紫陽花が泣き止む頃に 1
ガラガラ回すアレである。 その正式な名称は知らない。 即答出来る方は少ないと思われる。 が、どなたも一度は必ず目にしたことがあるはずのアレである。 年に一度の、商店街のお祭りで。 開店セール中のスーパーの店頭で。 福引のときに使う、たしか六角形の箱型のアレ。 取っ手を掴んで本体を回すと、ガラガラと音が鳴るアレ。 回しているうちに金色や赤や白の小さな玉が転がり出てくる、アレである。 「お帰りなせェ土方さん。ささ、駆けつけにぐっと一発」 話はが正式に真選組隊士となって、一ヶ月ほど過ぎた頃に遡る。 とある夏の日の、夕暮れのこと。 屯所に帰りついた彼、真選組副長 土方十四郎に恭しく差し出されたもの。 それは「ガラガラ回すアレ」だった。 「・・・・・どーゆう出迎えだ。 つーか何だよ「ぐっと一発」ってよ。出た途端にドカンといくモンでも仕掛けてあるんじゃねえだろな」 パシンと指で「ガラガラ回すアレ」を弾き、あからさまに不審そうな目線を向けている副長。 ワゴンの上に「ガラガラ回すアレ」を乗せ、彼を待ち構えていた沖田総悟は、思惑の見えない表情で返した。 「まァまァ、細かいこたあ気にするねェ、土方よォ。ヤバいモンなんて仕込んじゃいませんぜ。 さあさ、野暮は抜きでェ、ここで人目も憚らず一発出しちまってすっきりしてくだせェ、玉だけに」 「わかった引いていやる。そのかわり、当たったらテメエのタマよこせ。 「イノチと書いてタマと読む」の方な」 「へいへい。これだから「BE-BOP HIGH SCHOOL」世代は」 「そこまで古かねえ。「クロ高」だ」 「どっちだっていいんでさァ。たいして変わりゃしねェや」 フン、とふてぶてしい笑いをうかべながら、土方が「ガラガ(以下省略)」を回す。 二回転ほどさせたところで、中から小さな何かがコロンと転がり出てきた。 出てきた何かに、二人が顔を寄せて覗き込む。 「・・・・・おい総悟」 「何です土方さん」 「おい。いーのかよ」 「だから何がだっつってんだろ土方」 「一応よォ、夢小説だろコレ。夢見がちな婦女子とやらが読むんだろ」 「字がひとつ違ってますぜ、土方さん。婦じゃなくて」 「おい、やめとけ。いーから放っといてやれソコは。 書いてる奴のボロボロの心臓ブチ抜くんだよ、大動脈瘤破裂するくれー危険なんだよその字は。 てめえ解ってんじゃねーか。なら、こんなコトバに詰まるよーなモン仕込んどくんじゃねーよ」 「詰まるって。何がどう詰まるんでさァ」 「だからアレだろ。・・・○ン×的なアレだろこのタマ、色も質感も。誰がどー見ても」 「ウンコ的なアレってよーするにウンコじゃねーかよ土方」 「オイィィィ!はっきりウンコ言うなァァ!!伏せろ、字ィ伏せろォォ!」 「アンタもはっきり言ってますぜ土方さん。 それにコレ書いてる奴ァ、んなこたあたいして気にしてませんぜ? んなことよりも、発売から一ヶ月遅れで読んだ3Z三巻とうっかりネタ被っちまったのを気にしてやがる。 たいしたモンも書きゃしねえくせに。自意識過剰もいいとこですぜ、あのウンコ女」 「伏ーせーろー!!一文字でいーから伏せろォォ! 夢見がちな婦女子が見てんだって言ってんだろォォ!! つーかどんだけフリースタイル!?たまにはコトバに詰まってみせろやァァァ!!」 「詰まってんのかよウンコ。言ってみろよ。オラ、どんだけ詰まってんのか言ってみ」 「一番ヤバいとこ攻めてくるんじゃねえェェェェ!!!このドSがァァァ!! ヤバイんだよ、ギリだよギリ!!ここスルーしねーとSMどころかス○ト×一直線じゃねーかァァ!!!」 「なァに、慌てるねェ。俺ァスカトロにゃあ興味無」 「だあァァ!!黙れェェェ!!!!」 「なァに、大丈夫でさァ。俺がしっかりモザイクかけときやしたから」 「かかってねェェェェェェ!!!!」 * * * * * * * * * お知らせ 「No.5」シリーズをお読みいただき、ありがとうございます。 諸事情によりモザイク処理が不可能なため、ここより以下、自主規制をかけさせて頂きます。 「○ン×」と出てきましたら、その部分はどうぞ各自お好きな、麗しいイメージを想像してお楽しみください。 以上、お知らせでした。 * * * * * * * * * 「・・・で?この○ン×色の玉ァ、何なんだ?」 「ああ、そうでしたねィ。すっかり忘れてやした。 さーすが土方さんでさァ。○ン×色の特賞を当てるたァ、ほんっとてえしたもんだ、いやーさーすが○ン×色土方」 「・・・お前に言われると当たった気がしねえ」 「はいはい、じゃあコレ鳴らしときましょうか一応、○ン×引いたくせにマジウゼエから一応な一応」 「今「一応」って何回言ったテメエ。つーかどんだけ言いてーんだよ○ン×ってよ」 カランカランカラーーン。 「ホラ大当たり出たでしょ、六等のポケットティッシュだけじゃないでしょ? ちゃんと特賞混ざってるからねコレ、という福引主催者側の主張をアピールするために派手に鳴らすアレ」が、 屯所の玄関に鳴り響く。 その音を聞いた隊士たちが、建物の中や外からわらわらと二人に寄ってきた。 特賞とは言われたが、こいつのことだ。どうせ普通のモンは寄越しゃないだろう。 その商品を思うと頭痛を覚えずにはいられない。 そんなことを考えながら、ふと土方は自らが出した「特賞」の玉を手に取った。 「・・・・しかしこの色。スゲーな。何で出来てんだ?こいつ」 「ああ。言い忘れてやした土方さん。触ると危険ですぜ。体温に反応するんでさァ、そいつは」 轟く爆音。飛び散る「○ン×色のアレ」。 飛び散る隊士。飛び散る床板。飛び散る「一休さんの虎退治的な虎の墨画」が描かれた間仕切り。 飛び散るワゴン。飛び散る「ガラガラ回すアレ」。 かろうじて飛び散らずに生き残った二人が、ゲホゲホと咳き込みながら起き上がる。 その惨状は、煤だらけの顔をした即席アフロの男が二人。 ドリフのコントの爆発後、もしくは四週に渡って髪型が違っていた某監察の姿を想像していただくと話は早い。 「おい総悟」 「何です土方さん」 「当たりか?コレ、当たりなのか」 「そうですぜ土方さん」 「俺ァ当たったらオメーのタマ寄越せとは言ったがよ。俺のタマくれてやるたァ言ってねえ」 「ね?まさに大当たりですぜ」 「ね?じゃねェェェェェェ!!!!!」
「 紫陽花が泣き止む頃に 1 」text by riliri Caramelization 2008/08/22/ ----------------------------------------------------------------------------------- ここだけこの先の話と色が違います シリーズ基本は「何でもアリ」です ご容赦ください。 土方さん クロ高読みながら号泣してそう next