「――ぎ、銀ちゃ、・・・・・・・・・・・っ、ふ、ぁっっ、ぎ、ん、ちゃ・・・!」
ぎしぎしと軋む音や汗で湿ったお布団と一緒に、あたしは銀ちゃんに揺られ続けた。打ち込まれる腰の動きはどんどん速くなる。
どんどん鋭くなっていく。銀ちゃんに喉の奥で舌を絡め取られたままで、必死に唇の隙間から声を漏らした。
喘ぐ間もないくらい打ち込まれるから、酸素不足になって呼吸が乱れる。被さってくる重たい胸を押し返して、どうにか顔を背けて唇を離す。
はぁっ、と大きく口を開けて思いきり息を吸い込んだら、こっちを見下ろしていた銀ちゃんがほんのすこしだけ息を詰めて、
ずるっ、と中から引き抜いた。と思ったら、ふっ、と軽く笑うのと同時でまた押しつけられて、ぐぷっ、と濡れた音がこぼれて。
「ひぁ・・・っ!」
どろりと濡れたすごく熱いものが――銀ちゃんが潜り込んでくる。あたしは全身を硬くして声を我慢した。
ぐぷぐぷと音を鳴らしながら壁を掻き分けて奥へ入り込んできて、硬くて張りつめてるあの先で、
「――――っっ!」
一息に銀ちゃんに抉られた。声にならない声が跳ねる。一番深くて感じやすいところを突かれて、その奥を駆け抜けていった
強い痺れのせいで息もつけない。抱きしめられていた背筋が銀ちゃんの腕に逆らって、弓なりに反り返るくらいびくびくとしなって。
強張っていた脚と腰を、ぶるぶると弱い痺れが駆け抜けていって。へなへなぁっと、一気に身体中の力が抜けてしまう。
背中がお布団から浮き上がっちゃいそうな、ふわふわしたおかしな感覚でいっぱいになった。
「ー。銀さん溜まりすぎて我慢出来ねーから動いていぃ」
「・・・・・っ。やだぁああ。も、だ、めぇ」
「ははっ。お前さぁ、今日はやたらすぐイくよなぁ」
「〜〜っ。だ・・・だってぇ・・・っ」
「本当にクスリのせいだけかぁ?それぇ」
なんて笑いながら言って、銀ちゃんは頭を撫でてくれた。頬やおでこに貼りついた髪を、骨の太い指で掻き上げて直してくれる。
ほっぺたに流れていた涙のあとも、ぺろりと舐めて拭ってくれた。
・・・クスリじゃないよ。銀ちゃんのせいだよ。
触れてくる指の動きがやわらかくて気持ちいいから。身体も気持ちも溶けちゃいそうなときに、
そういう優しいことするから。高い熱が出て頭の芯がぼうっとしてる時みたいな、すごくいろっぽくて不思議な表情で見下ろしてくるから。
そんな顔して笑われたら、見ているだけで息が弾んでくる。身体がかぁっと火照ってくる。
中の銀ちゃんをきゅうっとしめつけてしまってるのが自分でもわかる。さっきあんなに苦しいおもいをしたばかりなのに、またキスしてほしくてたまらなくなる。
「あのさぁ。ひとつにお願いあんだけど」
「・・・っ・・・・・・・?」
「今さぁ、俺、アレつけてねぇんだけど。生なんだけど。わかってた?」
「・・・、あ、・・・・」
そのひとことで心臓がとくんと跳ねて、真っ赤になっていたほっぺたの熱がさらにかぁーっと上がってしまった。
まじまじとあたしを眺めていた銀ちゃんがにたーっと笑って、「あー、やっぱ気付いてねぇんだ」って
可笑しそうな顔つきになる。
どうして気付かなかったんだろう。
あたしの中でどくどくと脈打ってる銀ちゃんは、いつもよりも、
――擦れ合う感触が生々しくって、燃えちゃいそうに熱いのに。
「でよー。すっげぇ気持ちいいから、このまま中に出していい」
「・・・!!」
びっくりして目を丸くしたあたしの肩に腕を回して、銀ちゃんが大きな動きで滑り出す。抑えられた肩が動かない。
同じように腕を回された腰も、固く掴まれて逃げられない。
「え、なっ、な、や、うそ、でしょ、そんな、・・・あ、ぁんっ、」
な。なにそれ。うそでしょ。
そんなこと言って銀ちゃん、またあたしのことからかおうとしてるんだよね?
