌をぐっしょり濡らした薄いピンク色のしずくを、ぴちゃ、ぴちゃ、って舐め取りながら這いずってる。
――銀ちゃんてばいじわるだ。
台所であんなことしたのも、さっきのあれも、絶対にわざとだ。
あれは全部、銀ちゃんの罠。銀ちゃんに逆らえないようにするために、じわじわ追い詰めるために仕掛けた罠。
ぜんぜん、気のせいなんかじゃなかったんだ。
そう思い知らされたときには、あたしはソファの上で押し倒されてた。
圧し掛かってきた銀ちゃんに太腿を掴まれて、つうっと素肌を舐め上げられる。
白いガーターベルトの線に沿わせて、熱い舌の先でゆっくりじっとりなぞられる。震えた悲鳴を上げそうになる唇を、夢中で噛んでこらえてる。
「銀ちゃぁ、ねぇ、も、やめ・・・・・・・っ」
ずるい。騙された、ばかばかばか、銀ちゃんのばかっ。
涙で詰まる声を振り絞って頼んでも、ばかばか、って髪を引っ張っても叩いても、銀ちゃんたらもう返事もしてくれない。
こうなっちゃったきっかけは、――居間から声を掛けられたから。ー、って呼んだ銀ちゃんに「喉乾いたぁ。何か飲むもんちょーだい」って言われたから。
「いちご牛乳持ってきてくんね」そう頼まれて、あたしは何の疑いもなく頷いた。何の疑いも持たずに持ってきた。
持って行ったら「お前朝から働きっぱなしじゃん、少し休憩しとけば」なんて引き止められて、なんとなく二人でお茶することに。
点けっぱなしなテレビを見ながら、銀ちゃんはコップにたっぷり入れたいちご牛乳をごくごく飲んで。
あたしは隣に腰掛けて、持ってきた熱いお茶をふーふーしながらちょっとずつ飲んで。そしたら、
――「おっ」て声を上げた銀ちゃんの手から、コップがつるっと滑り落ちて。
コップは床にごとんと落ちて、見るからに甘そうなピンクの水飛沫はあたしのほうへ飛んできて。
一瞬でスカートの中までびしょびしょになって、下半身から甘ったるい匂いが昇ってくる。
銀ちゃんは「あー悪い悪い」なんて言いながら、畳んだ洗濯物の中にあったタオルでそこを拭いてくれたんだけど、
・・・・・きっと最初から企んでたんだと思う。図々しい手の動きはそれだけじゃ止まらなかった。
もういいって言ってるのに、ぽたぽた雫が垂れるスカートの裾を掻い潜って手が伸びてくる。
肌をざわざわさせるやらしい手つきでタオル越しに触れられて、びくん、とあたしは震え上がった。
普段こんなことをされた時は問答無用、蹴ったり殴ったりで撃退するのに、それが出来ない。
台所で脚を撫でられた余韻も、さっき首にキスされたときのもどかしさも、まだ身体の内側に残ってる。
今日のあたしは何もできなかった。
ただ「あっ」て身体を震わせて、スカートの中で動きを止めた大きな手を唇を噛んで見つめてしまった。
そんな自分が恥ずかしくってたまらなくて、自分の中で何が起こってるのかを銀ちゃんには知られたくなくて、
あわててスカートを押さえつけて。内側に入り込んだ図々しい手も押さえようとしたのに――
「まだ濡れてんじゃん。なぁ判るー、お前のここ。他よりしっとりしてんだろぉ」
「〜〜〜っ。もう、触るなぁっ。じ、自分でやる、から・・・っ」
「やめて」ってじわあっと目を潤ませながら頼んだら、銀ちゃんはますますその気になってしまったみたい。
にいっと口端を吊り上げて笑うと、もう用済み、とばかりにいちごの匂いが染み込んだタオルをぽいっと放った。
あたしを肩から押し倒しながら、そのまま覆い被さってきた。
甘い液体のせいでべとべとに濡れてる左の太腿を、ゆっくりと、わざと見せつけるみたいに持ち上げられた。
やわらかいところに埋もれた指の先が、ふにっと肌に食い込んでくる。
その感触が全身に響いて、腰をびくんと跳ね上がらせたら、
「すっげ。なにこれ。ここも濡れてんじゃん」
「ぇ・・・っ」
「なーなーこれってよー、さっき俺が台所で弄ったせい。それとも、さっき押し倒したせい。
ぱんつまでとろっとろなんだけど。どう見てもいちご牛乳じゃねーんだけど」
「ぁ、あぁ、っっ」
つん、つん、て薄い布越しにからかうみたいにつつかれて、唇を噛みしめて声をこらえた。
開かされた脚の間に、銀ちゃんがまた顔を寄せてくる。
太腿の裏側を舐め上げられて、熱い吐息をこぼす唇に吸いつかれて、「…ん、うめー」ってつぶやいた銀ちゃんの嬉しそうな声に肌をふわりと撫でられて。
――恥ずかしくってそれ以上は見れなかった。
逃げちゃいたいのに、逃げられない。
抱え上げられた太腿は付け根から膝上まで、こぼれたいちご牛乳を全部舐めつくすみたいにしてくまなく舌を這わされた。
その合間に弱いところに吸いつかれて、甘噛みされて、どんどん力が抜けていく。
涙の粒がこぼれ落ちる目をぎゅっと瞑って、ちぅ、と痕が残るほどきつく吸われる感覚を必死にこらえてるうちに、もっと高く脚を上げられて。
ストッキングを履いてる膝から下を舐められて、足の指まで咥えられた。
肌をぴったり覆ってる薄い繊維越しに舌でちろちろ撫でられて、ぴちゃ、ぴちゃ、って音を立てて舐められて。
また太腿へ戻ってきた唇に感じやすいところを舐められて、吸われて、赤くなったところをさらに噛まれる。
あたしは狭いソファの座面の上でびくびく背中を跳ねさせて、脚の間に割り込んできた銀ちゃんに舌と唇だけで感じさせられてしまった。
・・・でも、それだけだ。それだけなのに。
――それだけで開かされたところがとろりと潤んで、頭がおかしくなりそうなくらい感じちゃう。
触られてるのはほとんど脚だけ。まだショーツにすら触れられてない。これ以外のことはされてない。
なのに――昨日からやけに感じやすくなってる身体は、銀ちゃんのちょっとした舌遣いにも反応しちゃう。
舐められるだけで声が出ちゃうし、息を吹きかけられただけで腰や脚がびくびく跳ねる。
最初のうちは「やめて」って言えたのに、今ではもうそれも出来ない。はぁ、はぁ、って乱れきった吐息をこぼす唇を両手で押さえて、うわずった声で喘ぐことくらいしか出来なくなった。
居間の隅では小さなテレビが小さな音を漏らしてる。お昼の情報番組が流れてる。ついさっきまでは、電話のベルが何度も何度も鳴っていた。
電話に出るからやめてって頼んでも銀ちゃんが離してくれなくて、お仕事机に置かれた黒い電話はずっと鳴りっぱなしだった。
留守だと思われたのか、そのうちにベルの音も止んでしまったけど――
