裏口から銀ちゃんに担ぎ込まれたそのホテルの部屋は、なんていうか、想像したよりもずっと「ラブホの部屋」っぽくない部屋だった。
お風呂の壁がガラス張りで中が透け透けなところはびっくりしたけれど、それ以外は普通のホテルっぽいシンプルなお部屋。
ソファとテーブルと小さい冷蔵庫と大きいテレビがあって、すぐそこにお風呂があるせいか、ちょっと湿ったような独特の匂いがした。
花柄のカバーで覆われてるベッドはすごーく大きい。三人は余裕で並べそうな幅だ。
スイッチ入れるとベッドが遊園地のコーヒーカップみたいにクルクル回ったり、
・・・なんて仕掛けはないらしい。この前銀ちゃんが夜中に見てたえっちなDVDみたいに、天井が鏡張り、なんてこともなかった。
――なぁんて、おのぼりさん気分で呑気にきょろきょろしていられた時間はこの部屋に入ってからほんの三十秒足らずで終わってしまった。
生まれて初めて入ったラブホの室内をめずらしがってたあたしが、ついつい、思わず、言わなくていいことを口走ってしまったからだ。
「…ふーん。こういうところって、中が鏡張りとかじゃないんだぁ」
そのひとことに目の色変えて反応した銀ちゃんの頭の中では、何かすんごい想像がむくむくと膨らんだらしい。
それがどんな想像なのかなんて聞かなかったし、知りたくもないんだけど、100%中100%の確率で、
あたしが聞いたら全身真っ赤になって銀ちゃんの股間を蹴り上げるよーな何かだっていうのはまず間違いがないはずだ。目の色変えた銀ちゃんはとたんにべしっとドアを閉めて、
肩に担いでたあたしをベッドにぽいっと放って、どーしてそんなに手際がいいの!?と唖然としちゃうくらいの
素早さで、しゅるるっ、とあたしの帯を解いて外してしまった。目を剥いてるあたしをへらっとした顔つきで眺めると、
自分の着物をするするっと脱ぎながら、にまぁ――っ、と最大限に締まりなく目尻を下げて、
「へー、鏡張りねぇ。お前そーいうの好きなんだぁ。そーいうあざといかんじのとこに行きたかったんだぁあああ」
「っ、違うぅ!」
へらへら笑いながらブーツを脱いで、銀ちゃんはあっというまにベッドに乗り込んできた。
いつもの黒シャツを片腕で捲くり上げて、がばっと脱いでぽいっと放って、
ベッドの真ん中でころんと転がってたあたしのお腹に、どさり、と腰を落として跨ってくる。天人の薬のせいで
敏感になってるあたしの身体は、それだけでびくんと震えて悲鳴を上げた。
「ふぁ・・・っ」
「んなこと言ってぇ、ほんとは興味あんだろ、行ってみてーんだろぉ?」
にたぁ―――っ、と不気味に口端を上げて笑った上半身裸のセクハラ男の顔は、すっかり肉食獣モードに入ってた。
こわい。目を光らせて笑う銀ちゃん、こわすぎる。こういう銀ちゃんて今までにも何度か見てるんだけど、
何度見たってこわいものはこわい。あーいう顔を見せられるたびに、あたしの中の動物としての本能的な何かがガクブルしながら絶叫するんだもん。
食われる、とか、しゃぶりつくされる、とか、お肉どころか骨の髄までしゃぶり倒される!とかそーいうことを!!
