「はいはい、はいここ。ここ座ってー」
「う・・・うん、・・・」
あたしからの提案に銀ちゃんはすっかり機嫌を取り直したみたいだ。握った手をくいくい引かれて、さっそくソファのところまで
連れて行かれた。端っこにおそるおそる腰を下ろす。すると銀ちゃんの眉がぴくりと動いて、なんだか微妙な顔つきになって、
「違う違う。そーじゃねーって違げーだろそれぇええ」
「ぇえ?」
どかっと真ん中に腰を下ろして、自分の太腿をぱんぱん叩く。胡散臭いくらい堂々とした満面の笑みをこっちに向けて、
「はいここな、ここ。専用特等席な!今ならスペシャルサービスで全身マッサージ機能も付いてくっから。
銀さんが超絶テク駆使してめくるめく大人の世界を堪能させてあげるから!」
「いらないから。そんないかがわしいマッサージチェアいらないから!」
てゆーかやめて、やめてその手っっ。指を高速でうにゅうにゅ動かさないでっ、触手みたいでキモいから!!
あたしが嫌がってずりずり後ろに下がっても、銀ちゃんたらちっともお構いなしだ。はいはいおいでー、とぐいぐい引っ張られて、
片方の脚の上に座らされた。座ると同時で腰に回ってきた腕に抱き寄せられて、背中がぼうっとあったかくなる。
胸の中では心臓がどきどきと困っちゃうくらいに高鳴ってるけど、抱っこされたらなんだかほっとしたっていうか、すこし嬉しくなってきた。
「なー。いーの。ほんとに手伝ってくれんの」
「そっ。そういうこと、何度も言わせないでよっ・・・」
かあっと染まったほっぺたを両手で隠して、もごもごっと小声で答えた。ん、と少し可笑しそうにつぶやいた銀ちゃんが、軽く下着をずり下ろす。
手首を握られて、いつもどおりにだらっと広げた脚の間に手を引っ張っていかれる。
立ち上がったその先にあたしの指先だけを触れさせる。ほんのちょっとだけ。ちょん、と掠めるくらいに。
「・・・っ」
初めて触れた感触にびっくりして、指先がぎゅっと竦み上がった。
熱い。すごく、熱い。
さっきまで全体を覆っていた薄いゴムは外されてる。思ったよりずっと生々しい感触が恥ずかしくって、思わず手を引っ込めてしまった。
たったそれだけだったのに、血管が浮きそうなくらい張りつめてるものの先はびくりと動いた。
銀ちゃんの喉の奥では、ん、と軽く息を詰めたような、なんだか色っぽい声が鳴って。
「もっと触って。先のとこ」
「・・・ぅ、・・・・・・うん、・・・」
早く、って促そうとしてるみたいなキスを、ちゅっ、とこめかみに落とされる。戸惑いながら手を伸ばした。
どうしよう。もう顔が真っ赤だ。身体中が熱い。恥ずかしくって直視できない。だって、こんなに近くで見たことなんてなかったから。
なるべく目をそっちへ向けないようにしながら、おそるおそる指先で触る。あんまり緊張してたから手が思ったように
動かなくって、爪先がぶつかっってしまった。張りつめた皮膚をつんと弾いてしまったせいで、あたしを抱いた銀ちゃんの腕に力が籠る。
「ご、ごめん。いたかった・・・?」
「あ?いや、今のはそーいうんじゃねーから。今のはほら、痛てーっつーかぁ、・・・正直そろそろ限界だし」
「え?」
「・・・。んなこたぁいーんだって今は。知りてーなら後でゆっくり教えてやっから」
「う、うん・・・?」
心配になって見上げたのに、銀ちゃんはなんだかとぼけた顔してこっちをチラ見、すぐにつーっと目を逸らす。
「それよりー、続き続き。ほらほら」って手に手を重ねて急かされた。あたしはまた銀ちゃんのそれに添えた手を動かす。
迷いながら指の腹で触れて、少しずつ、少しずつ、妙につるんとしたその円みをそうっと撫でた。
「。根元のほうまで、全部触って」
「・・・・・・・っ。こ。これで・・・いぃ、の・・・・・?」
「んー、それもいーんだけどぉ、・・・・なぁ、ちょっと握って」
「にっ。握っ・・・・・!?」
おっかなびっくりに指をずらしていって、そろそろと、弱く握った。
「うぁ。くすぐってぇ」と眉を顰めて笑った銀ちゃんは、重ねていたあたしの手ごと、上からきゅっと握ってきた。
「っ、ひゃあぁっっ」
「もっとしっかり握って。もっとがっちりいっていーから」
「がっっ、がっちり!?う、ぇ、や、やっ、うご、うごいっっ」
手のひらにぴたっと密着した熱はびっくりするほど熱くって、握ったとたんにびくんと脈打って動いた。
しっかり握らされた手の中で、それはかすかにびくびくと蠢いてる。どうしたらいいのかわからなくって
おろおろしてたら、あたしの肩に顎を乗せていた銀ちゃんは耳元でおかしそうにくくっと笑った。
「だよなー驚くよなー。、コレ触ったことねーんだもんなー」
「わっ、笑わないでよっ。仕方ないじゃん、こんなこと初めてなんだもんっっ」
「だ〜〜よな〜〜〜!ちゃんは何でも銀さんが初めてだからぁああ」
「・・・銀ちゃんその顔キモい。ていうか何でそこまで笑顔なの。何がそこまで嬉しいの」
にたぁ〜〜っと、目も当てられないくらいだらしない笑みを浮かべた銀ちゃんにがばあっと飛びつかれる。
うっとおしいくらいにぎゅうっと抱きしめられて、おでこをくっつけてぐりぐりされる。目元に天パの前髪がふわふわ当たった。
「で、どーよ。初めて男のもん握らされた感想は」
「どうって、・・・な。なんか、・・・・・・・・・ぐろい」
「ぇえー、ひどくねそれ。お前好きだろこれ。誰だよ、さっきまでこのグロいもんナカに突っ込まれて喜んでた子はぁ」
「〜〜〜っっ!!!喜んでないぃぃぃ!!」
かぁああ〜〜っ、と一気に血が昇った真っ赤な顔でぶんぶん左右にかぶりを振る。
まだ手の中にあるあれをめりめりっと握り潰す勢いで、あたしは涙目で反論した。
信じられない。信じらんないこの人っっ。逆でしょ逆、女の子に恥ずかしい恰好させてびいびい泣かせて、
へらへら笑って喜んでたのは銀ちゃんじゃん!
