「・・・・・――っ」 「きゃ、っっっ」 無言で身体を起こし、脱げかけていた上着から腕を抜く。土方はそれを乱暴にに被せた。 急に降ってきた重みに驚いた彼女は悲鳴を上げたが、構うことなく背を向ける。 あらかじめ抜き取っておいた携帯を開き、普段の不愛想さに輪をかけた声音で応対する。 相手の第一声を聞くなり、きつく締まった眉間をぎゅーっと抑えた。 電話は近藤からだった。 『――トシか?はどうだ、大丈夫だったか?あのよー、例の暴行事件については俺が当たっておくからな、 急いで戻る必要はないぞ!が落ち着くまで好きなだけゆっくりし・・・っい、いやその、今のは別に、深い意味はないぞ、 ・・・・・・っておい山崎ぃ、笑うなって!俺もこらえきれね・・・っっまあそのあれだ、この機会に二人でゆっくりし』 ぎりぎりと歯噛みしていた土方は、まだ近藤が話している最中だというのに ピッ、と通話を打ち切った。携帯から響く二人分のこらえ笑いが癪に障ったのだ。 ・・・・・・・・・・・ああ判っている。あの人なりに気を遣ってくれているのだと、判っているが・・・! 「ひじかたさぁーん。・・・んんー、抱っこぉ」 「・・・・。離れろ、懐いてくんじゃねえ」 けらけらと笑う上機嫌な女に、背中からどんっと飛びつかれる。 華奢でなめらかな手がすりすりと、肌蹴た彼の胸元を探り出す。・・・ああ畜生、こっちはこっちで癪に障る・・・・・! 「やめろ。やめろっつってんだろ!つーかおいっ、状況判ってんのかお前!? 今のてめえは普通じゃねえんだ、軽々しく男に抱きついてくんじゃねえ!こっちにも我慢の限界ってもんが」 「ふふっ。土方さんの服、たばこくさぁーーいぃ。 でもねー、はねー、この匂いすきー。だいすきーー。この匂いがするとねー、ほっとするのー」 「・・・・・。ったく、聞いちゃいねえ・・・」 甘えた口調で可愛いことを言われたせいで、無理に振り払う気が失せる。土方は半端に口籠った。 自分に触れて肌をまさぐる女の手を、不満が爆発する寸前のようなむっとした表情でしばらく眺める。 ――落ち着け。何を流されてんだ、俺ぁ。 どうせこの発言にしたって、薬の効果で飛び出た言葉。の本意から出たものかどうかは怪しい。 それに、薬のせいで発情している女に手を出すのはどうも気が引ける。ここで手を出してみろ、 強姦ではなく和姦たぁいえ、やるこたぁ暴行事件の加害者どもと一つも変わらねーじゃねーか。 などと、彼女に対してはやけに生真面目なところがある土方は苦悩に満ちた表情で思い悩む。隊服と同じ色をした 黒髪をぐしゃぐしゃと歯痒そうに引っ掻き回しながら、以前にが妙な病を患った時のことを思い出した。 はーーーーっ。思い出した途端に出た重苦しい溜め息はやけに長引いた。 ・・・・・・・・いや、ない。ねえったらねえ、あれはねえ。冗談じゃねえ、またあんな目に遭わされたんじゃたまらねぇ。 思い返すだけで嫌になる。子供に戻ったの可愛らしさと大胆さにたった一晩血迷ったせいで、彼はその後一週間、 惚れた女と毎晩同じ布団に寝ているのにその手さえ握れないという、男にとっての生き地獄を味わわされたのである。 まあ、実を言えば、にそんな生殺し地獄を見せられたのはそれが初めてではなかったのだが、 ・・・とはいえあれは酷かった。まったくあの時ときたら、寝不足で倒れなかったのが不思議なくらいの有様だった。 冗談じゃねえ、もう二度と同じ轍など踏むものか。 はっ、と息を吐いた土方はわずかに肩を落とした。切れ長の涼しげな目がじろりとの手を睨む。 ・・・状況はあのときとほぼ同じだ。このままここに居てに手を出さずにいられる自信もない。 であれば、取る行動も自ずと決まってくるというものだ。 土方はおもむろに立ち上がる。やたらとデカいベッドに横座りしている着物が乱れた女を見下ろし、 「――迎えに来るまで風呂でも使って時間を潰せ。