「〜〜って、らってぇ、ぉ、おきたさ、は、からかってた、だけ、ってっ、はぁ」
「・・・ほらな。やっぱ解ってねぇし。あーあー、どうしたもんかねぇこの子は」
「ゃん、っも、しゃべっちゃ・・・めぇ、っ」
吐息の微妙な熱と感触にも敏感になったところの奥はじぃんって痺れて、脚の震えが止まらない。
だけど銀ちゃんはストッキングの上から乱暴に舌先を捩じ入れて、弱いところを何度もしつこく往復させる。
あたしをじわじわ甚振って、何も考えられないくらいに追い詰めたがってるみたい。
布越しにぬるぬる擦られるたびに潤みきったそこから熱が溢れて、あ、あ、あぁん、って短い嬌声が喉から飛び出る。
いつもと少しだけ違う銀ちゃんを、ちょっとこわいって思ってるのに――身体はどんどん蕩けていって、銀ちゃんの思うままに乱されていく。
いくら抵抗したくても出来ることなんて何もなくて、ぜんぜん力が入らなくなった唇をぶるぶる震わせながらただいやらしく喘ぐだけ。
気持ちよさと恥ずかしさで頭がおかしくなっちゃいそうだ。
「なぁ、あんな誰も来ねーとこに誘い出されてどうするつもりだったんだよ。
仮装コンテストの点数稼ぎに、沖田くんにもこーやっていたずらさせてやった?お前の身体も食わせてやったの、あのクッキーみてぇに」
「っっ、うぅ、ばかぁ。そんな、さ、れる、はず・・・っ、なぃ、し・・・っ」
「・・・。とにかくあれな、これからあいつとは接触禁止な」
ほんとは俺以外の野郎全員と接触禁止って言いてぇとこだけど。
投げやりな口調でつぶやいた銀ちゃんが、熱い手のひらを滑らせていく。
精一杯に力を籠めて立っていてもぶるぶる震えが止まらない右の腿の内側を、爪先で弱めに引っ掻くみたいにしてなぞられた。
と思ったら、爪先を這わされたところからすうって寒気が流れ込んでくる。
見れば脚をぴったり覆ってたストッキングが縦に裂けて、太腿の中ほどから膝下までにぱっくり穴が空いていて。
そこから覗くあたしの素肌とストッキングの質感の違いを愉しんでるみたいな手つきが膝から上へ滑っていって、銀ちゃんは人差し指の先を裂け目の端に引っ掛かけた。
あっ、って叫んで身じろぎしても間に合わない。半透明の編地が脚の付け根までぴりぴりぴりって一瞬で裂かれて、
「――ぁあ・・・!」
――じゅうぅっ。
何かを思いきり啜ったような、濁った水音が大きく跳ねる。
肌にぴったり張りついてた淡いグレーの膜を引き裂かれて、覆い隠してくれるものは下着の小さな布地だけ。
左脚を高く上げられてすっかり無防備になってたそこに、銀ちゃんは噛みつくような勢いで吸いついてきた。
艶めかしい吐息をこぼしてる唇の熱さと、その奥から伸びてきたもっと生々しい熱の感触。
ざらついた舌先を押しつけられて思いきり肌を吸われただけで、きゅうぅぅっ、ってお腹が奥まで痺れて、その場に崩れ落ちそうになる。
刺激に悶えてぶるぶる震えるあたしの腰をがっちり抱きしめて離さない腕が、お腹回りにフリルが付いた黒のショーツに指を伸ばす。
びっ、って布がちょっと裂けたような音を鳴らしながらクロッチ部分を横へ乱暴に引っ張られたら、しずくがタイルにぽたって落ちる。
それを見ちゃったらかーーーって頭に血が集まってきて、耳や首筋まで熱くなった。
――透明な粘液を溢れさせて、ストッキングで包まれた腿の内側まで雫をとろとろこぼしてる淫らなところ。
そこを銀ちゃんの顔がくっつきそうな近さで開かされてて、しかも太腿を鷲掴みされてるから隠しようもないし逃げられない――
「いつものかわいーやつもいいけど、黒もやらしくていいよなぁ。
つーかこんなとろとろで赤けーとこに黒って、えろすぎ」
「ぅう・・・ゃあ・・・やらぁ、はずかし、らめぇ、っ・・・〜〜っ」
ふわふわした薄紫のチュールレースをざわざわ揺らして押し上げながら、銀ちゃんはあたしからは見えないそこへゆっくり顔を埋めていく。
硬くて太い指先が震える蜜口に添えられて、やわらかくて敏感な花弁をくちゅりと左右に割り広げていく。
どうしようもなく疼いてるそこを、火照った目つきに見つめられてる。しかも、こんなに近くから――
それだけでも泣きたくてたまらなくなるのにもどかしそうな溜め息を何の隔たりもなく吹きかけられて、ゃんっ、って涙をこぼして仰け反ってしまった。