「へぇええそーなんだぁ。じゃあ何お前、俺とヤッても全然気持ちいくねーの。
へ〜〜〜えぇ、やだったんだアレ、俺の上で泣きそうな顔して腰振ってたさっきのアレ。
えぇえ〜〜〜、あんっっなに喘いでたくせに少しも気持ちよくなかったんだあぁぁ」
「〜〜〜っ!そっっっ、そんなこと聞かないでよっっ」
やだ、もうやだこの人っっ。ほんとにこういう時の銀ちゃんてやだ。あたしが気持ちよかったかどうかなんて・・・そんなこと、銀ちゃんが一番わかってるくせに。
すっかり追いつめられてふてくされたあたしは、ぷーっとほっぺた膨らませて顔を逸らした。
なのに銀ちゃんは面白がってどんどんこっちに迫ってくる。すっとぼけた半目が目の前でにまぁーっと笑った。
「えー、てことは演技?あれもこれも演技だったの。バックで攻められて机にしがみついてあんあんゆって、銀ちゃんいい、いい〜〜って
可愛い声で泣きながらイッちゃったアレ。あれも演技?」
「〜〜〜っっっ!」
「いっやーすげーわお前、そらぁAV女優もびっくりの迫真の名演技だわ。吉原行ったら日輪にスカウトされんじゃね」
「ぅああんもぉぉっっ、やだもうやだぁああっ!禁止っ!この話題もう禁止っっっ!」
「ぇえええ〜〜っだよそれぇぇ」
不服そうにぼやいたくせに、覗き込んでくる銀ちゃんの顔はどことなく緩んでにやけてる。
大人しく腰を抱いていた手が、胸までするーっと上がってきた。むにむにと膨らみを揉み始める。
「ちょ、・・・や、ぁん、やめてってば・・・!」
手をつねったり身体を揺すったりで抵抗してはみたけど、呆れるほど図々しい銀ちゃんがそのくらいで引いてくれるわけがない。
尖った先を摘んでみたり、人差し指の先でぴんと弾いてみたり。銀ちゃんの指が動くたびに、んんっ、と腰をよじって身悶える
あたしを横目に眺めながら、膨らみを包んだ手のひらをやらしい仕草でむにゅむにゅと動かす。
「ちゃん反応良すぎー。お前さぁ、さっきのあれ思い出したんだろ。・・・っだよぉ、やっぱよかったんじゃん」
「も、やだぁ・・・っ、そ。そぉいう、・・・こと、言わっ・・・・、んっ。ぁ、あぁ・・・」
「だよなー、演技なんてまだまだできねーもんなぁは。ほんとに感じてねーとこんな色っぺー声出せねーもんなー」
赤面を通り越して全身が真っ赤になっちゃいそうなくらい恥ずかしいことをやけに嬉しそうにあたしの耳に吹き込むと、
銀ちゃんはほっぺたにちゅっと触れた。
唇にも一瞬だけ、ふっ、とあったかい感触が重ねられる。一度離れて顔をずらして、角度を変えてもう一度。
肌と肌を重ね合わせるだけのやわらかいキスなんだけど、なんだかすごく気持ちいい。うっとりして目を閉じたら、
んっ…、と自然に吐息がこぼれた。
「。もっと。もっと動かして、この手」
そう言って手を上下に動かし始めたから、あたしの手も銀ちゃんの勃ち上がったものと一緒にすりすりと擦られる。摩擦の熱でどんどん
手のひらが火照ってきた。擦っているうちに丸い先からすこしだけ何かが漏れてくる。ぬるりと手のひらを湿らせる
それが、もっと硬さを増してきた銀ちゃんの全体に撫でつけられたころには、銀ちゃんの手の動きはもっと速くなっていた。
・・・銀ちゃん、気持ちいいのかな。
あたしの手がこれをこすり始めてから、眉間がずっと寄ったまんま。めずらしく何も喋ろうとしない。深めに伏せた視線は、銀ちゃんのを握ってるあたしの右手に
固定されたまんまだ。緩んで開いた唇から、はぁっ、と低い響きで吐息が漏れる。んっ、と軽く歯を食い縛ったような声も上がる。
なんだか苦しそう。でも、どこかうっとりしてるような顔してる。見ているあたしが目を離せなくなっちゃうような、
少しとろんとした表情だった。
「・・・なー。ー」
「う、うん・・・?」
「口でして。舐めて」
そう言われて、何も言えなくなった。心臓が締め付けられるくらいどきっとさせられて、なかなか言葉が出て来ない。
「・・・なぁ。だめ?やだ?」
「・・・・・・・・・っっ。や。や、じゃ、・・・・なぃぃ・・・」
ありったけの勇気を振り絞って、蚊の鳴くような小さい声で答えた。
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。もうやだ、顔から火が出そう。涙目になってうつむいていたら、銀ちゃんはあたしの頭を片腕で抱いて何度も撫でた。
むずかる子供をよしよし、ってあやすような、優しくって甘やかした手つきだ。大きな手の感触は首を伝って背中まで降りていって、