「違うぅ!今のはあれを思い出したのっ、この前銀ちゃん見てたじゃんっっ、そーいう部屋でそーいうことするえっちなあれを!」
「んだよ遠慮すんなって。いーじゃん今度行こーぜー、鏡張りの部屋ぁ」
「っっ、」
言いながら銀ちゃんの手が胸を掴んだ。胸のかたちが変わっちゃうくらい強く握られる。
身体の外側から内側へ、ぐにゅぐにゅ、って回しながら弄られる。硬くなった先を転がされて、指の先で、つん、と突かれて――
「あ・・・!」
「へぇ。やっぱすげーのな、あの薬。服の上からでもこーんな固くなっちまうし」
「あ、あぁや、やだぁっ」
肌蹴けかかった着物の上から、銀ちゃんはそこばかりいじめてきた。舌を使って強く舐め上げてみたり、
もう片方の胸も同じように揉みながら、ちゅ、と音を鳴らして吸いついてみたり。生地を通して強めに擦られる感触で、
冷めかけていた身体の芯がかあっと火照る。お腹の奥まで疼き始めて、すぐに声を我慢できなくなってしまった。
「最近は色々あるらしいぜ。部屋ん中が遊園地みてーなとことかコスプレ出来るとかSM系の責め具が揃ってるとか。今度連れてってやるわ、そーいう店」
「んんっ、はぁ、やだぁ、そんなとこ、っ、い、行かな・・・!」
「あー、何、もしかしてあれかァ?お前、金の心配して遠慮してんの?いやいや平気だって。ここも知り合い価格で安くしてもらえっからぁ。な?」
「や、ぁん、だからぁ、そういう、意味、じゃ・・・!」
そうだけど、そうじゃなくて。やだ、これ、やめて。
言いたかったけど言えなかった。背中を屈めて近づいてきた銀ちゃんの身体は、
振り上がったあたしの腕を掴んで抑えながら被さってきた。おでこがくっつく位置まで近づくと、、って呼ばれた。
こういう時にしか聞かせてくれない、低くって甘ったるい声。聞いただけで心臓がどきんと跳ね上がって、身体の力が抜けちゃう声だ。
あたしを呼びながら迫ってくる唇に、ちゅ、とやわらかく触れられる。舌先でそうっと舐められて、それだけで胸が弾んで、息が荒くなって。
息苦しくなって開いたほんのちょっとの隙間から簡単に割り込まれたから、あたしはすごい勢いで入ってきた銀ちゃんに呑まれるしかなかった。
奥まで絡みついてくる。いつもよりもちょっと乱暴に動く舌の先が、わざとぴちゃぴちゃ水音を鳴らして口内を舐め回す。上顎を撫でる。
ほんの一瞬だけ離れた唇に、、とまた名前を呼ばれる。身体の力がどんどん抜けていく。お腹の奥が熱くてどうしようもなくなる。
これだから銀ちゃんはずるい。そんな声で呼ばれたら抵抗出来ないって、知ってるくせに・・・!
「っあ、」
「ここのオーナーがよー、知り合いっつーかぁ、呑み屋で馴染みんなったおっさんなんだけどー。
他にも幾つか経営してんだわ、こーゆーとこ。全面鏡張りもどっかひとつくれーはあんじゃねーの」
「やだぁっ。そんな、とこ、絶対、行か・・・!あっ」
片手で着物を肩から引き下ろされて、もう片手でブラの上から胸を握られた。
いつもならここまで感じないのに、今日はこれだけで腰が跳ね上がってしまう。あん、と鼻にかかった声が喉から飛び出てしまって、
きょとんとあたしを見下ろしていた銀ちゃんが、にぃっと目を細めて嬉しそうな顔になる。
「っだよー、いーじゃん行こーぜ、マジで見てーし。鏡張りの部屋ですんげぇ恰好させられてー、あんあん喘いでる自分見ながらイっちゃう」
「――っ、」
吐息の熱が伝わる近さで低く抑えた小声にささやかれたら、びくんと腰が震えてしまった。太腿を擦り合わせてこらえようとした足が、
こらえきれずにびくびくと突っ張る。
「〜〜〜っ、」
着物が肌蹴てほとんど露わになった太腿と腰を震わせながら、あたしは泣きそうになって顔を逸らした。
あのDVDに映っていたような部屋で、そういうことをしている銀ちゃんとあたし。