「やぁ。も、やぁ、やめっ・・・」
「んなこと言ってぇ、も拭かれるより舐められたほうがいーんじゃねーの。すげぇやらしーんだけど、お前の声」
「ん、は・・・・・ぁん・・・っ」
「な。いーんだろ。素直に言えたらもっとイイことしてやるから。言って、」
「ぁっ。ぎん、ちゃあっっ・・・」
少し顔を上げた銀ちゃんが、違うところに舌を這わせていく。
何か他の生き物みたいにやわらかく蠢く舌先は、ショーツを通してぐにゅりと熱を押しつけてきた。
焦らされ続けてきたそこにようやく触れられて、甘いせつなさで身体中が痺れる。びくん、っと背中を揺らしたら――
じりりりり――――ん。
部屋中に漂ってた甘くてなまめかしい雰囲気を消し去るみたいに、けたたましい音が鳴り響いた。
ああ、電話だ。また来たんだ――
鳴り続けてるベルの音を、ぼうっとして何も考えられなくなってきた頭の隅でなんとなく聞いて。
すると、銀ちゃんがゆらりと上半身を起こした。のそのそ動いてあたしの上から身体をずらして、
「電話ぁ。電話だぜーメイドさん」
「え・・・っ」
「仕事の依頼かもしんねーからよー。ほらほら、出て出て」
銀ちゃんはしれっとそんなことを言って、あたしの腕を引っ張って起こす。
涙の粒が溜まったままの目で呆然と見上げたら、んー、何、って尋ね返された。目尻を下げて薄く笑う目が、面白そうにあたしを覗き込んで――
「おいおいどーしたよー。急いで出ねーと切れちまうじゃん」
そんなふうに言われたら、こっちは何も言えなくなっちゃう。
じりーん、じりりりーん、って大きな音が響き続ける中、あたしはぽかんと口を開けたまま銀ちゃんを見つめた。
見つめてる間も、身体の芯に残った痺れがお腹を奥から火照らせてる。
焼けつくようなそのもどかしさに腰をもぞもぞさせてためらってるうちに、今度はじわじわと銀ちゃんが憎たらしく思えてきた。 ・・・それに。
――なにこれ。すっごく恥ずかしい。中断されてがっかりしてるんだ、あたし。
それって、それって・・・・・・恥ずかしいよ。銀ちゃんにはいやいや言ってたくせに、実はすごーく期待してたってことじゃない。
そう気付いたら銀ちゃんの顔が見れなくて、ばかばか、って銀ちゃんをぽかぽか殴って拗ねたいような気分になった。
うつむいて顔を合わせないようにして、ソファから立つ。
押し倒されたせいで大胆に肌蹴ちゃったブラウスの衿元を直しながら、ふらつく足で電話に向かった。
ピンクの裾からぽたぽたぽたぽた、いちご牛乳の淡いピンクのしずくが垂れる。
じっくり舐めつくされた下半身にはまだべたべたした感じと甘い匂いが纏わりついてて、それがすごくいやらしい気がして、
こんな自分を後ろから銀ちゃんが見てると思うと、身悶えしちゃうくらい恥ずかしい。
よろよろしながら銀ちゃんの机まで辿り着いたら、スカートから染み出たいちご牛乳の冷たいしずくがつうっと太腿の内側を滴り落ちる。
それだけで高い声が出そうになって、震える脚を擦り合わせながら机に縋りついて声をこらえた。うつむいた暗い視界が涙でぼうっと滲んでく。
・・・ばか。銀ちゃんのばか。変態。ドS。最低。
もうやだ、何プレイなのこれ。・・・・・・さっきは電話に出ようとしても、ソファに抑えつけて離してくれなかったくせに・・・!
「・・・・・・――はい。・・・えっと・・・万事屋銀ちゃん、です」
『――ああ、誰かと思やぁさんじゃねーですか。この間はどうもー』
「えっ。沖田さん・・・?」
ぼうっとしたまま受話器を取って電話に出たら、相手はあたしも知ってる人だった。・・・しかも、どちらかっていうと苦手な人。
真選組の沖田さん。ドSだと評判なこのおっかない人とあたしが顔見知りになったのは、銀ちゃんとこの人が知り合いだったから・・・ていうわけじゃない。
あたしの職場のお得意様というか、ご贔屓にしてもらってる取引先の一つが真選組だから。
新八くんの話によると、沖田さんはなぜか銀ちゃんに懐いてるみたいだし、あんなかんじでも一応おまわりさんだし、もしかしたら、根はそんなに悪い人じゃないのかもしれないけど――
『そうそうさん、こないだ頼んだあの件はどーなってます。
うちの奴等がえらく乗り気なもんでねェ。どいつもこいつも煩せーんで、出来れば早めにお願いしてーんですが』
「・・・は、はぁ。そうなんですか、そういうことでしたら、あの、・・・・・・わ、わかりました。部内で相談して、なるべく早めにお返事しますので」
『お願いしやーす。ところでうちの局長が小耳に挟んできたんですがねェ、旦那が寝込んでるってのは本当ですかィ』
「いえ、なんていうか・・・寝込んでるとかじゃないんです。でも脚にヒビが――」
そこであたしは口をつぐんだ。怪我したほうの脚を庇うみたいなひょこひょこした歩き方で、なぜか銀ちゃんが近づいてきたから。
どうしたんだろ。電話、替わったほうがいいのかな。
不思議に思いながら眺めていたら、なぜか後ろに貼りつかれた。
腰に腕を回されて、ぎゅ、って抱きしめられながら引き寄せられる。
机に右手を突くように導かれて、腕一本で身体を支えながらお尻を銀ちゃんに突き出すような格好にされた。
えっ、ってあわてて振り向こうとする前に、スカートの中へ躊躇いもなく潜ってきた手でショーツをしっかり掴まれて――
「・・・・・・っ、っっ!?」
――ぐいっ。
お尻に貼りついてた薄い布地を、一息に太腿までずり下ろされた。
驚きすぎて声も出ない。晒されたお尻に押しつけられた熱いものは、骨太で硬い男の人の指。
閉じているところを無理やり広げるみたいにして、銀ちゃんの指はあたしの脚の間に割り込んできた。
狭いところからとろりとした粘液を掻き出しながら、ぐちゅ、ぐちゅっと指を強く押し込まれて、
「――ひぅ・・・んっ!」
狭くて敏感なそこを熱と硬さで割り開かれたら、苦しさと驚きで息が止まっちゃいそうになった。
何で。銀ちゃん、どうして。どうして、何が起こってるの。わからない。
いきなり押し込まれた衝撃で頭がいっぱいで、何も考えられないよ。
それでもなんとか腰をよじって逃げようとしたら、もっと深くまで銀ちゃんは進んできた。
「〜〜っぁあ・・・!」
「し――っ。声出さねーの。聞こえちまうだろぉ」
「っっや、んふ、ん、ぅっ」
ぐちゅ、ぐにゅって指を回されるたびに銀ちゃんの指が届かない奥が疼いて、腰がびくびく跳ね上がる。