ゆっくりと前へ押して身体を倒そうとする。どうしよう、って少しだけ迷ったけど、後ろへ下がって銀ちゃんの脚の上から降りた。
降りたばかりの太腿に片手でつかまって、少しずつ、泣きたくなるような恥ずかしさと緊張感で頭の中まで火照らせながら姿勢を低める。顔を近づけていく。
あたしの手をしっかり握ったままの銀ちゃんの手が動いて、口許にそれを向けてきた。
張りつめた熱さが唇に触れる。ちゅ、と軽く啄ばむキスをしたみたいになった。
「ん・・・っ、」
ぱらぱらと落ちてきた髪が頬を隠すくらい深くうつむいた頭の上で、荒い息遣いで短く呻く声がした。
脚の間に寄せたあたしの頭を、銀ちゃんは上からなでなでしてくる。目元まで垂れてきた邪魔な髪を長い指の先が掻き寄せて、
耳にさらりと引っ掛けて直してくれた。
「わりぃ。。もっと――」
「え」
呼ばれて反射的に顔を上げようとしたら、頭に置かれていた手に力が入った。
口許から離れかけた銀ちゃんのが、とん、ともう一度唇にぶつかる。さっきよりもありありと感じてしまったその熱さや、
柔らかいのに硬い独特の感触があまりに生々しくって、ぼんっと一気に頭の中が沸騰した。ひゃあっ、と真っ赤になって叫んで離れようとしたのに、
それでも銀ちゃんの手は上から圧力を掛けてくる。
うそ。これって――確実に、あたしをあそこへ押しつけようとしてる動きだ。
「俺の、咥えて。なるべく歯ぁ当たんねーよーに。喉の奥まで呑み込んで」
「待っ、ちょ、・・・・・・やっ、ぁ、ふ、――く・・・っ」
あわてて身体を引こうとしたけれど、銀ちゃんは逆にあたしをぐいっとそこへ押しつけた。
拒む間もなくこじ開けられた口の中一杯に、ぐぷっと一度に熱いものが飛び込んでくる。
「んっ、んんっ。ぎ、ぎ・・・・!ふぁ、んふっ」
「そこ、舐めて。割れてるとこ」
「んむ、く、ぅ・・・・・・・・―――っ!」
捩じ込まれた丸い先端にぐちゃっと舌を折られて、舌先にぐちゅりとなすりつけられた変な味が口の中に溶け出してくる。
ちょっと苦い。喉が痛くなりそうなきつい味。
――熱い。銀ちゃんの、熱い。あたしの中に入ってるときと同じだ。熱くって、すごく張りつめてて――
「〜〜〜・・・っ、ん、ふ、はぅ・・・」
「・・・あぁ、やっべぇ。想像したより全然気持ちぃーわこれ。口ん中までむにむにでやらけーんだもん、お前」
「・・・・・っ」
「なぁ。もっとぺろぺろして。先もー、竿んとこも」
苦笑いで眉を顰めた銀ちゃんの手が、深くうつむいたせいでぴんと伸びきっている首筋をつうっと撫でた。うわ、くすぐったい。おもわず身体がびくんと揺れる。
あたしはわけもわからず、言われたとおりにそこを舐めていった。少し怖がりながら、口の中を埋めた熱いものを舌先で撫で上げている
うちに、頭の芯がふらふらしてくる。・・・なんだか頭の中が熱い。口の中も熱っぽい。熱に浮かされたみたいに夢中になって、
自然と口の中に溜まってくる唾液を絡ませながら舐めていたら、あたしに自分のものを握らせている手が動いた。根元を上下に
擦りながら、銀ちゃんは腰を動かしてくる。口をうんと開いて喉の奥まで埋めても全部は入りきらない大きなものを、
ずっ、ずっ、と前後に動かし始める。硬い感触が口の中をずるんと滑って、思いきり開かされた唇も擦る。その速い動きにつられて、
口端からはとろとろと唾液がこぼれ落ち始めた。
「ん。ん、・・・・・・・ふ、く・・・」
「ん、そぉ。先、吸って。ちゅーって」
「・・・はぁ、む、・・・・・ん、っ」
「・・・・・っ、」
力が籠ってきた銀ちゃんの手がすりすりと頭を撫でて、ぎゅっと力任せに髪を握りしめた。・・・そんなに気持ちいいのかなぁ、これ。
今、すっごく気持ちよさそうな、うっとりした声で囁かれたせいなのかも。――あたしまで身体が変になってきちゃった。
荒くなってきた息遣いを精一杯抑えてるような銀ちゃんの声が、なんだかどきっとするくらい色っぽいから。
だから。――そんな銀ちゃんの声を聞いていると、銀ちゃんの脚の間に顔を埋めていやらしいことをしてる自分が、
すごく、すごく恥ずかしくって。でも、あたしがしてることで銀ちゃんがあんなせつなそうな声を出してるんだって思うと、
なんだか嬉しくってたまらないような、ちょっと陶酔した気分にもなる。
もじもじと擦り合わせた脚の間には、とろりと熱い感覚が生まれてる。そのうちに銀ちゃんが、ちょっと笑い混じりな声で呼びかけてきた。
「・・・ー。ごめんな。苦しい?」
涙でぼうっと滲んだ目を上げて、首を小さく横に振った。
・・・・・・ほんとはこうしてるだけで銀ちゃんのが喉の奥に当たる。腰を動かされるたびに息が詰まるし、