夕飯も好きなもんを頼んでいい。 ただし部屋から出るんじゃねえぞ、酔いが醒めるまでは絶対に誰も部屋に入れるな。いいな」 「ぇえ〜〜!」 不満そうに叫ぶから上着を奪い、そこから出した煙草を咥える。 カチカチと荒い手つきでライターを弾いて火を点け、上着を左肩にばさりと掛ける。 外された胸元のボタンを直しながら、土方はホテルの廊下へ繋がるドアへと向かった。いつにも増して 早足でドカドカと上品な焦げ茶色の絨毯を踏み鳴らして歩くうちに、ちっ、と悔し紛れの舌打ちが出る。 近藤を始めとする屯所の奴らが今頃何を噂しているか、それを思うと腹は立つ。しかし、今の電話は ある意味絶妙の助け舟だった。 ――まずはここを離れて頭を冷やす。それから急いで屯所へ戻って、山崎の野郎にガツンと一発―― 「だめー、土方さぁん!帰るな土方ぁぁぁっ、コノヤロー!」 「うっせえ口答えすんな。たまにはしおらしく言うことききやが、――っっ!?」 「や〜〜だぁああ、帰っちゃ、やぁああ!」 と叫びながら走ってきたが彼の背後で高々とジャンプ、ドアを開けようとした土方に体当たりをかまして飛びついて―― * * * * * ――という、土方をさんざん疲労させるすったもんだの顛末が、話の冒頭へと繋がっていくのだが。 薬に酔ったが自ら着物を脱ぎ散らし、それからほんの数分後。彼女のはしゃぎ声と 土方の怒声であれだけ騒々しかった室内は、今やすっかり静まっていた。 室内に漂っている響きはといえば、何かをぶつけられては小刻みに揺れるドアの鈍い音。ざわざわと掠れる 乾いた衣擦れの音。それと―― 「・・・んっ。ん、ふ・・・・・・、っ・・・・・・ぁ、んん、ひ、ひじかた・・・さぁ、」 「馬鹿、声出すな。・・・廊下に届く」 「ん、っ・・・・・・だ、だってぇ・・・・っ」 深く唇を塞がれているの、籠って苦しげな喘ぎ声。時折そこに混ざるのは、息遣いが荒れてきた土方の囁きだ。 ドアに背中を強く押し付けられたは、ブラの外れかけた胸を男の手にゆっくりと揉みしだかれていた。 土方は左腕を腰に回してを抱き締めている。それだけだと身体の力が抜けてきたがへなへなと 座り込んでしまいそうだったので、開き気味にして立っている彼女の脚の間に膝を入れて支えていた。 防音性が高い分厚いドアがたまに揺れを起こすのは、が身じろぎするたびに肩や腰がドアにぶつかるせいだ。 (もうどうなったって知らねえぞ。) そう言い放った途端にブラのホックを外し、弾む膨らみを覆った頼りない布をぐいっと擦り上げた右手は、 緩慢な動きで肌を這う。長くて骨の太い指はたまに気まぐれでも起こしたかのように固く尖った胸の先に触れてくるが、 それは薬の効果に呑まれている今のにとって、とても満足できるような刺激ではなかった。膨らみばかりをやけに 丁寧に捏ね回す手を涙目で恨めしげに見下ろし、は、やだやだ、と腰を捩る。この仕草はさっきから繰り返しっ放しだ。 なのに土方は薄く笑うだけで無視をする。・・・その意味に気づいていないはずがないのに。 「〜〜〜・・・っ。ひ。ひじかた、さぁ・・・っ」 敏感になったそこに触ってほしい。物足りなさで身体の芯がうずうずと痺れて、立っているだけで脚が震える。 おかしい。身体がおかしい。どうしてこんなに、――苦しくって我慢できないくらいに、お腹の奥が火照るんだろう。 ただ胸を弄られているだけなのに、どうしてあたしは、こんなに―― 焦らされるせつなさに喘ぎながら、はぎゅっと閉じた目尻に大粒の雫を浮かべる。長いキスから 解放された途端に、溢れた雫はぽろぽろと赤らんだ頬を転がった。 「・・・何だ。今更やめろってえのは無しだぞ」 「ち、ちがう、とこ、も、・・・・・・・さわって・・・っ」 「どこをだ。言ってみろ」 「・・・っ。や。・・・・・・ぃ、いじわる、しな、でぇ・・・っ」 「言えよ。