真っ先にそれを確かめるつもりだったのに、すぐに甲高い悲鳴しか出せなくなった。ぱんっ、と肌と肌がぶつかり合って音が鳴るほどに
強く、大きく打ちつけられて、
「――あぁ・・・・・っっ!」
深くて痺れる重い快感が、お腹の奥から頭の芯までを電流みたいに突き抜けていく。
汗でじっとり濡れたお互いの肌と肌がぴったりと密着する。深く挿れたままの銀ちゃんが、ぐ、ぐ、ぐ、とあたしの奥に
先端をぶつけてくる。ぶつけられるたびに目の前が涙で霞んでいく。お腹の奥がきゅうっと縮んで熱くなる。もやもやと溜まっていくあのかんじで身体中が痺れちゃって、
手にも足にもちっとも力が入らない。だらしなく開いてはぁはぁと喘ぎっぱなしの唇から、「あぁっ」と我を忘れた声が漏れる。
「ぎっ。銀ちゃ、ぁ、やめ、て、放してっ、」
「。もっと脚開いて。もっとよく見せて」
「っあ、はぁ、っ、ぁん、あぁっ!」
太腿をそれぞれの腕に抱えて持ち上げられて、脚を大きく広げさせられる。やだ。だめ。隠したくって伸ばした腕は、
そこを覆う前に銀ちゃんに囚われてしまった。掴んだ手首を押さえつけて太腿といっしょに拘束した銀ちゃんは、
ずっ、ずっ、と大きくお布団を擦るようにして動いた。逃げられない身体が下からずんずん突き上げられて、
お布団といっしょに上下に揺らされる。銀ちゃんが蕩けた中を擦るたびに、じゅぷ、じゅぷ、と泡立った水の音が鳴る。
その音が泣きたいくらい恥ずかしいけれど、一番いいところを擦られてるからたまらなく気持ちいい。身体中がぐったり弛緩していく。
何度か弱くぶつけられたと思ったら、その次は息が止まるくらいの強さで責められて、
「ん!あぁっっ」
「うぁ、・・・ー、やべぇって。こんなにぎゅーぎゅー絞られたらすぐ出ちまうって」
「ぎ、ぎん、ち、・・・・ひ、は、ぁんっ、」
「さぁ、いつも脚開かせると声デカくなんのな。なに、俺に見られると感じちまうの」
「ぅ、あ、はぁ、んんっ!・・・・・・・ち、が・・・!」
「まぁ実際よく見えるけどよー」
「〜〜っ。やだぁ。銀ちゃんっ、そ、んな、・・・言・・・わな、んっ、」
「ぁんだよ、やなの?お前のここ、すっげぇえろくて可愛いのに」
「やぁ、ああっっ・・・!」
「あぁ、また奥から溢れてきた。・・・の中、とろっとろでマジ気持ちいい」
身体を一杯にしてしまう快感の強弱の波に揺られながら銀ちゃんを見上げる。唇を震わせて泣いていたら、
瞼の重そうな気だるそうな顔が、うっすら笑いながらあたしを見つめた。
こめかみや喉に汗のしずくが幾筋も垂れている。時々、はぁっ、と苦しそうな息遣いを薄く開いた唇から漏らす。
引き締まった胸や腹筋が浮き沈みして動いている。深い呼吸と浅い呼吸を交互に繰り返しながら、銀ちゃんは激しい抜き差しを続けた。
まるでそうすること以外は頭の中からすっかり消えてしまったみたいな顔してる。
「・・・く、ぁあ、もう無理。もうイく」
「〜〜っ。銀ちゃんっ。ねぇ、やだ、やめ、・・・・・ぁ、ああっ」
熱い。お腹も腰も燃えそうに熱い。銀ちゃんが埋めているところから生まれる熱で、身体の芯が溶けちゃいそう。
だけど、さっき銀ちゃんが言っていたことを思い出したら、首筋がすーっと寒くなってきた。
やだ。だって。だめだよ。そんなことしたら。そんなことしたら――――
「ぅ、あ、やらぁ、もぅっ・・・!やめてぇ、だめ、だめえぇ、」
「俺がイったら少し休ませてやっから。最後に気持ちいーことさせて。な?」
「やだぁ、だめぇええ、そ、そ、んなのっ、無理、いぃ・・・っ!!」
銀ちゃんが腰をぶつけてくるたびに、蕩けきったあたしのそこからはぐちゅぐちゅと水音がこぼれる。
打ちつけられる勢いと激しさで、身体が少しずつ上に滑る。銀ちゃんは頭に腕を回してきて、
