「・・・な。これ、も一口くれー味見しとけば」
息が苦しくなるくらい長いキスからやっと解放された後で、火照った目つきになった銀ちゃんにそう言われた。
はぁ、はぁ、と肩で息をしながら濡れた唇を少しだけ開く。唇の隙間から割り込んできた指を受け入れると、ちゅぷ、口の中で音が鳴った。
舌を撫でるみたいにして捻じ込まれた指には、真っ白な生クリームがたっぷり纏わりついてる。
お砂糖控えめ、甘さ控えめに泡立てたはずのクリームはなぜか頭の芯が痺れそうな甘さで、クリームの甘さと銀ちゃんの指の動きに酔って
頭がぼうっとしてしまう。いつのまにか銀ちゃんの手をきゅっと握って、舌や歯列をなぞってくる指先に自分から舌を這わせてた。
「んふ・・・ぅ、」
「。もっと舐めて」
銀ちゃんが笑い混じりに言って、曲げた指先で口の中をぐるりと撫でる。感じやすい奥のほうまで撫でられて、背中や肩がぞくっとした。
んっ、と口の中でかすかに喘いで、言われるままに指先を舐める。
クリームがすっかり溶けて消えてしまっても、奥まで差し込まれた長い指を舌をぜんぶ使ってぴちゃぴちゃ撫でる。喉が詰まって苦しいけど、
顔を上げて銀ちゃんを見たら嬉しそうに目を細めてたから、息が出来ない苦しさなんてすぐに忘れた。上手い上手い、って髪を撫でてくれる仕草が
柔らかくてうっとりする。
・・・これって、あれみたい。やってあげると銀ちゃんがすごく喜ぶあれみたい。今のあたし、きっと変な顔してるよね。…恥ずかしい。
でも、銀ちゃんに喜んでもらえてるって思うと、そんな恥ずかしさも霞んでしまう。
「――うまそーに舐めるよなぁ。そんなうめーの、俺の指」
「ん・・・っ。おぃ、ひ・・・・」
「ん。よく出来ましたぁ。じゃあ俺も食っていい」
あたしの口から指を抜くと、銀ちゃんはテーブルに腕を伸ばす。残りのケーキをぐちゃ、と掴んだ。手の中でほろりと崩れたケーキを、
ぴちゃ、とあたしの左胸に押し付ける。生クリームの冷たさで身体が竦んで、ひぁ、と
甲高い声が飛び出た。ずるり、と下へ流れるみたいに銀ちゃんの手が動く。身体を斜めに走っていった手の感触とクリームの冷たさにびっくりして、
全身がびくんと震え上がる。何も身に着けてないあたしの胸からお腹に描かれた、真っ白で長いクリームの曲線。塗りたくられた
やわらかくて微妙な感触が、あっというまに融け出していく。体温でとろとろに溶けていく。じわじわと肌に染み込んでくるやわらかさと甘い匂いを、
熱が上がってぼうっとしてる頭の隅で感じていたら、
「――んっ。・・・あぁ。銀、ちゃぁ・・・っっ」
左の胸を覆っていたクリームの波を撫で回しながら、銀ちゃんが腰を落としてくる。男の人が乗った重みでお腹がソファにぐっと沈む。
うっすらと笑いながら近づいてきた唇が首筋を舌先でつうっと撫で下ろして、胸元まで這って降りていく。ふ、と息を吹きかけられた胸の先が、
熱くて濡れた感触で覆われる。溶けかかった生クリームとあたしの肌を、ちゅう、と大きな音を立てて吸った。
「ひゃあ・・・ぁぅ・・・ん、っ」
「あ。美味ぇ。とろっとろ」
「ぅ、やぁ・・・っ、そんな、吸っちゃ、やぁっ」
「いやじゃねーだろ。すげぇ感じてんじゃん、ここ」
「あっ、めえぇ、っっ。ふぇえ・・・っ」
きつめに吸われたとたんに固くなったところを、ぺろぺろと弱めに舐め回される。
もう片方の胸の先も摘まれて、指先でくにゅくにゅ転がされて、
「あっ、やらぁ、やぁんっ。・・・も、そこ、やぁ。銀ちゃ、ぁあ、」