ほら、欲しがってんのはここじゃねえのか」 「んっ、〜〜〜〜ひぅ・・・っ!」 そう言った土方が手を伸ばしたのは、の胸ではなかった。 胸よりも、お腹よりももっと下――白のショーツで覆われた、足の間だ。 脚は最初から開き気味にしてある。止める間もなく固い指先は触れてきた。身体中のどこよりも 高い熱を持って疼いていたそこを、布地越しにぬるぬると擦られる。 「ち、ちがっ・・・そ、そこ、じゃ・・・っ、やぁ、ぁあっ、」 「違わねぇだろ。・・・ったく、まだ触ってもいねえのにこんなにしやがって」 「え、やぁ、ち、ちが・・・あっ、ああ、んっ、」 下着越しに弱くなぞられられているだけだ。なのにそこは土方の指の動きを敏感に感じ取ってびくびくと疼く。 あ、あ、あぁ、と高くて鋭い声を上げてしまう。 「おい。判るか」 「〜〜・・・っ、・・・ぇ、あ、あっ」 「お前のここだ。なあ、どうなってる。言ってみろ」 「・・・っ。ひぁ・・・や、やだぁ・・・っ」 円を描くようにしてを撫でる長い指は、とろとろした粘液を纏っている。それだけ下着が 濡れているのだと気づいて、は肌を耳まで染めて唇を噛んだ。 そのうちに指の動きが強くなってくる。布越しに割れ目の中を探られるようになった。 「・・・・・・――あぁっ・・・!」 ぐちゅ、と深く潜った中指の先に、触れられただけで身体が痺れてしまう小さな部分を、つん、と突かれる。 触れられたところから電流のような快感がぞくぞくと這って、嬌声をこらえる間もなく背筋を昇り詰める。 ほんの一瞬だが息が詰まって、頭の中が白くなりかけた。 ・・・ほんのちょっとだけ。下着越しに触られただけ。なのにとてつもなく気持ちがよかった。 っっ、とは息を呑む。土方の中指が何度もそこを弾く。白いシャツを纏った腕に抱かれた腰が、がくがくと揺れて、 「っ、あっ、あぁっ、ぁ、ああっっ、・・・ぁああ――・・・っ!」 「馬鹿。声抑えろって言ってんだろ」 土方はからかうような口調で彼女の耳元に囁き、ちゅ、と耳たぶにキスを落とす。 とろとろに濡れたショーツの薄布を撫ででいた指を、つうっと中に潜らせた。 蜜を滴らせたそこはひどく熱い。軽く割れ目を撫でてやれば、ぐちゅりと粘った音が鳴った。 「んん・・・っ!」 口を両手で押さえ、長い髪を振り乱して声をこらえるの泣きそうな表情がひどく可愛い。 土方はもう一度、乱れた髪が張り付いたの耳元に唇を落とす。きつめに吸って紅い跡を残し、 それと同時に、割れ目を撫でていた中指を彼女の中に送り込んだ。ぎゅっ、と彼にしがみついたの声が跳ね上がる。 「あんっ、あぁ、あっ、ああぁっ、・・・・・〜〜〜ぁああ・・・・・・っ!」 指を入れただけで達してしまった女の声に、土方は困ったような苦笑いを浮かべる。幸い、ドア一枚を隔てた廊下には 何の気配も感じられないが。膝を入れて支えていたの脚が、びくびくと震えを起こしながら突っ張る。 じきに脚からは力が抜けていったが、彼にしがみついたままのの快感の波はまだ引いていないらしい。 小さく唇を震わせながら、あ、ぁあ、あ、と短い泣き声をこぼしている。彼女の奥まで埋め込んだ指はそのままに、 土方は小刻みに揺れている胸を鷲掴みにした。赤く色づいたその先を口に含んで舌先で転がし、入れた指でたっぷりと 潤った中を撫でる。とろとろと溢れ出てくる蜜を手のひらに滴らせながら、ぐちゅぐちゅと狭い中を掻き乱す。 はか弱い声で泣きながら腰を揺らす。その細い腰をドアに圧しつけて動けない状態にした。腰が崩れて自力では 立っていられなくなるまで喘がせて、 「・・・。脚上げろ」 か弱い声で泣いていたが蚊の鳴くような声すら出せなくなってきた頃に、潜らせていた中指をずるりと引き抜く。 溢れた蜜を肌に幾筋も伝わせている右の太腿を、曲げた膝が胸に当たるくらいに高く掴み上げる。