そういう姿が目に浮かんだら、死にたいくらい恥ずかしくって、なのに、ずくん、とお腹の奥が痙攣して。そこから熱い何かが吐き出された。
下腹からじわあっと腰まで広がるその熱が何なのか、もちろん判らない訳じゃない。
「やらしーなぁはぁ。今、想像だけでイッただろ」
「〜〜〜!」
「想像したんだろぉ?どこ見ても自分が映ってるエグい部屋でー、俺にハメられて泣きながらイッちゃうとこ」
「し、してな・・・!」
「まぁまぁ、いーじゃん、そんなに恥ずかしがるこたーねーって。が感じやすくなってんのはあの薬のせいなんだからよー」
「ちょっ・・・!なにそれっ、他人事みたいに!あたしがこーなってるのは誰のせいだと思ってんの、全部銀ちゃんのせいじゃんっ」
「んぁー、まーなぁ。・・・そーそー、俺な。何が悪いってよー、俺が悪りーんだよなぁ全部」
へ、とあたしはつぶやいて、目を真ん丸にして銀ちゃんを見上げた。
あの負けずぎらいの銀ちゃんが。人に謝るのがすごーく嫌いで、自分が悪いってわかってる時でも、
どんな姑息な手を使ってでも謝ろーとしない銀ちゃんが、珍しく殊勝なこと言ってる。すっとぼけた半目が微妙に笑ってる
ところが気になるけど、とりあえず態度と声は真剣だし。
「いやーさすがによー、家でお前がぐったりしてひーひー泣き出した時には反省したわ。
うん謝るわ、ごめんな、興味本位であんなもん飲ませちまってよ。っとにすんませんでした!」
「・・・・・・・!?」
あたしの肩の両横にそれぞれ腕を突くと、ぺこり。銀ちゃんは深々と、跳ねまくったふわふわ天パの頭を下げた。
あたしはそのうち目玉が飛び出るんじゃないかってくらいに、見慣れないその姿に目を剥いた。
うそ。頭まで下げてる。銀ちゃんが。あの銀ちゃんが。誰かに頭を下げるくらいならその人が
記憶を失くすまでボッコボコにして、謝らなきゃいけない状況ごと抹殺しちまえ、とか平気で思ってそーなあの銀ちゃんが!
「つーことでー。今日は俺が責任持ってを満足させてやっから」
なんて言いながらおもむろに顔を起こした銀ちゃんは、「は?」とつぶやいたあたしを見下ろす。
何かすごーくくだらないことを考えてそーなにやけ顔でにんまり笑った。
大きな手が肩を抱いて、肌をゆっくり撫でながら這っていく。あったかくてごつごつした手のひらの感触が肩から二の腕を滑っていって、
そこから背中へ回ると、ブラのホックをぷちんと外した。
「いやいや、今日はマジで頑張るからね銀さん。
薬の効果がきれるまでに付き合うからね。十五分置きとかいわずにがすきなだけ、何回でもイかせてやっからぁ」
「――っ、やだぁああ!!」
「そー言うなって。をこんなにしちまった詫びってことで、今日は一日、誠心誠意、銀さんお前に尽くすから」
「そ、そんなお詫び、いらな、っ、・・・ぁ、」
「今月も金ねーから何も買ってやれねーし、どこも連れてってやれねーけどな。
今日はそのぶん一晩中気持ちよくしてやっから。な?」
銀ちゃんの手はお腹へ移って、腰まですうっと撫で下ろしながら顔を下げていって、
色んなところへ唇を落として。熱くて汗が止まらないあたしの肌を、ところどころに齧っていった。
ちくん、と何かに刺されたような痛みとかすかな気持ちよさを、きつく吸いついた舌先で何箇所も残して。
「ん、・・・は、ぁ・・・」
「さっきここのオーナーに電話で頼んでよー、この部屋一晩空けてもらったから。
妄想だけでイっちゃうくれーえろ可愛くなっちまったちゃんをー、じ――っくり可愛がってあげっからぁ」
「やぁ、こ、んなの、ぃ、いらな、・・・ぁあ、っ」
「ぇえー。んだよ、いらねーの?」
「ぁ・・・!」
ちぅっ、と絞るみたいに肌を吸われるたびに、あたしの身体はその弱くて後を引く感触から
逃れようとして泣きながらもがいた。それでも銀ちゃんはやめてくれなかった。
肩や手を使って上手にあたしを抑え込みながら、しつこいくらいにキスを繰り返した。
