「・・・・・・・・・ちょっ。・・・な・・・に、これ、・・・っ」
完全に凍りついてた頭にじわじわーっと血が昇っていって、かーっと顔が火照ってくる。
壁を通して中から響いたのは、はぁ、はぁ、って苦しそうに繰り返す、荒くて低い息遣い。それから、甲高い叫び声。
さっきは猫の声に聞こえたけど、こーやって聴くとどう聴いても猫の声じゃない。人の声。ていうか、女の人の声だ・・・!
・・・ど。どうしよう。びっくりしすぎて声も出ない。身体も動かないよ。10秒くらい頭の中がフリーズしちゃってたよ。え、なに、あの声。
鼻にかかった甘い声だった。同性のあたしでもどきっとしちゃうくらい色っぽい声が、震えたかんじで苦しそうに叫んでた。
いい、いいっ、ってせつなそうに繰り返して、それから、歯を食い縛って何かこらえてるみたいな・・・・・・、
こ。声にならない悲鳴っていうか。あんな声が出ちゃうとき、って、・・・・・・・・・・――
「〜〜〜〜〜〜っっ!!!??」
「んぁ、ー?んだよ、どーしたぁ」
震える口をぱくぱくさせながら壁から飛び退こうとしたんだけど、驚きすぎたせいで腰から力が抜けちゃってた。
ひぅわわわわわわ、ってあわてて這いつくばって逃げようとしたら、わしっ、て後ろから襟首を掴まれて、
「やだああっ銀ちゃん離してっっ、かかかか帰るっ、今すぐ帰るぅ!」
「いやいや落ち着けって、無理だって。この雨ん中に出てみろよ、特売のティッシュが一瞬で全滅すんだろぉ」
はいはい戻って、って銀ちゃんにずるずる引きずられて、胡坐をかいた脚の中にすとんとお尻を落とされて。
あたしをどーにかして宥めたい銀ちゃんは「はーいちゃん落ち着いてー、大丈夫大丈夫ちょっと呼吸整えよーぜ、
はいっ、ひっ、ひっ、ふー、ひっ、ひっ、ふー」なんて着物の上からあたしのお腹をなでなでしてくるけど、
今のあたしにはこの使い古されたおっさんギャグにツッコんであげる余裕すらないよ・・・!
「〜〜っぎ、ぎんちゃんのばかばかばか、ばかぁあああっ。やだもうっひどいぃぃっ、こんなの聞いちゃったらもうお嫁にいけなぁああいっっ」
「はぁ?いやいやいや、どーってことねーだろぉこのくれーよー。さー、俺が夜中に見てるAVの声とかふつーにスルーしてんじゃん」
「あれはお芝居でしょ、演技でしょ!?〜〜ここっっっこれはあれとは違うしっ、な、生モノだしいぃぃ!」
「ははっ、生モノって。なーんかエロくね、その言い方」
「〜〜〜う、うるさいぃっ。ぎぎぎ銀ちゃんのばかあっっ、もうしらな――っっ、ひ、っっっ、きゃ、ちょっ!?」
「はいはい暴れない暴れない、大声出さねーの」
邪魔しちまうだろぉ、なんて言いながら、銀ちゃんはまだ半分残ってるすいかバーを縁先にぽいっと放り捨てた。
あたしをぐいと引っ張って、自分の胸に押しつける。むぎゅっと顔を押し付けたいつもの黒い服は湿ってて、
ほっぺたにしっとり貼りついてくる。わわっ、てあたしは全身を竦めて、引き締まった胸から顔を逸らした。
むせかえっちゃいそうなくらいの男の人の匂いが、服を通して漂ってくる。
雨に濡れた銀ちゃんの髪や汗の匂いが濃くなってるせいだ。ふわあっとあたしを包んだその匂いのせいで、
最近あったことが一瞬で頭に浮かんでどきっとした。例えば、そう、
・・・お風呂上りの銀ちゃんに急に抱きつかれたときとか、肉体労働系の依頼で一日中汗掻いてた銀ちゃんに急に抱きつかれたときとか、
・・・・・・・・・お布団の中で息を乱して汗だくになってる銀ちゃんと、とても人には話せないことをしてたときとか。
ぼうっとした目で見下ろしてくる銀ちゃんの苦しそうに笑う表情とか、あたしに触ってくるときの、
