「――あっ、あぁっ、もぉ、んんっ、やんっ、ぎ、・・・ちゃぁ・・・!」
立て続けに何度も繋がったところを突き上げられて、頭がおかしくなっちゃいそうだった。
あ、ぁ、と短く叫びながら夢中で銀ちゃんの胸に顔を擦りつける。もうやめて、ってかぶりを振って頼んだのに、
なぜかそのお願いは銀ちゃんをますます喜ばせてしまったみたいだ。「うわぁえっろーいちゃーん。胸押しつけておねだりなんて新技、銀さん教えてねーんだけどぉ」
なんて笑い混じりでわざとらしい口調が頭の上から降ってくる。あたしのお尻をむぎゅっと掴んでる手の動きはもっと早くなってしまった。
腰を上下に揺らしながら擦られて、じゅぶじゅぶと泡立つような水音はびっくりするくらい大きくなる。この音が自分の中から溢れて
きたんだって思ったら、恥ずかしさで身体がどんどん火照っていく。なのに、銀ちゃんに突かれてる腰の奥はその熱を喜んでびくびくと震えてしまう。
なんだか少しこわくなった。このままじゃ、そのうちに頭の芯までどろどろに蕩けちゃうんじゃないかって。
「っ、い、ぁ、も、やぁ、もぉ、いい、っ・・・〜〜〜っ、」
腰の奥をずくずくと疼かせているあのかんじを、唇を噛みしめて必死にこらえる。こうやって強くぶつけられて、お腹の奥まで銀ちゃんに埋められると、
唇の震えが止まらなくなる。もうちゃんとした声なんて出せない。さかりのついた雄猫にみゃーみゃー啼かされて喉を震わせてる雌猫みたいな、
甲高くって恥ずかしい声しか出てこない。今までの中でもきわめつけにきつい脚の開き方をさせられてるせいで、ぐっしょり濡れた
腿の付け根がみしみしって軋んでる。ちょっと痛い。場所はこの家唯一の事務用机の前。銀ちゃんは社長席だって言い張ってるけど、
どこのオフィスにもありそうな普通の事務机の前だ。そこにだらっと脚を載せたまんまのだらけた姿勢で、銀ちゃんはあたしを向かい合わせで脚の上に座らせてる。
自分も腰を揺らしながら、あたしを腰から持ち上げて引き抜いたり、急に落としてぐちゅぐちゅと奥を突いてみたり。
ほんとはやめてって言いたいのに、突かれるとどうしても違う声が――悲鳴みたいな、甲高くって恥ずかしい声になっちゃう。
これじゃ銀ちゃんの思惑どおりだ。重量オーバーな二人分の体重を受け止めてるお尻の下では、回転椅子もみしみし悲鳴を上げていた。
「えぇーいいって、・・・マジで。もぉイくの?もぉイきそぉ?俺、まだぜんぜん足りねーんだけど」
「ん、ちが、・・・んん、もう、い、っ」
「なんか今日早くねお前。なに、そんなに気に入ったんだぁこの体位」
「ち、がっ。やだ、これやだ、落ちそ、で、こわ・・・・・・っあ、あぁっ、」
「いやいや大丈夫だって。落とさねーって絶対。ほら、こわくねーから動かして、腰」
ちょっと身じろぎしたらずるっと滑り落ちそうな腰は、着物をお腹まで捲くり上げられてる。
動かれるたびに漏れてきてしまう粘液のせいで裾がとろとろに濡れちゃって、薄い布地が肌にぴったり張り付いていた。
銀ちゃんの手に鷲掴みにされた剥き出しのお尻は恥ずかしいところを思いきり広げられていて、むにむにと好きなように揉まれてる。
(俺がイったら放してあげっから。)
そう言われてから何分経ったんだろう。この恰好にされてからずっと銀ちゃんの首に縋りついてるんだけど、
あんまり長いからもう腕が棒になりそうなくらいくたびれちゃった。始める前から点けっ放しだった夕方のニュースはとっくに終わってるみたいだ。
今は何の番組なんだろう。部屋のすみっこから流れてくる音だけは聞こえてるけれど、銀ちゃんに揺らされ続けてるせいで
何の番組なのかもわからない。身体がぐらぐら揺らされっぱなしなせいで、頭の中までぐらぐらだ。――ああ、でも、そんなことより、
「も、やだぁ、めぇ、・・・っ、ご、ごはん。支度、まだ、終わっ、・・のにぃ、っ」
「飯ぃ?いーって、後でいーって。あー逃げない逃げない、脚閉じねーの。もっとこう、外向けて開いて」
「あぁっ・・・!」