これ以上あたしの身体が逃げていかないように腕の中に閉じ込めてしまった。
「。ももう一回イって。イったら、奥に、一杯、出してやる、から・・・、っっ」
「あぁっっ!めぇっ、や、や、ゃあぁっっ」
耳から侵入してきて背筋やお腹をぞくぞくさせる、低くて掠れた声でささやかれた。
恥ずかしくて涙がぽろぽろ流れ落ちて、なのに、かあーっと身体の芯が火照ってきて、
ずんずん突かれて蕩けた水音を立てているあたしの中は、きゅうーっと激しく収縮した。ぞくぞくしてこらえきれない何かが背筋を這い上がっていく。
そこに銀ちゃんが脚を押し広げて圧しかかってきた。自分の体重ぜんぶをあたしに乗せて、うんと深く、どっ、と一気に貫いたから――
「〜〜っ!!ゃ、い、ぁあっ、銀ちゃ・・・っ!」
「んっっ。あぁ、っ――。っ、で、る――っ」
「やぁ、〜〜〜〜!ん、っっ、―――っっっ!!」
叫んですぐにイかされてしまった。ぴんと強張った全身をぶるぶると強い痙攣が抜けていったら、
どくん、と銀ちゃんが中で爆ぜた。
信じられない速さで、甘い痺れと一緒に回ってくる。お腹の奥まで、すごく、すごく、熱いのが――
「ぁ!ぁあっ、めぇっ、ひぅ・・・〜〜〜〜っっ!」
銀ちゃんの熱が巡った深いところがびりびりと響く。下腹がどうしようもなく疼いて、
今までは知らなかった温かさと気持ちよさが流れ込んできて、火照りきった腰の内側をじわあっと潤して満たしていく。
、と掠れた声に呼ばれて、小刻みに震えていた肩を銀ちゃんにぎゅっと抱きしめられた。
仰け反ったまま動けなくなっていた喉にキスされて、泣きじゃくっている唇を塞がれて、
濡れてざらついた感触が口の中まで滑り込んできて。はぁ、はぁ、と荒れた息遣いを吹きこまれる。
あたしに何かを伝えようとしていたのか、銀ちゃんの唇はわずかに動いていた。けれど銀ちゃんが何を言おうとしていたのかは、
感じすぎてへとへとになったあたしの意識までは届かなかった。
「・・・し。信じられないっ。信じられないぃぃぃぃぃ!!!」
「んだよ泣くこたねーだろぉ。いーだろ一発くれーよぉぉ」
「うるさいえろえろ強姦魔っっっ!」
目が覚めたらあの透け透けお風呂の中だった。
気づいたらあたしは銀ちゃんの胸にもたれかかる恰好で抱っこされていて、バスタブに張られた熱いお湯にまったりたぷたぷ浸かっていた。
頭を預けているがっしりした肩は、すっかりしょっぱくなっている。
目が覚めて以来うっくうっくとしゃくり上げ続けてるあたしの涙が、たっぷり肌に染み込んでるからだ。
濡れた前髪からぽたぽた雫が流れている銀ちゃんの顔は図々しくふてくされてて、痛そうにさすってる左の頬はちょっと赤い。
目が覚めた瞬間、この天パの性悪強姦魔さんにベッドで何をされたかを生々しく思い出しちゃったあたしが、
あんまり頭にきてぱちーんと平手打ちをお見舞いしたからだ。
銀ちゃんのせいでぐったりしてそのまま眠ってしまってから、あたしは
いくら呼ばれても何をされても、びくりとも動かなかったらしい。眠ってる間にミネラルウォーターを飲まされたり
シャワーで身体を洗われたりしたらしいんだけど、洗われたどころかお風呂まで運ばれた覚えすらない。
だけど、あのベッド――この透け透けお風呂からも見えるあの大きなベッドの上でされたことに比べれば、
そんなささいなことなんてどうだっていいって気分だ。
もう見下げ果てた。騙してへんな薬を呑ませたくらいのことなら、水に流して忘れてあげてもいいって思ってた。
だけどさすがにさっきのあれには呆れ果てた。
もう銀ちゃんなんか知らないっ。絶対別れてやる。いざとなったらお登勢さんたちや新八くん神楽ちゃんにも訴えて、
意地でも金輪際で別れてやるうぅぅ!!