実は、今にもけほけほ咳込んじゃいそうなくらい苦しいけど。
あたしを見つめた銀ちゃんはほんの一瞬だけ目を見開いて、言葉を失くしたような顔をした。手がすっと伸びてきて、
銀ちゃんのを一杯に咥えたほっぺたを包んでくれる。同じように伸びてきたもう片方の手は、
丸めた背中をいたわろうとしてるみたいに撫でてくれた。
「・・・・・・・・・・・・。あのよー。先に謝っとくわ」
「ふ・・・・・・は、ぅ・・・?」
「や、悪りい。っっっっとにごめん。けど無理。無理だわこれ。そーんな健気でえっっろい顔してご奉仕されたらもぉ無理。
ぜってー我慢できねーし・・・!」
「ふ、ふぇ、え・・・っ!?」
おもわず目が釘付けになる。とんでもないことを口走りながら明らかに目を血走らせはじめた銀ちゃんの顔は、
ものすごく切羽詰まっててこわかった。えっ、ちょっと、何する気!?と物も言えない状態でぽかんと見上げていたら、
ぐいっと肩から持ち上げられる。口に入っていたものがずるりと抜ける。いきなりぎゅーっと抱きしめられて、
飛びつく勢いで唇を塞がれる。すかさず潜り込んできた銀ちゃんにめちゃくちゃに舌を吸われる。呼吸もさせてもらえなくって、
「んむむむむっっっ」と唸ってるうちに、息苦しさで頭がくらくらしてきた。やだやだ、と胸板をべしべし叩いて暴れたら、
今度は、えっ、と驚く暇もない速さで上半身をソファに転がされる。ぼふっと顔から着地してしまって、むぐっ、と変な声が出た。
ばかぁ、くるひぃぃ、とげほげほ咳込みながら訴えた頃には、銀ちゃんは素早くあたしの後ろに回り込んでいて――
「いやごめん後でマジで反省すっからちょっと我慢して!」
「ぇええええぇえ!やっ、やだぁっ、ちょっっっ」
腰を覆っていた着物を全部、ぱぱっと捲くった銀ちゃんは、膝を曲げたあたしの脚をあっというまに両側に抱え込んだ。
逃げようとしたけど力じゃ銀ちゃんに敵わない。左右に割った脚の間にさっきまで咥えていた熱いものをぐちゅっと押しつけられる。
「んんっ・・・!」
「ん、っっ。・・・ぁあ。。――・・・っ、」
「やっ、ああっ、やぁ・・・・・っ」
押しつけられた先がぐちゅぐちゅと水音を鳴らす。縦に上下して、あたしが溢れさせた蜜を入口にぬるぬると塗りつけていった。
熱い感触を銀ちゃんが動かすたびに、びくんっと腰を震わせながら泣き声でうめく。一番感じやすいところもぬるりと擦られて、
そのたびにぎゅっと目を瞑る。軽く押しつけられただけなのに、あたしのそこはびくびく疼いた。
・・・どうしよう。こんなのが入ってきたらすぐにおかしくなっちゃうよ。銀ちゃんの、すごく硬くなってる。
口の中にあった時よりも硬くて、押しつけられただけで背中がぞくぞくしちゃうくらい張りつめてて――。
「あっ、んんっ、ああぁ・・・・・っ」
「っだよお前ぇ。いやいやゆっといてほんとは欲しかったんじゃねーの」
「やぁ、ち、ちがっ・・・あっっっ、」
もっと強く押しつけられて先で押し広げられたら、蜜がとろりと垂れてくる。
全身がぶるっと震え上がって、あぁっ、と背中をしならせて声を上げた。それを聞いた銀ちゃんが頭の後ろでははっと笑って、
吐息の熱が耳たぶを掠めていって――
「じゃあ何でこんなに濡れてんの。とろっとろになってんだけど、お前の、ここ」
「んぁあ・・・・!」
やだぁ、と何度もかぶりを振ってるうちにも熱いものにじわじわと押された。
びくびくと疼いてる狭い中が、徐々に、ぎゅうっと押しつけられた銀ちゃんで開かれていく。
「あぁ。無理。も、挿れる」
「んっ、ん、んんんんんっ〜〜・・・!」
やだ。どうしよう。
先のところを入れられただけなのに、もう膝ががくがくになってる。
銀ちゃんの、さっきと違う。
さっき挿れられたときよりも――、ずっと。 ずっと――
「ふぁ・・・・・!ぁ、あんっ、やぁ、銀、ちゃ・・・〜〜〜っ」
ずっ、ずっ、と小刻みに腰を押し進められて、きゅうっと締まった狭い中を男の人の熱と重みで広げられていく。
そのたびに疼きが強くなる。
どろりと溢れた生温さが太腿の内側を伝って流れる。頬をぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
「ぎ、ぎん、ぁ、あぁん、ひ、ぁあ・・・」
「ごめ…、もっとゆっくり慣らしてやりてーけど。もぉ、我慢、できね・・・――っ、」
「あっっ。っあああぁ――・・・・・・っ!」
銀ちゃんが前にぐっと押し出した。両腕でねじ伏せられた腰を割って、熱くって硬いものが