「〜〜っ、や、やだぁ・・・っ。だめぇ、みちゃ、やぁ・・・!」
ぐすぐす泣きながら拒んでるのに、胸の奥では心臓が何かを期待してるみたいにどきどきどきどき高鳴ってる。
死んじゃいそうなくらい恥ずかしいのになぜか銀ちゃんから目が逸らせなくて、そんな自分に混乱しちゃう。
とろりと濡れた熱い舌先で、つん、ってかすかにつつかれただけで、ひっっ、ってあたしは震え上がった。
必死で真上へ伸び上がって、爪先立ちになって抵抗する。
だけどただでさえ力が強い銀ちゃんにあたしが敵うわけもなくて、浮き上がった腰を羽交い絞めにされて。
つぷ、くちゅ、って蕩けた割れ目の中まで蠢く熱に入り込まれて、
――ちぅ、じゅっっ。
「〜〜〜っぁ、あぁ、ぁ〜〜・・・!」
「・・・ん、うめぇ・・・・・・」
ひくひく勝手に震えてる蜜口を、銀ちゃんの唇と舌で絞るみたいにして勢いよく吸い上げられた。
溢れたものをごくりと飲み干したやわらかい熱に、ひどく満足そうで悩ましげな息遣いを吹きかけられる。
瞬く間に押し寄せてきた快楽は拒みたくても拒めなくて、鋭く全身を突き抜けていく。仰け反った頭の天辺で何かが弾ける。
ほんの一瞬意識が途切れて、何もかもわからなくなって――
気付いたときには、腰が抜けかけてるあたしの身体を銀ちゃんがドアに無理やり押しつけてた。
「っぁ、ぁぅ、っっく、ふぁ、ぁあ、っひ・・・・・・〜〜〜っ!」
そこからは、ただ銀ちゃんの思うままに啼かされるだけ。
蜜をたらたら溢れさせてるあたしの中まで沈んだ舌は、粘膜の襞を小刻みに擦り上げながら敏感なところを責め立ててくる。
冷たい壁に背中を預けてぶるぶる震えてるだけの身体は、持ち上げられた左足の膝をドアにぐっと固定されても、広げられたところへキスを落とされて悲鳴を上げても、されるままに受け入れるだけ。
どこにも力が入らない。指一本まともに動かせない。
手足がだらりと垂れ下がって人形みたいに脱力しきってるのに、そんなあたしを抱え上げながら銀ちゃんは舌を動かし続けた。
背中を預けてるドアが、がたがたと小刻みに振動してる。
ぐちゅりぐちゅりと広げられて快感が走ってる蜜口を、はぁ、はぁ、って弾む息遣いを漏らす熱いものが舐め回す。
半開きのまま緩みきってる口端から、ぬるい雫が流れ落ちていく。
ほっぺたをぽろぽろ転がっていった涙の粒が、ぶるぶる揺れる胸の膨らみを濡らしながら下ろされたビスチェまで流れ落ちていく。
「んっ、ふぁ・・・あっ、ぁ、らめぇ、銀ひゃぁ、ぁっ、あ〜〜っ」
「お前のナカ、まだひくひく震えっ放しなんだけど。そんなにきもちーの、こんなとこで男に捩じ込まれんのが」
「んぅ、っ、ゃっ。ゃあ」
縦に大きく避けてしまった編地の奥まで手を突っ込んできた逞しい腕が、右の太腿をぐっと抱える。
熱いしずくがとろとろ流れ始めたやわらかい内側の素肌を、わざと焦らそうとしてるみたいなゆっくりした手つきで撫でながら、
「ほらわかる、ここ。ストッキングまでぬるぬるしてんだろ」
「――あっ、はぁん、っっぎ、ひゃあっ」
くちゅ、じゅる、じぅ、ぬちゅっ。
狭い中まで器用な舌先を差し入れられたら、ぶるりと何度も跳ね上がる腰の動きが止められない。
あたしのそこがどうなってるのかを知り尽くしてる銀ちゃんは、濡れた襞を擦り立てながら自在に蠢く。
やわらかくて熱い感触を粘った音といっしょに押し込まれるたびに気持ちよくってぞくぞくして、でも、弄られてるところのうんと奥がじくじく疼いて泣きたくなる。
「ぁ、あ、あ、あぁ、あぁん、っあぁ」
「はは、やべーわこの眺め。
ストッキングで肌隠してんのに一番やらしいとこは丸見えだし、舐めるたびに溢れてくるし」
「ふぁあ・・・んっ!」
潤んだ中を掻き乱しながらうっとりした声を漏らしてた唇が、ずるりと舌を引き抜いた。
もう少しで達しそうになってた瞬間だ。拷問みたいな気持ちよさからいきなり解放されて、がくりと全身の力が抜ける。
ところが解放されてほっとしたあたしを見透かしてたみたいに、銀ちゃんはすぐさま一番敏感なところを狙ってきた。
濡れた花弁の奥に隠れてたそこを、太い指先がそうっと撫でる。刺激を待ちわびて膨らみかけてた小さな粒に、
ちゅっ。