「つーかあのくれー平気だって。大丈夫だって」
「何が?どこが大丈夫!?だめなのぉぉ!もう間に合わないのぉぉ!
生む前から育てる覚悟と準備をしてないといい母親じゃないのよって女々さんも言ってたもん!」
「いや誰。誰だよ女々さん」
エリオちゃんのお母さんだよ!なんてことを言ったって、ジャンプ以外は新聞くらいしか読まない銀ちゃんに通じるはずがない。
ああもぅっ、どーしてここまで堪えないっていうか、とことん人の言うこと聞かないんだろ銀ちゃんてっ。
反省するどころかバスタブにだらーっともたれて、ほわほわ湯気が踊ってる天井を眠そうな半目で眺めてるし。
ベッドの上で見せたあのやる気満々顔はどこに行ったのか、すっとぼけたいつもの表情に戻ってるし。
しかも小指の先で鼻なんかほじっちゃって「いやいやいや平気だってぇ」なんてお気楽に言い出す始末だし!
「・・・まぁ、何、そのぉ。・・・あれな。あれだわ」
銀ちゃんは何か上の空っぽい、はっきりしない口調でぼそぼそ喋った。鼻ほじった手が何気なく下に降りてきて
そのまま人の胸に触ろうとするから、
むっとしたあたしはその手をはしっと掴んでバスタブから遠ざけて、ぱしゃぱしゃお湯を掛けて洗い流してあげた。
ちなみに銀ちゃんのもう片方の手はあたしの太腿に回っていて、内側のやわらかいところのお肉を図々しくむにむにと撫で回してる。
「・・・つーか俺、まだお前にガキ産ませるつもりねーし」
「はぁあ!!?」
なんてことをぼそぼそっと、湯気が白く溜まった天井を眺めながら銀ちゃんはほざいた。
・・・銀ちゃん。びっくりだよ銀ちゃん。
あたし、今、濡れてへなへなになった髪がばりばりっとモヒカン状に逆立つんじゃないかってくらいにびっくりしたよ!
お湯に浸かってるのに顔からすーっと血の気が引いちゃったし、唇もわなわな震えちゃったくらいのびっくりだよ!
さすがに目を見て話すのはばつが悪いと思ってるのか、銀ちゃんはあたしをぜんぜん見ようとしない。
口先がちょっと尖ってる。今にも口笛でも吹きそうなかんじだ。なんなのあの顔!何でそんなにのほほんとしてるの!?
「先にガキ作ってなりゆきっぽくアレまで持ち込む、
みてーなかんじでもいーんだけどぉ。それもまだちょっと気が早ぇーかなあっつーかぁ」
「〜〜っ、なにそれぇえええ!よく言えるよねっ、あんな無責任なことしといてっっ」
ほんとになんなの。何をのうのうと好き勝手なことほざいちゃってんのこの人っっ。
「ガキ産ませるつもりねーし」だって。何それ。なんなのそれっっっ。ついさっき、そこのベッドで
女の子に確実にガキを産ませるよーなことをしたのはどこの誰!?まぎれもなくあなたですよね!!!?
