「・・・・・・・・おい、まだか。いつまで待たせる気だ」 「も、もうちょっと。もうすぐだから、すぐ終わるからっっっ」 「ったく信じられねぇ不器用さだな、どうなってんだお前の手は。あぁもう貸せ、俺がやる!」 「〜〜っっあぁっちょっ、黙っててくださいってばぁ!糸が、ほつれた糸が引っ掛かってるのっ」 もうすぐ外れるからっ。 半分自棄になって涙声で叫ぶ女の頭からは、数時間前に使ったシャンプーの甘い残り香が昇ってくる。 ちょうど顎の高さあたりにある小さな頭。落ち着きなく左右に揺れっぱなしな頭を、土方はじれったそうに見下ろしていた。 は土方の脚に太腿を開いて跨り、彼と向き合う恰好で座っている。寝間着は帯元までずり下ろされたままだ。 ブラは相変わらずずり落ちかけているし、照明を落とした部屋の薄闇の中では、晒された細い肩や背中が 白々と光って見えていた。言うまでもなく大胆な恰好である。だが本人には、自分の姿のあられもなさに 気付く余裕すらないらしい。あと少しで土方の胸元にもたれるほどの近さに迫り、からくり仕掛けの人形のように 硬い手つきでぎくしゃくと隊服のベストのボタンを外していった。今は、シャツの裾を留めた最後のボタンを 真剣に外しにかかっているところだ。 まったく、何が「もうすぐ」だ。ざっと十分前からこの調子じゃねえか。 痺れを切らした土方は溜め息をつき、の手を上から掴む。 震え気味な細い指先を上手く導き、ボタン穴の糸に絡まった最後のひとつを外す手伝いをした。 留め具がすべて外れ、白いシャツの裾がはらりと脇腹まで肌蹴けて流れると、 硬く引き締まった男の胸や薄く割れた腹筋が現れる。すると、それを目にしたが「ひゃああっ」と叫び、 真っ赤な顔を寝間着の袖であたふたと隠して、 「ひゃ、ぁ、う、え、な、な、ななっ、っっ・・・!」 「あぁ?何だ今度は。何をうろたえてんだお前は」 「だ、だって、だってえええ!はだっ、はだ、か!!」 「おい、人の服ひん剥いた奴が言うことかそれは」 呆れきってぼそりと問いかけた土方が畳に腕を突き、身体をやや後ろに倒して肩を竦める。 歯痒そうにぼりぼりと首を掻きつつ、皮肉気な目つきでをじろりと眺め下ろした。 (…何も初めて見た訳でもあるまいに。つーか、てめえにしたって俺と大差ねえ恰好してんじゃねえか) そう言い返しての姿のなまめかしさを指摘してやってもよかったのだが、彼女が余計に動揺しそうだし、 彼にとっては上々なこの眺めを隠されでもしたら面白くない。なので、あえてそこは黙っておくことにした。 は顔を覆った手指の隙間からちらちらとこっちを窺っている。どうやら土方の反応を気にしているらしい。 これからまだ何かするつもりなのか。彼が黙って凝視していると、目元が前髪で隠れるほどほど深くうつむいた女が そうっと腕を伸ばしてくる。シャツの衿を両手に掴むと、おずおずとためらい気味な仕草で土方の胸に顔を寄せた。 目線は真下に伏せたままだ。ボタンをすべて外してしまってからは、は一度も土方と 目を合わせようとしない。自分から進んでしたこととはいえ、恥ずかしすぎて消えてしまいたい。そう思っていそうな 顔をしている。布団に覆われた薄暗がりの中で迫ってくる彼の裸身からも、恥ずかしがって目を逸らしてしまうような女だ。 まさかこうして男の服を自分の手で脱がせるなど、考えてみたことすらなかっただろう。 がいやに慎重な、どこか怖がっているような手つきで彼の胸に触れてきた。 