力強いのにしなやかでいろっぽい手つきとか・・・・・・とか。
「おーい、ー?ちゃ――ん?どーしたよ、もう暴れねーの?急に大人しくなったじゃん」
「・・・・・・。な。なんでも、ないっ」
・・・なにこれ。どうしよう。こんな場所なのに、どうしよう。
思い出したら、お腹の奥がきゅんとした。なんだか身体が芯から熱いよ。その熱さが気になって黙って座っていられなくて、
もじもじと黒い服の胸元を掴んで、顔から倒れるみたいにして硬い胸板に体重を預けた。
濡れた腰を小さくもぞもぞさせてたら、泣きたいような気分になった。あたしを抱えてる銀ちゃんの脚に、
変な身じろぎしてるのが伝わらないかなぁってそわそわする。そうしてる間に、壁の向こうからまた女の人のあられもない声が響いてきて、
「・・・っ!」
驚いてびくっと肩を縮めたら、銀ちゃんの手があたしの肩を撫で始める。大丈夫、ってやさしく宥めるみたいな手つきが
肩から背中に降りていく。濡れた着物の上からあたしを丸く撫で回しながら腰のほうまで滑っていくと、そこでぴたりと動きを止めた。
ちょっと首を傾げながらゆっくり近づいてきた顔が、唇を吊り上げてにいっと笑う。ぽた、ぽた、と雫が垂れる白っぽい髪で隠された、
とぼけきった半目もおかしそう。銀ちゃんはすっかり動揺しちゃってるあたしの反応を試してるみたいに、目をまっすぐに、じーっと見つめて、
「なーー、今銀さんちょっとやべーんだけど。抱っこしてたらよー、たまんなくなってきたんだけど」
「・・・ぇ、や、ちょっと、ぎ、銀ちゃ・・・っ!」
あたしの顎をそっと掴んで、くいっ。上向かされた視界は、おかしそうに目を細めた銀ちゃんの顔でいっぱいになった。
ー、って普段通りのやる気のなさそうな声であたしを呼んだ唇が、くくっ、と笑う。その吐息があたしの唇に触れる。
熱い。そう感じたら、心臓がとくん、と大きく跳ねた。
「この雨なら誰も来ねーし、誰も見てねーし、大声出したって雨で消えちまうしよー。
・・・なぁ、いーだろ?の可愛い声、ここで銀さんに聞かせてくんね」
「〜〜〜っ!?ばっ、ばっかじゃないの!?やだ、絶対やだからねこんなとこでっっ」
「ぇええ〜〜。っだよぉケチぃ」
なんて拗ねたふりして文句つけながら、余裕しゃくしゃくで笑いかけてくる顔が恨めしい。きーっ、って爪で引っ掻いてあげたいくらい憎たらしい。
なのに何も言い返せない。ずるい。ずるいよ銀ちゃん。こんな時に限ってとびきり甘い声なんか出してくるから・・・!
「じゃあちゅーだけならどーよ」
「〜〜〜〜・・・っ」
言うより早く銀ちゃんが動いて、目の前がふっと暗くなる。急だったから逃げられなくて、あわててぎゅっと目を閉じて、
――ちゅっ。
やわらかい熱が、ふわっと頬に落ちてきた。すぐにその熱は離れていったから、もう終わりなんだってほっとしたのに、
そうじゃなかった。すぐに銀ちゃんは顔を寄せてきた。ちゅ、ちゅ、ちゅ、って何度も軽く、半分開いたままの唇をやわらかく啄む。
されるままになってぼうっと頬を赤らめてるあたしを、銀ちゃんはすっとぼけた笑顔で眺めてた。軽く肌を吸うだけのキスを繰り返してから、
ほっぺたやおでこ、耳たぶやこめかみにも次々と触れる。顔にはキスの雨を降らせながら、腰を抱いた手でお尻を撫で回しはじめた。
「ひぁっ。ち、ちょっ・・・!」
「なぁ、もっとしてもいい?ちょっとだけならいい?それもやだ?誰も見てねーんだし、そのくれーならいーだろぉ?」
「・・・ぃ、いーだろぉって、・・・〜〜〜っ、ゃ、ぅ、・・・もぉ・・・っ」
(いーだろぉも何も、とっくに他のこともしてるじゃん!)