「な。他にも塗っていい。耳とか太腿とかあそことか、の弱えーとこ食っていい」
「っっ、やぁ・・・っ。だめぇ、むりぃ、」
「ぇえええぇぇ。っだよぉ、今日は好きなだけ食わせてくれんだろぉ、いつもより大胆でえっちなちゃんをぉ」
「ぇ、えっち、って、・・・な、こと、ゆって、な、 ――あっ。ぁあん・・・っ」
半笑いで拗ねたふりをする銀ちゃんが尖ったところを甘噛みするから、腰がびくびく震えてしまう。最後に左胸を舌で丸く撫で上げると、
よっ、とソファに腕を突いて上半身を起こす。着物の下に着てる黒い服を、両腕を上げてがばっと豪快に脱いだ。
引き締まった裸の胸が目に飛び込んできて、あたしはふいっと目を逸らした。銀ちゃんの裸なんて何度も何度も見てるのに、
この瞬間は必ず目を逸らしちゃう。だって、何度見てもまるで初めて目にしたみたいにドキドキする。いつだって顔が赤くなるからすごく困る。
「――。ははっ、なにお前、その顔ぉ。真っ赤っ赤なんだけど」
「・・・なっ。ゎわ、笑わないで、よぅっ・・・」
「んぁー、どーすっかなぁ。そっちも熟れた苺みてぇでうまそーだけどー、・・・融けちまうからなー。先にこっち食っとくか」
「っっ。はぁ、・・・っ・・・・」
耳までぽーっと火照らせたあたしの反応ににやにやしていた銀ちゃんは、じれったいくらい丁寧にクリームの波を舐めつくしていった。
舐めながら空いた手で肌を撫で回して、下へ下へと身体をずらして降りていく。舐めながらたまにちくりと噛みついてくるから、
お腹や胸に生々しい色味の赤いしるしがぽつぽつ浮き上がってくる。
・・・これ、苺と同じ色だ。
まるで夢の中にいるような気分でそんなことを思った。熱い舌にぺろぺろされる感触と、唾液に濡らされた後の肌の冷たさ。
温度が違いすぎる両方の感覚に身じろぎする。あたしの身体まで生クリームみたいに蕩けちゃいそうだ。肌に当たる銀ちゃんの髪の先と、
ざらざらした舌の熱さがくすぐったくて、でもそのくすぐったさにも感じてしまう。とろとろになったクリームと一緒に肌を吸われるたびに、
弱い痺れがお腹にどんどん溜まっていく。もぞもぞと腰が捻じれる。
「〜〜〜・・・っっ。ぎ、銀ちゃぁ・・・っ」
「・・・なぁこれ、ほんとにケーキ食ってるみてーな。お前、苺の香りするし」
すげぇ甘い。
ぽつりとつぶやいた銀ちゃんの声は、まるでうわごとみたいにぼんやりしてる。はぁ、と漏らした溜め息が熱く肌に染みてくる。
熱くて骨太な手のひらが膝から太腿へざわりと滑って、内側のやわらかいところまで侵入された。
それだけで背筋がぞくっとする。んぅっ、と唇を噛みしめてのけぞって、脚の爪先まで
張りつめさせて声をこらえた。ふわふわした髪を掴んで引っ張る。それでも銀ちゃんは顔を上げない。ぞくぞくっと肌をざわつかせる舌の動きが止まらない。
あたしを舐めるのに夢中になってるんだ。肌に当たる息遣いの荒さに気づいて、熱くなった胸の中がきゅんとした。
「・・・やっべえ。なんか癖になりそーだわ、これ」
「っ・・・!」
ぐい、と太腿を左右に引かれる。ぐちゅり。
顔を寄せてきた銀ちゃんの舌が濡れたところに当てられて、尖らせた舌先で深く潜られてしまって、
「ふぁあんっ。やぁ、そこ、っ、あぁっ、ゃあっ、〜〜やぁぁっ・・・!」
狭い入口を舌で押し広げるみたいにして埋められた。広げられたそこがずくずく疼いて、腰が奥までじんじん痺れて、
