「・・・ん、しょ、・・・・・、かぇ・・・・・な・・・て、・・・い・・・・・・の・・・?」 (屯所に帰らなくていいの。) おそらくはそんなことを言いたかったのだろう。 はぁ、はぁ、と苦しげな吐息を交えながら、切れ切れな声が尋ねてくる。 たどたどしい響きの問いかけは視線を合わせるだけで受け流し、の太腿に手を掛けた。 しっとりと濡れた洗い髪を枕元で扇状に広げ、すんなりと伸びた手足を投げ出した身体は純白のシーツに沈んでいる。 桜色をした爪先が天井へ向くくらいに高く脚を上げさせ、その膝裏へと顔を寄せ、汗に濡れた肌を啄む。 膝立ちになった身体の重心がゆっくりと彼女へ倒れ込む。ぎぃ、とキングサイズのベッドが揺れて軋んだ。 カーテンを閉める間も惜しんだために、部屋の壁一面を占めた大きな窓からは光り輝く江戸の夜景が一望出来ていた。 ベッドの足元やヘッドボードの間接照明だけが光を灯している薄暗い室内。慣れない色味のほのかな暖色が 淡く色づいたの素肌に柔らかな陰影を落としている。透けるような彼女の肌色を引き立てる純白のシーツは 染みひとつなく、触れればさらりと肌を滑る上質さだ。普段使っている安物とは格段に違う触り心地と、普段とは 違う空気の湿度やかすかな匂いに違和感を覚える。けれど、腕の中に掻き抱いている素肌のなめらかさや、 つうっと舐め上げた太腿から香る女の匂いはいつもと同じだ。ちゅ、と音を立てて腿の付け根の星型のあざに吸いつく。 血の色を透かす小さなしるしを肌に残し、持ち上げていた太腿に舌を這わせながら幾つも噛み痕を刻んでいく。 肉付きの薄い腹や、みずみずしい弾力に富んだ胸にも同じようにして跡を残した。 ふぁ・・・、と、気だるさを含んだ熱い吐息を漏らした女に覆い被さり、その唇を無言で塞ぐ。 んっ、と喘いで身じろぎした熱い身体の下で、ざわざわとシーツをさざめかせる軽い衣擦れの音が鳴る。 このベッドにと籠ってからというもの、こうして幾度となく唇を重ねている。火照った女の口内を好きなように 味わい、彼女の身体の至る所に赤い噛み跡を刻みつけながら、土方は必要以上に彼女の肌に触れないようにしていた。 わざと唇だけで彼女を味わい、組み敷いた身体が徐々にもどかしさを募らせて腰を揺らめかせる様子を視線で味わう。 「ん。ふ・・・・ぅ、」 もっと、と甘えて絡みついてくるの舌を押し戻して唇を離した。 吐息を弾ませる唇を何か言いたげに開き、大きな瞳を潤ませて訴えかけてくる女を見下ろす。一糸纏わぬ肢体は ほのかな薄桃色に色づいており、新雪のような純白のシーツにくったりと横たわっている。恥ずかしそうだがどことなく 物欲しそうな顔をした、濃密な色香を放つの姿に煽られる。 身体を起こした土方は、眉を顰めた苦しげな表情で彼女に見惚れる。はぁっ、とどこか投げやりな、荒れた吐息が口を突いた。 「ひじか・・・さぁ・・・、いぃ・・・の?」 立て続けに身体を交わらせたせいで、薬の効果が薄れているのか。は多少正気が戻ってきたらしい。 紅い唇をきゅっと噛み、眉を寄せた悩ましげな表情で問いかけてきた。 口は相変わらずに呂律が回らないようで、舌足らずな響きで彼を呼ぶ。薬の効果に翻弄されているの 心許ない気分を反映させたような細い声は、妙に土方を惹きつけた。 「お前はいいのか。俺が帰っても」 「・・・って、いそがし、って、言っ・・・・・」 「・・・・・・・・ったく。またそれか」 口を開けばこればかりだ。 「まだ仕事が残っているから屯所に戻る」そう拒んでいた土方の言葉を、存外に気にかけていたらしい。 