軽く曲げた先で刺激しながらずるりと引き抜かれるたびに背中がしなる。っっ、っ、ってひっきりなしに漏れる声にならない悲鳴に喉を締めつけられる。
ショーツを太腿まで下ろされちゃった脚の間で、くちゅ、ぬちゅ、って水音が鳴る。
銀ちゃんの指の動きが鳴らすその音で、自分のそこがどうなってるのか、わかりたくないのにはっきりわかってしまう。
軽く引き抜かれて、すっかり蕩けた中に二本揃えて押し込まれる。
受話器をきつく握りしめた手がぶるっと震える。机に突いた手も、きゅっと閉じた太腿もぶるぶる震えて、がくがくと膝を揺らしながら脱力していく。
・・・ああもう、無理。もう立っていられないよ――
「・・・〜〜〜っ!」
膝から崩れ落ちそうになったあたしを、銀ちゃんは机に押しつけるみたいにしてうつぶせに倒した。
のしっと上から圧し掛かられて、広い胸板や頑丈な腰の重さで潰されて息が詰まる。
狭い中に押し込まれた指は、もっと奥へ入り込もうとしてる。濡れた壁を指の腹で広げながら小刻みに動く。
ぁっ、って声が飛び出そうになって必死で唇を噛みしめたら、ふにっと耳たぶを甘噛みしてきた銀ちゃんが、内緒話でもするみたいな低めた声を耳に注いだ。
「・・・ダメだろー、電話にはちゃんと応対しねーと。電話口であんあん言ってっと、お前が何されてんのか沖田くんにバレんだろ。な?」
「ふぁ、ぁ・・・・・・っ」
熱くてうっとりした声に、ぞくりと肌が粟立った。
こんな信じられないことしてるのに・・・・・・興奮してるんだ、銀ちゃん。
その声音からも、中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜる指の動きからも伝わってくる。
あたしをもっと責めて、恥ずかしい思いをさせて、声なんて我慢できないくらいに乱れさせたがってるんだって――
『・・・・・・さーん?・・・あれっ。どうもここ、電波が入りづれーらしーや。もしもーし、そっちは聞こえますかィ』
聞こえても聞こえてなくてもどうでもいーや、なんて思ってそうな、飄々とした声で尋ねられた。
今のところ沖田さんは、声の遠さの原因を電波状態の悪さだと誤解してるみたい。・・・だけど、このまま黙っていたら――
気付かれたくない一心で、震える唇を噛みしめた。上がる息遣いを押さえ込んで、やっとの思いで掠れた声を振り絞って、
「・・・っぁ、は・・・・・・・ぃっ」
『うちに入ってきたのは殺しても死にそうにねー人が寝込んじまってるって話だったんで、どーなってんのかと思いやしてねー。
なるほど、それで今日はあんたが電話番してるってぇわけか』
「〜〜っ、ん、んん〜〜・・・っ!」
頑張って声をこらえてたのに、――銀ちゃんは一気に、根元まで指を突き入れてきた。
衝撃の強さで見開いた目がぽろぽろぽろぽろ、涙を幾粒も溢れさせて、物が置きっ放しで雑然としてる広い机の上を濡らしていく。
『ところで、旦那に伝えてもらいたいんですがね。こないだ旦那に紹介してもらった修理屋で――』
「っぁ・・・・・・!」
『・・・・・・?あれっ。また聞こえねーや。・・・・・・・・・・もしもしー、聞こえてますかィさぁん』
「〜〜〜〜ひ、っっ、っ」
感じやすいところを狙ってずぶりと深く差し入れられた指が、火照りきったお腹の裏側をくちゅくちゅと押す。
そこに溜まっていくきもちよさで全身が痺れて、もう声が我慢できそうにない。
あたしはそれでも机にしがみついて息を詰めて、唇を噛んで啜り泣いた。
くくっ、て後ろで銀ちゃんが笑って、ぎゅうぅ、って腕の中に閉じこめられる。涙が伝って冷たくなってきた目元やほっぺたを舐められて、ちゅ、って何度もやわらかく啄まれて。
「あーごめんごめん、そう泣くなって。つい苛めたくなっちまってよー、があんまりかわいーから」
「・・・・・・・っ、も、ゃめ、・・・ぉねが・・・っ」
「ん。ごめんな。後で嫌ってほど可愛がってやっから、許して」
「やだ。ゃだぁ・・・っ。ばかぁ。銀ちゃ、きらいっ」
「やだぁ?えー、嫌じゃねえだろ。こんなにぐじゅぐじゅになってんのに」
つか、嫌ならこんなに濡れねぇって。
苦笑いする声と荒くなってきた吐息で耳の中まで熱くされて、頭の芯まで熱が上がる。ぶんぶん頭を振っても、狭い中を刺激する指の動きは止まらない。
右の手ではそんなことをしてるくせに、銀ちゃんの左手はいつのまにかあたしから受話器を奪い取ってた。
「――あぁ沖田くんどうもー。修理ってこないだのあれかぁ?あーはいはい、あれはよ―――」
普段通りのやる気なさそうな声で話してるのに、指の動きは激しくなった。
弱いところをくにゅくにゅ押されて揉まれるたびに、泣き声混じりな悲鳴が漏れる。
これが受話器の向こうに届いちゃったらどうしよう。もし聞こえてたら・・・・・・ああもう、死んじゃいたい。
そう思うのに、指の動きに合わせて腰が揺れる。びくびく跳ねる。泣きじゃくりたいくらい感じちゃってる。そんな自分がたまらなく恥ずかしいのに、どうして――
「ふぇぇ・・・・・・っ、〜〜っ・・・・・・!」
ひっく、ひっくって嗚咽が止まらなくなった唇を、あたしは両手でぎゅっと押さえた。
話がひととおり終わったのか、銀ちゃんがようやく受話器を戻す。あたしの中から指を引き抜く。
とろとろに濡れた熱い指先が太腿をいやらしい手つきで撫で下ろしていって、途中で止まっていたショーツを掴む。
小さな布をくるくると丸めながら脚から抜くと、なぜかうなじに触れてきて。そこからしゅるんと、何かを外した。
「・・・っ、な・・・に、して・・・」
「んー。何つーかまぁ、お仕置きの準備?」
「・・・ぉ、しお・・・・・・?」
「そ。お仕置きな」
――首に巻いてたリボン状のチョーカー。解いたそれを見せつけるみたいに目の前でひらひら揺らしてから、あたしの両腕を背中でまとめる。
するり。なぜかクロスさせられた腕に、細くて滑らかなベルベットの感触が絡まってくる。
何をされるのかわからなくて戸惑ってる間に、ぐるぐると腕を巻き止められて。
「あーだからまぁ、あれな。ソフトSMプレイ的な?俺以外の野郎に可愛い声聞かせちまったいけないメイドさんに、ご主人様としてきっちり躾けしとかねーと」
「・・・・・・っ!」
耳の中に甘い声音でささやかれて、ぞくぞくって震えが走る。肩も背中も動かせない。