とろとろした熱いのが流れ出てくる。うんと伸ばされたやわらかさは、中を押し広げながら蠢いてる。逃げかけた腰を押さえられて、
脚をぐっと開かされる。はぁっ、と苦しそうに唸った銀ちゃんの唇が、むしゃぶりつくみたいにしてあたしを食べた。
くちゅくちゅ撫でられてじゅるじゅると吸われて、ぞくぞくして震えが止まらない。
「ぁんっ、ああっ、ぎ、ちゃ、いれちゃ、や・・・・・・っ!」
「ん。だってここまで流れてっから。の体温で溶けてっから」
「や、めぇっ。・・・んな、しな、で、い・・・っ、」
「んだよぉ、が言ったんじゃん。俺が好きなだけ食っていーって」
もっと食わせて、って言いながら銀ちゃんの指が潜ってきた。
舌を入れられて広がったところのすぐ上まで滑っていって、粘液を被ってる小さな膨らみをきゅうと摘まんで、
「っあ・・・!ぎ、やぁ、ひ、はぁんっ、あっ、あ、あ、あぁっ、ああぁっっ」
やわらかい手つきでくちゅくちゅとそこを揉まれて、甘ったるく蕩けた声が止まらなくなる。
捏ねたり爪先で弾いたり、いろんな刺激を与えて苛めてくる指のせいでびくびくと腰が跳ね上がる。
中で蠢いてる舌先に、感じやすいところを往復してぬるぬると撫でられる。
っっ、と息を詰めて身体を捩った。
――だめ、きちゃう。頭がおかしくなりそうなあの感じがぞくぞくと背中を駆けていって、
「あっ、やぁっ、〜〜〜ぁああ――・・・っ!」
涙でぼやけた視界が真っ白になる。息ができない。全身を強い痺れが突き抜けていく。
跳ね上がった足先がぴんと突っ張る。銀ちゃんにしがみついてこらえても、身体の震えが止まらない。
へなへなと脱力していく腰や脚を宥めるみたいに撫でられてるうちに、銀ちゃんの舌がずるりと抜け出る。
抜け出たそこからとろとろと流れ出る熱をあたしの肌になすりつけながら、
「・・・すげぇ。止まんねーな、腿までとろっとろじゃん。そんなに気持ちよかったんだ」
「っ、はぁっ、・・・はぁ、・・・・・っ、ぎ、ちゃ・・・ぁ」
「な。俺のことも気持ちよくして」
「ぁ・・・っ!」
だらしなく開きっ放しになってた脚を両脇に抱え込まれて、腰がふっと宙に浮く。
ソファに膝立ちになった銀ちゃんに下半身ごと持ち上げられてた。熱くなった身体の中心に、固くなったものを宛がわれる。
それはあたしに触れた途端にびくんと跳ねて、濡れたところをぬるりと滑って撫で上げて、
「ぅう・・・!」
そんな弱い刺激にも感じてしまう。身体の芯がびくびく疼く。爪先にきゅうっと力が籠る。
ぶんぶん大きくかぶりを振って、口を押さえて喘ぎ声をこらえた。
「ふぇえ・・・っ。ぎ。ぎ、ちゃぁ・・・」
「――。ほら。見て。のここに挿れてやるから、俺のこといっぱい食べて」
「・・・〜〜っ」
やだ。ばか。そんなはずかしいこと言わないでよ。そう言いたかったけど息が上がっちゃって、震えた喘ぎ声しか出てこない。
こめかみに汗を垂らしはじめた銀ちゃんと目が合う。天井の灯りを背にして影が落ちた顔は、口端をかすかに上げて笑ってる。
気だるげな目つきの奥に潜んでる色は、銀ちゃんがあたしを欲しがってるときに見せる色だ。そんな表情を目にしたら、
火照りきった身体がきゅんと疼いた。
押し付けられた固い先があたしを擦る。潤んだそこにやんわりした動きで上下させて、すこしずつ、すこしずつ開こうとしてる。
腰を高く上げられたせいでその様子が丸見えだ。あわてて顔を逸らそうとしたけど、ずぶ、と籠った水音が鳴って、
「――あっっっ」