愛おしそうに啄んでから、ぬちゅ、くちゅ、って舌を鳴らしながら舐め上げる。
何度も何度も美味しそうに、火照った吐息を漏らしながらじっくり舐めて、つん、って舌先でつついて遊ぶ。
感じやすいそこばかり責められるから全身ががくがく震え上がって、もう声を我慢するどころじゃない。
直接的で強烈な刺激が瞬く間に頭の天辺を貫いて、強すぎる気持ちよさのせいで涙が溢れて止まらない。
唇を噛んでも殺しきれない乱れた声がお腹の底から駆け上ってきて、
「〜〜ぁっ、あっ、あぁあっ、っぁああぁ・・・〜〜っ」
「ー、またイっただろ。まぁ俺は可愛い声聞けるからいーけどー、ヤバくね、ここで声出すと。
マンション中に響いちまうんじゃねーの」
「っあ、やんっ、〜〜っぃ、やぁ、ぁ、なめちゃ、めぇ」
「やめてって、いーのやめても。ここだけぱんつの色変わるくれー濡れてんのに?」
「んっ、っんんっ、ぁ、ゃぁ、っ、はぁ、ひ、ぅぅ・・・っ」
さっきまで舌を押し込まれてたところから、ぬるい感触が溶け出してくる。
それはまるで銀ちゃんのいじわるな問いかけを認めるみたいに、右の太腿の内側をとろりとろりと流れ落ちていった。
「ほら見ろって、これ何。こんなに溢れさせちまってんだから、お前だってもう欲しくてたまんねぇんだろ」
大きく裂けたストッキングと火照りきってる内腿を弱く優しく撫でながら、銀ちゃんは宥めるような甘い声でもう一度あたしに尋ねてきた。
透明な雫が滴る肌に熱い舌を押しつけられて、蕩けきってる蜜口の近くまでつぅって一息に舐め上げられる。
舌の感触にぞくぞくしちゃってびくって大きく仰け反ったら、上目遣いに見上げてきた顔に「なぁ、どーなの」って返事を催促された。
だけどそんなこと、言えるわけがない。恥ずかしくって認められない。
唇をきゅって噛みしめて、赤く染まった顔をぶんぶん振った。
「・・・ち、ちがぅも・・っ。って、ぎ。ぎんひゃ、が・・・・・・〜〜っ」
ずるい。ひどいよ。ちがうのに。身体が勝手に感じちゃって、溢れてとまらないだけなのに。
ひどいよ、銀ちゃん。こんなところでもあたしがこんなになっちゃうのは、誰のせいだと思ってるの。
ひっく、ひっく、って啜り泣きながら、子供みたいに舌足らずな口調で否定したら、
「いやいや違わねーだろぉ、まだ挿れてもいねーのにぐっしょりじゃん。
ほらほら、いつまでも意地張ってねーで言ってみろって・・・・・・、」
はぁ、はぁ、って苦しそうな息遣いを漏らしてるくせに楽しそうに目を細めてる顔が、ふと何かに気付いたみたいに黙り込む。
五感がやたらと鋭い銀ちゃんが、たまに見せる顔。気付いた何かに集中してるときの顔だ。
白っぽく光る前髪の下で軽く眉を寄せた目許は、視線をドアの一点に据えたまま。まるで近くにいる何かの音に聞き耳を立ててるみたい。
「あー、。ちょっと、・・・・・・の、我慢な」
「――・・・っ・・・・・・ぇ・・・?」
「・・・び、一本くれーなら我慢出来るだろ。出来るよなぁ。出来ねーとの・・・・・・、聞かれちまうし」
急に小さく潜めたないしょ話みたいな声で、ひそひそぼそぼそ言い聞かせられる。
だけど運が悪いことに、その大半があたしの耳には届かなかった。
こんなにぴったり身体を密着させてても聞き取れなかった原因は、その時ちょうど外で鳴り渡った大きな音だ。
あっという間に近づいてきてみるみるうちに遠ざかっていった救急車のけたたましいサイレン音が、銀ちゃんの声を掻き消したから。
苦しそうに眉間を顰めてるのに細めた瞳が愉しそうな色を帯びてる顔が、首を伸ばして近づいてくる。
いつのまにか開きっぱなしになってはぁはぁ喘いでた唇を塞がれて、
ちゅ、ちゅ、ちゅ。
とろりと濡れた唇が、押しつけられては離される。しきりに角度を変えながら、じゃれつくみたいにして啄まれた。
あたしにドアのほうを向かせると、銀ちゃんは自分もゆらりと立ち上がる。
硬くて引き締まった両腕がお腹や胸に絡みついてきて、後ろからがっしり抱きつかれた。
分厚い上半身の重みや熱をずしりと背中に預けられたら、あたしの胸は否応なく氷みたいに冷たいドアに密着させられてしまう。
心臓まで凍りつかせちゃいそうなその冷たさに、っっ、って声にならない声が喉から漏れる。