肌に食い込んでくる細い布一本で、銀ちゃんはあたしの上半身の自由を奪ってしまった。
声の甘さに反して荒い手つきで腕を掴まれて、後ろへぐいっと引っ張られたら、自然と身体が反り上がる。
どうにかして肩越しに振り返ろうとしたけど、やんわりほっぺたを押し戻されて。
――縛られるなんて初めてだ。しかも後ろが見えないから、銀ちゃんがどうしてるのかわかんない。なんだか不安になっちゃうよ――
「な、ゃ・・・うそ、解いてぇ・・・っ」
「だめですー解きませんー。お前も昨日やっただろー、お仕置きしたじゃん俺に」
お返しな、これ。
なんだかすごく息苦しそうな、押し殺した呼吸を繰り返しながら、銀ちゃんは縛り上げたあたしの腕に唇を落とす。
窮屈な姿勢にされてる肩や背中、メイド服の広い衿口から覗くうなじにも、きつめに吸いついて熱を残した。
背後でごそごそ動く音がして、腕を引かれて上半身が反り返る。自然と顎が上がって苦しい姿勢にされたところで、ゆっくり腰を押しつけられた。
ぴったり閉じたままになってた太腿の間に、熱いものを挟み込まれる。
差し込まれた熱の塊のがちがちな硬さにどきっとして、顔も身体も強張ってしまう。あたしが戸惑ってるその間に、銀ちゃんは腰を前後に揺らし始めた。
すっかり濡れつくした太腿の内側を往復しながらぬるぬると擦って、じきにその動きが、太腿の付け根まで上がっていって、お尻を開いて――
「ぁ・・・!」
「・・・なー覚えてる。昨日言ったよなぁ、俺がろくに動けなくてもー、楽しむ方法なんて幾らでもあるって」
「はぅ、あ、ゃん、ゃ、ああっ、だめぇ、そこ・・・!」
「その中によー、こーいうのもあんだわ。まぁ、つってもこれは男のほうがイイやつだから、はイケねーかもしんねーけど」
イケなくていーよな。イカせちまったらお仕置きになんねーし。
ぐっと押しつけてきた腰を素早く引いて、またぶつけて、大きく前後させながら、銀ちゃんはあたしの潤んだ入り口に擦りつけてくる。
ちょっと触れられただけで感じちゃう小さな部分が潰れちゃうくらいぐちゅぐちゅ擦ったり、ずるりと引きずって刺激したり。
荒々しくて早い動きで往復させて、銀ちゃんにされるままになってとろとろとしずくをこぼすあたしを嬲って熱を上げる。
「ひ、あぁ・・・んちゃ、あぁ、ぎっ・・・っ!」
もどかしい快感に苛まれて、泣きながら腰をくねらせた。
ああ、まただ。いつもはやわらかく触れてくれるところを乱暴に乱されて、ちょっと痛いくらいなのに、がくがくと腰が震える。
抜き挿しされて少しずつ机の上へずり上がっていく身体を、縛られた腕をぐいっと引かれて戻される。
先だけずぶりと突っ込まれて、すぐに引き抜かれて、物欲しそうにとろりと蜜をこぼしたところをまた突かれる。
だけどそれ以上は入ってきてくれないから、涙が出るくらいせつなくって。
苦しいくらいに痺れるばかりで満たしてもらえないお腹の奥がきゅうっと疼いて、もうこれだけでイっちゃいそう――
「ぁあっ、あっ、これ、やらあっ、ゃ、めぇえ・・・っ」
「・・・っは・・・・・・、やっべ。・・・きもちー・・・・・・」
後ろに感じる銀ちゃんの息遣い、荒くてすごく苦しそう。
擦られてるところが燃えそうに熱い。縛られた腕を掴んでる手が熱い。
耳元を撫でる吐息が熱い。余裕がなさそうなその息遣いに胸がきゅうっと締めつけられて、あたしの呼吸もどんどんどんどん上がっていく。
ばさばさっ。
机の端で音がして、いいかげんに重ねられてた領収書や請求書が床へ落ちる。
銀ちゃんの動きが大きくなってきたせいであたしだけじゃなくて机まで揺れて、その振動でいろんなものがかたかた動いて鳴っていた。
さっき切ったばかりの古い電話。投げっ放しにしてあったペンや電卓。
パチンコの景品だって言ってた食べかけのチョコの箱に、側面に立て掛けてあった木刀――
あたし、こんなところでされてるんだ。
――いつも何気なく眺めてる居間の、銀ちゃんの机の上で。
縛られて、誰にも見せられないような恥ずかしいこといっぱいされて、それでもこんなに感じちゃってる。
そう思ったら押さえようがないくらい羞恥心が膨らんで、全身がかぁっと熱くなる。
机の上でかたかた鳴ってる小さな物音までひどく生々しい音に思えてきて、泣きじゃくりたくなる。耳を塞ぎたくなる。だけど腕を縛られてるから、そんなことすら出来なくって――
「・・・ふぇええ・・・やだぁ、こんな・・・だめぇ・・・っ」
「――なぁ、ここも触ってほしい?」
「・・・っ!」
骨ばった大きな手が、メイド服の脇の下を握りしめる。
大胆に衿口が開いたブラウスと、その上に重ねたピンクのひらひらしたエプロンドレス。二枚を一気に、胸の下まで引き剥がした。
すぐさまブラごと膨らみを揉まれて、すっかり固く尖ったところを布の上から捏ねられる。
その間も溢れた蜜で濡れた入口をゆるゆる擦られて、入ってきそうなのに入って来ない、ぎりぎりなところを刺激されて――
「ゃあんっ、やっ、ゃらぁ・・・!ふぇ、あぁんっ」
「ははっ、かーわいー声ー。もしかしてお前、これだけでイキそーになってんの」
「だ、だってぇっ・・・ぁっ、そこ、はぁん、さわっちゃ、あぁっ」
「ダメじゃねーだろ。ここイジられると弱ぇーもんなぁ、うちのメイドさんはぁ」
前へ伸びていった銀ちゃんの指が、とろとろに濡れたところを掻き分けるみたいにしてあたしを開く。
奥へ隠れているところに二本の指で大事そうに割り入って、いちばん敏感なところを直に摘まむ。
ぬる、って濡れた爪先で押し上げられたら、気がおかしくなっちゃいそうな衝撃で頭の中を埋められて――
「――あっっ。ぁあぁっ・・・!」
机に腰が乗り上げちゃうくらいに仰け反って身悶えしたら、――銀ちゃんの腰の動きが、ふっと止まった。
「――はーい、おしまーい。ここまでな」
それに続いて、指の動きもぴたりと止まる。
あと少しでイッちゃうところまであたしを押し上げた衝撃の波が、すうっと引いて冷めていく。
「・・・ぁ、あ・・・・・・・・・・・・・・・・っ、・・・ぎ・・・ちゃ・・・・・・っ・・・」
戸惑ったあたしは、乱れる呼吸を漏らしながら顔だけを後ろに向けようとした。
すると、耳の真横に汗が滲んだ顔を押しつけられて。
はぁ、はぁ、って荒くて苦しそうな息遣いをあたしの耳に押しつけながら、銀ちゃんはふっと小さく笑った。