・・・あたしも変だけど銀ちゃんも変だ。ぺらぺらとよく回る口もむかつく態度もいつもと同じだけど、
銀ちゃん、いつもの銀ちゃんと違う。いつもはこんなにたくさん痕つけたりしないのに。
「やぁ、やめっっ。銀ちゃ、ぁ、やだぁ、っ」
「ぇえー。んだよぉやなのかよぉ。のえっろいとこ見せてくんねーの、俺に」
「やだぁぁ。そんな、へんな、とこ、っ、み、見られ、た、な、・・・っっ」
「大丈夫だって。何も変じゃねーって。てか、絶対可愛いって」
今もすげぇ可愛いけど。
低めた笑い声を耳の中に注がれて、ふっと息が詰まる。恥ずかしくって涙が止まらないのに、身体中がきゅうっと締まった。
肩に残っていた細いブラの紐を銀ちゃんが指に引っ掛ける。ブラと着物を腕からするりと抜かれて、汗まみれの身体が一気に肌寒くなる。
痛いくらい敏感になっている肌の感覚が、ひりひりするくらいに剥き出しにされて。がっしりして指先が硬い銀ちゃんの手で、
何の隔たりもなく胸の膨らみを掴まれたら――
「んっ。やぁっ」
「あぁ、さっきも鼻血もんで可愛かったけどぉ。
ちょっと出りゃあすぐ大通りだってのに泣くし、でけー声出すし、・・・ここは、こーんなに溢れさせちまってるし?」
「っ!」
銀ちゃんの左手が素早い動きであたしの手を掴んで、一気に腰まで導いた。下着の上からあそこを触らされた。
ちょっと触れただけでもわかるくらいに濡れていた。その感触と熱さにびっくりして、恥ずかしくてたまらなくなって
泣き声が跳ねる。下着をびっしょりと濡らした温かさが、とろりと指先に絡みついている。
布が二枚重ねになったクロッチのところ。びしょ濡れでぬるぬるしてる。その奥に隠れている熱を持った部分が、
下着越しに軽く当たった銀ちゃんの手を欲しがってる。びくびくと疼くそこの熱が、身体だけじゃなくて頭の中まで蕩かしてしまいそうだ。
「ほらここ。さっきよかすんげーんだけど、ここ。下着どころか着物まで染みちまってんじゃん」
「ひ・・・ぅ、あぁんっっ」
我を忘れて髪を振り乱して、あたしは高くてはしたない声を上げた。
銀ちゃんが指を下着の中まで差し入れてきた。もっと熱く火照って疼いてる奥へ、指先をぬるりと滑らせていこうとする。
あわてて腰を捩じって、その手から逃げようとした。だけど銀ちゃんの冗談みたいな素早さと力の強さに、
弱りきってる今のあたしが敵うはずがない。すぐに膝を掴まれて太腿を大きく開かされて、下着もあっというまに剥ぎ取られた。
割れ目にぐちゅりと潜った硬い感触にゆるゆると擦られる。上下に動く指の先の動きだけで、あたしは何も考えられなくなって。
「ぁ、あぁ、ぎ、ちゃ・・・!っっ」
「ー?なぁ、どーなんのこれぇ。こんなんなってる時にこれ使ったらよー」
銀ちゃんはやけに楽しそうな調子で尋ねてきた。
なに。これ、って何。
あたしははぁはぁと息を弾ませながら、意地悪く笑った顔を涙ぐんだ目で見上げた。
それとほとんど同時だった。身体に電流のような激しさが走った。銀ちゃんの指で蕩けきってしまった足の間に、
一瞬で全部を忘れちゃいそうになる強い刺激が――
「――!ひ、ぁあっ」
「あぁ悪りぃ。強すぎた?」
「・・・っ!?」
「や、あのよー。今日なら使えっかなぁと思って、持ってきたんだけどー」
ひょい、とあたしの上に被さってきた銀ちゃんを目にして、あたしは髪の毛まで逆立ちそうなくらい震え上がった。
銀ちゃんが左手に握っているものに見覚えがあったから。
あれは――あの、淡いピンク色で丸みを帯びた棒状のものは。
「なーこれ。覚えてるよな?なーんだ、これ」
「・・・!」
「覚えてるよな、一回使っただけだけど。あん時はよー、ちょっと弄っただけですげぇ声出してイッちまったじゃん」
「〜〜〜っ!!!」
覚えてるに決まってるじゃん!死ぬほど恥ずかしかったんだから。忘れたくたって忘れられないんだから!