は似たような顔つきで、何度も同じことを尋ねてくる。一体これで何度目なのか、数える気はとうに失せたが ――最初に問われたのは、意識を失くしていたこいつがバスタブの中で目を醒ました時だったか。 次に訊かれたのは、が飲んだあの「酒」が実は媚薬で、そのせいで身体が異常を来たしていると説明した時。その次は、 熱い湯の中で後ろから抱きしめて身体を繋げ、濡れた背中に齧りつくようなキスを降らせていた時だ。 それでもは納得がいかなかったらしい。 風呂から上がり、力が抜けてろくに立てもしない身体を拭いてやった時も同じことを訊いてきて―― 「俺のこたぁもういい。さっきも言っただろうが。今は忘れろ」 「でも・・・っ、ん・・・っ」 言いながら身を伏せ、に顔を寄せていく。放っておけばまた同じことを言い出しそうな唇を斜めに塞いだ。 舌を絡ませて呼吸を奪い、熱が上がった柔らかい口内を撫で回す。ふぁ、と苦しげに喘ぐ女の唇を強く吸って、 ちゅ、と音を立てて顔を離す。離す瞬間に盗み見たせつなげな表情に満足して、土方は声もなくくすりと笑った。 「いいのか、んなこと言っちまって。ここで俺がお前を放り出して帰ったら、どうする」 「んっ。でもぉ、・・・・・・・っん、く・・・ふぅ、」 一度離れた口内にふたたび押し入りながら、何も身に着けていない身体へと手を伸ばす。胸の丸みに沿って やんわりと撫でながら豊かな膨らみを手に収め、指が食い込むくらいに強く握る。キスだけを繰り返す物足りない行為に 内心ではひどく焦れていたのだろう。はそれだけで高い声を上げて背中を浮かせた。 背中を抱いていた手も肩から胸へと動かしていき、なめらかに盛り上がっていく胸の隆起を手のひらに包んだ。 両手に収めた柔らかさをそれぞれに形が変わるほど強く握り、つんと尖った左の先端を口に含む。 彼に触れられることを待ち望んでいた感じやすいそこを、ちろちろと舐めて転がす。じゅ、ときつめに吸い上げてやると、 んんっ、とは唇を噛みしめて彼の頭を抱きしめてきた。足の爪先をきゅっと竦ませ、必死に声を耐えている。 「・・・っ。ふぁ。ぁあ・・・っ。だ。だめぇ・・・」 「媚薬の効果はまだ切れねえんだぞ。これを我慢できるのか。自分じゃろくに宥められもしねえ奴が」 「・・・っ!」 何の気なしに尋ねたことが、彼女にはよほどに恥ずかしかったらしい。 はかあっと頬を染め、おろおろと視線を彷徨わせて、 「じぶんで、なんて、そんな・・・そんな、こと、しな、・・・・・・・・・っ、ぁあ、んっ・・・」 消え入りそうな声でつぶやいていた唇からは、次第にか細い喘ぎ声がこぼれ始めた。 もう一度胸を愛撫し始めた土方の舌の感触に肌を舐られ、胸の先をくちゅくちゅと揉まれる。すっかり固くなったそこを 弄りながら、土方がたまに目線を上げてこっちを見る。恥ずかしい。恥ずかしいのに、男の舌が与えてくる刺激が たまらなく気持ちがいいから声が止まらない。 「ぁあん、んっ、・・・そんな、・・・め、ちゃ、・・・・めぇ・・・・・・っ」 ぴったりと閉じた太腿の間にじんわりと潤み出るものを感じてさらに顔を赤らめながら、は濡れた声を上げ続ける。 舌先で何度も捏ねられ、軽く立てた歯で先端を甘噛みされ、その間にも乳房をゆっくりと回しながら揉まれる。 胸と下腹の両方で勝手に増幅していく弱い快感。じりじりと身体を蝕むその気持ちよさに耐えきれず、 ぴんと伸ばした足の先がきゅうっと縮む。ぶるっ、と揺れた爪先がシーツを掻く。 ・・・いつもはこれだけでここまで感じたりしない。