「・・・なぁ。見えてんだろ。入ってくだろ。のやらしいとこに、俺のが」
「っあ・・・・・!」
張りつめた硬さがめり込んでくる。狭いところを思いきり広げられて、
「っっぅ、ぎ、っ、あっ、ああっ、」
入口を広げた大きさに鈍い快感を感じる間もないまま、銀ちゃんが入ってくる。
両手でお尻を掴まれてぐんと引き寄せられて、きゅうっと縮んでる中を進んできた熱でぐぶぐぶと割られる。
ぐっと腰を押し付けてきた銀ちゃんの動きに、ずん、とお腹の底を抉られて――
「――ぁああぁ〜〜っ」
「・・・。俺にものこと食わせて。俺が腹一杯になるまで、たっぷり、・・・な、っっ」
「っっ!ぁあんっ!」
何をされているのかもわからない間に全身が痺れて息が詰まって、甲高い声を上げてしまう。
お尻をぎゅっと握りしめられて、ぐいっと引き下げられて、押し付けられた熱がずるっと抜け出て、
全部出ていく手前でまた引き寄せられて、奥までずぶりと突き上げられる。ソファに寝かされたままの背中や後ろ頭を、
ずっ、ずっ、と上下に引きずられながら、腰が浮いてるせいで力が入らない身体を銀ちゃんの好きなように揺り動かされた。
お腹の底に重い衝撃をぶつけられるたびに息が止まりそう。
「あ、あっ、あぁっ、っひ、いっ、」
「ぁあ、わりぃ。苦しぃ?・・・・・・けど、ごめんな、・・・ははっ、止まんねぇ・・・っ」
「ゃあんっ、ぁっ、あっ、ああっ」
――くるしい。こんなに強いのを何度も何度も繰り返されると、そのうちにお腹が破れちゃいそう。でも、銀ちゃんを感じてるそこが
蕩けそうに熱い。大きく揺らされて突き上げられて苦しいのに、すごく気持ちがよくて。あたしを好き勝手に貫いてる動きに全身を委ねて揺らされてると、
あたしの全部が銀ちゃんの激しさに呑み込まれちゃいそうで。まるで銀ちゃんとひとつになって融け合っていくみたいで、その感覚がすごく気持ちいい。
せつなくって熱くてくるしいのに、泣きたいくらいしあわせで、うれしい――。
「ああぁっっ、ぎ・・・ちゃぁっ、」
ぽた、ぽた、とぬるい汗のしずくを垂らしてくる顔を、涙が膜を張った目で見上げる。震える手を頑張って伸ばして、ふわふわした頭を
ぎゅうっと抱いて引き寄せた。、と呼びかけてくれた唇が胸に吸いついてくる。固くなった先をかりっと齧られて、甘い痺れが全身に広がる。
感じすぎてこらえきれなくて、大きな声を上げて腰を捩った。
「っあぁん、あ、あ、あ、あぁあっ、」
「っ、・・・ははっ、だめだろ、これぇ。お前のナカ、気持ちよすぎ。これじゃ我慢できねぇって・・・っ」
背中を震わせながら唇を噛みしめてうめいた銀ちゃんが、あたしの胸を両側から挟んでぎゅっと寄せる。
そこに顔をむにむにと押し付けて、指先で固くなったところを転がしながら、
「。もこれ、きもちいーの。なぁ。教えて」
「あっ、あっ、やぁあっ。・・・・・・・・・・も、ち、ひぃ・・・っ」
呂律が回らない唇を震わせながらこくこく頷く。銀ちゃんはあたしにずんずん押し付ける動きを繰り返しながら、悪戯っぽくにやりと笑った。
「あのよー。いつもそーやって素直に言ってくれっと、銀さんすげー嬉しーんだけど」
「〜〜〜っ。ふぁ、や、らぁっ・・・そん、な、無、理ぃっ」
「ちぇっ。・・・・・・はは、まぁいっか」
素直じゃねーツンツンも好きだし、俺。
汗に濡れた顔を近づけてきた銀ちゃんの、すこし歪んだ色っぽい表情に見蕩れてしまう。