銀ちゃんが握ってるピンク色の棒状のもの。あれはつまり、ええと、あの、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
お。女の子の口から、こんなこと、あんまり言いたくないんだけど。思いきって言ってしまうと、「女の子を気持ちよくする大人のおもちゃ」を動かすリモコンだ。
そのリモコンの先からは細い紐が生えている。ピンクのケーブル線みたいな紐で、ころんと丸いピンクのかたまりと繋がっている。
「まっ・・・!」
「ん?んだよお前、ぶるぶる唇震えさせちゃって。そんなに寒みーの?」
「まだ持ってたの!!?」
「持ってたよ?が滅茶苦茶怒ってたから箪笥の隅に封印してたけどォ。いやいやひっでーよなぁ、あの後二週間もヤらせてくんねーってよー、どーいうことだよ」
「はぁ!?ひどいのは銀ちゃんじゃん!・・・って、ぁあ!」
太腿に銀ちゃんの手が掛かる。頑張って閉じた脚は抵抗むなしく開かれて、
籠ったちいさな音を鳴らしている振動を、さっきの刺激のせいで燃えそうに熱くなってしまったところに押し当てられた。
「や!やだぁ、やだぁ、だ、だめ、だからね!?そ、それ、使った、ら、ぁ!」
「んだよ、これ使ったらどーすんの。また二週間ヤらせてくんねーの?それとも、まぁた別れるってか?」
「ん、ぁあ!」
リモコンを握った手の親指が、あたしにその動きをわざと見せつけているみたいにゆっくりと上がった。
ヴヴヴヴ・・・、と音が大きく響くようになった。開かせた脚の間に身体を入れてきた銀ちゃんが、割れ目に沿わせてあれを往復させる。
太腿をぐっと押してさらに脚を開かせる。脚の間に銀ちゃんの顔が埋まって、熱い感触が蕩けたところをつうっと撫でた。
ぴちゃ、と濡れた音が鳴って、あたしの背中は反り上がった。
銀ちゃんの舌が舐めてる。
膨れ上がった芽に弱い振動を当てて震わせながら、割れ目から零れてくる雫を丁寧に舐め取っていく。ごくり、と喉が鳴る音がした。
「〜〜〜ひ、ぅっっ・・・!」
あたしは必死で我慢して、泣き声を漏らしていた口を両手でぎゅっと押さえた。ちょっと身体の力を抜いただけで上げそうになる高い悲鳴は、
ぽろぽろと涙を流しながら呑み込んだ。
だけど、腰から伝って身体中を痙攣させた快感のせいで、爪先が天井に向くくらい脚が高く跳ね上がって、
「っ、んん―――っっ!!」
「なー。別れるとか無理じゃねそれ。まぁ多少はクスリのおかげもあんだろーけどよー。こんな身体になっちまったらもぉ無理だって」
「ふ、・・・・っ、ひぅ、」
「あのよー、はもぉ心身ともに銀さんのものになっちまったの。つーか俺、お前が何言ったってもぉ離してやんねーから」
「っく、ふ、ぁっ」
「あーあーなにこのやらしい脚。太腿までとろとろ垂らしてんじゃん」
「〜〜〜っ・・・・・!」
肘で抑えたあたしの脚に唇を落とした銀ちゃんが、少し弱めた振動をあそこに与えながら、ぺろ、ぺろ、と太腿の内側を遊ぶように舐める。
肌をすーっと、膝裏のほうまで舐め上げられたら、身体のぞくぞくが止まらなくなった。
あたしが脚を強張らせて耐えているって気付いた銀ちゃんは小さく笑って、
「ー。んな顔してけなげに我慢されっと、こっちもやべーんだけど」
とつぶやいた。ちゅ、と尖らせた舌先で膝裏を吸う。かすかな痛みをそこに刻んだ。
「や、やめ、それ、とめてぇ、ぎ、んちゃ、ぁ」
「。なぁ、さっきのあれ。外で弄ったとき。そんなに感じた?こーんなに垂らしちゃうくらいよかったんだぁ?」
「〜〜〜ちが、っ。あ、あたし、そんな、ちが、・・・もんっっ。ぎ・・・ちゃ、が、変な、の、飲ませ、っ」
「んだよ変なのって。俺が?何飲ませたって?」
「〜〜っ。飲ませ、た、じゃんっっ。白い、・・・か、カルピス、みた・・・のっ」
「いやあれカルピスじゃねーし、薬だし。つーかその顔でそれ言われっとよー、やべーって、えろいって」