って叫びたかった。でも、そんなの恥ずかしくってとても口にできない。
円を描いて撫でたり、むにむにと揉んだりしながら銀ちゃんの手は動く。
お尻の割れ目まで指を伸ばしてくるやらしい手つきに驚いて腰を浮かせようとしたんだけど、馬鹿力な腕にがっちり抱えられてるせいで動けない。
・・・やだ。だめなのに。そんなに撫でられたら。そんなふうになぞられたら、・・・もっと熱くなっちゃうよ、お腹の奥が。
腰だけじゃなくて背中までぞくぞくして、もっと変なかんじになっちゃうのに・・・!
あたしのお尻の丸みを好きなだけなでなでしてた銀ちゃんの手が、今度は前へ回ってきた。
着物の合わせ目へ這っていく。乱れた合わせ目からするりと襦袢の中まで侵入されて、ひゃあっ、てびっくりして跳ね起きる。
何するの、って銀ちゃんの顔を見つめたら、
「なー、ー。ちゅーだけならいい?だめ?」
「・・・っ」
「あれっ、今日は言わねーのいつものアレ。バカとかダメとか最低とか死ねとか言わねーの」
顔を赤く染めて、でもむっとして口を尖らせてたら、おーい、どーなの、って銀ちゃんはあたしのほっぺたをふにふにってつついた。
それでも唇をきゅっと結んで黙りこくって、上目遣いで睨んでいたら、
「・・・・・・ふーん、いーんだ。んじゃ、遠慮なく」
にんまり笑いながら抱かれた腰を引き寄せられて、顔どころか頭の中までかぁっと火照る。
頭を下げてきた銀ちゃんのおでこが、あたしのおでこにこつんと当たる。濡れた癖っ毛の先にこめかみをざわざわくすぐられて
ぁ、って息を詰めたら、ちょうどその瞬間に銀ちゃんと唇が重なった。ふわ、とやさしく重なったと思ったら、ちょっと離れて、
またすぐにくっつく。ちゅ、と吸いつかれて、ちょっとだけ離れて、またゆっくり吸いつかれて――
「・・・・・ん・・・っ」
「な。ちゅーするだけならいーんだろ。・・・もっとしても、いい」
「・・・っ」
子供をあやすみたいに髪を撫でながら、ひそめた声が尋ねてくる。銀ちゃんの後ろではあいかわらず女の人の甘い喘ぎ声がするし、
目が合ってるから顔から火が出そうなくらい恥ずかしかったけど、こくん、って戸惑いながら頷いた。
ん、って銀ちゃんが嬉しそうに頷き返す。あたしのご機嫌を窺ってるみたいな甘いキスは、何度も何度も、すごく丁寧に繰り返された。
やわらかく触れられるきもちよさで、強張り気味だった身体がほわんと緩んでくる。あたしがきもちよくなってるのが
伝わったのか、銀ちゃんは唇を触れ合せながら小さく笑った。腰を抱いた手に力を籠められて、もう片方の腕も背中に回される。
胸と胸が重なるような格好で、ぎゅうって抱きしめられる。お腹の空気をぜんぶ吐き出しちゃいそうなくらい強く、ぎゅーってされた。
苦しい、ってつぶやいて、ふぁ、って大きく息を吸い込む。するとそれを待ってたみたいに、銀ちゃんは急に動きを変えた。
後ろ頭を片手でぐっと押さえられて、噛みつくみたいなキスで唇を奪われる。ぐにゅって口の中へのめり込んできた熱いものが、ざらざらした感触であたしを舐める。
――舐められて、吸われて、尖った先でなぞられて・・・口の中から食べられていくみたい。
んぅう、ってかぶりを振って離れようとしたら、頭を掴んでる手でやんわりと、だけど力強く押し戻される。