ちゅく、ちゅく、って、舌で音を立てながら耳を舐めてくすぐってきて、それだけで背中のぞくぞくが止まらなくなったのに――
「・・・イかせてくれると思った?だーよなー。本気でよがってたもんなお前。俺ものえろ可愛い声聞きてーけどー・・・」
イかせちまったらお仕置きになんねーだろ。
いたずらっぽくて熱い声にささやかれて、涙で霞んだ目の前がくらりと揺れて暗くなる。
感じやすいところを摘まんでた骨太な指が、熱くぬかるんだ入口をぬるりと撫でながら離れる。
太腿に挟みこまれたものも、引き抜かれて離れてく。
なのに銀ちゃんに火を点けられたお腹の奥が、ずくずくと疼いて欲しがってるから――、
・・・やだ。どうしよう。腰が勝手に揺れちゃう。声が漏れちゃう。恥ずかしい――
「っう・・・っ・・・・・ぁ・・・ん、はぁ・・・っ」
「――なぁ。やだった?きもちよかっただろ、今のお仕置き」
「〜〜っ・・・・・・」
言ってやりたい。銀ちゃんのばか。ばかばかばか。
でも、お腹の熱が苦しくってつらくて、息が上がって言葉にならない。涙が伝って濡れた唇は、奮えるだけで動かない。
・・・・・・・・・・・・どうしてこんなことするの。おかげで気がおかしくなっちゃいそうだよ。
ついさっきまで、あたしは銀ちゃんのことしか考えられなくなってた。
死にそうなくらい恥ずかしいこともされたし、沖田さんの電話では少し怖い思いもしたけど、
・・・・・・でも、 ――何をされても嫌じゃなかったのに。
焦らされすぎて辛かったけど、泣いちゃうくらい気持ちよかった。もう少しでイっちゃいそうだった。
・・・なのに、いきなり落とされた――銀ちゃんに突き離されたような気分に落とされた。
さみしくってもどかしくって、恨めしい。だけど、そんなこと――銀ちゃんには恥ずかしくって言えそうにない。
ていうか銀ちゃん、いじわるだよ。
こんなふうに半端に止められちゃったら、あたしの身体はもっとおかしくなっちゃうのに――
「・・・・・・ぅうう、ばかぁ。・・・いじわる。いじめっこ。へんたいぃ・・・」
「あーはいはい、変態ですけど何かー。好きな子と一発ヤりてー時の男なんてみーんなこぞって変態ですけど何かー」
「〜〜〜っ。開き直るなぁっ」
「開き直ってねーって。・・・や、まぁあれだわ、ちょっと八つ当たりが混ざってるっつーかぁ・・・・・・誰かさんが意外と強情なせいで、切羽詰まってはきてるけどな」
よっ、と両腕でお腹を抱えられて、あたしは床に立たされた。
今度は銀ちゃんが机に腰を下ろす。開いた脚の間まで引っ張られて、向き合ったらほっぺたをあったかい手のひらに包まれる。
何度かゆるゆる撫でられて、くい、と上を向かされた。
目線を合わせた銀ちゃんの、火照った目つきが潤んでる。
こみあげる熱を息遣いといっしょに抑え込んでるような、苦しそうな顔してる。
額やこめかみには汗が細く流れてて、上げ気味にした顔の下に伸びる筋が浮き出た首にも、幾筋も雫が伝ってた。
「・・・。もう限界?イかせてほしい?」
指先にほっぺたをくすぐられて、服を脱がされて冷えてきた肩がぶるっと震える。
こんなことにすら感じちゃう自分が恥ずかしい。でも。だけど――
言われたとおり、限界だった。頭も身体も灼けそうに熱くてくるしくて、何もまともに考えられない。
腫れて熱を持ったまぶたを伏せてこくんと一回頷いたら、銀ちゃんは口を歪めて笑ってみせて。
「だーよなー。イったら少し楽になれるもんなー。けどよー、淫乱メイドさんはそれだけじゃ足りねーよなぁ・・・?」
朝から反応よかったもんなぁ、お前。
銀ちゃんの手が顔から首へ滑り下りて、肩をなぞって胸を握る。
やわやわと揉んでお腹を撫でて、曲線を描きながら腰へ伸びる。
お尻へ回った長い指が、やわらかい丸みに貼りついたガーターベルトを爪先でぴんと跳ね上げる。
ぱち、って弱く打たれた肌がぶるぶる震えて、下着を剥がれた腰の奥からつうっと雫が流れ落ちる。
もう座り込んじゃいそう。立ってるだけなのに膝が崩れちゃいそうだ。
腕を縛られてるせいでどこにもしがみつけないから、あたしは銀ちゃんの胸に身体を預けてしなだれかかった。
なのに――銀ちゃんは支えてもくれない。せつなくて苦しくて荒くなったお互いの吐息が、お互いの唇に触れてしまうほどの距離しかないのに。
腰回りを覆ってるガーターのレース部分の中に手を潜らせて、そこをもどかしいくらいゆっくり撫でて焦らしながら――
「――なぁ。どーしてほしい」
「〜〜やだぁ。そんな・・・言えな・・・っ」
「言えって。もっとおねだりしてくんね、メイドさん。俺に跨って、ご主人さまぁ、ナカまでちょうだぁい、って」
「・・・むりぃ。できな・・・っ」
「あっそ。じゃあ素直に言えるまでお仕置きな」
笑い混じりにそう言って、銀ちゃんは濡れた割れ目まで指を伸ばす。
際どいところを撫でてくる指は、だけど、深いところには触れてくれない。
それでも銀ちゃんに触れられるだけで身体はぞくぞくして喜んじゃうから、あたしは甘ったるい声を上げて逞しい胸に顔を擦りつけようとした。
なのに身体を離されて、ブラがずれてきた胸をぎゅうっと強く握られて、
「あぁん、っ」
「・・・ー。言えって。言わねーとずっとこのままだけど、いーの」
近づいてきた唇に、胸の先を咥えられる。固く尖ったちいさな部分を口の中でくちゅくちゅ揉まれて、抱かれた腰がぶるぶる震える。
――こうしてるだけで気が変になっちゃいそうだ。
ああ。でも。もしかして。 これって――もう変になってるのかな。
気が変になりそうだ、じゃなくて。もしかしたら・・・とっくにおかしくなっちゃってるんじゃないかなぁ・・・あたし。
もっと、もっとってはしたなく身体が疼いて、銀ちゃんがくれる気持ちよさで、冷静な思考なんてどこか遠くへ押し流されちゃってて。
ただ銀ちゃんだけ欲しがってて、触ってほしくて、どこにも隙間がないくらいに身体をぴったり重ね合せてるくらいの近さに居たくて。
それがすべてで、それだけで。他のことなんて、何も考えられなくなってきてる――
「――ぎ・・・・・・ちゃぁ・・・っ」
「違げーだろぉ。ご主人さまだろ、メイドさん。な。言ってみ」
「・・・・・・・っ」
半開きの唇を小さく動かしながら、潤みきった目で訴えた。
銀ちゃんはほんの一瞬、膨らみを揉みしだいてる手の動きを止める。