「っあ、」
銀ちゃんの手で軽く押し込まれたあれの丸みで、びくびくと疼いていた入口を広げられる。とろりと流れ出た粘液が太腿を伝った。
入った瞬間に背筋から脚までがぴんと張り詰めるほど強張って、ずぷっ、と濡れた音がこぼれて。
「ひぁ・・・!」
「え、何お前。もしかしてあれなの、もっと飲みてーの?銀さんのー、」
「やぁっ。だめぇ。入れちゃ、だ、・・・めぇぇっ」
「うぁー。お前のナカ、さっきよか熱くなってねぇ?こんなん触ってたらよー、すぐ挿れたくなっちまうじゃん」
「ぁん、あぁ、ん、もぉ、だめぇ、・・・ふ、ぁっ!」
「ちょ。だめだって、口抑えんなって」
ほんのりした低い温度しかないその固さと、熱い銀ちゃんの指の先が、ずぷ、ぐちゅ、と粘った音を漏らしながら入ってくる。
規則的で容赦のない震えで熱い中を半分埋められて、きゅうっとお腹の奥が締まって。銀ちゃんに腕を掴まれて、
頭の上で布団に手首を縫い付けられた。ぴったりと唇をくっつけられた耳の中に、宥めるような声を吹きこまれる。
「。もっと声出して」
吐息が熱い。銀ちゃんの声、いつもと違う。息遣いが速い。すごく息がくるしそう。
「うちでヤるときみてーに抑えねーでいーから。声も何も我慢しねーの。な?」
「あ、ああっ、んっ」
下腹から這い上がってくるあの感じで頭も身体も埋め尽くされていく。あと少しで何もわからなくなっちゃうそうだ。もう声を我慢するどころじゃない。
強制的に生み出された快感が、お腹のうんと深いところからせり上がってくる。
「やぁ、あっ、あ、」
「ほんとに嫌なら言って。すぐやめるから」
「〜〜〜っ。銀、ちゃぁ・・・!」
「大丈夫だって。無理させねーから。怖くねーから、力抜いて」
そう言った銀ちゃんが眉を下げて、なんだか困ってるみたいな顔をする。
瞼に優しいキスを落とされて、ぎゅっと強く目を瞑る。ぶるぶると鳴る振動と銀ちゃんの指先が、中を擦るようなちいさな動きで犯してる。
あたしも知らないあたしの奥。
銀ちゃんしか触れたことがない、もっと奥を拓こうとしてる。
「〜〜〜〜あぁん、っ」
やだ。どうして。
前にこれを使われたときはなんだか怖くて、こんな自分を銀ちゃんに見られるのがすごくいやで。・・・いやだったのに――
「銀ちゃ、ぎ、ん、ちゃ、あ、だめぇえ、」
「だめじゃねーって。。もっと出して」
「やぁ、もぅ、・・・ぃっ、・・・ちゃ、ぅう・・・・・・・!!」
上擦った変な声で叫びながら、あたしは背中や首筋を浮かせて仰け反った。
あ、あ、あ、あぁっ、と甲高い声を途切れさせながら、足先までびくびくと震わせて達してしまった。
「ん。よく出来ましたぁ」
押し込まれていた震えが止まる。銀ちゃんの指と一緒にずるりと滑って、あたしの中から出て行った。
ぐったり布団に沈んだあたしは、上からのしっと体重を預けてきた銀ちゃんの手にされるままになった。
両手で頬を抑えられて、唇をキスで塞がれても、入ってきた舌で中を荒らされても。何も反応出来ない。
頭の中が真っ白で、息が乱れて。心臓が破れそうなくらい高鳴っていて。
「・・・っ、はぁ、・・・・・っ、は、・・・ぁっ」
「っだよぉ。いつもは俺が何したって言わねーくせに。今日はすげー素直じゃん」
なんだかちょっと悔しそうに銀ちゃんは言った。胸と胸をぴったり重ねられて、背中まで回ってきた骨の太い腕に、
ぎゅうっと力一杯に抱きしめられる。
だめ。まだ何も考えられない。頭の中がふわふわしてる。身体の芯からまだ熱が引かない。
それどころか、あれを入れられる前よりもっと熱が上がってる。燃えそうに熱い。
はぁ、はぁ、と身体全体で息を吐きながら霞んだ目を開けると、いっぺんに涙が溢れた。
銀ちゃんの顔は目の前にあって、熱の籠った視線でじいっとあたしを見つめていた。はぁ、と苦しそうな溜め息をついて、
押しつけた頭でほっぺたをすりすりしてくる。肌に擦れる髪はふわふわしていて、なんだか甘くてせつない気持ちになる。