ばしゃばしゃばしゃっっ。
頭にきてばんっと胸板を叩いてすっとぼけた顔にお湯をめちゃくちゃに掛けまくったら、銀ちゃんはやっとこっちを向いた。
もちろん面の皮の厚さがジャンプSQ.レベルな銀ちゃんだ、そんなことくらいじゃひるみもしない。
ひるむどころか口端が下がって不機嫌そうにひん曲がって、今まで見たことないくらいむっとした顔しちゃってる。ちょっ、なにそれっ。
立場が逆、逆だよ逆っ。キレたいのはあたしのほうなんですけど!?
「いや。いやいやいやいやいや。あのな?そーじゃねーだろちゃーん?
銀さんが今何言ったか、落ち着いてよ―――く考えてみて?」
「よく考えるまでもなくそーいうことじゃん!銀ちゃんがしたのはそーいうことでしょっ。それともあれなの!?いざあたしに赤ちゃん出来たら
「別に俺はそんなつもりなかったしぃ」なぁんて最低なこと言ってすっとぼけるつもりなの!?」
「違げーって聞けって!」
なんだか情けなさそうに眉を下げて叫んだ銀ちゃんが、ざばあぁっ、とお湯から肩を出す。指の長い手が肩にわしっと飛びついてきて、
あっというまにあたしの身体はバスタブの反対側の縁に押しつけられた。身体の大きい銀ちゃんが急に動いたせいで、バスタブのお湯が
大波になる。縁にぶつかってぱしゃっと跳ねる。
「銀さんさー、今、結構大事なこと言ったよ?さりげに混ぜたよ?ちゃんが速攻でスルーしたとこに
大事なヒントが隠れてたよ!?言った後でなぁんかフワフワしたかんじになりそーだったからついつい素っ気ねー態度になっちまったけどぉぉ、
実は一大決心だったよ!!?」
「はぁああ!?何が?女の子を無責任に孕まそうって人が何の決心!?てゆうか一大決心を鼻ほじりながら口にしないで!!」
「〜〜っ。だ〜〜か〜〜ら〜〜〜、ガキなんざ出来るはずねぇんだって!」
出来るに決まってるじゃん!何言ってんの。なに言っちゃってんのこの人!?
銀ちゃんのばかっ。ひどいよ乱暴にしないでよ。天人の薬なんか盛られちゃったあげくにあんなことされちゃったんだもん、
本当はあたし、すごく、すごく不安なんだよ。なのに銀ちゃんにそんな無責任なこと言われたら、・・・どうしたらいいのかわかんないよ!
ぷーっと尖りきった口許をお湯に潜らせる。目尻にじわぁっと涙が浮いて、今にも泣き出しそうな顔になって。
それでもあたしは負けじと銀ちゃんを睨み返した。
すると銀ちゃんは肩を掴んだ手から力を抜いて、ぎゅーっ、と最大限に眉間を寄せて。
「お前にはもう呆れ返りました」って目つきになって、ぺらぺらと早口に切り返してきた。
「あのなぁさっきは言いそびれたけどな、俺がどんだけ頑張ったって今日はガキなんて絶対出来ねーの!」
「・・・、へ?」
「いやだからあれなあれ、が飲んだあのカルピスもどきな、あれさえ飲んどきゃ中出ししたって出来ねんだよ!
媚薬みてーな効果もあるけどよ。あれ、本来は避妊薬だからね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、はぁ!?」
「まぁ効果は半日くれーらしいけどな、天人どももアレ付けてやるよか生のほうがいいんじゃねーの。
辰馬んとこでもバカ売れしてるらしーぜ」
「・・・・・・・、ぎっっ。銀、ちゃん?」
「ぁあ?っだよ、なに、まだ文句あんの」
「どーしてそれを一番最初に言わないのぉぉ!!」
ばしゃばしゃばしゃ!べしべしべしべしっっっ!