んっ、て唇を強く押しつけてきた銀ちゃんがもっと奥のほうまで押し込んでくる。ぴちゃ、くちゅ、って濡れた音を立てながら深く絡められて、
絡めたままきゅうっと引っ張られて、くるしくてせつないのにきもちいい。感じすぎて気が遠くなりそうなくらいに、いろんなところを撫でられた。
混ざり合った唾液がつうっと喉まで流れ込んできて、こくん、ってそれを飲み干したら、
頭を掴んでた銀ちゃんの手が前のほうへ動いてくる。ほっぺたを撫でて、首筋を撫でて、それから、
「あ・・・!」
びくん、て身体が震え上がった。濡れて肌に貼りついてる着物の衿元を強引に割って、銀ちゃんの手は下着ごと胸を掴んだ。
むにゅ、むにゅ、って濡れたブラのカップがずれちゃいそうなくらい大きく揉みしだかれる。最初はただただびっくりして、
抵抗できずにその手を見つめるしかなかったんだけど、ざああ・・・、って降り続いてる雨の音と、
ああ、あぁん、って悩ましく響く女の人の声のおかげではっとした。急に我に返って、目の前の景色を呆然と見つめる。
・・・・・・・そうだ、そうだよ、すっかり銀ちゃんに流されそうになってたけど、ここって外だ。いつもの万事屋の居間じゃなくて、
銀ちゃんの部屋でも、あたしの部屋でもない。着物をぐちゃぐちゃにされたあたしの姿を隠してくれるものも、遮ってくれるものもない、完全に屋外。
しかも神社。こんな大雨だし、いくら待っても誰も来そうにないかんじのさびれた神社だけど、
・・・・・・でも、それでも、曲がりなりにも神社だよ!?誰に見られたっておかしくない場所なのに・・・!
「〜〜〜〜ゃ、やだぁ!」
あたふたしながら掴まれた胸を捩って、どんっ、って銀ちゃんを押し返す。
だけど、この程度で懲りてくれるような銀ちゃんじゃない。あたしの目を覗き込んだ顔は、悪びれるふうもなく笑ってた。
「あーはいはいごめんごめん、まーまー怒るなって」なんて軽い調子であたしを宥めながら、キスでとろりと濡れた唇をごしっと手の甲で擦る。
何気なくて自然だった仕草の色っぽさや、瞼を伏せて自分の手の甲を眺めてる銀ちゃんの姿や、すこし荒れてきた息遣いの熱さにどきっとした。
・・・あらためて思い返すと、さっきまでの自分が信じられない。ついさっきまで、あたし、キスしてたんだ。
身体中撫で回されて、胸にも触られてたんだ。・・・こんなところで、銀ちゃんに。
そう思ったら恥ずかしくってたまらなくて、どうしたらいいのかわかんなくなる。・・・でも、銀ちゃんから目が離せない。
「じゃあ、ちゅーだけな」
何でもなさそうに言いながら、簡単にあたしを床へ押し倒す。
えっ、って目を丸くしてる間に、背中が冷えた木の感触で塞がれた。ええっ、っておろおろしてる間に、
銀ちゃんはさっき腕を突っ込まれて緩みかけてた衿元に手を掛けた。ぐいっ。勢いよく引かれたせいで帯まで緩む。
引き剥がすみたいにして胸元を肌蹴られて、ブラも肩紐からぐいっとずり下げられて、雨水で濡れた肌が外の空気に晒される。ぞくっと寒気が走ったときには、
もう銀ちゃんはあたしに齧りついていた。
ふる、って揺れながらブラから飛び出してきた膨らみの、つんと尖ったちいさな先へ――
「あ・・・!やぁ、ぎ、ぎん・・・っ」
「ん。・・・・・・わーってるって。ちゅーだけならいーんだろ。つまりあれな、手はダメだけどー、口ならいーってことで」