ぼうっと彼を見上げてくる 濡れた瞳は、情欲ですっかり蕩けきっている。くらくらと揺れるちいさな頭を安心させてやるためにぎゅっと抱き、 涙でしっとりと湿った頬や唇にキスを浴びせながら笑って尋ねた。 「大丈夫か」 「んっ・・・・」 「おい。どうしてほしい」 「・・・・・っ。あ。ぁ。・・・・・もっとぉ。もっと、して・・・っ」 はぁ、はぁ、と吐息を弾ませてはねだった。 ――ところが、与えられたのは瞼に一瞬落とされた軽いキスだけ。 大きな目を見開いて失望の色を浮かべたが、きゅっと唇を噛みしめる。何度もかぶりを振って、 「・・・ち・・・ちが・・・っ」 「どうした。これじゃねえのか。じゃあ、これか」 「やぁ、んっ、そ・・・ゆぅ、の、・・・・・んっ。ひじ・・・た・・・さぁ・・・っ」 違う、と泣きそうな顔でねだったのに、ショーツに手を差し入れられ、さっきと同じように中を弄られる。 かと思えば、半分ずり下がっていたショーツを上げていた右足から引き抜かれた。絨毯敷きの床に跪いた 土方が彼女の膝裏を掴み、右の腿を持ち上げる。熱の上がった秘所を開いてそこに顔を寄せ、指で広げた蜜口を ちろちろと舐めた。弱いところをくちゅくちゅと舌で食まれて、ぶるぶると震えが背筋を走り抜けて、 「ひぁ・・・!ちが、・・・・・・・あっ、はぁ、っっ」 「これも違うのか。なら何だ。言ってみろ」 「っ、あっ、あぁ、ゃぁ・・・っ、だめぇえ・・・っ、そ、れぇ、だめ、〜〜〜〜っあぁ・・・・・・・っ!」 濡れた芽を舐めながら動く唇に、熱い吐息を吹きかけられる。勢いよく押し込まれた指に奥をぐっと突かれた。 毛先が硬い黒髪の頭をぎゅっと抱きしめ、は自分でも驚いてしまうような高い声を上げて達してしまう。 ずるずると、冷たいドアを擦りながらの身体が崩れ落ちる。ぐったりと座り込んでしまった彼女の赤い目は、 それでも土方を見つめて何かを言いたげだった。その表情を眺めた土方が、ふっ、と満足げに微笑んだ。 女の肩を掴んで再び立たせて、さっきと同じように右足を高く上げさせる。ふと悪戯っ気がさしてきて、 土方は上げた太腿の膝裏にの手を添えさせて、「掴んでろ」と言い渡す。 普段なら「やだ、恥ずかしい」と必ず拒まれるはずの恰好をさせているのに、ははぁはぁと 微かな喘ぎ声を漏らすだけで受け入れていた。土方が腰のベルトを緩め、かちゃかちゃと金具が鳴る。 はそんな彼の仕草を熱で溶けかかった瞳でぼんやりと見つめている。 普段の彼女なら決してこんな視線は送ってこない。いつもとは全く違う女の反応を密かに楽しみながら細い腰を抱いて、 上下に大きく開かせた脚の間に熱く滾ったものを宛がう。張りつめた先端をとろとろと蜜をこぼす割れ目に 軽く押し付ける。さっきは指で可愛がった女の中は柔らかく蠢いていて、溜め息が出そうになる熱さだった。 先端でわずかに入口を押し広げると、それだけではああっ、と声を震わせて、ぎゅっと目を瞑り耐えていた。 土方が焦らすような動きで震えるそこを捏ねてやると、そのわずかな動きに合わせてぎこちなく腰をくねらせてくる。 「ぁあ、もぅ、やぁっ・・・、・・・は、はやくぅ・・・・・っ・・・」 頬を真っ赤に染め、泣きそうな顔で、恥じらいながらもは土方を求めてくる。 この淫らな可愛らしさをもっと、ずっと眺めていたい。 そうも思うが、――こいつもどうやらそうらしいが、こっちもそろそろ限界だ。 「――ふぁ・・・・・・・っ!」 「・・・っ。ああ、手ぇ離すんじゃねえ。上げて、ろ、・・・っ」 「ふぇ・・・っ、やぁっ、ひ、ひ、かた、さあ、あ、あっ、あぁあ、っ」 ぐぶ、と先端を蜜口に押し込む。やや乱暴に侵入してきた土方の硬い熱に、 は一気に貫かれた。埋められた衝撃だけで一息に昇り詰めてしまい、びくっと跳ねた裸の腰が 背後のドアにどっとぶつかる。