あたしは盛大に暴れた。暴れに暴れまくった。銀ちゃんにお湯を掛けまくって、頑丈な胸板をべしべし叩きまくって。
お風呂のお湯が大波になる。縁からこぼれてざぷんざぷんと音が鳴る。
女のヒステリーなんていちいち相手してらんねーとでも思ってるのか、それとも何がどーでもよくなったのか、
銀ちゃんはムカムカしてそうな顔であたしを睨みつけたままだった。
頭からざぱーっとお湯を掛けられても、ほっぺたをぺしぺし往復ビンタで叩かれても、一切、何も言わなかった。
途中で「ああもぉ面倒くせぇなこの子はぁっっ」なんて失礼なことを叫んで、むぎゅっと力任せに抱きしめてはきたけど。
女の子の力じゃびくともしない二本の腕にがしっと抑え込まれてからも、あたしはしつこく暴れていた。
しばらく「むきーっ!」と涙目でもがいて。それから、あれっ、と思う。
「え、・・・ちょっと待って。・・・・・・・ぎ、銀ちゃん?」
「んだよぉぉ、何っ。銀さん今すっげー傷ついてっから、質問次第ではキレて襲うかもしんねーんだけど!?」
「い。今、気付いたんだけど。さっき言ってたあれって。もしかして、・・・・・」
顔をうつむかせてちゃぷちゃぷ揺れてるお湯を見つめて、あたしはほんの少しだけ考え込んだ。おずおずと、上目遣いに銀ちゃんを見上げる。
銀ちゃんはなぜか、あたしの様子にはっとしたらしい。めずらしく目を見開いた真顔で見つめ返してくる。ごくり、と固唾まで飲んでいた。
「え。あれっ。なに、気づいた?もしかしてお前っ、今頃になって気づいたの?・・・んだよ。っだよぉぉ遅っせーよぉぉ」
「う。うん。銀ちゃんてさ。あ、アレ、を、・・・・・・・・つけないでしたいって思ってたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ちゃあぁああああん。俺、泣いてもいいかなぁ」
「へ?何で?」
「もぉいい!もぉいいっっ、つーか恥ずかしいからもぉ忘れて!!一瞬でも期待した俺が間違ってた!遠回しすぎた銀さんが悪かったです!!」
いったい何にがっかりしたのか、銀ちゃんはがくーっと頭を垂れる。あたしを放して顔を覆って
しくしくと、悲しそうだけどすこぶるわざとらしい泣き真似が始まった。
な、なんなの、どーしちゃったの銀ちゃんてば。
「銀ちゃん。・・・銀ちゃん、は。つけないで、したい、・・・・・・とか・・・・おもってた、の?」
「・・・・・。思ってたよ?」
すると銀ちゃんは指の間からあたしに視線を向けてきて、うらめしそうにじとーっと睨んだ。濡れた顔をざっと拭うと、
毛先が軽く跳ねてるずぶ濡れの頭をもどかしそうな顔でぼりぼり掻いた。それから、
あたしが困っちゃうくらいにまっすぐな視線でこっちへ迫ってくる。たりめーだろ、って、けろりと答えた。
「そんなん最初っから何度も言ってんだろぉ、ゴム使わねーで生でしてぇって」
「〜〜〜〜っ。そ。そそそそそっ。そぉ、なな、ん、です、か・・・・っっ」
・・・ごめんなさい。知らなかったよ。
だって、ぜんぜん本気で聞いてなかったんだもん。
あぁまたふざけたセクハラ言ってる、しょーがないなぁ、くらいのかんじで聞き流してたんだもん。
「あー、なにお前ぇ。なんで真っ赤になってんのぉぉ。つーかその声も何、カチコチなんだけど」
「っ。な。ちが。そ、そそんなな。こと、な、〜〜っ」
銀ちゃんの引き締まった胸やお腹で視界がいっぱいになってて、どこ見たらいーのかわかんなくって恥ずかしいから、・・・なんてことは、恥ずかしすぎて言えなかった。