けれど今日は、熱い舌で嬲られるこの感触だけで達してしまいそうだ。 胸を離れて下へ這っていった土方の手は、身体の疼きに震える下腹を優しく撫でた。そこに宥めるようなキスが落ちる。 硬い指の感触は下腹から太腿へと移っていき、肌をゆるやかに撫でてくる。かと思えば、きつく閉じていた彼女の 内腿をぐいと割って、 「んぅっ・・・!」 軽く割られた足の間に、ぐちゅ、と硬い指先を押し込まれた。 すでにたっぷりと蜜を湛えた秘裂から、とろりと透明なしずくが零れる。急に入れられた感覚にが全身をしならせていると、 ずぶり、と長い指をすべて押し込まれる。すぐに引き抜かれ、また埋められる。柔らかく収縮する中を確かめるような手つきで 抜き差しされているうちに、ぐっ、と一際強く奥を突かれて。 「っっ、・・・ぁあ――・・・・っ!」 硬い指先に押し込まれる感触で軽く達してしまったは、泣きながら土方にしがみついた。 脚や腰を痺れさせている気持ちよさがいつまで経っても引いていかない。しばらくは身体を震わせて声をこらえていたが、 そのうちに我慢できなくなった。 「ぅあ・・・ふぇええ・・・っ、っっく、う、ぁあ、も、やぁ・・・っ」 しがみついた土方の胸に唇を押し付け、喘ぎながら泣きじゃくる。 彼女の意思とは関係なしに、男の指で乱される秘所がきゅうっと縮んで疼く。じゅぶ、じゅぶ、と籠った水音が自分の中で 鳴り続けている。こぼれた蜜がとろとろとシーツに伝って腰の下を濡らす。染みが大きく広がっていく。 もうどうしていいのかわからない。 ――どうしてこんなに長いんだろう。快感の波がまだ引いていかない。 まだ続いてる。身体の芯がまだ痺れてる。土方さんの指を締めつけて、もっと欲しい、って疼いてる――。 目尻に大粒の涙を浮かべ、唇を噛みしめて身体のせつなさをこらえていると、ふっ、と困ったような顔で笑った男に 暗く視界を塞がれた。顔が重なり、唇が触れ合い、割り入ってきた舌に、泣くな、と宥めるような優しい仕草で 口内をゆっくり撫でられる。けれど、深く埋め込まれた指はその間も彼女を乱し続けていた。一番弱い場所に届いた先が わずかに曲がって、くちゅ、くちゅ、といやらしい音を奏でながら行き来する。濡れた内壁を深く探られる。 「っや、あぁん、ひ、かた、さぁ・・・っ」 たまらずにが悲鳴を上げると、土方は唇を離して低く笑った。 「いつにも増して狭めぇな・・・」 「んぅ・・・っ、ぁあ、そ、そ、こ、やめ、っ」 「おい、どうだ。これが何もしねぇで我慢出来る身体か。・・・なぁ。お前、自分でやったことなんてねえだろう」 「あぁ。やぁ、ゆび、う、動かし、ちゃ、いやぁ、あぁ・・・・っ」 「出来ねえだろ。今だってすっかりもてあましてんじゃねえか」 こいつの指がここへ埋められたのは、どうせあの一度きり。俺の無理強いで弄らせた、あの時のたった一度だけだろう。 そんな奴が自分で慰められるわけもない。 媚薬が仕向ける快楽になすすべもなく煽られ、焦れて泣きじゃくるこの身体を―― 「もう我慢も限界じゃねえのか。素直に「もっと弄ってくれ」って泣きつけよ」 「っ、ぁ・・・っ、や、あ、・・・・そんな・・・・・・いえな・・・っ」 「そういうこたぁ答えたくねえ、・・・か。なら仕方ねえな。出来るかどうか確かめるとするか」 「――っ。ふぁ、や、やだ、ぁっ」 言い聞かせるように囁き、細い手首を掴んだ。途端に動きを硬くした華奢な手を、彼女の下肢へとゆっくり導く。 微弱な官能に焦れてびくびくと疼き、土方の指をきつく締めつけているそこへと宛がう。 