「ほらぁこーやったら深くなんだろ。がっつり奥に当たってんだろ」
「あ、はぁ、ぁんっ、ん、ぁあ、やだぁ、そこ、や・・・っ!」
あたしが背中をびくびく震わせてのけぞって、声を枯らしてよがってるのに、
うっすら汗を浮かべた銀ちゃんは気だるそうな顔でこっちを見ながら笑ってる。
「・・・なぁ。気持ちいーんだろ?もっとしてって言ってみ。が上手におねだり出来たらー、ご褒美にもっとよくしてやっから」
なんていかにも自信ありげな口ぶりで言って、目元を細めてへらぁっと笑う。妙にのほほんとして余裕たっぷりなあの顔つき、すっごくむかつく。なに、何なの、ばっかじゃないの、いつも通りにすっとぼけてる中にも
いつにないやる気が見え隠れしてるそのやらしい目つきは何なの。「やっべぇ俺、今ならカメハメ波とか撃てんじゃねーの!?」
なんておばかさんなことを本気で思ってる中二男子ノリなそのやる気、どーして普段の万事屋のお仕事にはこれっぽっちも発揮してくれないんだろう。
普段はやる気のかけらも見せないくせにえっちのたびに毎回毎回こんな死ぬ思いさせてくれちゃって、・・・ああもうっっっっ憎ったらしい・・・!
「やだ、やだぁっっ。銀ちゃ、う、ぁ、はぁんっ、・・・やめてってばぁ、〜〜〜っもぉ・・・、っ」
休みなく感じさせられる恨めしさで泣きそうになりながら頼んでも、腰を掴んだ手にゆさゆさ揺らされつづけて身体の震えが止まらない。
最近、いっつも、えっちしてるときの銀ちゃんてこんなかんじだ。初心者のあたしには手に負えないことばかり
仕掛けてくるからたまらない。特に神楽ちゃんがどこかに泊りに行って二人きりの時が要注意。
急に、いきなり、何の前触れもなく、あたしのちょっとしたスキを突いてむぎゅっと後ろから抱きついてきては、
発情期の雄猫みたいな見境のなさで襲いかかってくる。たとえそれが「ぎゃ――っ!!」と叫んで股間を蹴りたくなるようなとんでもないタイミングでも、
銀ちゃんはまったく悪びれない。しまりのない顔でへらぁーっとやらしく笑いながら、軽ーくあたしを襲いにかかる。
最初は銀ちゃんの部屋でのみ、深夜限定で発生していたその不健全イベントは、最近は家中で、
朝でも昼でも時間を選ばず発生するようになってしまった。
例えば、並んでテレビを見ていたお茶の間のソファの上だったり。お風呂から上がったばかりの脱衣所に侵入されたり。
仕事が終わってお家に帰る新八くんを見送ったばかりの玄関先で飛びつかれたり、廊下でしゃがんで雑巾がけをしてる時に後ろから羽交い締めに
されたり、ご飯の支度をしている台所だったり。
・・・どうしよう。そのうちにトイレまで侵入されたらどうしよう…!!
家中のどこにいる時よりも無防備になっちゃう超個人的空間で事に及ばれる、…ていう、さっぱり笑えない最悪の事態だけは
どんな手を使ってでも回避したい。だけどいつだって銀ちゃんのほうが一枚上手だから、あたしがどんなに頑張っても必ずいいようにあしらわれちゃう。
だって銀ちゃんが襲いかかってくる寸前の雰囲気が、あたしには全然読みとれない。
背後からそろそろーっと近寄ってくる時は、必ずといっていいほど気配が完全に消えてるし。
えっちしたい、なんて思ってそうな気配なんて、がばぁっと飛びついてくる瞬間までは微塵も表情に出したりしない。
さっきのあれだって、まるで詐欺みたいな不意打ちだった。
あたしはただ、ジャンプ読んでた銀ちゃんに「お茶淹れて」って言われたから。だから。
・・・こんな。こんなこと許してあげるつもりじゃなかった。ただ、お茶を運んでいくだけのはずだったのに。
「さぁ、いつも嫌がるけどほんとは好きなんじゃねーのぉ。根元までめいっぱい咥えさせられんの」
「んん、ち、ちが・・・!は、ぁあ、ん、」
「あーあー、ほんっっっと最近、やらしくなってきたよなぁお前ぇ」
ちゃんえっろーいぃ、どスケベー、インラーン、なんてやけに楽しそうに、とんでもない誹謗中傷を口にしながら(訴えてやる…!!)