「っち、ちがっ、そんな・・・んっ。ふぁ、・・・ゃ、んんっ」
ちゅうって強く、左の胸に吸いつかれる。口の中に含まれて、かり、ってそっと甘噛みされる。
ぺろぺろ舐め回されて転がされて、濡れて冷えかけてたあたしの肌の、そこだけが熱くなっていく。そこから全身に熱が伝わってく。
熱と一緒に胸の先を弄られる気持ちよさも伝わって、どんどん感じやすくなっていく。
じゅ、って唾液を絡めてきつく吸われたころには、真っ赤になったそこは自分でもわかるくらいに固くなっていた。
今度は右の胸に銀ちゃんの手が触れて、くるくる、って手のひらで先を弱く転がされる。
どうしよう。だめ、って言えない。弄られるたびにお腹の奥が疼いちゃう。もじもじと擦りあわせた脚の間が、とろんと蕩けて熱くなる。
あたしはびくびく腰を揺らしながら、口を押えて必死に声をこらえようとした。でも、銀ちゃんが手のひらで右胸を弄りながら、
舌先を使って左の胸の先を何度も弾くから――背筋を走るぞくぞくが止まらなくなる。涙をこぼしながら、だめ、だめって首を振った。
やだ。だめ。もう、声が我慢できないのに――
「〜〜っく、も、やらぁ、ひ、ぅう・・・っ」
「んだよ泣くなって、ちょーっと触っただけじゃん。このくれーならいーだろ?これとキス以外は何もしねーから。
の可愛いとこ、舐めたり弄ったりしてやるだけだから。それならいーんだろぉ?」
「や、やだぁっ、やめっ、――っあ・・・!」
「あーあー高い声出しちゃって。どーしたよ、もう気持ちよくなっちゃった?まだキスしかしてねーのにぃ」
あたしはもう震えが止まらなくって大きな声で泣きじゃくっちゃいたいくらいなのに、
ぺろ、ぺろ、って尖ったところを舐めてる銀ちゃんの声は嬉しくってたまらなさそうに笑ってた。
右胸をふにゅふにゅって弱く揉み回しながら、もう片方の手はお尻や太腿を着物の上からゆるゆる撫でる。
ずっと咥えてた左胸の先に、ちゅ、って吸いつくキスをする。そこから顔を下げていって、ずり下げられた帯と着物の隙間から覗くお腹を舌先で撫でた。
ちろ、ちろ、って肌をまさぐる熱い感触にびくっとして、んんっ、って身体を大きく捩ったら、自然と膝を立ててしまった。
ぐっしょり濡れた着物の裾が、はらり。大きく肌蹴けて太腿が覗いて、そこへすかさず銀ちゃんは手を入れてきた。
「――ぁ、や、ゃめ、っ・・・!」
露わになった太腿の片方を膝裏からぐんと掴み上げて、むにゅ、ってあたしの胸に押しつけて。片脚だけを折り畳んでる格好にさせられて、
開ききった脚の間にしっとり貼りついたショーツへ顔を押しつけられた。強く唇を押しつけられた熱さと、ぬる、って生々しい感触が伝わってきて、
っっ、って唇を噛みしめて驚く。
うそ。やだ。信じられない。顔を押しつけられて、はじめて気づいた。そこはまだ触られてもいないのに火照りきってて、
ショーツの内側には雨水で濡れたのとは違う、とろとろした感触が染み込んでて――
「〜〜・・・・・ぅ。うそぉっ。あ、あぁっ、そこ、やあ、ぎ、ちゃっ」
「ん。旨めぇ。・・・すっげぇ濡れてる。もぉこっち側までとろーっと滲んでるんだけど。これ、もっと舐めていぃ」
「あっ、ぁあんっ」
なぁ、って甘く囁かれた声が、透けたショーツから熱くなったところへ低く響く。