お尻や背中にぴったりくっついた肌がすごく熱い。どこも汗でじんわり濡れている。おでこの汗に濡れて少し癖が落ちた前髪に手を伸ばして、
震える指でなでなでした。普段は憎たらしいひねくれ者の銀ちゃんが、こうして見るとあたしに甘えてるみたいでなんだか可愛い。
「な。。・・・・・・もーひとつ。銀さんのお願い、聞いてくんね」
「ぅ・・・ん・・・?」
なんだか言いにくそうな顔になった銀ちゃんに、こしょこしょ、と小さく耳打ちされる。あたしはおもわず目を見張った。
テレビからのざわめきが部屋の空気を揺らしてる。はぁっ、はぁっ、と耳元で乱れて弾んでる息遣いが、あたしのそれと重なって部屋中に響く。
銀ちゃんの目を見て少しだけ考えてから、ゆっくり口を開いた。
「・・・ぅん。今日は。今日だけ。・・・いい、よ・・・?」
――信じられない。自分で自分が信じられない。
顔を赤く染めながらうんと小さい声で答えて、さっきも思ったことをもう一度思った。銀ちゃんの「お願い」は、いつもなら絶対に受け入れられないお願いで。いつものあたしだったら、
「ばかばかっ、ありえないぃ!」って銀ちゃんをぽかぽか叩いちゃうレベルの、大胆すぎるお願いで。
・・・でも、今夜は。
――銀ちゃんにいっぱい気持ちよくしてもらったせいで、あたしも大胆になってるのかもしれないけど――それがすごく自然なことみたいに思えた。
それでいいんだって、自然に思えた。・・・自分でもすごく不思議だけど。
「・・・・・・・・・・。ん。じゃあ、今日だけ、な」
「うん・・・」
こくん、と大きく頷いて答える。眉がきつめに寄ったしんどそうな笑顔がふっと和らいで、ちゅ、と瞼にキスを落としてくれる。
続けて二回、三回。じゃれつくみたいなキスを繰り返した銀ちゃんは、最後に唇を深く塞いだ。絡められた舌がくちゅくちゅとやわらかく動いて、
気持ちよくってとろんと瞼が降りてくる。背中に腕を回して抱きついたら、銀ちゃんが口の中でぽつりとつぶやいた。
――すごく短い言葉だった。
すごく短くて、さっき舐めたケーキのクリームよりももっと甘くて。あたしが一番嬉しくなっちゃう言葉。
「んっ。、――っ」
「あっっ。銀ちゃ、ん、あぁ、ぁぁあんっ、あっ、あぁあぁ・・・っ!」
ぐちゅ。ぐちゅ、と濡れた音を立てている中をずんずん激しく突き上げられて、テレビの音も聞こえなくなる。
ぎゅっと閉じた瞼の端から涙が溢れる。こんなに激しくされてるのに、奥を突かれると息もつけないほど苦しいのに、
怖さや苦しさよりも嬉しさや気持ちよさのほうが大きかった。
がつがつとぶつけられる銀ちゃんの熱いのが、びくびく、って脈打ちながら大きさを増す。あたしの中をめいっぱいに広げながら張りつめていく。
、、って繰り返し呼んでくる掠れて色っぽい男の人の声で、頭の中が埋められていっぱいになる。身体中のぜんぶを
銀ちゃんで埋められたみたいな錯覚が起きて、そこをずんって突かれたら、きゅうっとお腹が締めつけられて。
「っあ・・・、っっ。好き、、っ」
「〜〜〜ひぁ・・・っ。ぎ、ちゃぁ、すきぃ。すき、〜〜〜っ」
「っあぁっ、〜〜・・・っ。んだよ、もお、お前さぁ、だめだって、・・っ」
くっっ、って低くうめいた銀ちゃんの動きが止まる。背中がぶるりと大きく震え上がる。ぎゅーっとあたしを抱き締めて、
くくっ、て喉の奥で押し殺した声で笑ってた。息切れしてる唇をほっぺたに押し付けてきて、どっ、とあたしの奥まで押し込んで埋める。
「〜〜〜っあぁんっっ」