横から迫ってきた銀ちゃんに耳をねっとりと舐め上げられて、ぐっしょり濡れそぼってるショーツの端を力任せに握りしめられた、次の瞬間――
――ずぷっっ。
「・・・っ!〜〜っあ、ぁ、あぁぁ・・・・・・!」
背筋をしならせて震え上がったときにはもう、ごつごつと硬い中指を粘膜の中へ突き立てられてた。
泣き叫びながら達したあたしを、瞳に何かを燻らせた妖しい目つきが眺めてる。
――見てる。見られてる。ぜんぶ見られてる、銀ちゃんに。
今すぐあたしの中へ入りたいって思ってそうな、熱っぽくてぼうっとした視線。
そんな視線を、こんなに近くから注がれてる。これじゃあ何も隠せない。ぜんぶ、ぜんぶ見られちゃう――
そう思ったらなぜかもっと感じちゃって、羞恥で心臓が止まりそうなのに泣きながら身を捩って乱れてしまう。
やだ。見ないで。こんなあたし見られたくない。
そう思っても快感に縛られた身体は手足の先まで引きつってて、目の前のドアに爪を立ててしがみついてるだけで精一杯。
かぶりを振って視線を遮ることすら出来ない。
言葉だってちっとも出てこなくって、震える喉から出てきたのは玄関先の冷たい空気を引き裂くような甲高い悲鳴だけだった。
蕩けきったそこへ飲み込まされた感触が、もっと奥を目指してずぶずぶって潜ってくる。
びくびく震えて喘いでるうちに指の根元までぐって挿し入れられて、ぐちゅ、って泡立った音が鳴る。
指先でぐるりと、刺激にきゅうって収縮してるやわらかい内壁を撫でられて、
「〜〜〜っっぁ、ぁうぅ、っっっく、んっ、ん〜〜・・・・・・っ!」
たった一本の指にぐちゅぐちゅ掻き回されてるだけなのに、その指にすっかり躾けられた身体は快楽と甘い痺れで溢れ返った。
息が止まるほど強い快楽が銀ちゃんの指から押し寄せてきて、涙でゆらゆら揺れ動いてる視界がぱぁっと一瞬で発光する。
白い火花みたいな閃光が目の前でぱちぱち弾け散る。
頭の中まで真っ白に染めあげられそうになりながら、奥歯をきつく噛みしめる。
必死に後ろへ腕を伸ばしてドレスシャツの裾を握りしめて、圧し潰されかけてる身体を捩じって銀ちゃんに縋りつこうとした。
だってどこかに顔を埋めていないと、銀ちゃんにぎゅっと抱きついてないと――誰かに気付かれちゃうかもしれない。
ひっきりなしに喉からせり上がってくるいやらしい声が、ドアの向こうまで響いちゃうかもしれない。
なのに銀ちゃんは、あたしの手を裾から外してゆっくり身体を離していった。
熱っぽいのにどことなく嗜虐的な色を帯びた目つきが、こっちをじっと覗き込んでる。
荒い息遣いを繰り返してる喉が、ふ、って乾いた笑い声をこぼして、
「だめー。一人で我慢してみな」
「〜〜〜・・・ふ、ぇ・・・・・・、が、ま・・ぁ・・・・?」
力が入らなくなった唇をぶるぶると小さく震わせながら、ぼんやりした口調で尋ねる。
強すぎる快楽にのぼせ上がって意識がすっかり霞んじゃってる頭の中に、銀ちゃんの声が遠くからこだまみたいに響いてる。
だけど、何のことを言われてるのかわからない。
それに――どうして。銀ちゃん、どうして。どうして離れちゃうの――
あまり見慣れない目つきにもなんだか拒まれてるような気がして、急にさみしい気分になって。
ぎんちゃぁん、って甘えた声で呼びかけたあたしは、力がほとんど入らない指を黒いベストの衿元に伸ばそうとした。
だけどその指が届く前に両腕を一纏めにして掴まれて、あたしが振り返ったり出来ないようにドアに身体を押しつけられて。
上半身を逸らし気味にして距離を取った銀ちゃんは、そうしてる間にもショーツの端から送り込んだ指の動きをどんどん激しくしていった。
「っぅ、っや、やぁ、ま、待っ、んんっっ」
「な?階段昇ってきてんの、聞こえんだろ。声抑えねーと聞かれちまうぜ、いーの」
「あっ、あぁあん、ゃら、ぎんちゃ、ぎんひぁ、ああっ」
ひっく、ひっく、って啜り泣きながら、うわずった甲高い声で途切れ途切れに訴える。
それでも聞いてもらえない。奥で軽く曲げられた指の先で弱いところをしつこく何度も、じゅぷじゅぷ、じゅぷって撫でられっ放しだ。
硬い指先が往復してるところからぞわぞわと昇ってくるのは、やわらかい身体の内側を硬いものに掻き乱される違和感と、逃げ出したくなるような気持ちよさ。