ふわりと吹きかけられた銀ちゃんの息を感じただけで腰が揺れちゃう。濡れた布地を舐め上げながらもぞもぞ動いた唇が、
お腹の奥をくるしいくらいに疼かせるからすごくせつない。
脚を閉じたいのに、脚の間に銀ちゃんがいるから閉じられない。上げたほうの太腿の裏を撫でられて、ああっ、ってまた身体が震える。
とろ、ってこぼれた熱いものがショーツへ溢れて染みていく。そこを銀ちゃんが目にしてるんだって思ったら、死にたくなるくらい恥ずかしかった。
「なぁー。ちゃーん。どーしたのこれ。何でこんなに濡れちゃってんの」
「しゃ・・・・・しゃべ、っちゃ、だめぇっ。っあ、ぎん、ちゃんの、くち、ぁ、あたっ・・・!」
「いい子だから銀さんにだけ教えてくんね。そこでヤってんの聞いたら濡れちゃった?それともー、外でヤられてっから興奮してんの。
俺にこんなとこで押し倒されて、いつもより感じちゃった?」
「んっ、やだっ、なめ、ちゃ、あ、あぁっ」
だめえ、って泣きながら、脚の間に埋められた白っぽい癖っ毛をぎゅうって掴む。おもいっきり引っ張ったのに、銀ちゃんは顔も上げてくれない。
とろとろになった割れ目を舌先でつんと突いて、薄い生地越しにねっとり舐めながら押し開いていって――
「〜〜〜っっ!」
「ん、なぁ、・・・こっちにも、・・・もっと、キスしたいんだけど、・・・・・・んっ」
ちょっとだけ顔を離すと、はぁっ、って荒い溜め息をつく。その乱暴な息遣いにも感じちゃって、ぶるっと胸を揺らして仰け反った。
「やだ、も、ふぇええ・・・っ」
「あーダメだわ、奥まで入んねーし。のえっちなとこがぜーんぶスケスケでいー眺めなんだけどよー、これ邪魔ぁ。脱がすぞー」
「ぇ、っっ、あぁ、やぁ・・・!」
一番感じやすいところを頼りなく守ってた布が、一瞬で引きずり降ろされる。ずる、って左足から抜かれて、
曲げた右膝に引っかかる。そこに銀ちゃんはちゅ、て唇を落とした。かわいい、って独り言みたいに囁いて、
もう一度、ちゅっ。それだけで肌がぞくぞくして、だめぇ、って曲げた脚を押えつけてる腕にしがみついたら、
「・・・・・・ぅっわぁ。なにそれ・・・」
呆れた声で銀ちゃんが漏らす。ばっと顔を上げてあたしから離れて、視線が合ったと思ったら、
そこにはいつになく目をキラキラさせてる人が。今にも口端からたらたらよだれが垂れそーな、締まりのないでれでれ顔で笑ってて、
「あ〜〜あぁもぉっ、何お前ぇぇぇ、胸押しつけて泣いておねだりとかいつ覚えたんだよぉ。っだよあーあーもぉ、かぁ〜〜〜わい〜〜!」
「っ、や、やだぁ、ちょ、銀ちゃ・・・はなし、聞ぃて、んむ、っ」
「あーいーからいーから、後で聞くから」
がばっ、と飛びつかれて、むぎゅーっと抱きしめられる。ばっ、と厚みがある男の人の手で顔を包まれる。
何が起こってるのかもわからないくらいの素早さで唇を奪われて、っっっ、ってなぜか感極まってるかんじで呼ばれて、
濡れたままの髪やおでこを銀ちゃんのおでこにぐりぐりされて、
「――それにしてもよー、ちゅーされただけでこんだけ濡れちまうんだもんなぁ。やっぱ敏感だよなーの身体はぁ」
「んんっ、や、やだぁ、も、これ以上、だめっ、やめてぇ!」
「ぇえー、それ無理だわ。もう銀さん止めらんねーし、のおかげでとっくにガッチガチだしぃ」
もきもちいんだろぉ?