はかぶりを振って嫌がっていたが、土方は彼女の無言の願いを聞き入れない。 自分の指を根元まで包み込んでいる柔らかさの中に、くちゅ、と彼女の爪先を割り込ませた。 「――んっ!」 そこは彼女の意に反して、じゅぷ、と濡れた音を鳴らしてゆるりと広がる。 白く細い指先が沈む。新たな刺激を自ら欲し、深く受け入れようとする―― 「・・・・・・・っ、や、ぁ、うそ・・・っ、は、はいっちゃ、ぅう・・・っ。は、ぁあっ、・・・・ぁ、あ、あぁん、ああっ・・・!」 短く途切れるの声が、少しずつ高さを増していく。 男の指で広げられたそこをさらに広げながら、震えを帯びたの指がぐちゅぐちゅと潜っていく。 その指に自分の指を添え、土方はさらに奥まで潜らせた。彼女の一番弱い部分までその指先を押し込めば、 一杯に埋められた蜜口から雫が溢れ、弱い震えを起こしている太腿をつうっと這う。 ははらはらと涙をこぼした。何度もかぶりを振り、しっとりと濡れたままの長い髪が、白のシーツに散り散りに乱れて。 「あっ。あ、あぁん、めぇ、だめぇっっ・・・」 しなやかな首筋を仰け反らせて喘ぎ、涙を流して腰を捩る。だめ、だめ、と全身を震わせては拒む。 けれどそれは、決して彼女が嫌がっている時の声ではなかった。指を差し入れている熱く融けた内壁も、 じゅわりと彼に絡みついてくる。 あのが。 ――色事に消極的で奥手な女が。いまだに自分で自分を慰めることを知らないが、自分の指の感触にうち震えている。 ごくりと息を詰めた土方が、眉間をきつくして顔を顰める。はぁっ、と荒い溜め息が自然と漏れた。 いつの間にか、自分でも知らずに溜め息をこぼしていた。 こんなは今までほとんど目にしたことがない。ぎゅっと閉じた太腿の間に指を埋めて身悶える 淫らな姿とも相まって、その艶めかしい様にひどく興奮を覚えてしまう。 「ふぁあん。〜〜〜〜ゃあ、み、見な、でぇっ」 「・・・無理言いやがる。んな顔されて、目ぇ離せるかよ・・・」 絞り出すような低い声で土方がつぶやき、目の前で震える彼女の太腿にキスを落とす。 肌から香る甘い匂いに鼻腔を突かれ、二度目の溜め息が口からこぼれた。漏れた吐息が女の素肌をふわりと撫でて、 その熱を感じたがびくりと全身を震わせる。 「〜〜〜っ。んぅ・・・っ」 土方の指と彼女の指、二人の指を呑み込んだそこもきゅうっと疼いた。その感触には頬を染めて唇を噛んだが、 それだけでは下腹に湧き上がった快感をこらえきれなかったらしい。ぶるぶると細い腰や脚が揺れて、 「――っ、あぁっ、やだぁ、だめぇ・・・っ、・・・・〜〜ぁあぁーー・・・っ!」 土方の腕をぎゅっと掴み、びくん、と大きく背中を反らせた女の唇から、高くて長い嬌声が上がる。 快感の余韻に濡れた髪を振り乱し、涙が滲む目元をぼうっと羞恥の色に染め。は唇を震わせて、 「ふぇえ・・・っ、ゃだぁ。やだ。ゆ・・・び、抜いてぇ・・・っ」 恥ずかしくてもう耐えられない、といった様子で眉を下げ、土方の目を見て懇願する。ぐったりとシーツに投げ出された 細い脚がまだ絶頂の余韻に震えている。自分の中に埋められた男の指は濡れた暖かさで包み込み、きゅうっと締めつけたままだ。 だが、彼女は自分の身体が土方の指を引き留めていることに気づいていないらしい。初めての快感に戸惑っている 少女のようなぎこちない態度で、泣きそうな顔をして土方を見つめる。彼女の身体の中で奔放に溢れる欲情を こらえようとして唇を噛み、きつく閉じた太腿を震わせている。