無理やり立たされてる脚の間に送り込まれてくる快感に身体はどんどん溺れていくけど、気持ちは身体にぜんぜんついていけない。
――聞かれるって、誰に。どうして。わかんない。わかんないよ。銀ちゃん、どうして離れちゃうの――
「ひぅ、っく、ぉ、ねがぁ、たすけてぇ、っ、」
「だーめだって。ほら、自分で口塞げよ。出来んだろ」
「ぁあっ、きちゃうぅ、ゃだ、ぁあっ」
突き放すような冷たい声と自分の喘ぎ声や泣き声で頭の中は一杯で、他には目の前のドアががたがた揺れる鈍い音くらいしかわからない。
いやだ、だめ、声、出ちゃう。我慢するなんて無理だよ。無理だよ、やだ、銀ちゃん、やだ――
ぐしゃぐしゃに泣き崩れた顔を振って涙をぽろぽろ散らしながら振り返って、いつのまにか自由になってた手を後ろへ伸ばす。
だけどいくら手を伸ばして縋りつこうとしても振り払われて、何を考えてるのかわからない薄笑いで遠ざけられて――
「〜〜〜・・・っ。ふぇえぇ・・・っ、やぁ、ゃらぁ・・・んで、なんでぇ、ぎ、ちゃあ・・・ぎんちゃぁ・・・〜〜っ」
なんで。どうして。
薄暗い玄関やその奥の廊下が、黒のマントを纏った分厚い肩の輪郭が、目の前で口端を吊り上げて笑ってる顔が、溢れた涙で溶けていく。
じきに表情すらわからなくなって、ただでさえ離れちゃってる銀ちゃんがますます遠くなったみたいで、悲しくてたまらなくなって――子供みたいにしゃくり上げながら、ぶるぶる震える手を伸ばした。
なんで。どうして。どうして離れちゃうの。どうしてこんな意地悪するの。
何度手を伸ばしても避けられてしまうのが悲しい。
きつく抱かれてじんわり汗ばんでたはずの肌はいつのまにか冷たくなっていて、好きな人の高めな体温に包まれていないことが寒々しくてすごくさみしい。
心細い。こうしてる間にも身体は勝手に高まっていって、ぐちゅぐちゅと指を押しつけて嬲られてるところが熱くて苦しくてたまらないのに。
銀ちゃんの胸に顔を埋めて甘えていないと、不安でしかたなくなっちゃうのに。
きっともうじき頭の中まで真っ白になって、何もわからなくなっちゃう。そんなときに一人にされたら、どうしたらいいのかわかんないのに――
「・・・・・・やだぁ、こわぃ・・・こわいよ・・・・・・っ」
「・・・・・・」
声を震わせて泣きじゃくりながら、いくら必死に縋ろうとしても届かない腕に手を伸ばす。
そしたら銀ちゃんが喉の奥でかすかに息を飲んだのが、中に埋められた指の先から伝わってきた。
蕩けたところに潜り込んでる大きな手も、何かに驚いたみたいにぎこちなく固まりはじめて――
「ひとりじゃ、ゃらぁ、こわいの・・・っ。
はなれちゃ、やだぁ。ぃ、いじわるしちゃ、ゃぁ・・・〜〜っ」
「・・・ゃ、ちげーって、これはあれな、意地悪っつーか。・・・・・・や、つか、たいして離れてねーだろ。そこまで怖がることねーじゃん」
「って、こわいの、銀ちゃ、に、ぎゅって、してもら、ないと・・・っ」
「・・・・・・っ」
なぜか黙りこくっちゃった銀ちゃんは、押し殺し気味な息遣いを漏らしながらゆっくり指を引き抜いた。
心臓を凍りつかせそうな心細さから逃れたくて、震える指を白いドレスシャツの袖口に伸ばす。
銀ちゃんの反応を気にしてすこし怯えながら、きゅっ。
おそるおそるシャツを掴んで、ちょっとだけ引き寄せてみる。
薄い布越しに感じる体温と、嗅ぎ慣れた素肌の匂いがかすかに広がる。
どっちも普段ならこんなお願いするまでもなく無条件でもらえてるものなのに、今日はどっちももらえない。
今日はどっちも遠くてよそよそしい。
すぐ目の前にいるはずなのに、うんと離れてるみたいだよ――
「・・・っ、っく、ぅう、っ・・・・・・ゃだ。やだぁ。んなの、やぁ・・・ぎんちゃんじゃ、ないと、こわいの、だめなの・・・っ」
どん、ってぶつかるような勢いで、広い胸に飛び込んだ。
踏みつけちゃったお菓子の袋や銀ちゃんが外したマントの生地が、足許でざわざわ音を立ててる。鼻の奥がつんと痛む。
ぐすぐすぐすぐす啜り泣きながら凭れかかって、お化粧が崩れかけた情けない顔を肌蹴た衿元に摺り寄せる。
また離れられるのがこわくて夢中でベストを握りしめたけど、熱い身体はもうあたしを拒んだりはしなかった。
――こつ、こつ、こつ、こつ。