「お前、やっぱ、変だわ、今日。・・・や、そーいうも好きだけど。めちゃめちゃ、かわいぃ、けどっっ」
「やぁ、も、やらぁ、き、ちゃ、うぅっ、・・・ぁああ〜〜〜っっ!」
力が籠った脚が銀ちゃんの背中に絡みついて、ぶるっと震えた全身が大きく反りかえる。痺れきった身体の芯から頭を真っ白にしちゃうあの感じが
溢れてきて、銀ちゃんをきゅうっと締めつけながら背中をびくびく震わせてイってしまう。それでも銀ちゃんはやめてくれないから、
もう自分がどこをどうされているのかもわからなくなりそうだ。膝を掴まれて、ぐい、と腰を引き上げられる。そこへのしかかってきた銀ちゃんは、あたしを深く折り曲げた。
銀ちゃんの下で小さく丸めるみたいな格好にされて、両方の脚の膝が顔の横にくっつく。ぐちゅり、と滑り込んできた二本の指で、
ぷっくり膨らんだ小さな芽をめちゃくちゃに弄られた。ひぁぁっ、と叫んで、背中がしなって、
痺れが強すぎて意識がふっつり切れそうになって、
「〜〜っぁ、ああっ、ぎん、ちゃ、っ」
「――っっ。、も、イく・・・っ。出して、いぃ、」
「ぅ、んっ。銀ちゃ、ぎ、っっ、あぁ・・・・・・っっっ!」
「ん、――っっ、」
ぱん、ぱんっ、と何度もあたしに打ちつけてから、眉を寄せた銀ちゃんが唇を噛む。唇から洩れるせつなそうな声。
苦しそうで汗まみれな表情に手を伸ばすと、奥に捻じ込むみたいにしてぎゅうっと、限界まで強く押し込まれて――
「〜〜〜〜っあぁっ。ああぁっ・・・!!」
どくんっ、と大きく脈を打って弾ける。火照りきったあたしの中よりも高い熱が流れ込んでくる。
お腹の奥まで押し寄せてくる。身体が壊れそうなくらい強くぶつけられた快感まで洗い流して、新しい快感に塗り替えて広がっていく。
銀ちゃんの背中に絡みつかせてた脚がぴんとしなる。腰から伝わってきた強い痺れをどこにも逃がせなくて、ぶるぶると爪先が震えた。
「――銀ちゃぁ・・・・・っ。あつぃ・・・ あつぃ、よぅ。あ・・・いぃ・・・・・っ」
気持ち良すぎてわけがわからなくなって、かぶりを振ってうわごとみたいに言い続ける。
しばらく涙と震えが止まらなかった。
「・・・ー。ちゃーん。なぁーんかお前目がうつろになってっけど、大丈夫ー?」
「・・・・・・・・・・・っ。・・・ん・・・」
大丈夫、って返事するかわりに、涙でふやけた目を向けてこくんと頷く。
上がりきった呼吸が落ち着いてきて、あたしの震えが止まってから、ようやく銀ちゃんは身体を離して引き抜いた。ずるりと抜かれたら
あっと声が出て、びくん、と身体が震え上がって。お腹の奥で変なかんじがして、とろとろと白っぽいのが溢れ出てきた。
あたしの太腿の間から銀ちゃんの脚を伝ってソファにぽたぽたとこぼれて染みていくところを、
抱き起こされながらぼうっと眺める。
熱が上がったせいでまだよく回らない頭に、ぽつり、と言葉が浮かんできた。
「すごぉい・・・・・銀ちゃんの、いっぱぃ、出てくる・・・」
ぼーっとした顔で首を傾げながら、ソファの青い座面をしげしげ眺める。
その言葉はあたしにとってはすごーく素朴な驚きというか、なんとなく口にした感想でしかなかったんだけど――
「いや違げーだろ。だーめだって」
「ふぇ・・・?」
「あーあー、っだよぉ、何で今?んなこと今頃言われてもよー、遅せーんだって」
すっとぼけた声が呆れ気味に言う。涙で濡れてたほっぺたをごしごしっと、むにむにっと擦って拭ってくれた。