銀ちゃんの髪と汗の匂いで、鼻先を埋められていく。力がぜんぜん入らない腕を真っ白な頭に回して、しがみつくみたいにして抱きしめた。
媚薬なんてなくてもいいのに。
そんなものなくたって、あたしの身体はこの匂いを嗅ぐだけでうっとりしちゃうのに。
・・・なんてことには、どうせ銀ちゃんは気付かないんだろうけど。
「なに、どーしたの。めっちゃ可愛いんだけどお前・・・」
「あ、ぁあ、銀ちゃ・・・」
「クスリなんて飲ませたってバレたらどーなるかと思ったけどよー。意外と怒んねーし」
「・・・っ。って。だってぇ、・・・・・っ」
あんな薬を飲まされたせいで、怒りたくても怒れないんだもん。
あたしの全部。
剥き出しにされた肌も、その内側も、もっと奥も。髪の先から足の爪先まで、全部。
――身体中の全部が、たまらなく銀ちゃんをほしがってるから。あのおもちゃだけじゃ嫌だって。
震えてる身体中が、銀ちゃんじゃないとだめだって言ってるから。
「だめ、なの、おかし、・・・の、銀ちゃ、・・・の、せい、で・・・っ」
「俺が、なに」
「あたし、の、から、だ・・・い、いっつも、色々、いじって。こ、んなに、おかしく、なるように、しちゃ、た、から、ぁっ・・・!」
銀ちゃんのばか。どうしてこんなこと言わせるの。
こんなの、後で思い出したら絶対恥ずかしくって死にたくなるよ。
ちょっと身体を起こして見透かしたような目であたしを眺めていた銀ちゃんは、満足そうに唇の端を吊り上げて笑った。
「違げーって。そーいうのはおかしくしたって言わねーの。「女にした」って言うんだよ」
「〜〜〜っ・・・・・・、し、しねばいいのに。死ねばいーのにぃぃ!!」
「うっわ。何で真っ赤になってんの」
とぼけきった表情でへらへらと笑いながら、お布団に落ちていたあたしの手をぎゅっと握る。すうっ、と顔が迫ってきて。
汗に濡れた髪が貼りついてるおでこを何度か撫でて、そっと、やわらかく、唇で触れて。
「あーもぉ今日の可愛すぎ。すっげぇ好き」
「ち・・・、違うぅっ。ぎ、銀ちゃんが、はずかしいこと、言うからぁっっ」
「あーもぉやめろって、んな恥ずかしそうな顔してそーいうこと言うなって。
お前がんな顔しておねだりしなくたって、今日は一晩中可愛がってやっからぁ」
「!や、やだぁぁっっ」
そんなことされたらあたし死んじゃう。お願い眠らせて!
ぶんぶん頭を振って涙声で叫んだけど、自分に都合の悪いことは一切耳に入らないのが銀ちゃんだ。
薬のせいで身体がおかしくなっちゃった女の子の悲壮な訴えなんてちっとも聞いちゃいない。
鼻唄混じりで楽しそうにジッパーを下げて下着も下げて、ズボンごと脱いで、あたしの膝裏をそれぞれに手で掴んで。
「ひ・・・――っ!ああぁっ!」
「あーあぁ、しばらくオモチャでいじめてやろーと思ってたのによー」
左右の腕に掴まれた脚を高く上げさせられた。うんと開かされてどろりと粘液を溢れさせたところに、
ぐぐっ、と硬い塊がめり込んでくる。
「どーすんのこれぇ。・・・お前が煽るから。思っきり勃っちまったじゃねーかよぉ」
「あっ〜〜、あぁんっ・・・!」
んっ、と唸った銀ちゃんに思いきり強く腰を打ちつけられて、ずぶりと奥まで貫かれる。
あたしの息を一瞬止めてしまうくらいの衝撃が身体に溢れた。
「〜〜〜っ。やだぁ、っく、ふぇ、ええ・・・・っ」
「はっ。やっべぇ。もぉ、限界、・・・っ」
眉を顰めて苦しそうに笑いながら、銀ちゃんは腰を打ち付けて勢いよく奥を突いた。
お腹の中が銀ちゃんで一杯で苦しいのに、突かれると身体中に響いて気持ちいい。
蕩けた中で硬く張りつめてびくびくと疼いてる、銀ちゃんの熱が気持ちいい。
頭を抱いて、背中を抱いて、銀ちゃんは泣きじゃくるあたしを両腕にしっかり閉じ込める。
ぐちゅぐちゅと音を上げながら深く抜き差しする激しい動きで、大きなベッドごとぎいぎい揺らした。