少し離れたどこかから、リズミカルで軽い響きの靴音が迫ってくる。
ヒールが床を鳴らす音。
この階の端に住んでる女の人かもしれない。泣きすぎて火照った頭の奥で、ぼんやりとそんなことを思う。
じきにあたしの部屋の前へと差し掛かった靴音は、共用通路の端のほうへ遠ざかっていく。
がちゃがちゃ、かちゃん、って鍵を開ける音と、きぃ、ってドアが開くときの微かに軋むような音が鳴って――
「・・・や、けどよー。・・・・・・おかしくね、それ」
拗ねたような、でもどこかうろたえてもいるような声が頭の上で漏らされたのは、ドアの向こう側に何事もなかったような静けさが戻ってからだった。
啜り泣きながら見上げれば、壁の方へそっぽを向いた横顔はぽりぽり頬を掻いてるところで。
あたしが潤みきった目で見つめてもちっとも目を合わせようとしない銀ちゃんは、よっぽど視線を避けたくてたまらないのかも。
壁をじとーっと睨んでる瞳は、よく見れば動揺してるのか左右にふらふら泳いでる。
じきにむっとしてるみたいに唇を尖らせたまま、きまり悪そうに口を開いた。
「・・・ぉ。俺じゃねーとってお前・・・っだよ、じゃああれは何だったんだよぉ。
沖田くんにもぎゅーされかけてたじゃん。あれはいいの、あれは」
「あれ、は・・・沖田さん、こわくて、うごけなくて・・・銀ちゃんじゃないから、こわかったの・・・っ」
震える声を喉の奥から絞り出したら、歯がかちかちと鳴り始める。
足が竦んで動かなくなっていくのが自分でもわかる。
言い終えたらなぜか徐々に不安や怖さが増してきて、あたしはマントの背中に腕を回してぎゅうって銀ちゃんにしがみついた。
――言葉って不思議だ。あたしは今、思ってることや体験したことを、言葉に代えて口にしただけ。
なのにたったそれだけで、身体にも心にも嫌になるくらい思い知らされちゃった気がする。
あたしがたった今まで気付いてなかったことや、二度と思い出したくなかったことを。
――そう、さっきはこわかった。
無遠慮に肌に食い込んできた、沖田さんの指の感触が。
力ずくでいうことをきかせたがってるときの、男の人の強引さが。だから思い出して、重ねちゃったんだ。
だから沖田さんを怖く感じて、身体がちっとも動かなくなった。
あの強引な男の子の手にどことなく似てる、別の人の手。
あたしがもうすっかり忘れたつもりになってたその手を、身体と心はまだ忘れてなかったみたいだ。
だからあんなに怖く感じて、いつもと違う銀ちゃんの様子や、突き放すような態度まで不安になって。
ほんのちょっと離れられただけで心細くてたまらなくて、さみしさで胸が一杯になって――
「・・・・・・あーもう、わーった。もういいわ」
汗で湿ったおでこの上から、やわらかい感触を落とされた。
前髪に押しつけられた唇から切羽詰まったような溜め息が漏れて、
「だよなぁ、怖ぇーよな。
ついこないだまで男苦手だったもんなぁお前」
「・・・っ」
「・・・・・・悪りぃ。沖田くんに迫られた後も平気そうに見えたし、そーいうのもう忘れてんじゃねぇかって勘違いした」
少しためらったような間を空けてから言い辛そうに切り出されて、あたしはふっと息を飲んだ。
つきん、て心臓がかすかに傷む。小声でぼそっと告げられた「悪りぃ」のひとことが、胸にちくって刺さっちゃってる。
「・・・覚えてたんだ」
「んー?何が」
「話したの一回だけだし。・・・もう忘れちゃってるだろうなって・・・」
「・・・。そりゃあ、一回きりしか聞いてねーけど」
一回きりでも忘れねぇだろ、あんな話。
低く潜めた吐息混じりの声が、耳元でぼそりと囁いた。
そのまましばらく無言を通した銀ちゃんが、あたしの髪を指に取る。
摘んだ束を指先に絡めて遊ぶように捩じりながら、
「・・・・・・つっても、まぁ、そこだけ強烈に覚えてたわけじゃねーけどな」
ふと漏らされたのは、いつもとあまり変わらない飄々とした口調だった。
「のことなら結構あれこれ覚えてっからね、銀さんは。大抵のこたぁばっちり覚えてるからね」
「・・・また適当なこと言うし」
「いやいやほんとだって。
たとえばあれな、ババアの店のきんぴらが好物だとか、冷蔵庫にいつも同じアイス入ってるとか、鯛焼きは尻尾から食う派だとかー」