ぐぷぐぷと入ってくる。うんと深いところまでいっぱいにされて、ずんっと一番奥を突かれる。
身体が弓反りにぶるぶるとしなった。
「ぅあ・・・・っ!」
「・・・。動くぞ。・・・いーよな、こんだけ濡れてるし」
「だ、だめぇ・・・、ま、まだ―――っ・・・!」
「何で。いいだろ。こんなに欲しがってんじゃん、お前の中」
「あぁ・・・!んっ、もぅっ、や、やだって、いっ・・・ぁ、ああっ」
自分でもはっきりわかるくらいに濡れている中を荒々しい動きで擦られる。
ソファにしがみついてもがいても逃げられない。逆にずるっと引き寄せられて、ずん、って強く打ちつけられてしまった。
その衝撃で身体が痺れて、一瞬息が出来なくなる。
「〜〜・・・っ!や、やぁっ、あぁんっ、やめてぇ」
「あー無理。それ無理。今言われても無理だって」
「ぎ、銀ちゃ、いつも、より、あつ・・・っ」
「ぁあー?そりゃあそーだろ、つけてねーし。生だし」
はぁっ、と大きく息を吐いた唇が、うなじにきつく吸いついてくる。
止める間もなくちうっと吸われてしまった。ばか。銀ちゃんのばか。そんな見えやすいところに痕つけるな、ばかっ。
「ー。の中もあっちーんだけど。銀さん蕩けそーなんだけど」
「あっ、やぁあんっっ。なっ、なんか、また、かた・・・おっき・・・!」
「んだよぉ誰がこんなにしたと思ってんの。が可愛い舌で一所懸命ぺろぺろすっからこんなにカチコチになっちまったんだろぉ」
全部のせいだから、最後まで責任取って。
そう言いながら動いた銀ちゃんの腕が身体の下へ回り込む。ソファに押し潰された胸を両方の手のひらがぎゅっと握って、
小さくて尖った先を指先がふにふにと転がした。
「あんっ、や、そこ、・・・・・ふぁ・・・・・・・んっ、」
「ははっ、何それ。かっわいー声出しちゃってぇ」
「うぅん。・・・っ、やあ、あぁっ、ん、もぅ、だめぇ、ひぅ、ぁ、めぇ・・・っ」
「もっかい聞かせてその声。めちゃめちゃ好き。・・・なぁ、。俺に触られると気持ちいぃ?」
ずぶ、じゅぶっ、と中を滑らせて往復させながら銀ちゃんは尋ねてきた。
わかんない。そんなこと聞かれても答えられない。頭の芯までじいんと痺れきってて、まともな言葉なんてなにひとつ浮かばない。
柔らかい手つきで弄られてる胸の感触や、お腹をみっしりと埋められてる感覚で頭の中は一杯で、
口から漏れてくるのは我を忘れて銀ちゃんに絡みつくような、鼻にかかった涙声だけだ。
あたしは泣きながらこくこくと頷いた。すると銀ちゃんは動きを止めて、手をもっと下へ降ろしていく。
「んじゃ、ここはどーよ」
「ひぅ・・・・!」
緩みかけた帯の上からお腹をすうっと
撫で下ろした手は、あたしのぐちゃぐちゃに蕩けたところに指をぐちゅっと潜らせてきた。
そこから背中を抜けて頭までを、
強い痺れが一気にぶるりと駆け抜ける。背筋がぐんと伸びて、銀ちゃんに埋められている腰がずるりと逃げた。
「あぁんっ、や、らぁっっ」
「んだよそんなやらしい声出ちゃうくれー気持ちいいの?軽く触ってるだけなのによー」
「ぎ、ちゃ、やぁ、そ、そこっ、さわ、ちゃ、・・・めぇっっ・・・!」
両腕でお尻を抱きかかえられて、止まっていた銀ちゃんの腰が動き出す。
どっ、どっ、と後ろから、身体が押されて前へ前へと動いちゃうくらい激しく衝かれる。衝かれるたびに先端が奥に当たって、
そこからじゅぶりと押し出された熱い蜜はとろとろと内腿にこぼれていった。
「ぁん、ひあ、ああぁっ」
「――んっっ。あぁ。やっべぇ。まだ締まるし」
隙間なく埋められてる中がきゅうっと捩じれて、銀ちゃんをきつく絞っているのが自分でもわかる。
頭の後ろでささやいてる銀ちゃんの声が、なぜかすごく遠く聞こえる。
――もうだめ。頭がおかしくなりそう。
何度も何度も擦られて燃えそうに熱くなってるそこから溢れてくる感覚は、こわいくらいに気持ちいい。身体が痺れてせつなくって、
銀ちゃんの硬さが当たるたびに、甲高い叫び声を上げてしまう。蕩けたところに潜った指は、敏感な膨らみを意地悪くくちゅくちゅと
弄りつづけている。
もうだめ。死んじゃう。
ぽろぽろ涙を流して銀ちゃんに揺らされてるうちに、わけがわからなくなってきた。
そんなことを口走って、後ろから押してくる銀ちゃんから逃げようとしたら、
「だめだって逃げんなって。逃げたら奥でイカせらんねーじゃん」
「や、ぁあ、んっ、も、・・・・むり、むりぃ・・・!」
「あーもぉこの子はぁ、んな顔して泣くなって。そーいうやらしいおねだり顔で拒まれるとー、銀さんもっといじめたくなるからぁー」