がくがくと揺れて倒れそうになった身体を力強い腕に支えられ、 は萎えてしまった身体をぐったりと彼の胸に預けた。 いつ受け止めても息が止まりそうになる大きなもので埋められていると、それだけで腰の奥が疼いて背筋がしなる。 気が狂いそうなくらい欲しかったものをやっと貰えて、でも、気持ちがよすぎてすぐに意識が飛んでしまいそうだ。 まだ挿れられただけなのに。 ・・・変だ。やっぱりあたしの身体、おかしくなってる。 中から押し出された透明な粘液がとろとろと左の腿を伝っていく。土方の熱や質量を感じただけで腰が砕けて、 片足だけに預けられた体重を支えきれなくなってきた。 土方が半分ほど引き抜き、間髪入れずにぐっと奥を突いてきた。あぁっ、と啼いてふたたび絶頂に達したの手が 膝裏を離れて、上げた太腿が落ちてくる。土方は咄嗟に掴み止めた柔らかさを引き上げ、横へ脚を開かせる。 ドアにぐっと押しつけた。上下に割られた足のせいで、彼を呑みこんだ女の中が縦に広がる。広げられたそこを さらに深く突いた。びくびくと蠢くその入口や濡れた太腿を撫でてやると、は土方の首に腕を回して縋ってくる。 顔を押し付けられたシャツの衿元が少しずつ濡れ始める。斜めに覗き込むと、は声を殺して泣いていた。 それでも男の律動を受け入れ、快楽を求めて自ら腰を揺らそうとする。無理に立たせた左足ががくがくと震えている。 彼女がもう何度達したのか、火照った頭の中が焼き切れそうになっている土方には判らなかった。だが、普段のこいつなら とっくに意識を飛ばしているような状態が続いているのだ。それでも必死に我慢している女の姿が愛おしかったが、 同時にそんな彼女が可哀想にもなり、どうにも複雑で苦い気分が湧いてくる。どこかくすぐったいその感情をもてあまし、 彼は歪めた表情でふっと笑った。 「・・・、辛いか」 「んっ、あ、・・・あぁ、やぁっ・・・、な、なに・・・っ」 「腕、離すな。そのまま抱きついてろ」 「・・・っ!あぁ、だめぇ、これ、・・・・・・っ、おくに、あたっ・・・、っっ、ひぅ・・・・・・っ!」 泣きじゃくる顔に労わるようなキスを落とし、床に突っ張っていた左の太腿も裏側から抱えた。 ぁあんっ、と乱れた泣き声を上げる彼女を繋がったままで持ち上げ、仰け反ったその背中をドアにぎゅっと押しつけ支える。 足が床から離れたは、土方に抱え上げられた不安定な状態で彼を受け入れるしかなくなった。持ち上げられているせいで、 さっきよりもうんと深い場所まで熱い塊が押し込まれるようになった。土方にこじ開けられたそこを、ぐちゅ、ぐちゅ、と 淫猥な音を上げながら責められる。一番奥にぶつけられるたびに甘い痺れが身体中に回って息が詰まる。引き抜かれるたびに せつなくて身悶えしてしまう。ドアと土方に板挟みにされ、ずん、と奥に強くぶつけられる。それを何度も繰り返されると 深く穿たれる快感で頭の中まで痺れてくる。涙で滲んだ視界が何度も何度も白く染まり、抱きかかえられた足の爪先が しなって跳ねる。ドア越しに廊下を行く人の気配を感じられるようなところで土方を受け入れ、淫らな恰好で喘いでいる。 そんな泣きたくなるような恥ずかしさすら、こうして土方に抱きしめられ、これ以上ないくらいに深く繋がれば忘れてしまう。 腰が冷たいドアにぐっ、ぐっ、と何度も押し付けられる。ドアはと一緒に土方の衝動を受け止めて、 鈍く小刻みに震えている。蕩けた秘所からつうっと垂れた雫が腰を流れてドアまで伝い、新しく溢れた涙が頬を伝った。 すでに頭の中は真っ白で。・・・なのに欲しい。 こんなはしたない自分は死にたいくらい恥ずかしいのに、すごく欲しい。もっと、もっと、土方さんが―― 「はぁ・・・・・、んっ、ひ、ひ・・・かた、さ・・・・・っ」 涙目で見上げて必死に顎を上げ、は土方と唇を重ねようとする。触れるか触れないかのところで土方の唇が 静かに笑う。