そんな自分が土方の目には却って艶めかしいものに映るとは、 たぶん知りもしないのだろう。濡れた瞳で彼を見上げ、必死に、せつなげに目で訴えてくる。 色めいているのにどこかいじらしいその様子を前にした土方は、恨めしそうに彼女を眺めて口籠る。妙な悔しさに頭を焼かれていた。 ――こいつを抱くといつもこうだ。焦らしているのはこっちのはずで。だというのに、こっちが焦らされた気分になってくる。 だが、それも仕様のないことか。こいつよりも俺のほうが知っている。こっちの指まで蕩けそうになるこの熱い中の どこをどう弄れば、真っ白な背中が弓反りにしなって震え出すのか。弱いところを突かれたこいつが、どんなに甘い声で啼くのか。 知っているからやめられなくなる。知っているから、もっと、もっと乱れさせたくなる。それに―― 「・・・お前が何と言おうが俺ぁ帰らねえぞ」 「っ、・・・・・ぇ、な、・・・ぁっ、あぁっ、」 いやぁ、とずり上がって逃れようとする腰を抑え、膝で割り入って脚を大きく開かせた。中に入れたままだった彼女の指も使い、 ぐちゅぐちゅと熱い中を掻き回す。 「こっちから呼ばねぇ限りは誰も寄越すなとは言いつけてあるが。・・・何かの間違いで、ここに誰か男が 来ねぇとは限らねえしな」 「やらぁ、ん、ふ、ぁ・・・っ」 脚を開かせたために濡れた様がはっきりと見えるようになった秘所に顔を近づけ、 二本の指を呑み込んでいるそこに口づける。舌先を這わせ、とろとろと纏わりついてくる蜜をゆっくりと舐め取る。 するとの足先が、びくん、と揺れる。さらに舐め取っていくと、っ、っぁ、はぁん、と息を詰まらせたような 甘い声の呼吸を繰り返し、身体を震わせ、〜〜っ、と声もなく腰をくねらせ、 「ひぅ・・・・・・っ、ぁあっ、や、めぇ、んんっ、はぁっ」 悶える身体を腕の力で抑えつけて脚を横に開かせ、土方は蜜に溺れる小さな芽をちゅっと吸った。 それだけでの声が跳ね上がる。じゅる、と漏れ出した熱い粘液ごと強く啜ると、脚は爪先までぴんと伸びた。 「〜〜〜あぁっ、やぁ〜〜〜・・・・っ!」 土方の顔を挟んだ柔らかい太腿が力無く震える。甲高い女の泣き声が広い部屋に響き渡った。 「っ、ぅ・・・・っ、あぁっ、も、やぁっ、ひ、かた、さぁ・・・・っ!」 啜り泣いている女の懇願には応えずに、腫れ上がった芽を咥えて舐める。舐めながら二本の指を抜き差しして、 絡みついてくる熱い壁を女の指先で擦り立てる。は弓なりに身体を逸らし、土方の愛撫から逃れようと腰を捩った。 これだけでもうわけがわからなくなりそうだ。指を押し込まれたところからは熱い雫がとろとろと溢れ続けていて、 うわずった泣き声が止まらなくなる。舌先でぐちゅぐちゅと弱いところを揉まれるたびに恍惚感がぞくぞくと背筋を突き抜け、 思わず土方の顔を太腿でぎゅっと挟みつけてしまう。どうしよう。きっと土方さんだって呆れてる。 もうやだ。逃げたい。こんないやらしい自分をこのひとに知られてしまうなんて、――死にたいくらいに恥ずかしい。 脚の間に埋められた黒髪の頭を泣きながら押し返し、は土方から逃れようとする。ところが、そんな彼女の抵抗が 却って彼の嗜虐心に火を点けたらしい。押し付けられる舌の動きが強さを増す。 頭の中が真っ白になるくらいに感じやすいところをじゅるりと啜られ、くちゅくちゅと食まれ、達してしまうまで嬲られて―― 「っぁあ・・・・・!」 「嫌か?・・・嫌じゃねえだろ。こんなに溢れさせておいて、何が、嫌だ・・・っ」 「・・・って、こ、んな、なん、かい、も。