「ん、はぁ、ね、ねだって、なんか、な・・・っ!」
「ぇえ〜〜、っだよねだってくんねーの」
ちぇっ、とつまらなさそうに舌を鳴らした銀ちゃんは、上からどさっと倒れてきた。
背中にぴったりくっついた胸板は熱くって、あたしの肌にも汗がじわじわ染み移ってくる。
耳たぶをぺろりと舐め上げられた。先を細く尖らせた舌の熱さが耳の中にぬるりと侵入してきて、耳を覆った唇がざわりと蠢く。
その瞬間、銀ちゃんがかすかに笑ったような気配がした。
「。俺のもん舐めるのすき?嫌い?」
「・・・・っ、ぃ。いやじゃ・・・な・・・っ」
「ん。じゃあ次は、俺がのやらしいとこいっぱい舐めてあげる。が俺にしてくれたみてーにじっくり可愛がって、
うんと気持ちよくしてやっから」
「〜〜んっ、そ、そんな、しなくて、い、っ」
「させろよ。が頑張ってくれたから銀さんお返ししてーんだって。だからまた、今日みてーに、お前がやらしい恰好でイくとこいっぱい見せて」
「――っぁ・・・・・・!」
銀ちゃんのばか。ずるい。ずるいよこんな時にそんなこと言うなんて。
耳が燃えちゃいそうになるくらい恥ずかしいことばっかり、低くて甘ったるい声で並べ立てられた。
それだけであたしはぞくぞくして、軽く達してしまった。
ぁあんっ、と背中を仰け反らせて泣いて、ソファにしがみついた指の先まで震わせていたら、銀ちゃんの腕にぎゅうっと強い力が籠って。
「・・・つーかもうダメだわ。俺がダメ。もぉイく」
「ふぇえ・・・!っぁ、ぁあんっ、やぁもぅ、〜〜〜〜・・・っっ!」
息が止まっちゃうくらい強く衝かれて、身体中が甘い痺れに呑まれた。
あっというまに絶頂まで昇り詰めて、甲高くって長い嬌声を上げてしまった。ソファに押しつけられた脚や腰がくがくと震える。
それでも銀ちゃんは動きを止めてくれなかった。
「〜〜〜・・・っ!や、ぎ、ぎ、ちゃ・・・・・・っっ!」
「・・・っっ。あぁ。いい。最高。このまま出してぇ・・・っ、」
早口にぼそぼそっとつぶやいて、苦しそうにうぅっと唸る。お尻を左右の手でぎゅっと鷲掴みされて、
中を擦る動きがもっと、もっと速くなって。ぱんっ、ぱんっと音が鳴るくらい、後ろから思いきりぶつけられるようになって。
ぶつけられるたびにすごく苦しいけど、気持ちよすぎて声も出ない。ずちゅ、ずちゅ、と濡れた音を立てて奥まで打ちつけられて、
背筋を何度も何度も甘い快感が抜けていく。イきっぱなしになっちゃって、もう身体に力が入らない。
何も考えられなくなってくる。ただただ、夢中で後ろから突き上げてくる銀ちゃんの動きに揺らされて。喘ぎ続けるだけになって――
「ひぁ、う、ぁあん、〜〜〜っ・・・!」
「。――・・・・・っ、」
「ぎ、ぎん、ちゃ・・・!ぁあん、も、やぁ、い、いっ、あぁ――・・・っ!!」
「ん――・・・・・っ!」
苦しそうに唸りながら銀ちゃんがずるっと一気に中から引き抜く。あたしはそれにも感じてしまって、腰をびくびく震わせてしまった。
どろどろした熱いのをお尻や太腿にたくさん浴びせられた。息をはぁはぁ弾ませて、
汗ばんでた肌がもっと濡れていく感触を感じてるうちに、瞼がとろんと降りてくる。
ぼやあっと潤んで歪んでる視界に何かが被さってくる。銀ちゃんの手だ。身体をひっくり返されて、汗で濡れた髪がぺったり貼りついた
おでこを優しく撫でられて。、とすっかり息が上がった声で呼びかけられた。息苦しくって開いたままの唇を、ちゅっと吸われる。
はぁ、はぁ、と苦しそうに喘ぐ熱い舌が、口の中まで入り込んできて。
――そこでぷつんと、意識が途切れた。
目が覚めたらなぜかお布団の中だった。
最初に目に入ったのは銀ちゃんの部屋の天井。目をこすりながら起き上がろうとして、
もう一度布団にへなへなっと倒れた。
だるい。もう一生起きたくない、ってくらい腰が重い。部屋の中に銀ちゃんはいない。「銀ちゃんのばかぁあ」を連発しながら
のそのそっと這い起きてから、いつのまにか自分が着替えさせられていることに気づいた。・・・なにこれ。こんなのどこで売ってるんだろう。
「ビーチの侍」って殴り書きしてある変な白Tシャツをしげしげと見下ろす。男物だから腰まで隠れる長さだけど、
幅が大きくってぶかぶかだ。居間へ繋がってる襖戸を見上げる。ほんのちょっとだけ出来た隙間から明りが漏れていた。
「・・・銀ちゃん。銀ちゃーん・・・?」
返事がない。どこに行ったんだろう。トイレかな。お風呂かな。
よろよろっと立ち上がって、ふらふら歩いて部屋を出る。襖を開けたとたんにいいにおいがした。何かを煮込んでるにおい。