その瞬間、は硬く張りつめた先端に強く突き上げられた。 「――ひっっ、・・・〜〜〜〜〜ぁあぁ―――っっ!」 どっ、と激しくドアが揺れる。 泣きすぎて喉が嗄れてしまったのか、掠れた声をホテルの一室に振り撒きながらが仰け反る。きゅう、っと 心地よく締め付けてくる彼女を壊れそうなくらいに強く抱き、土方はすべてを放つ。 下腹に広がっていく熱の気持ちよさにまた全身が痺れて、は言葉にならない声を漏らしながらぶるぶると震える。 土方はそのまま床に腰を下ろして彼女から引き抜いたが、それでもの震えが止まらない。 汗と粘液に濡れてぐったりしている華奢な裸身をゆっくりと撫でる。宥めるように耳元にささやく。 「おい。大丈夫か」 「・・・・・・・っ、はぁ、・・・っ、・・・・・・・・・・・・じゃ、なぁいぃ・・・っ」 「もう降参か。嫌ならやめるが」 「・・・・・・、やぁ・・・もっとぉ。もっと、・・・・・・・・ほし・・・っ」 掠れ声で答えた女の顔はひどく恥ずかしそうで、今にも泣きそうに曇っている。けれど、瞳に灯った情欲の色は醒めていない。 あぁ、と頷いた土方がいつになく優しげな目をして笑う。短いキスを繰り返した後、はドアに向き合わされた。 えっ、とつぶやいた瞬間に後ろから抱きしめられる。柔らかく分厚い焦げ茶色の絨毯に膝を立て、 尻を突き出すような格好にされた。腕を掴まれ、ドアに手を押し付けるように誘導される。腰のくびれを 大きな手に左右から抑えられる。ぐちゅ、と自分の中心で水音が鳴る。濡れたままの熱い場所に、 さっき以上に張りつめた塊を捻じ込まれた。 ゆっくりと拓いて奥まで押し入ってくる土方を、ドアに顔を摺り寄せて喘ぐは拒む間もなくて―― 「〜〜〜っ!ぁっ、やらぁ、ふあ、あぁっ、ここじゃ、だめぇ・・・っ!」 声、聞こえちゃう。 涙声でそう訴えても、土方が動きを止めることはない。崩れ落ちそうになる腰を何度も持ち上げられ、 まるで抉るように激しく貪られる。奥をずん、ずん、と何度も突かれ、ずるりと半分引き抜かれたかと思えば、 他のどこを刺激されるよりも感じてしまうところを念入りに往復された。あ、あ、あっ、と悲鳴のような いやらしい声が止まらなくなる。だけど、声を上げていないと頭がおかしくなってしまいそうだった。 、と後ろから抱きしめてきた土方が何度も囁く。意識まで蕩けそうになる吐息交じりの低い声を、 何度も耳に注がれた。そのうちに、最初は拒んでいたの腰が自分からゆるゆると揺れるようになった。 後ろから伸びてきた手に胸を揉みしだかれ、溢れ続ける蜜に濡れた小さな芽を撫でられるうちに 彼女は自然と快楽に溺れていった。気持ちがよすぎて頭の中がくらくらする。自分の声が廊下に届く心配すら忘れて 泣いていると、大きな手に唇を柔らかく塞がれる。手のひらに籠った咽び声を押し付けて泣いていたは、 土方が彼女のうなじに口づけると、真っ白な背筋をびくびくとしならせた。 普段なら決して言わない言葉を、煙草の匂いが染みついた手に強く押し付ける。 「・・・・・あ、あぁ、いぃ、っ。きもち、い、・・・・・っ」 それを聞き取った土方は表情こそあまり変えなかったが、どことなく嬉しそうに目を細めた。 ああ、と短くつぶやいて、自分の動きに合わせて揺れている淡い色のうなじにもう一度唇を落とす。 ビルが立ち並ぶ茜色の夕景が大きな窓越しに広がる室内に、 じゅぷ、じゅぷ、と濁った音が鳴り続ける。はそのまま、土方が果てるまで貪られ続けた。

「おおかみさんとこまったくすり *2」 text by riliri Caramelization 2012/09/08/ -----------------------------------------------------------------------------------       next