見透かしたような目で笑いかけながら濡れた唇をぺろりと舐めると、銀ちゃんはあたしの足首を両方、やわらかく握った。
ぶるぶる震わせながら閉じていた脚を、ゆっくりと左右に開かれる。やだ、って暴れて拒むこともできるはずなのに、
迫ってきた銀ちゃんの目に何にも覆われていないそこを見られてるだけで、あたしの身体はまるで骨が溶けちゃったみたいに力を失くしていく。
はぁ、はぁ、って息が上がる。開かされたところからとろりと蜜がこぼれる。奥から痺れてきゅううっと縮んでいく、あの感覚に逆らえなかった。
「あぁん・・・!」
笑った唇から物欲しそうに伸びてきた舌が、あたしの中に沈んでいく。熱くてゆっくり蠢くもので
埋められていく。一杯に開いた入口のところを、くるりと広げるみたいに撫でられて、
「ひぅ、っは、あぁっ、・・・こ、んな、とこで、・・・だめえぇ、やだぁっ。だれか、に、みられちゃ・・・っ」
「・・・んー・・・?――あぁ、いやいや、見られてねーから大丈夫だから」
「ふぇええ・・・っ」
ぬる、ぐちゅ、ってやわらかく動く舌先を押し込みながら、狭くてとろとろした中を銀ちゃんは舐め回す。
一度引き抜いて、はぁ、って気だるそうな吐息を漏らすと、また口づけて、ぐちゅり、と差し入れた舌を伸ばして。中を潤してる熱い粘液を
絡め取るみたいにして舌を引き抜かれたら、もどかしくておかしくなっちゃいそうな気持ちよさで全身が痺れて――
古い床の上でのた打ち回りそうなくらい感じてしまってるあたしを、銀ちゃんはぎゅっと床に抑えつけて、
「っっひ、ぅ・・・っっ」
「・・・あのよーそもそも銀さん束縛タイプだからね。自分の彼女が色っぽく喘いでるとこなんて死んでも他の野郎には見せたくない派だからね。
こんな雨だし、こんなボロ神社だし、他に誰も来ねーって判ってっからやってんの」
「だ、誰も、ってい、いるじゃんっ、・・・・・・の、なか、にぃ・・・っ。聞こえ、ちゃう・・・っ」
「ああ、そこなー。なに、そんなにあっちが気になんの」
気になるに決まってるじゃん。いやだ、絶対やだ。こんなとこ誰かに見られたら、あんあんゆってる声を銀ちゃん以外に聴かれちゃったら、
・・・・・・・・・・考えただけで恥ずかしすぎて死んじゃいたくなるよ。
涙目になった顔をふにゃあっと歪ませながら、こくこく頷く。へーぇそーいうもんなの、とでも言いたそうな、
あんまりピンときてなさそうな顔であたしを眺めてた銀ちゃんは、嬌声が途切れ途切れに響いてくる後ろの壁をちろっと流し見る。
またあたしのほうへ視線を戻して、平気だって、とどうってことなさそうに言い切った。
「心配いらねーって、大丈夫だって。向こうは絶賛お取込み中だからぁ、他人のことなんて気にしちゃいねーよ。
万が一聞こえたとしてもよー、が勘違いしたみてーに外でみゃーみゃー鳴いてやがるとでも思うんじゃねーのー」
「・・・・・・っ」
「俺しか見てねえし、他の奴になんて見せねーし。がこんなとこであんあんよがってとろっとろに蕩けてたのは、
俺だけの秘密にするから。な、だからよー」
もっと可愛がらせて。
顔が真っ赤になっちゃう恥ずかしいおねだりをされて、あわててそっぽを向いた。
銀ちゃんの目が見れないくらい恥ずかしい。なのに、――なのに、すごくどきどきしちゃってる。心臓がとくとく弾んでる。
そんなふうにせつなそうな声でささやかれたら、身体が勝手に反応しちゃう。
胸やお腹の奥や、さっきまで銀ちゃんの舌で埋められてたところが甘く疼く。
もうどうしたらいいのかわからないよ。ぅう、って唇を噛んで、泣きそうに眉を曇らせて銀ちゃんを見つめた。
「な、いーだろ。のここに、もーちょっとだけちゅーさせて」
「ほ・・・・・・んと、に・・・?だれ、にも、見られなぃ・・・?・・・・・ぎん、ちゃ・・・だけ・・・?」
黙って顔を綻ばせた銀ちゃんが、また身体をゆっくり倒して開かれたところへ近づいていく。
ぐちゅりと深く押し込まれた舌は、今度はいくらあたしが仰け反って逃げようとしても、だめぇ、って泣き叫んでも、中から出ていってくれなかった。