お醤油とおだしのにおいだ。そのままふらふらと台所まで行くと、銀ちゃんは寝間着姿でシンクの前に立っていた。
水道からは水がすうーっと流れてる。何かを洗ってるみたいだ。ぺたぺた床を踏んで近寄っていったら、
銀ちゃんはシンクの中を見下ろしたまま口を開いた。
「いちご食う?」
「うん。食べる。・・・・・・銀ちゃんなに作ってるの・・・?」
「んー。お前が買ってきたやつで、適当に」
じゃぶじゃぶ洗っていたのはあたしが買ってきたいちごだった。ざるに開けて水切りした
真っ赤な粒のひとつのへたを指で千切り取ると、銀ちゃんは、ん、とあたしの口に押し込んだ。自分の口にもひとつ放り込んで、もごもごと頬張る。
洗ったばかりのいちごはみずみずしくっていい香り。ひとくち噛むと、柔らかい果肉から弾け出た甘酸っぱさがじゅわっと口中に広がった。
ガスコンロには二つのお鍋が乗っていて、どっちもくつくつと煮えている。
右側の大きめなほうの蓋を外すと、中では飴色の煮汁が煮立っていた。
銀ちゃんは冷蔵庫からうどんの袋を取り出す。冷蔵庫のドアを行儀悪く足で閉めて、袋をべりべり破りながらこっちを向いて、
「なー、うどん甘くしていい」
「やだ。お腹だるいんだもん。薄味がいい」
「あっそ。具は?何入れんの」
「おあげと葱がいい。あと、とろろ昆布」
「昆布はあるけどー。油揚げは抜きな」
「えぇ〜やだぁぁあ」
「やだぁあ言われてもよー。しょーがねーじゃん、昨日使っちまったしぃ」
「おあげがいいのにぃ・・・」
「まぁまぁいーじゃん、卵でいーじゃん。が好きな半熟とろとろにしてやっから」
喋りながら手早くうどんを入れて掻き混ぜて、まな板に乗っていた葱を刻みはじめる。次は卵を出して、
丼を出して、煮立ってきたうどんの様子を見ながら、あたしが夕方に作っておいたかぼちゃの煮物をもうひとつのお鍋から盛りつけて――
次から次へと、難なくこなしていくおおきな手を惚れ惚れと眺める。・・・さりげにかっこいいんだよね、お料理してるときの銀ちゃんて。
あたしが万事屋にいるときは滅多に台所に立たないんだけど、実はたいていのものは作れちゃうみたいだし。
いつ見ても手際がいいし、感心しちゃう。
「銀ちゃん」
「んー?」
「めずらしいよねご飯作ってくれるなんて」
「・・・えー。そーだっけ」
おたまで掬った煮汁の味見をしてから、沸騰しているお鍋にぱらぱらと葱を入れる。何か思い出してるみたいな顔つきで、
銀ちゃんは鍋を見つめたまま話し始めた。
「まあほら。あれな。・・・要はちょっと反省したわけよ。いい年こいてはしゃぎすぎちまったなーとか」
「・・・?」
「さっきさー、終わった途端に落ちただろお前」
「う、うん・・・?」
「布団まで運んでも着替えさせてもぐったりしたまんまだしよー。
全然目ぇ覚まさねーんだもん。・・・正直焦ったわ、あれは」
「・・・・・・・・・。びっくりした?」
「5分置きくれーで寝息確かめてた」
「・・・心配した?」
「んぁー。まぁ」
何気ない口調でぽつりと答えて、それきり黙ってしまった。
ふつふつと泡を浮かばせてるお鍋をおたまでゆっくり掻き混ぜる手を、あたしも横から黙って見つめた。
口から生まれたって言われちゃうくらい、いつでも何でもぺらぺらと喋り倒しちゃう銀ちゃんだけど、
こんな時だけはいつも口が重くなる。たとえば、新八くんや神楽ちゃんが寝込んじゃった時とか。
お登勢さんが怪我をしてかなり長い間入院してた時とか。
たぶん、自分の周りの人たちが弱ってるところを見るのが苦手っていうか・・・
そういうのがダメなんだよね。もしかしたら銀ちゃんて、意外とこわがりっていうか、すごく臆病なところもある人なのかなあ。
こんな銀ちゃんを見るたびにそんなことを思ってきたんだけど――
・・・なんだか複雑だよ。心配してもらえて嬉しいような、心配させちゃって申し訳ないような。
あたしは目の前の銀ちゃんの身体に腕を回した。ほっぺたを押しつけてぎゅむっと、
ごめんね、の気持ちを込めて思いきり抱きつく。
すると銀ちゃんはお鍋の湯気をやる気のなさそうな半目で見つめたまま、ぼそぼそっとほざいた。
「・・・・・・・・・や。俺は気持ちいーから大歓迎だけどぉ」
「へ?」
「ちゃーん。わかってねーみてーだから言っとくけどー、今ノーブラだからねお前。さっき脱がせちゃったからね上も下も」
へ、と間抜けにつぶやいて自分の身体をぽかんと見下ろす。
・・・・・ほんとだ。ないよ、付けてないよブラもぱんつも!どうりで胸とお尻が妙にすーすーしてると思ったよ!!