銀ちゃん的には労わってくれてるんだろーから嬉しいけど、ちょっと痛いなぁ。…なんて思いながら頭の真上にある顔を見上げて、
「・・・遅いって何が?ていうかここでダメ出しされる意味がわかんないんだけど」
「違げーだろぉタイミングがぁ、そーいうえろい台詞は俺がイった直後に言ってくんねーと。ナカ出しされてイっちゃった直後のえっろい顔で
『あぁんらめえぇん銀ちゃんすっっごぉおおいぃっ、出てるぅ、いっぱい出てるうぅっ』ってよー、あんあん啼きながら言ってくんねーとぉ」
「言わないから。そんなエロゲの中でしかありえないよーなせりふ絶対言わないからっっ」
「ぃよぉーし、んじゃーさっそく復習な!最初っからもっかいな!」
「やだ。絶対言わないからそんなこと。銀ちゃん一人で自作自演してたらいーじゃん。えっちなビデオ見てあれしてるときに
自分で言えばいーじゃんっっ」
「っだよじゃあいーよ、お前の手は借りねーよ。俺がテレビの前でシコシコやってる横で「ぁあんらめぇ銀ちゃんすっごおぉいぃ」って
やらしー声でよがっててくれればそれでいーから!」
「〜〜っ、なにそれ、ばっっっかじゃないの!」
ちゅーしようとして迫ってくるしまりのない顔を、両手でぎゅーぎゅー押し返す。
ああもう、何かいろいろと台無しだ。こんな時でも銀ちゃんはとことん銀ちゃんだ。
ばかばか、ってべしべし叩いてるうちに身体を羽交い絞めにされた。あたしからもぎゅっと抱きついて、
二人で抱きしめ合ったままで背もたれにどさりと倒れ込む。
銀ちゃんの腕の中で頭や背中を撫でてもらって、キスしてもらって、ごろごろ喉を鳴らして喜んでる猫みたいな気分になってぼうっと顔を赤くしてたら、
胸を撫でていた手がお腹にそろそろと伸びていった。濡れた肌を広げた手のひらが覆って、円を描くみたいにして撫で回す。
大事そうに触れてくれるその仕草を見ていたら、自然とあたしの顔もほころんでくる。すると、それまでだるそうな顔してた銀ちゃんは急に神妙な
顔つきになった。ぎゅーっと眉が寄った半目があたしのお腹を穴が開きそうなくらいガン見して、いつもはゆるゆるにだらけてる口元が妙に引き締まる。
・・・なに、その変な顔。いったい何考えてるんだろ。あたしが腕を引っ張ってもこっちを見ようとしないから、どーしたんだろ、なんて不思議に思ってたら。
「・・・明日からちょっくら腰入れて仕事探すかぁ。ばりばり稼いで金溜めねーとなー」
ぼりぼり首を描きながらむず痒そーな顔して、はーっ、と脱力したみたいに肩を落とす。
そんな銀ちゃんを声もなく見上げたあたしは、へ、と間抜けにうめいて目が点になった。
へ、ってもう一度繰り返す。急に力が抜けた口がかぱーっと、大げさなくらい大きく開いて、
「・・・・・・・・・・・・・・・・ぎ。・・・銀、ちゃん、・・・・・・?」
「ん。なに」
「・・・・・・ちょ。え、なに、今の。ひょっとしてあたしの空耳?まさかの幻聴?」
「はぁ?」
「・・・ばりばり稼ぐって誰が。まさかとは思うけど、・・・・・・銀ちゃんが・・・?」
「たりめーじゃん俺しかいねーだろぉ、うちの構成員を考えろよ。食欲に本能を乗っ取られた大喰らいのガキと、
メガネに本体乗っ取られた半人前のガキだよ?俺以外に誰がいるってんだよ」
口を尖らせてぶつくさと言われて、ぶるっ、と激しく肩が揺れた。銀ちゃんは相変わらずむず痒そうな顔してこっちをチラ見してるけど、
聞いたこっちはもう無理、ぜったい無理。・・・だってがまんできないよ!