銀ちゃんがずずいっと近づいてきた。
にやにやとむかつく笑いで横に伸びてる唇が、ちゅっ、と音を鳴らしてほっぺたにくっつく。
肌に吸いついたあったかさは耳たぶや鼻先にも落とされて、最後に唇に吸いつかれた。遊ぶみたいに何度もキスが繰り返される。
ぬるつく舌を軽く絡めて、やわらかく吸って、一度離れて、またくっつかれて。すこし息の上がった声で話しながら、終わりのなさそうなキスが続く。キスされるのは嫌じゃない。
むしろ好きだし、銀ちゃんに唇を塞がれると身体の芯まで蕩けそうなあったかい気分になれてすごく嬉しい。
――でも、今はやだ、もうやめてほしい。
酸素不足ではぁはぁ喘いでるあたしの肺や心臓は、銀ちゃんの下でみしみし揺れてる回転椅子なみに限界なのに。
「やぁ、銀ちゃ、これ、くるし、・・・っぁ、あ、あぁっ」
「・・・すっげぇ音。もぉ中ぐっちゅぐちゅじゃん。なー。聞こえんだろぉ?ん中、どーしてこんなになってんのー。
銀さんちょっと突いただけなんですけどー。そんなに好きなんだぁ俺の上で腰振るの」
「んっ、す、す、きじゃ、ぁんっ、ひ、ぁっ」
「んだよもー素直じゃねーんだからちゃんはぁ」
まぁ、泣き顔で意地張っちゃうとこも可愛いけど。
新八くんたちの前では絶対出さない甘ったるい声を耳の中に注がれて、びくんと身体が震えてしまった。少し汗ばんだ熱いおでこがこつんと
くっついてきて、ぴょんぴょんと自由に跳ね放題な白い前髪の向こうから、どうよ、って得意げな目つきで覗き込まれた。
中を埋めてる銀ちゃんの感触でぐっと圧迫されてるのがせつないし、感じたくなくても無理矢理気持ちよくさせられて感じちゃうし、
「可愛い」なんて突然言われたせいで、本当は心臓がどきどきしてる。でも、涙目でじとーっと睨んであげた。
銀ちゃんのこういう時の悪知恵にはいつも逆らえない。
今のは絶対わざとだ。今のはわざと、あたしがそういう言葉にしっかり反応しちゃうって知ってて――、
「んっ、ん、ぁ、あぁっ」
「・・・なぁ、どーなの。どっち?いいの、ダメなの。それとも喋れなくなっちゃうくれー気持ちい?」
「う、ぁ、ん、もぉ、や、銀ちゃ、や、らぁ、ひぅ・・・っぁああ――っ・・・!」
気持ちよくなっちゃうところに狙いをつけて往復されたら、呂律のまわらないおかしな声が止まらなくなった。
銀ちゃんがそこをじゅぷじゅぷ音を上げて擦り上げるたびに、背筋が大きく跳ねてしまう。ああっ、と叫んで仰け反った首筋に吸いつかれる。
ちくっと刺された痛みで喉が震えた。ゆっくり肌を撫でる舌のざらついた熱さのせいで、お腹に湧いてるあの泣きたくなるような
もどかしさがさらに強まる。
ー、とちょっと切羽詰まって苦しそうな声に呼ばれて、強く唇を塞がれる。
捕まえられた舌をいいように吸われて余計に息苦しくされてから、
やっと顔を離された。くたくたになってうつむくと、今度は銀ちゃんのがあたしのぐちゃぐちゃに濡れたところを
出たり入ったりしているのが丸見えで。びっくりして叫んじゃいそうになるくらいに生々しいそこから慌てて目を逸らしたら、
椅子の肘掛けに乗せられた膝から下がぷらぷら揺れてるのが目に入る。それから、すっかり剥き出しにされて、
上下にたぷたぷ揺れてる自分の胸も。
胸って小さくっても揺れるんだ。・・・・・・・・じゃない。じゃないよ、そうじゃなくって、
「っっ・・・!ぁあ、やだ、つよく、しちゃ・・・もぅ、あぁぁんっ、」
「ー。ほら、言ってみ。胸もさわってぇ、って言ってみ。可愛い声でおねだり出来たらもっと気持ちよくしてあげっから」