・・・・・・もぅ、無理ぃっ・・・」 は、やめて、と泣きながら訴えてくる。土方は仕方なさそうに蜜口を弄っていた舌を引き抜き、ようやく顔を上げた。 切れ長の目を細め、しばらく何かを探るような目つきで彼女を眺めていたのだが、 ――やがてその望みに従い、二本の指をずるりと引き抜く。 引き抜く瞬間に土方の爪先が彼女の敏感な部分に引っかかり、っっ、とが息を飲む。ぶわりと瞳を覆った大粒の涙が つうっと流れ、火照った頬を湿らせた。些細な刺激にも敏感に反応してしまう自分が、相当に恥ずかしかったらしい。 はぷい、と顔を背けて土方を拒んだ。腕を背中に回して抱きしめようとしても、いや、いや、とかぶりを振って嫌がり、 シーツをぎゅっと握った手元に顔を埋める。熱い雫をぽつぽつと上等な織地に染み込ませながら、 「やぁ・・・も、やだぁ。・・・こんなの、もう、やだ。もう、むり・・・っ」 「フン、そうでもねえだろ。ドアの前でも風呂ん中でも泣いてよがってたじゃねえか。 あれぁ本気で嫌がってる顔じゃねえ。泣くほどよかったんじゃねえのか」 「・・・っ」 図星すぎて何も反論できなかったらしい。 顔を真っ赤に染めて口籠る女を、土方は口端にどこか楽しげな笑みを浮かべて眺める。 女を、というよりは猫でもあやすような、少し乱暴で無造作な手つきで幾度か頭を撫でてやり、 「。言えよ。聞かせろ。俺ぁてめえのために時間潰してんだぞ。ちったぁ喜ばせろよ」 「〜〜〜・・・っ・・・・ひ。ひじかた、さ、・・・、ばかぁ、・・・いじわる・・・・っ」 シーツをぎゅうっと握りしめ、涙目で拗ねている女の横顔がやけに可愛い。 子供のように膨れているのに、目つきがしゅんと萎れている。そんな顔を見てしまったせいで なんとなく気分が緩んで、嫌がる彼女をこれ以上そそのかしたり、言えよ、と強要するような気にはなれなかった。 土方は彼女に向き合うようにして横たわり、半乾きになった頭をシーツに押し付けている細い身体を 白い織地ごと自分の胸元へ手繰り寄せる。濡れ髪が張り付いた額にそっと唇を落とし、女の顔を盗み見た。 恥ずかしさといたたまれなさでは真っ赤になっている。途端におかしさがこみ上げてきたが、 これ以上彼女の機嫌を損ねたくはない。頭上の視界に入ったヘッドボードの方へと顔を逸らし、 に気付かれないように肩を小刻みに揺らしてくくっと笑った。 んな顔して泣いてんじゃねえ。可愛いすぎんだろ、馬鹿。 思ってはいても言う気にはなれない甘ったるい睦言は、腹の底まで飲み下す。 土方は枕辺に広がった髪ごと、の頬を掬い上げた。手のひらに包んだ女の表情は拗ねているせいもあって子供っぽい。 けれど瞳は身体の奥に潜んでいる欲情を映してとろりと潤み、ひどく艶めいても見える。 見ていると自然に胸が高鳴り、腰を抱き寄せた腕に力が籠る。濡れて絡まった髪を梳きながら頭を撫でてやっていると、 互いにぴたりと目が合った。 「・・・・・・・っ」 黒髪の陰で細めた目に獰猛な男の色香を滲ませている土方の、強い視線に射竦められる。 汗に濡れた薄い表情の下に隠されている衝動を無言で突きつけられているようで、は思わずぞくりと身体を疼かせた。 ぼうっとした目つきで彼を見つめ、困りきった様子でかぶりを振る。土方が黙ったまま彼女の頬へ手を伸ばすと、 おずおずと唇を開き、その唇を再び噛んで。 「・・・っ。やだ。もぅ。だめ、って・・・っ」 「はっ、どうだかな。てめえの駄目だ嫌だはあてにならねえ」 「・・・・・・・・・っ。い。いや、・・・・・っ」 ぎこちなく動いたの唇は、拒む言葉を上らせた。