「あ、あ、あっっ、」
「なぁ、判る。お前のここ、着物よりぐしょぐしょじゃん。いやいや言ってたけどー、ほんとは欲しくてしょーがねーんだろぉ」
「ゃあん、やらぁ、んんっ」
腰から押さえられて、吸いつかれて、啜られて。銀ちゃんの喉の動きが判っちゃうくらいにごくりと強く飲み干されて、
溢れた熱でぐっしょり濡れたちいさな芽を、――きゅうっ。長くて器用な指の先でやんわり摘ままれた頃には、
あたしは壁の中にいる人たちのことも、ここが外だってことも忘れそうになってて。
そんな自分がすごくいやらしい子に思えて恥ずかしくって、ぎゅっと目を閉じて顔を隠した。
「・・・っ、だ、だめなのにぃっ。〜〜こんな、とこで、こんな・・・っ」
「んっ。だーよなぁー・・・、女が、こんなとこで、脱がされて・・・えっろい恰好であんあん啼かされて・・・泣いてよがってちゃ、ダメだよなぁ。
なのによー、お前の、ここ、とろっとろになってんだよなぁ。・・・なぁー、何でこんなに感じてんの・・・?」
「ゃ、やだぁ・・・〜〜っ」
だめ、やだ、ってうわごとみたいにつぶやきながら、はぁはぁと息を乱して涙声で喘ぎつづける。
もう何もわからなくなっちゃいそう。
肌よりも熱が高い銀ちゃんの舌や、あたしをぐちゃぐちゃにしてる指の激しい動きしか、わからなくなりそう――
「〜〜〜〜・・・も、だめっ、だめぇえっ」
「ん。、イって。イッたら俺の、・・・で、もっと、可愛がって、やる、から――・・・っ」
ふたつの指で摘ままれて、小刻みに揺さぶられて、中では熱い舌が奥のほうまで伸びていく。硬く尖らせた先で弱いところをぐちゅりと擦られる。
ああっ、っと押さえられた腰を浮かせて汗ばんだ背中をしならせる。
蕩かされたお腹の奥でぱあっと弾けた、閃光みたいな強い痺れに身体中が呑まれて――
「あぁっ、〜〜や、ぎ、ちゃあ、ぎっ、 ・・・・・・っん〜〜〜っっ!!」
震えた悲鳴みたいな声で銀ちゃんを呼んで、一瞬で頭の芯まで昇り詰めてきた快感にきゅぅぅっと唇を噛む。
濡れた頭を硬い床板に擦りつけて髪を振り乱して、あっけなく絶頂まで駆け上がってしまった。
ぐちゅり、とあたしから舌を抜くと、銀ちゃんがのそっと気だるそうに身体を起こす。
とろりと唇に滴った透明なしずくを、赤い舌先はあたしに見せつけながらゆっくりと舐めた。
普段通りにとぼけた表情の眠そうな目にうっすらと、艶めかしい光が浮かんでる。
その昂揚した色に、床にぐったり倒れたままでぽーっと見惚れていたら、ちゅ、とごほうびみたいなキスを落とされた。
短くて、でも丁寧で、よくできました、って誉めてくれてるようなやわらかいキス。
あんなに感じさせられたばかりなのに、甘い快感で火照りきったあたしの身体はたったそれだけできゅんと疼いた。
ざあぁ・・・、とすぐには止みそうにない激しい雨音が、ようやく耳に戻ってくる。
壁の向こうから響いていた声はいつのまにか聴こえなくなってた。
すっかり熱くなった身体がどこに寝かされているのかも、下着まで剥がされてる自分の姿もようやく思い出して、
――思い出したら、途端にはらはらして落ち着かなくなった。
涙で曇った目を向けて、真上に影をつくってゆらりと覆い被さってきた銀ちゃんに手を伸ばして。
「ふぁ・・・、ぎ・・・ちゃあ・・・・・・っ」
「ん。大丈夫だって、誰にも見せねーから。今のも、これからのも、ぜーんぶ俺だけの秘密にするから」
だからもっと見せて、誰も知らねーの秘密。
ついさっきまではいやらしい言葉であたしを苛めてた唇が、掠れ気味な声で優しくささやく。
こんな近さからこんなに熱っぽい声でおねだりをされるなんて、――目が回りそうなくらい恥ずかしい。
ふぇえ、ゃ、うぅ…っ、ってしどろもどろにもごもご漏らして耳までかーっと赤らめたあたしは、照れ隠しにぷいっとそっぽを向いた。
やだ、って口を尖らせてごにょごにょ小さくつぶやいてから、ちっとも素直じゃなかった自分の態度を打ち消すために、
しっとり冷たい銀ちゃんの頭に甘えるように縋りついた。