「〜〜〜っっ、ち、ちが、ああ、や、降ろし、や、ぁあああああっっ」
「んー、無理。お前の中すんげぇキツいし、今、抜くの無理。つーかこれ、イくまで抜けねーって」
「やだ、あぁだめぇ、ぅ、はぁん、あっ、あぁ――・・・っ!」
ぐっ、ぐっ、とお腹の底に硬くって熱いのがぶつかってくる。銀ちゃんが真下から、さらに激しい揺さぶりをかけて突いてくるから、
もう何が何だかわからない。何も考えられなくなっちゃう強くって甘い痺れが、びくびく震えながら仰け反らせた身体を何度も何度も、
追いかけっこしながら抜けていく。
あたしと一緒に揺らされっ放しな椅子の音が「みしみし」から「ぎしぎし」に変わってきた。今にも支柱が折れそうな音。
・・・かわいそうな椅子。一人掛けなのに二人も座られちゃって。
それ以前に使い方が――椅子としての用途が、ぜんっぜん、根底から間違ってるんだもん。
事務所用の回転椅子はこんなことに使うためには出来てない。あたしの脚だって、こんな不自然な格好に――
銀ちゃんがじゅぶじゅぶ音を鳴らして出入りしてるところをこんなにめいっぱい開かされたり、カエルみたいなM字に折り曲げられるようには出来てないのに。
なのに銀ちゃんはいつも面白がって、あたしをくねくねっと折り曲げちゃう。膝を抱かせて小さく丸めてみたり、
逆に大きく脚を広げさせたり。「こんなやらしいポーズ普通は出来ねんだけどなぁ。
の身体、めちゃめちゃやらけーからぁ」なんて言って喜んでた。何がそんなに嬉しいのか知らないけど。
でも、それって、銀ちゃんにとっては、すごーくラッキーなことらしいんだけど・・・
「なぁ。後ろからしてもいい」
「・・・っ、・・・ぇえ、・・・・・・・?」
「。脚上げて」
「・・・っ、!?んっっ、や、ぁああんっっ」
言い終らないうちに手が動いて、銀ちゃんを中に埋めたままでぐるりと半回転させられた。
じゅぷ、じゅく、と耳を塞ぎたくなるようないやらしい音が鳴って、ぐるりと掻き混ぜるみたいに擦られたせいで、鳥肌が立ちそうなくらいぞくぞくした。
思わず銀ちゃんの腕を抱きしめて、あぁんっ、とこらえきれなかった声を漏らしてしまった。
繋がったところから溢れた熱いものが太腿にとろとろと伝ってきてる。
・・・これ、全部あたしの中から溢れてきたんだ。
擦られた中で生まれた熱を唇を噛みしめてこらえながら、ぼんやりと、普段なら感じるはずの恥ずかしさも忘れてそう思った。
「あれっ。ぜんぜん抵抗しねーのなお前。・・・もしかしてもぉ疲れちゃった?」
頭の中が火照って何も考えられなくて、あたしは銀ちゃんのしたいように動かされた。
読みかけのジャンプが放られた事務机に頭からうつぶせに倒されて。椅子から立ち上がった
銀ちゃんに、濡れてつめたくなった太腿をうんと広げた恰好で持ちあげられて――
「悪い悪い、もぉ動かなくていーから。ほら、腰だけ上げて――」
「あ・・・!あ、あ、あぁ―――・・・っ!」
逃げようとした腰はがちっと掴んで止められてしまった。お尻のお肉を両手で掴んで後ろから入ってきた銀ちゃんに、
ずむっ、と奥まで入れられる。それだけであたしは悲鳴を上げて、びくびくうっと脚を突っ張らせて達してしまった。
ぎゅっと閉じた瞼の縁から涙があふれる。快感が強すぎたせいで腰ががくがく震えつづけてる。
見た目よりがっしりして重たい身体が上からずしりと乗りかかってくる。後ろからぐいぐいと揺さぶりをかけてくる銀ちゃんの重みと、