ああ困る。こういうのってすごく困る。こんなに明るいところで銀ちゃんの裸を見る機会なんて滅多にないから、
どーいう顔してたらいいのかちっともわかんない。それに。それに――
こうして言い合っていた間にも、お腹の中を騒がせるあの感じはじわじわとすこしずつ高まってきて、
あたしの身体をおかしくしてる。銀ちゃんにあからさまなことを言われるたびにいろいろ想像しちゃって、あそこがじんわり潤んじゃうくらいに。
シャワーで洗ってもらったときにもさんざん見られてるんだろうから、今さらかなあって気もするけど――、
膝を立てて腕で覆って、胸やおなかをあたふたと隠した。腕で隠した胸元をふと見下ろしたら、
赤い痕がぽつんぽつんと散っている。その痕をつけられたときのことを思い出したらもっとずっといたたまれなくなって、
うつむいて黙っていたら、銀ちゃんはもっと近くに寄ってきた。
ぱしゃりとお湯から引き上げた腕を、あたしの後ろのバスタブの縁に乗せる。
これで前も後ろも横も囲われてしまった。間近に顔を寄せられたら、濡れた髪から香るシャンプーの匂いがうんと強くなった。
万事屋で使ってるシャンプーとは違う匂い。いつもの銀ちゃんとは違う、ちょっとだけ甘い匂いだ。
「・・・銀ちゃん近い。近すぎ、もっと離れて」
「ぇえー。なんで」
「〜〜っ。だって、・・・」
だっていつもと匂いが違うと、それだけでどきっとしちゃうんだもん。こーやって近寄られるだけでそわそわしちゃう。
あのかんじが強くなって、お腹に恥ずかしいもやもやがどんどん溜まってきちゃうのが困る。
・・・銀ちゃんはあたしのそわそわに気付いてるのかな。何もかもお見通しですって目が、濡れて癖が弱くなった前髪の隙間から
こっちをおかしそうに覗きこんでる。お湯に沈んでる銀ちゃんの身体がじりっと動く。
あったかいバスタブの中がゆらりと揺れる。
――ほんの2、3センチ。あたしたちの間には、キスする寸前の距離しかなくなってしまった。銀ちゃんの顔で目の前が暗くなる。
後ろを囲っていた手が動いて、あたしの肩の線を指先でなぞる。素肌に当たる爪先の硬さがすごくくすぐったい。
お湯で温まったことを差し引いても頬が赤すぎるはずのあたしは、もじもじと全身を竦ませて丸くなった。
「・・・っ、てゆうか、やめてよ、ご、ごごゴ、・・・ム、とか、・・・ま、とか、はっきり言うの。
も、もうすこし言い方とか、あるでしょっ。すこしはオブラートに包ん」
「いやだからゴムもオブラートもいらねんだっつーの。生でしてぇに決まってんじゃん。好きな女のナカに出してえってのはオスの本能だしぃ」
「〜〜〜っ」
「そーいやぁ。そろそろじゃねーの」
「え、――あ、ひゃ、」
顔を上げようとする前に肩を掴まれる。お湯の中でくるりと身体の向きを変えられる。背中に硬い胸が当たって、
胡坐を組んだ脚の上に抱き上げられる。それだけでも身体は感じちゃうのに、首筋に銀ちゃんの吐息のくすぐったさを感じたら、
我慢出来ないあの感じが下腹の奥で湧き上がってきて、きゅうっとあたしを締めつけた。背中を丸めてこらえていたら、
ぺろりとうなじを舐められて。
「〜〜ふ、ぁ、」
「最後にイってからもぉ十五分経ってんだろ。そろそろ辛くなってきてんだろ?」
骨太な腕が両脇を潜りぬけて伸びてくる。水面に浮かんでいた胸のふくらみを、銀ちゃんの手は下からむにゅっと掬い上げた。
やんわりと弱く握られて、尖った先に指でそうっと触れられたら、