「いやいやいーわ、やっぱ最高だわ。やっぱあれな、こーいう時のTシャツは白に限るよなぁ白にっ。
見えそーで見えなさそーで実はほんのり見えてますみてーな?このきわどい透け感がたまんねーっつーかぁああっ」
あたしがTシャツ一枚ノーブラノーぱんつ状態に唖然としてる間に、銀ちゃんは勝手にぺらぺらと喋り出した。
さっきまではそれなりに引き締まってた顔はすっかり崩れて、だらしないでれでれ顔でこっちをちらちら流し見てる。
鼻の下まででれでれーっと伸ばしちゃってる。あたしは横からじとーっと、お鍋を掻き回しながらにやにやしてる姿を睨みつけた。
心底情けなくなって溜め息をついて、銀ちゃんの膝裏にがつがつっと膝蹴りを入れて、
「銀ちゃあぁぁん。返してよ。返してよあたしの気遣いと感動をっっ」
「んぁ?なに。つーか痛てぇ、痛てーって」
「ねえほんとに反省してる?このご飯もさ、自分の行いを反省して作ったとかじゃなくって、あたしの機嫌とりのために
作ったんじゃないの?あたしが目が覚めたらかんかんに怒りそうだったから、だから作ったんでしょ。ね、そーなんでしょ!?」
「はぁ?おいおいィ何言ってんのぉお前。そんなんじゃねーって。ちょ、なに、誤解もいい加減にしてくださいよコノヤロー。銀さんの愛を疑ってんの?」
なんて銀ちゃんは強気に言い張った。だけどお鍋を掻き回す手つきは急にぐるんぐるんと早くなったし、
にやついた目はうどんがくつくつ煮えてるガス台のあたりを左右にふらふら泳いでる。さらにはぴゅーぴゅーと、
焦りをごまかそうとしてるのがみえみえな口笛まで吹き出した。
・・・情けないよ銀ちゃん。あからさますぎて泣けてくるよ銀ちゃん。
あたしはへなっと眉を下げて、すごーく困ったような目つきを作る。よれよれの寝間着をくいくい引っ張って、銀ちゃんをじいっと見つめて勝負に出た。
「ねえ。もしかして銀ちゃん。また、・・・あの。ああいうこと。・・・あたしに、してほしいなぁとか、・・・思ってるの・・・・・・?」
「――へ。いや、まあ、してほしいっつーかぁ」
「・・・・えぇ〜〜〜〜〜・・・・・・そーいう期待されても困るんだけど」
ふいっと目を逸らして、引き気味な態度でつぶやく。
すると銀ちゃんの態度が一変。右手に持ってたおたまごと手をぶんぶん振って、おたおたと面白いくらいにあわて始めて。
「ぇえええぇマジで!!?だめ?もぉ無し?無しなの?絶対ダメなの!?もぉアレしてくんねーの!!?」
「えーっ、してほしいんだぁ。・・・・・・・・・・・・」
ちょっと迷惑がっているようなふりで一瞬考え込んで、ちらりと上目遣いに見上げてみる。
「お願い考え直してぇぇ!」って飛びついてきそうな勢いで慌てていた銀ちゃんが、
おたまを頭上に振り上げた恰好でぴたりと止まった。
何があってもどうでもよさそうにだらーっと鼻なんかほじってる銀ちゃんにしては、いつになく切羽詰まった表情だ。
かあっと目を開いて、ごくりと生唾を呑みこんでる。本気で焦ってるみたい。
そんな姿を見上げてにっこり笑う。――心の中では、きゃーって叫んでぴょんぴょん飛び跳ねちゃいたいくらい
嬉しい気持ちを抑えながら。
いつのまにか寝かされていたお布団みたいに。
いつのまにか着替えさせてくれたTシャツみたいに。
寝ている間に作ってくれたご飯みたいに。
あたしだって銀ちゃんに優しくしてあげたい。たまにはめいっぱい甘やかしたい。銀ちゃんがしてほしいって思ってそうなことなら、
本当は何だってしてあげたい。
――でもね。最近判ったの。
これからも銀ちゃんと長く楽しくお付き合いしていくには、ただ甘やかすだけじゃだめなんだって。
時には銀ちゃんの大好きな飴を武器にして。時には、暴走する銀ちゃんに遠慮なくぺちぺちとムチ打って。
何があっても悪びれなくて呆れるくらいに図々しい銀ちゃんを、あたしは彼女としてうまく操縦してあげなくちゃいけない。
だからこれだけは、そういつでもほいほいと、お手軽にはしてあげないことにしようかな。
「口から生まれた男」を黙らせちゃう、とっておきのご褒美だもん。たいせつな最後の切り札にとっておくの。
「・・・銀ちゃん。そんなにしてほしい・・・?」
「してほしいに決まってんじゃん!!つーかしてくださいっお願いしますっっっ」
「ふーん。そーなんだ。銀ちゃんそんなに好きなんだ、あれ」
「たりめーだろぉぉ!言っとくけど銀さんだけが特別じゃないからね?アレが嫌いな男なんていないからね!?」
「じゃあ、このうどんがおいしかったら少しだけ考えてあげる」
「・・・・・」
澄ましたふりをしてお鍋を指すと、銀ちゃんは急に黙りこくってあたしを眺めた。おたまを振り上げた手がへなへなと下がっていく。
銀ちゃん、何かめずらしいものでも見つけたような、ちょっと驚いたような顔してる。かと思ったら、目尻をふっと下げてにやぁっと笑った。
何を考えてるんだかわからなくってふてぶてしい、けれど、ちょっとだけ嬉しそうな顔つきになって。
「ちぇっ。・・・やっぱこぇーよなぁ。女って」
「え?」
「俺の目なんか追いつかねー速さで女になってくっつーかよー。日に日に、どんどん変わってくっつーか」
銀さんそんな封じ技、に教えた覚えねーんだけどなー。
そんなことを言ってにやつきながら、水に濡れた手をこっちへひょいと伸ばしてくる。
指ごとぐちゅりと口に押し込まれたのは二つめのいちごだ。どこか意味深であやしげな笑いを浮かべた
銀ちゃんの目を見つめながら、真っ赤な果肉に歯を立てる。
じゅわりと溢れて舌を濡らした甘酸っぱさを、こくりと一息に飲み干した。