ドアにずっと押しつけられてたせいですっかり冷えきってた背中を、大きな手のひらに押し出される。
ぽふ、って音を鳴らしてシャツの胸元に凭れかかったあたしを、熱い腕が大切そうに抱え込んだ。
「あとは・・・そうだな、酒は好きだけど甘ったりぃやつは苦手だろ。
あーそれからあれ、機嫌がいい日はいつも台所で同じ鼻歌唄ってる」
今にも凍りついちゃいそうだった肩を、大きな手のひらがゆっくり撫でる。
ふわりと身体を取り巻いた高めな体温と男の人の肌の匂いに、身体中が包まれていく。
・・・・・・ああ、やっともらえた。
銀ちゃんだ。銀ちゃんの腕だ。あったかい。気持ちいい――
そう感じたら、怖さと寒さで強張ってた身体から自然と力が抜けていく。ぽんぽん、ぽんって髪が乱れた後ろ頭を叩かれて、
「それからあれな、あれ。こないだ前髪切りすぎたって言ってたあれ、まだ気にしてるだろ。
お前さぁ、あれから何かっていうと前髪引っ張ったり触ったりしてんじゃん。
あとはあれ、俺が酔っ払って夜中に押しかけると怒るくせにちょっと嬉しそうとか」
「・・・・・・。ぅん」
「まだまだあるぜ。
おととい着てた着物とブラの模様とか、ちゅーした後のぽやーんとした目つきが可愛いとかどこをどう触られんのが好きかとかイく直前の声が鼻血もんでえろくてたまんねーとかぁ」
「・・・ばっかじゃないの。銀ちゃんきもい」
なめらかな白い生地に埋もれた顔を力無く歪めて、ふふ、って声をこぼして笑う。
「あとはぁ・・・あーあれな、あれ」
たまに「うん」って相槌を打つだけのあたしの頭をゆっくり何度も撫でながら、銀ちゃんはぼそぼそ話し続けた。
そのうちのほとんどが、泣いてる女の子を慰めるにはまったく相応しくないようなこと。
もしあたしがこんなに弱りきってなかったら問答無用で股間をがつんと蹴り上げたに違いない、いかがわしくてくだらないことばかりだ。
(女の子を泣かせた直後にこれだもん、だから銀ちゃんはモテないんだよ。)
そんなことを思ったらおかしくて苦笑いしながら聞いてたけど、そのうちに泣きたくなってきた。
だって、ほんとはわかってる。銀ちゃん、わざとふざけてるんだ。
震えが止まらないあたしを落ち着かせるために、わざとくだらないことばかり口にしてる。
そう思ったら胸の奥がぶるりと震えて、嗚咽が喉までこみ上げてくる。あと少しで漏れそうだったそれを、あたしは必死に噛み殺した。
だって、まだこのままがいい。
くだらない話を呆れ笑いで聞いてるいつものあたしのふりをしながら、もう少し銀ちゃんにくっついていたい。
全身に響く気怠そうな口調が心地いい――
――たった今、うっかり思い出しかけてた苦い経験。
「はじめて」を銀ちゃんにあげたときに打ち明けてしまったその話を、口にしたのはその時のたった一度だけ。
それからはその人のことなんてすっかり忘れたつもりになってたし、銀ちゃんもそうなんだろうな、ってなぜか漠然と思い込んでた。
・・・でも、違った。本当はそうじゃなかったみたい。
忘れたつもりになってたあたしに合わせて、忘れたふりをしてくれてたんだ。
とっくに忘れちゃったような顔しながら、ずっと気に掛けてくれてたのかもしれない。
あたしが行きたがってたところを――たった一度写真を見せただけの、銀ちゃんには興味ないはずの温泉旅館を、今まで忘れずにいてくれたみたいに――
そう感じたら、銀ちゃんに凭れかかってる胸の奥がきゅうって竦んで苦しくなる。
目の前の白いシャツをじっと見つめた目の中がじわりと潤んで、やわらかい熱で満たされていく――
「・・・・・・ちがうよ。ちがうの。勘違いじゃないよ」
「・・・。んー?」
「・・・・・・あたしね。今日まで忘れてたんだよ。ほとんど忘れかけてたんだよ、男の人が苦手だったこと。
それって銀ちゃんに会ってからなの。銀ちゃんが忘れさせてくれてたんだよ」
「・・・・・・」
「銀ちゃん、いつも一緒にいてくれたから・・・ずっと傍にいてくれたから。だから、こわいなんて、ぜんぜん、一度も――っ、」
震える指で目許を拭って啜り泣きながら見上げれば、あたしの視線を避けようとしてるみたいに素早く引っ張られて抱きしめられた。
指先がぶるぶる震えっ放しな手を取った銀ちゃんが、自分の首の後ろまでその手を引いてベストの衿を握らせる。