ひんやりして硬い机の感触にお腹も腰も押し潰される。半分潰されかけていた胸は、左右から伸びてきた手に脇からするりと掬い上げられた。
すっかり尖って硬くなったところを指を何本も使って刺激しながら、ぱん、ぱんっ、と繰り返し腰を打ちつけられる。
胸とお尻の両方からきゅんきゅんと昇ってくる甘い痺れのせいで、頭の中はもう真っ白だ。だめ、だめぇ、とたまらなくなって泣き叫んだ。
机の端っこを掴んだ手にうんと力を籠めて、動かないお尻を左右に振って抵抗する。
「あぁん・・・!ぎ、銀ちゃ、ぎ、ちゃ、ぁあっ、い、ぁ、やめ・・・・・っ!!」
「んん。あぁ、だめだって。逃げんなって――」
「やぁ、やだもうだめぇっ、〜〜〜っもぉだめっ、これ以上は無理ぃ、だめっ」
無理にしたら当分させてあげないからっ。
そう叫んだら、銀ちゃんは情けない声でぇえええーーーっ、と叫んだ。なにそれっ、こんなところでお尻突き出してあんあん喘がされちゃって、
情けなくって叫びたいのはあたしのほうなのにっ。
泣きそうになって唇を噛みしめながら銀ちゃんの下でもぞもぞ動く。動くうちに中を一杯にしていた重たいものが少しずつ中から抜けていく。
それと一緒に、とろりと粘った感触も脚を伝って流れ出ていった。うっ、とうめいてあたしの胸から手を放した銀ちゃんは
――ぱんぱんに腫れちゃったあれをぐいぐい左右に揺すられてきっと苦しかったんだろう――うごっっ、と喉に何か詰まった
みたいな変な声を上げて悶絶していた。
熱いもので埋められてる苦しさからはやっと解放されたけど、
ずっと揺らされ続けたせいで腰がずずーんと気だるくなってる。銀ちゃんが目にしてるはずの死ぬほど恥ずかしいポーズを気にする
余裕すらなくって、目を瞑ったままぐんなり倒れて上がった息を整えていたら、
――とってつけたような猫撫で声が、上からぼそぼそっと、すごく言いにくそうに降ってきた。
「起きてー。ちょ、起きてちゃーん。銀さんまだまだ全然足りねーんだけどぉ。もっかい、おかわりしていーい」
「・・・・・・・・・・し。しねばいいのに。しねばいいのにぃぃ、っっっっ」
「もっかい!なっっ、もっかいさせて!ちょっとだけでいーから、先っぽだけでいーから!」
「うそ!うそうそうそうそっっぜっったい嘘だよそんなのっっ」
「嘘じゃねーって!銀さん普段はいー加減だけど好きな子にだけは誠実だからね!普段どんだけちゃらんぽらんでも、
決める時はしっかり決める男だか――――うごっっっ、」
ジャンプをはしっと引っ掴み、力の限りに投げつける。ズボンもパンツもずり落ちてる目も当てられない恰好で
堂々言い張ってた銀ちゃんの顔に、べちんっっと派手にヒットした。
「・・・っっちゃぁーん!?銀さん何度も言ったよね。ジャンプは人のツラを張り飛ばすための凶器じゃねーんだって言ったよね!?」
「決めるって何を?そんな夜道の露出狂みたいなふざけた恰好で仁王立ちした人が何をしっかり決める気なの!?説得力のかけらもないんですけどっっ」
「っっっせーなぁああ仕方ねーじゃんっこの際股間の仁王立ちは見逃せよぉぉっ。とにかく俺っっ、可愛い彼女に嘘ついたりしねーって!」
「はぁ!?この前だってそんなこと言って四時間も離してくれなかったじゃんっっっ」
冗談じゃないよ、あれを忘れたとは言わせないんだから。「ちょっとだけだから。すぐ終わるから、なっ?」なんてへらへら笑いながら
あたしをソファに押し倒すが早いが、気が遠くなるよーな長いえっちでへろへろにさせたのは誰ですか!?