視線だけを向けて眺めたあたしの表情に何かを感じとったのか、咥えてた胸の先から唇を離した。
背中を撫で下ろした大きな手が、あたしの身体を自分のほうへ倒そうとする。
その腕の動きに逆らわずに全身でしなだれかかったら、ぐいっと太腿を持ち上げられて、机の上まで抱き上げられた。
銀ちゃんの脚を跨ぐ格好で膝立ちさせられて、そのままゆっくり、ゆっくり――じれったいくらいに遅い動きで、腰を落とすように促されて。
ぐちゅ、って下から突き上げられて全身が震え上がったら、銀ちゃんはそんなあたしを下から見つめて。
額に浮かんだ汗のせいで白っぽい癖っ毛が濡れた顔が、苦し紛れみたいにせつなそうに笑う。
腰を下ろそうとする腕の動きが止まって、中途半端に広げられたあたしの中から、じゅわりと蜜が溢れ出る。
銀ちゃんをほしがってるそこの奥が、きゅうっ、っとうねって狭くなる。
満たされないお腹の中が締めつけられるようなやるせない感覚に苛まれて、あたしは目の前の頭に顔を擦りつけて「やだぁ」って泣いた。
「っあ、ぁあん、ぎんっ、ちゃ、ぁっ」
「そーじゃねーだろ。ほら、どーすんの。もっと奥まで欲しいんだろ」
「〜〜・・・っ。ゃぁ。やだぁぁ、・・・・・・・・・・・・じ・・・・ま・・・あぁ・・」
「だーめー。んなちっせー声じゃ銀さん聞こえねーし萌えませんー」
「ぁ、ん、ふぁ・・・っ」
小さくて甘えた声が漏れて、びくびくと身体が跳ね上がる。
銀ちゃんの唇の高さとちょうど重なっていた胸の先を舐められて、ぺろ、ぺろ、って舌先でやわらかく撫でられたから。
「――なぁ、言えって。どーやってイカせてほしーんだよ、俺の淫乱メイドさん」
「っあ、ぁ、ごしゅじ・・・さまぁ。おねが・・・ぃ、・・・・・・・・・かに、ちょぅだぁ・・・っ」
「・・・・・・ははっ。やぁーっと言った。あ〜あ〜もう、ったくよーこの子はぁ・・・」
それまでは薄笑いを浮かべてた銀ちゃんは、なぜかがくりとうつむいて。はぁーっ、と深く溜め息をついた。
と思ったら、あたしをぎゅーっと抱きしめる。馬鹿力な腕で背中がしなるくらい強く抱かれたら、身体中の酸素を絞り出されたみたいに苦しくなった。
「・・・・・・ぎん、ちゃん・・・?」
おそるおそる銀ちゃんに呼びかけてみる。返事がないから、銀ちゃん、ってもう一度呼びかけてみる。
すると、あたしを抱きしめたままでしばらく動こうとしなかった腕が、急に力を取り戻した。腰をぐいっと下ろされて――
「――あっ、〜〜っあぁっ」
「・・・っだよ、これじゃあどっちが焦らされてんだかわかんねーよ。てか、おかげでこっちは暴発寸前だっつーの・・・――っ、」
「〜〜っ、ひ、ぁ、あっ、ゃっ、・・・あっ、ぁああんっ!」
途中で止まってた銀ちゃんの先が、勢いよくあたしを広げて進んでくる。
ぐちゅぐちゅと音を鳴らしながら何度か往復させて、最後に狭くて熱い奥までを一気に貫く。
弱い電流みたいな何かが、銀ちゃんにぐちゅっと押し込まれたところから全身へ突き抜けて広がる。
同時に目の前がまっしろに染まって、抱きしめられた身体が震えながら反り上がった。
「〜〜〜あぁぁああっ」
「ぁあ、すっげぇ・・・焦らしたおかげでめちゃくちゃ締まるし、っ」
「ぁっ、めぇっ、ぎん、ちゃあ・・・っ!」
挿れられた途端にイっちゃったのに、銀ちゃんは構うことなくあたしを責めた。
下からぐちゅ、ぐちゅって突き上げられて、お腹を奥まで貫いた塊で掻き回される。
伸びてきた大きな手に胸を揉まれて、痛いくらいに握られて、なのにそれが気持ちよくって、もう涙が止まらない。
自分が何をされてるのかもわからなくなりそうなくらい感じさせられて、切羽詰まってきた銀ちゃんの荒い動きに揺さぶられる。
あ、あ、あ、あ、あっ、って止まらない喘ぎ声に喉を震わせて泣いてたら、唇を深く塞がれる。
強引に奥まで絡んでくる舌の動きも激しくて、大きく開かされた唇から唾液がつうっと滴り落ちる。
捻じ込まれた舌にめちゃくちゃに揉まれて、くちゅくちゅ、くちゅ、と籠った水音が漏れる。
その間も中を捏ねるみたいに掻き乱されて、かと思えば動きが変わって、下からずんって突き上げられる。
んんっ、んん〜っ、って悲鳴みたいな嬌声を上げても、銀ちゃんにぜんぶ呑み込まれてしまう。
それでも声が止まらなくって啜り泣きながら喘いでいたら、銀ちゃんは動きを少しずつ弱めていって。
やがて腰の動きが止まって、つうっと光る糸を引いて唇が離れて――
「・・・ばぁか、かわいー声出すなって。やめてくれる。そんなん聞いたらもう、止めらんねーから」
「・・・・・・っ」
はぁ、はぁ、って息を切らしながら低くつぶやいた顔に、おもわずぼうっと見蕩れてしまった。
汗に濡れた前髪の影から恨めしそうに睨んでくる銀ちゃんの表情がせつなげで、息遣いが苦しそうで。
悔しそうに不貞腐れながら言ってくれた、理不尽だけど甘い言葉が嬉しくて。
きゅんとしたあたしは余計に感じちゃって、寝間着の衿が大きく肌蹴た胸に顔を埋めた。
汗が滲んでしっとりした肌はだいすきな人の匂いがして、こうやって触れてるだけでほっとする。
ほんとは銀ちゃんに抱きつきたい。だけど縛られたままの腕じゃ無理だから、息苦しさをこらえながら涙声を絞り出した。
「・・・ぎゅって、してぇ」
ん、って苦しそうに短く漏らした唇が、火照った目元にやわらかい口づけを落としてくれる。すぐに背中を抱きしめられる。
熱い腕の中で閉じ込められながら小刻みに揺さぶられて、髪や背中を撫でられる。
すっごくしあわせな気分になれた。
「・・・・・なぁ、いい」
「・・・っ?」
「お前もーすぐアレだし。ちょうどゴム着けてねぇし。・・・いーよな今日は、中に出しても」
「――え・・・っ、やっ、だめぇっ、」
「・・・・・・。あ〜〜・・・だ〜からよ〜〜・・・・・・あのよーメイドさぁん」
ほんっっと、わかってねーよなぁ。
はぁーっ、と銀ちゃんが呆れたような顔で溜め息を吐く。
どうしてそんなこと言われちゃうのかわかんなくて肩を竦めてたら、眉間をひそめた顔を寄せられて、ち、ち、ち、って舌打ちされた。
汗に濡れた大きな手のひらが、あたしのほっぺたをやんわり包む。
とろりと濡れてどきっとするほど色っぽくなった目が、かすかな光を放ちながら嗜虐的に笑って。
「あのな。ケダモノ化した野郎の前でんな不安そーな顔したら逆効果だって。な?