お腹の奥でぎりぎりまでこらえてたおかしさが、一気に臨界点を突き抜ける。
次の瞬間、ぷぷ―――っっっ、と思いっきり吹き出してじたばたじたばた。
自分が裸なこともすっかり忘れて、はしたなく脚を振り上げてじたばたじたばた。ああ痛い、痛いよぅっ、お腹痛いぃぃ!
抱えたお腹が文字通りよじれそうなくらいのた打ち回ってけらけら笑ってたら、それまでずっとぽかんとしてた銀ちゃんが「へっ」とうめいた。
なんだか焦った顔になって、わなわな口を震わせてる。…かと思ったらいきなりむすっとして、肩をむぎゅっと掴まれた。
笑いすぎて怒らせちゃったかな、と思って顔色を窺ってみたら、
――あ、違った。よく見るとちょっとだけ涙目だ。
「いや、いやいやいやいやいや!待ってちゃんちょーっと待って、
落ち着いてよーーーーく考えてみて!笑うとこ?ここ笑うとこ!?銀さんめずらしくマジだったのにいぃぃ!!」
「だ、だってえぇぇ。ふふっ、やだぁやめてよぉ〜〜。それっておもいっきり死亡フラグじゃんっ」
「はぁ!?いやいや違う、違げーって!フラグはフラグでも違うフラグを立てたかったの俺はっっっ。
しかもお前何だよそのいい笑顔っ、っだよぉぉとびっきり嬉しそーじゃねーかよコノヤローーー!!!」
「しょーがないじゃん、ばりばり稼ぐとか似合いもしないこと言うからだよー。
やめてよ迷惑だよ、もし異常気象とか天変地異とか起きたらどーするの」
縁起でもないこと言わないでよ。
笑いすぎたせいでじんわり浮かんだ涙を指で押さえながら、わざと目を覗き込んで尋ねてみた。
「ところで銀ちゃん、違うフラグって何のフラグ立てるつもりだったの。ね、教えて」
「・・・・・・・・。いや、あのよー。そこまで真正面から来られると言いづれーっつーか、・・・・・・尻込みしちまうっつーかぁぁ・・・」
や、もーいい。もーいいわ、もー終わりなこの話。また今度な。
しれっと目を逸らした銀ちゃんが、ぼりぼり首を嗅ぎながらばつが悪そうにごにょごにょ漏らす。あたしを抱っこしたまま腕を伸ばして、
放置プレイされてたいちごのケーキを素手でわしっと豪快に掴む。ものすごい勢いでがつがつとむしゃむしゃと食べ始めた。
あぁもぅまた手掴みだよ、お行儀悪い、・・・なんてことも思うんだけど。
ちぇーっ、フラグへし折られたぁっ、っだよもぉ、あー畜生っ、…なんてつまんなさそうにぼやきながら自棄食いしてる銀ちゃんを、にこにこと眺める。
口元にべたべたくっついてるクリームを、とろんと指先で掬い上げる。ぱくんと咥えた真っ白なやわらかさは、蕩けそうに甘いしあわせの味だ。
――わかってないなぁ、銀ちゃんてば。
お誕生日は特別な日。
奇跡が起こっても不思議じゃない日。とびきり素敵なことが起こる日なんだよ。
だから今夜は銀ちゃんにも、素敵なことが起こるかもしれない。銀ちゃんが似合わない台詞を口にしてまでフラグを立てようとしなくても、
一か月後か二か月後には勝手に幸せフラグが立っちゃうかもしれない。周りのみんなをびっくりさせちゃうような、
奇跡のフラグが立っちゃう何かが、
――そんな何かがもうすでに今、ここに、ひっそり訪れてるかもしれないんだよ。
――だからね銀ちゃん。
もしもそんな、とびきり素敵な幸運にあたしたちが恵まれたら。
みんなにお披露目する前に、今日みたいに二人きりでお祝いしようね。
その時にはかぶき町の糖分王ががっついてばくばく食べてくれそうな、とびきり甘いお祝いのケーキを焼いてあげるから。