そのくせに睫毛を伏せた大きな目はうっとりと土方を見つめたままで、 はぁ、と熱い吐息を小さく漏らす。ごくりと喉を鳴らした土方は、その唇を喰らうような荒い口づけで塞いだ。 強引に舌を差し入れて歯列を割り、震える舌や上顎をなぞるように舐める。赤く染まった目元を舐め、熱い頬を舐める。 肌に染み込んだ女の涙は妙に甘い。そのかすかな甘さの正体が何なのか、いつも不思議になるのだが―― しかしそんな考えも、彼女の肌をまさぐり出せば一瞬で頭の中から霧散した。肩から背中を撫で下ろし、 絹のようになめらかな感触を手で味わいながらを仰向けに押し倒す。 力の抜けかけたちいさな手に、ぐ、ぐ、と胸を押し返されたが、頼りなげな女の抵抗の裏に何があるのかは知っている。 構わずに両足の膝を掴み止め、掴んだそれを左右にぐいと開かせる。露わになった彼女の中心に下半身を割り込ませた。 柔らかな太腿を抑えつけながら自身を宛がい、の蜜口を押し広げる。固く漲ったその熱で、ふたたび快楽の高みへと 導いていく。言葉とは裏腹に土方が欲しくてたまらなかった彼女のそこは、ぐちゅりと鳴って彼を呑んだ。 「あぁっっ。ひ。じかた、さぁ・・・〜〜っっ・・・!」 「・・・もっと欲しいか。欲しいなら力抜け、、――・・・っ」 「んぁ・・・っ!」 は電流のような痺れに肩を揺らした。ぶるぶると背中を震わせながらも、 自分の内側を一杯に広げながら迫ってくる土方をずぶずぶと呑み込んで、 ――ぐっ、と奥を突かれて、 「っっ。やぁっ。ぁあ・・・・・・っっ!」 長い髪を振り乱し、シーツが皺になるほど強く掴み、は甲高い声で啼きながらしなやかな肢体を仰け反らせる。 甘い衝撃に身体も頭も支配されてしまって、ぶつけるようにして何度も腰を押し付けてくる土方の動きに逆らえない。 蜜で潤んだその奥に熱を打ちつけられる。打ちつけられても痛くはない。 けれど、男のひとの硬さをお腹の底にぶつけられるたびに息が詰まる。上下に身体を揺さぶられながら行為の激しさを 感じるうちに、自分を攻め立ててくるものの重さと熱さで奥がずくずくと疼き出す。お腹の中をいっぱいにされて苦しい。なのに その苦しさは途方もない快感も生み出すのだ。突かれるたびに感じすぎて気が狂ってしまいそうなくらいに気持ちがよかった。 は悲鳴のような泣き声を上げながら夢中で土方に縋りつく。汗と煙草の匂いが香る胸に震える唇を押し付け、 自分をどこかに浚おうとしている男の動きに身体を委ねた。土方が彼女の中に打ち込むたびに、ず、ず、ずっ、とシーツで背を 擦られる。ぎいっ、ぎしっ、と大きなベッドのスプリングが激しく撓んで波打っている。膝を曲げた状態ではしたなく 開かされた足の爪先が、涙で滲んだ視線の先でふらふらと揺れる。強まっていく快感にぶるぶると痺れて、ぴんと突っ張る。 その先にあるはずの高い天井やクリスタル製の豪奢な照明は、もはや色もかたちも判別できない。 繰り返される激しい抽出を受け止め、意識がまどろんでいくにつれて、目に映るものの輪郭がぼんやりとまどろんで霞んでいく。 斜め上に見えている土方の汗を滲ませた表情すら、強い快楽に溺れかけているにはもう判らなくなっていた。
「おおかみさんとこまったくすり *3」 text by riliri Caramelization 2012/09/20/ ----------------------------------------------------------------------------------- next