調教中のご主人さまとしてはよー、そーいう顔されっと却ってそそられるから。散々イカせて滅茶苦茶にして思いっきりぶちまけてー、とか思っちまうから」
「――っあ、ゃだ、待っ、まっ、」
「無理。もう限界。待てねぇって」
「〜〜〜ぁああっ」
急に銀ちゃんの動きが激しくなる。
大きな仕事机がみしみし揺れる。二人ぶんの体重でぎしぎし軋む。張りつめた硬さでいっぱいにされて収縮してるお腹の奥に、下から強くぶつけられる。
・・・・・・だめ。お腹の中に出されたら、そんなことしたら・・・だめなのに――
「っっゃああっ、ぁっ、あ、あ、あぁんっ」
「っあ・・・これぁ・・・さすがに、痛てーかも・・・」
苦笑混じりに銀ちゃんが漏らして、あたしの腕を掴んだ手にぐっと力が籠る。
独り言みたいな言葉の意味もわからないまま、後ろ手に縛られた腕を握り直される。
拘束されてるせいでバランスが取れない身体を、腰から大きく持ち上げられて、引き下ろされて。
いつもは当たらないようなところにぶつけられて、ぶつけられるたびに頭が痺れる。何の言葉にもなってない甲高い声が喉から飛び出る。
早い動きでぐちゅぐちゅと擦られて、蕩けきったあたしの中は熱いしずくを溢れさせた。
繋がれたところからとろとろと、粘液が太腿へ漏れ出てくる。銀ちゃんの太腿までぬるぬると濡らす。
それで肌の滑りが良くなったせいで、銀ちゃんの腰の動きはもっと大きくなってきた。
両腕であたしを持ち上げて、奥から先端が抜け出る寸前までを往復させる。
たっぷり刺激されたせいできゅうっと絡みついてくるあたしのいやらしさを楽しんでるみたいに、狭い壁の中の動きを堪能してるみたいに行き来する。
なのに感じやすいところはわざと避けて擦り上げてくるから、もどかしくって泣きそうだ。
熱い胸から顔を上げて、ぼうっとこっちを見つめてた伏せ気味な目と視線を合わせる。だけどどう言ったらいいのかわかんなくて、眉が下がった涙目で見つめ返した。
そしたら腰を抱きしめられて、――身動きできない状態にされたら、銀ちゃんは欲しがってびくびく疼いていたところを先端でぐりぐり抉ってきた。
「っあぁ〜〜・・・・・・っ!」
甲高い声で泣きじゃくりながら達したら、強すぎる快感から逃げようとして腰が浮く。
それもダメだって言わんばかりに、ぐいっと腕を引かれる。強い力で引き戻されて、よろめきながら落ちた身体の中心が硬い先端で穿たれる。
そのまま腰を抱きしめられて休みなく穿たれるたびに、あたしの腰は乱暴な銀ちゃんの動きに押し上げられて跳ねるようになった。
「あぁ。・・・ったく、この子はよー・・・」
面倒そうに、だけど、どこかうっとりしてるような声で銀ちゃんが唸る。
息苦しそうなのに恍惚とした表情が、ゆっくりと視線を上げてあたしを見つめた。荒い吐息を漏らす唇が愉快そうにふっと笑って、
「――すげぇ、可愛い」
「ああぁ、あっ・・・!」
普段よりうんと感じやすくなってるあたしの身体は、吐息みたいなその声を素直に喜んでぶるりと震えた。
嬉しさが手足の先まで広がっていって、銀ちゃんをひどく締めつける。
銀ちゃんが腰の動きを止めても全身がぶるぶる震えちゃって、涙が止まらなくなって――
「・・・やっぱすげぇわ、お前。やらけーし、吸いついて離さねぇし・・・・・・・つーか、えろすぎだろ。銀さんとろけそーなんだけど」
最高、って掠れた声でつぶやいた銀ちゃんに、熱い胸板に押しつけるみたいにして抱きしめられる。
はぁっ、はぁっ、っと荒げた吐息に耳を撫でられる。
感じやすい耳の中を掠めたその息遣いで身体が震えて、もっとちょうだい、っておねだりするみたいにいやらしく銀ちゃんを締めつけてしまう。
纏わりつくあたしを振り切ろうとするみたいに銀ちゃんが腰を引いて、また突き上げられて、お腹の奥まで苦しいくらいに埋め尽くされるのが気持ちよくて、じゅわりと蜜が溢れ出して、
「ふぁああん。ぁ、あぁ・・・〜〜っ」
「・・・・・・なぁ、わかる、えっちなメイドさん。ちょっとやらしーこと言っただけでヒクついてんだろ、お前のここ。
お前がいやいや言ってても、身体はすげー欲しがってるんだって」
耳の中に甘い声でささやきかけられてるのは判るのに――、何を言われてるのか、よくわからない。
声は聴こえてるのに、わからない。感じすぎて何も考えられなくなっちゃってる。
あたしの中を貪ってる熱はがちがちに硬くてびくびく疼いてて、今にも破裂しそうなくらい張りつめてて。
――だめ。・・・・・・だめなのに。だめだよ、これ以上気持ちよくなっちゃったら、だめなのに――
「〜〜ぅ・・っく、・・・・ひ・・・・・・・ゃぁあ。だめぇ。なか、だめえぇ・・・っ」
「だーめー。だめですー銀さん認めませんー。さっき言ったよなぁ?してって言ったじゃん、お前」
「ぅ、っあ、はぁんっ、やらぁ、ぃっ・・・て、なぁ・・・っ」
「言ったじゃん。言っただろ、さっき。ご主人さまぁ、ナカでしてぇ、って」
「っっ、っあ、だめっ、だめえぇ・・・!」
「大丈夫だって。先月も試したけどー、出来なかったじゃん。大丈夫だっただろ」
「っっ、ん。・・・ふ・・・・・・くぅ・・・っ・・・」
ちゅ、って宥めるみたいに唇に吸いつかれて、熱い舌で口を割られて。ぐちゅ、ぐちゅって唾液を絡めながら舌を奪われて、喉の奥まで口内を味わわれる。
気持ちよすぎてとろんとした表情で目を閉じたら、あたしを下から突き上げる動きが弱まっていく。
背中を抱きしめてくれる腕の仕草も、大事そうに包み込むようなやさしい動きに変わっていって。
「・・・まぁ、別にアレだわ。万が一出来ちまっても、それはそれで大丈夫っつーか結果オーライっつーかぁ・・・・・・」