おでこに掛かってた前髪を指先で後ろへ流しながら、涙でしっとり濡れてるこめかみのあたりへ、ちゅ、ちゅ、ちゅ。
もう大丈夫だ、ってあたしに言い聞かせようとしてるみたいに何度も何度も、熱い唇が触れてきて、
「ちゃーん、もうそのくれーにしといてくれる。銀さん今ケツが壮絶にこそばゆいから、壮絶にムズムズしちまってケツが爆発寸前だから」
「なにそれ。・・・ね、もしかして・・・てれてる?」
そう尋ねたら、こめかみから耳元へ滑っていった唇がなぜか動きをぴたりと止める。
だけど次の瞬間には耳たぶにきつめに吸いついてきて、「違げーよばーか」って、どことなくばつが悪そうな悪態を耳の中に注がれた。
「照れてねーよ、ケツが謎のむず痒さに襲われてるだけだっつーの。
・・・まぁ、あれだわ、うん、やりすぎたわ。もう意地悪しねーから泣き止んでくんね」
「・・・・・・っ。ほ。んと、に・・・?」
「ん、ほんとほんと。ほら、もう怖くねぇだろ」
嗚咽がなかなか止まらなくてぐすぐす泣いてるあたしに、少しくぐもってて苦笑気味な声が言い聞かせてくる。
ほっぺたや耳たぶにも甘やかすようなキスを落としながら、露わになった背中を撫でてくれた。
「あぁ・・・・・っ」
ぬる、くちゅ。
脚の間に差し込まれた手がかすかな水音を鳴り響かせて、中指の先が滑り込んでくる。
関節のあたりまでゆっくり含まされた指をきゅんって締めつけた蜜口にもう一本、熱い指先を擦りつけられる。
くちゅ、って潤んだところを割った指は、濡れそぼった中を広げながら奥までゆっくり踏み込んでくる。
最初に入れられた指といっしょに動いて、蕩けた壁をゆるゆると、優しくて甘い感触でくすぐり始めた。
「あ、あぁ、ぎんちゃぁ・・・っ、ぁん、ぁ、あ・・・っ」
「、これきもちいい。もっとしていい」
「・・・んっ、もち、ぃ・・っ。はぁ、っふ、あぁ・・・っ」
「一気に奥まで入ったじゃん。いつもはじっくり慣らしてやんねぇときっつきつで入んねぇのにな」
「ぁ、はぁん、ぎ、ちゃあ、ぁっっ。もっと・・・もっと、ぎゅって、してぇ」
マントの内側に腕を回して、ベストのつるつるした生地を夢中で握ってしがみつく。
そしたらなぜか、抱きついた銀ちゃんの胸が息を飲む。かと思えば頭をぎゅって抱きしめられて、涙で濡れて冷えきってる目尻に、ふに、って火照った唇をくっつけられた。
ゆっくり触れてきた熱の感触は優しくて、泣いてるあたしを慰めようとしてるみたい。さっきは冷たく拒まれてるような気がしたのに――
「ん、・・・かわいい、・・・っ」
「ふぇ、うぅ、銀ちゃぁ・・・っ」
吐息みたいな甘い声に名前を呼ばれたら、身体中が蕩けちゃいそうなくらいほっとする。
薄くて冷たいシャツの生地にうんと涙を染み込ませながら、すりすりってほっぺたを擦り寄せた。
もっと。銀ちゃん、もっとぎゅってして。
嬉しくてぽろぽろ涙をこぼしながら熱い耳元にささやきかけたら、なぜか銀ちゃんの腕が強張る。
急に指の動きが速くなって、力が抜けきってる唇を噛みつくみたいな勢いで奪われて、
「んふぅ、っく、んっ、んんん、ん〜〜〜・・・っ!」
もう何も聞こえない。
抱きしめられた嬉しさでのぼせ上がった頭の中では、興奮して荒くなってる銀ちゃんの呼吸と、こらえきれずに銀ちゃんの口の中へ吹き込んだ自分の喘ぎ声だけが反響してる。
だから何かの振動がこの部屋のほうへ迫ってきても、その振動がドアの向こうを通り過ぎて遠ざかっていっても、どこかもっと遠くの、自分には関係のないところで起こってる小さな揺れみたいに感じるだけだった。
だって、これじゃあ銀ちゃんしか感じられない。他のことなんて何ひとつわからない。
ぐちゅぐちゅっ、ぐちゅっ、って長い指の先で深いところを掻き混ぜられて、ばらばらに指を動かしながら狭まった粘膜を広げられて、擦られてるところはじんじん痺れて火が点いたみたいに熱くなっていく。
あたしをどこかうんと高いところへ押し上げようとしてる手の動きや、奥からとろとろ溢れっ放しな雫がショーツや太腿をぐっしょり濡らしてることや、熱い指の骨太な感触しか感じられない。
ただぼんやりと、ドアの向こうを通り過ぎていった何かの気配を意識の端で感じるだけ。
外で何が起こってるのかを考える余裕なんて、もうどこにもない――