「・・・!っ、」
「元からやらけー胸だけど、お湯に浸かるともっとやーらかくなるのな。あー、マジ気持ちいーわこれ」
「んっ。やぁ、やだ、そこ、・・・・・っ」
「んぁ。なに。先弄られたら感じちゃった?そんなに気持ちいーのここ」
「や、やだぁ、やだっ」
「意地張るなって。ほらぁ、もっと弄ってあげっから」
「あ、あぁっ、ひ、ぅ・・・っ!」
耳の中に熱い息を注ぐみたいにささやかれたら、腰と太腿がびくびくと震えてしまう。
ぎゅっと閉じた太腿の間からじんわりと蕩け出てくる、お湯とは違うぬるぬるした熱さが恥ずかしい。
薬のせいだってわかっているけど、それでも恥ずかしくてたまらなくなる。
しかも、ほんのすこし下に目を落とせば、ちいさな波紋を起こしてる透明なお湯の中がまる見えだ。
あたしの胸を手のひらに包んで、ふにふにとやわらかく指で揉みしだいてるがっしりした腕の動きも。尖ったところをつんと弾いたり、
くにゅくにゅと摘んだり、焦らすようにゆっくり回したりする、器用な指先のいじわるな動きも。
ちゃぷん。・・・ちゃぷ、ちゃぷ。
バスタブの中で銀ちゃんが手を揺らすたびに、ゆるやかで静かな水音が鳴る。
固く尖った先をからかうように弄られるたびに、我慢出来なくなったあたしの喘ぎ声が跳ねる。
そのうちに銀ちゃんは指を三本ずつ使って先を撫でたり、きゅっと引っ張ったりするようになって、
「ふぁ、あ、も、やだぁ、っ」
「最近さぁ、気持ちデカくなってきてね、お前の胸。そのうちブラのサイズ合わなくなってくんじゃねーの」
「んっ。な。な・・・て、ないぃ・・・っ、」
「いやデカくなったって判るって。俺のほうがお前のここ触ってんだから。それによー、前より感じるようになったよなぁ」
「あぁ、ゃ、やぁん、それ、しな、・・・っ」
「まぁ、こっちのが胸よりうんと敏感になってっけど」
「あ・・・・・・・っ!」
とぷん、と音を立てて潜った腕が、横腹をすーっと撫でながら降りていった。
ゆるゆると円を描くみたいにおへその下を撫で回す。ゆっくり肌を這う手の動きに全身の感覚が集中してしまう。
わざとお預けされてるみたい。すごくじれったくて、早くその先に触れてほしくて。
でも、そんな自分が恥ずかしくって、赤く腫れた目元に涙がじわぁっと浮かんでくる。
「ぎ、銀ちゃ、・・・っ」
「なぁ、これからどーしてほしい?どこ触ってほしいのは」
「〜〜〜・・・っ、」
銀ちゃんの唇が笑いながらうなじに触れて、吐息の熱をあたしに擦りつけてくる。ちぅっ、と肌に吸いつく。
強く吸われたそこを濡れた舌先でぴちゃぴちゃ舐められる。
お湯に浸かった胸とお腹では手の感触がやわらかく蠢いていて、肩や背中の小刻みな震えが止まらなくなる。
ああ、もうだめ。また何も考えられなくなっちゃいそう――。
腕の中で涙目になって震えていたら、ざぱぁっとお湯から一気に引き上げられた。壁を背中にしてバスタブの縁に腰掛けさせられる。
横に大きく開かされた脚の間に、銀ちゃんが顔を埋めていく。ひんやり冷たい銀色の髪をお腹に擦りつけられて、すこし弾んでる息遣いが
開かされたあそこをふぅと掠める。濡れた舌先にくちゅりと撫でられたら、そこから頭の中まで熱い刺激が駆け抜けて。
ぶるっと大きく太腿が跳ねて、
「あぁ!だめ、だめえ、・・・・・っあ、ぁあんっ」
必死に力を入れて脚を閉じようとしたけど銀ちゃんの手に拒まれる。太腿を持ち上げて壁へ抑えつけながらもっと先へ舌を差し入れてきて、
あたしを動けなくしてしまった。