上下に腰を揺らめかせながら啄むだけのキスを続けた銀ちゃんは、なぜか途中から言葉を濁した。
不思議に思って目を開けたあたしの視線を避けるみたいに斜め下を向いて、ごにょごにょと何かをつぶやいて。
だけどそのうちに顔を上げて、だるそうに伏せた目であたしをじとーっと見つめてくる。
かと思えばぎゅーっと眉を寄せて、こつんとおでこをくっつけて。ぐりぐり押しながら、ぼそぼそ不満そうに切り出してきた。
「・・・つーかよー、え、本気で嫌なわけ。中出しイヤとか言われたらマジで銀さんキツいんだけど。傷つくんだけど。
なーなー、ほんとに嫌?こないだもイクまではイヤイヤ言ってたけどー、いつもよりきもちよさそーにしてたじゃんお前」
「〜〜〜っ・・・」
「それにお前さぁ、俺のもんのくせに、他の男に電話でやらしー声聞かせちまったいけないメイドさんだもんな。たっぷりお仕置き、しとかねーと」
「・・・ってぇ、ぁれ、はっ、銀ちゃ、出ろ、て・・・!あっ、あっ、ぁあんっ」
大きく腰を持ち上げて濡れた音を上げながら引き抜かれて、全部引き抜かれる寸前でまた戻されて、一番奥をずぶりと突き上げられる。
気が遠くなりそうなくらいに何度もそれを繰り返されて、小さく響いてたテレビの音は、狂ったような淫らな声とじゅぶじゅぶと籠った粘液の音で掻き消されていった。
「――ぁ、あっ、あっ、あっ、あん、あん、ぁあんっ、っひ、ああぁっ、」
「・・・、なぁ、いーだろ。いいって言って。――・・・・・・っ」
余裕を失くした唸り声で呼びながら、銀ちゃんは自分勝手で強引な律動で責めてくる。
あたしのお腹を両腕できつく締めつけると、腰の振れ幅を大きくした。濡れた肌と肌が、ぱんっ、ぱんっと高い音を立ててぶつかり合ってる。
蕩けた中で膨らみきった銀ちゃんは、燃える杭みたいに熱く滾ってる。手足の先まで快感に犯されてびくびく震えるしかなくて、泣きながらかぶりを振った。
「・・・・・〜〜あぁ・・・っ、も、だめええ・・・・、だめなの・・・っ、おかしく、なっちゃぁ・・・・っ!」
――だめ。だめなのに――
だめって言いたいのに、ちっとも言葉にならない。
いつもより動きが激しいせいで、頭の中がぐちゃぐちゃで、感情までぐちゃぐちゃになって。
銀ちゃんが隠してた獰猛さを身体中に感じさせられて啼くだけで、他に何もできなくって――
なのに銀ちゃんは追い詰めてくる。
きもちよくってたまらなさそうな、恍惚とした表情で見つめながら。
腰をゆっくり上下に揺らして、ぐちゅぐちゅと泡立った音を鳴らしながら。
涙混じりの嗚咽とあられもない喘ぎ声が交互に漏れてくるあたしの唇を、すごく壊れやすいものに触れるみたいにそうっと塞ぐ。
瞼の縁に溢れたしずくを、ちゅ、って吸って、後ろできつめに縛られた腕を、労わるみたいにそうっと撫でて。
「・・・なーなーー。ほら、言ってみ。は誰のもんだっけ」
「ぁ、あぁんっ、・・・・・・・・・ぎ・・・ちゃ・・・・のぉ・・・っ」
「だろぉ?だったら正直に言えって。ほんとは好きだろ。欲しいだろ、・・・のここに、俺の」
「ふぇぇ・・・、ん、あぁ・・・・・・・・・・・・、す・・・きぃぃっ。銀、ちゃ、の、あっ、ぁああ」
だめって思うのに、泣きじゃくりながら言ってしまった。だめって思うのに腰が揺れる。
だめ、しちゃだめ、って思うのに、お腹の中でどくどくと脈づいてる快感に逆らえない。
こんなのだめって思っても、銀ちゃんに服従させられちゃう。羞恥心で頭の中が焼け焦げそうになってても、止められない。
銀ちゃんが欲しくてたまらなくて、――それしか考えられなくて――
「――ん。俺も好き。つーか、お前より俺のほうが好きっていうかー、俺のほうが惚れてんだけど」
眉間のあたりはきゅっと締まって切羽詰まってるくせに普段のだらしなさは残ってる顔が、こめかみや喉元に光るしずくを滴らせながらあたしを見つめる。
嬉しそうな笑いに緩みきってる唇がゆっくり動く。二人きりの時しか聴かせてくれない、甘い声音でささやいた。
「・・・・・・ー。今日は俺だけ見て、身体中で感じて。俺がのこと、どんだけ好きか――」
「ゃ、あぁ、っあぁ、あああああぁ・・・っ!!」
それからも激しく穿たれ続けて、最後に腰をずんっと下ろされて、ぶつかったところから熱い飛沫が机に散る。
一番奥に打ちつけられて、声も出ないくらいの快感と痺れで全身がしなる。涙で濡れた唇が、肩や爪先がぶるぶる震える。
っっ、って歯を噛みしめて息を詰めた銀ちゃんが達して、もう一度深く圧しこまれて――
「・・・・・・・・・・・っあああぁ・・・・・・ぎ・・・ちゃ・・・・・・ぎん、ちゃぁああ・・・・・・っ!」
びくびくと蠢いて銀ちゃんを締めつけてる中を遡って、熱いものが流れ込んでくる。
荒々しい勢いをお腹の底に感じながら、泣きじゃくって何度も呼んだ。
じっとり汗ばんだ胸に抱き寄せられて、すぐに唇が重なってくる。
すごく喉が渇いて飢えてる人みたいな、身体中の水分や酸素を奪い取られそうなキスをされて。
「――なぁ、俺のメイドさん。今日はもっとご奉仕してくれんだろ」
唇が離れた途端に色っぽくて妖しい目つきでおねだりされたら、それだけですごくどきどきしちゃって。
ほんとは少しこわいのに――これ以上銀ちゃんの言う通りにしたら、身体も頭もめちゃくちゃにされちゃいそうって思うのに
――拒むどころか、気だるくて甘い雰囲気の笑みを浮かべて見つめてくる顔から目を逸らせない。
まるで銀ちゃんの視線に縛られてるみたいに、ただただぼうっと見蕩れてしまう。とてもじゃないけど、だめ、なんて言えなかった。
そのまま半分引きずられるみたいにして、隣の寝室へ連れ込まれてしまった。