「とにかくだめっ。もう終わりなのっ。ほらぁそれしまってっ、それが見えてるとなんかあのっ・・・・・・・、は、恥ずかしいからっ」
「いや、しまうって。お前さぁ、・・・無茶言わねーでくれる。一度こうなったもんがそうそう簡単にしまえるかってーの」
「・・・へ?」
「・・・・・・。あーあーもー、なにその反応。何、やっぱ判ってねぇの」
不思議になって振り向くと、めずらしく眉間をきゅっと寄せた銀ちゃんはパンツを乱暴に引っ張り上げて、ベルトをかちゃかちゃ動かしていた。
おそるおそる見上げたあたしと目が合うと、ふてくされたみたいに口を尖らせてこう言った。
っとにはお子ちゃまだよなぁ。
その声には心底呆れてばかにしてるような雰囲気も混ざってるんだけど、それ以上になんだかつらそうだった。
・・・ていうか、表情がなんだか痛そうっていうか。悶々としてる身体の疼きをこらえて苦しそうっていうか。
「お前さぁ。寺子屋で習わなかった?あっただろぉ、男女別で受ける保健体育の授業」
「・・・・・・・・・あったよ。習った、けど?」
「あのよー、男はここまでしっかり勃っちまったらもぉ引っ込めらんねーの。溜まったもん全部出してすっきりするまでは、
カチコチで痛てぇまんまなの。ズボン履き直すどころかパンツにも納めらんねーんだって」
「・・・・・・・・・、」
それを聞いて、あたしの周りだけぴたりと時間が止まってしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、えっっ。
「・・・・・っ。・・・・・・・・・・そっっ。そぉ、なの・・・?」
「そぉだよそーいうもんなんだよ。男の身体ってのはこーいう時すんげぇ不便なもんなの。
つまり銀さんのこれもー、一度しごいて抜いてやんねーとパンツにしまえねーんだって」
「そっっっ。そぉ、なの・・・・・・!?」
・・・ごめん。知らなかった。
着物の裾を下げながらおずおずと謝ると、いつも眠たそうで半開きな銀ちゃんの目元がさらにぎゅーっときつく寄る。
呆れとか恨めしさとかその他諸々の苦情とか非難を籠めた目線で、じとーっと、拗ねた顔して睨みつけてくる。
ヘビににらまれた状態になったあたしはぎくしゃくと肩を竦めて、机の上で縮みあがった。
し、知らなかった。そんなの寺子屋じゃ習わなかったよ。・・・ていうか普通そこまで習うものなの・・・!?
「んぁー、まぁいいわ。わかったんならもぉいーから」
「う。うん・・・」
混乱してるあたしの頭をぽんぽん叩いて慰めると、銀ちゃんがくるりと背を向ける。
廊下のほうへ行こうとした。
――たぶんトイレに行くつもりなんだ。・・・・・あたしが途中で中断しちゃったから。
毛先が跳ねまくった白い頭をぼりぼり掻きながら、のしのし歩いてく白い着物の背中を黙って見送る。
悪いことしちゃったのかなぁって気まずく思いつつも、そのまま見送るつもりだったんだけど。途中で、ふっと気が変わって――
「ぎ・・・、銀、ちゃんっっ、」
「んぁ?何、」
横になってた机からあたふたしながら起き上がって、四つん這いの姿勢で呼びかけた。
振り返った銀ちゃんは不思議そうに目をぱちくりさせている。
その顔と目が合ったら、変な汗が湧いてきた。顔が一気に、かぁーっと火照って赤くなる。
自分で自分が信じられない。銀ちゃんのほうからお願いされたならともかく、まさかあたしが、
自分からこんなこと言い出すなんて、・・・・・・恥ずかしくってたまらないけど。でも。その。ええと。ほら。・・・あたしにだって
少しは責任があるんだし。銀ちゃん、なんだか苦しそうだし。
「・・・・・っ。い。いい・・・よ?あ。あたし、・・・あの。だから。あの、・・・〜〜っ」
耳まで真っ赤にしてもごもごと続きを口にしたら、銀ちゃんは「へ、」とひとこと、脱力しきった間抜けな顔してつぶやいて。
それから「へぇええええええぇえ〜〜〜〜」って口端を大きく吊り上げて、憎たらしい目つきであたしを眺める。
にた――っと笑う表情はやたらにぶきみで、あたしはおもわずぞぞぉっと震え上がった。
――それはつまり、いつにないやる気と悪知恵を発揮してまんまとあたしを追いつめた時の銀ちゃんで。
獲物を仕留めようとしてる肉食獣っぽい、すごーーーく要注意な時の顔だった。