続いて、女の唇の温かくてやわらかな感触が鎖骨の下に落とされ、濡れた舌の先が遠慮がちに吸いついてくる。 ぴちゃ。ぴちゃ。ぺろ。ぺろ。 唾液を含ませた小さな舌を懸命に肌に這わせ、彼女を真上から見下ろす土方の反応を確かめつつ撫ででくる。 そんな女の慣れない仕草さが何とも言えず可愛い。土方はつい笑ってしまいそうになった。じっとしてされるままに なっていると、の戸惑いや心臓の高鳴りが、肌に触れる落ち着かない息遣いから伝わってくる。おかげで こちらまでそわそわと浮足立った気分にさせられる。ふと気付くと、柔らかめな彼女の髪がくしゃくしゃと シャツのボタンに絡まっていた。その一房を手櫛で解き、しっとりした滑りの良い感触を手中に納める。 軽く引いて顔に近づけたそれに唇を落としてみた。が、はそんな彼のひそかな愛情表現には気付かない。 相変わらず胸元で顔を伏せ、啄ばむようなくすぐったい口吻けを繰り返してくる。土方は面白くなさそうに眉根を寄せ、 胸元に寄せられた女の頭上で両腕を組んだ。のしっ、と遠慮なく顎も乗せる。突然乗せられた重みで身体が沈み、 は目を丸くして彼を見上げたのだが。 「・・・、気に食わねえ」 「えっ、・・・」 「こんな真似、どこで仕込まれてきた。俺ぁここまでしろたぁ教えてねえぞ」 「・・・・・・・・・、さ。さっき見たビデオの。女優さんの、真似、・・・」 恥ずかしくてたまらなさそうに、か細い声でが答える。 上目遣いに土方を見上げて何か言いかけ、またうつむき、あわあわと何かを口籠り、 「・・・っ、だ・・・だめ?」 「駄目っつーか、・・・犬猫に舐められた時のあれに似てんな。とにかくくすぐってぇ」 「――っ、」 が頬を軽く膨らませ、拗ねた子供っぽい顔になる。が、土方の胸にふたたび唇で触れ、肩や首筋へと 手を這わせて撫で始めた。 ・・・まだやる気か。つくづくめげねぇ女だな、お前って奴は。 これまでにも散々思い知らされてきたことをまた思い知らされ、土方は眉を微妙に下げた浮かない顔で彼女を見下ろす。 髪が乱れた小さな頭。それと、自分の胸板に軽く押しつけられたやわらかな膨らみが目に入った。困ったことに、 が彼の胸に慣れない仕草を施し、頭を上下に動かすたびに、あれがやわやわと身体を押してくるのだ。 肩紐が外れてずり落ちかけた、淡い小花柄の少女趣味なブラ。そのブラから今にもこぼれ落ちそうな量感の丸みが、 目の前で自分の胸に押しつけられて弾んでいる。肌をゆるゆると擦り上げられるうちに下着がすこしずつ滑り落ち、 今では薄く色づいた蕾もそこから覗くようになっていた。 の舌がぎこちない動きで肌を舐め上げている。濡れて熱いその感触が上下するたび、小さく尖ったふたつの感触に つぅっ、つぅっ、と腹を微弱に撫でられる。 ごくり、と秘かに息を呑み、土方は軽く眉をしかめる。には悟られないように何気なく横を向き、 こっそりと苦笑いをこぼすしかなかった。 どうしてこいつは気付かないのか。こいつを慣れない行為に走らせているその不安が、ほんの杞憂にすぎないことを。 何度触れても、何度抱いても、この身体に飽きるはずなどないというのに。 ――その理由は自分でも判らない。けれど彼女を目にするたびに、いつもどこかしらに触れてみたくなる。 触れればそのまま抱きしめてみたくなる。あわよく人目を逃れて抱きしめてしまえば、すぐにそれ以上を求めたくなる。 普段からしてそうなのだから、今のような状況に陥れば尚更だ。こうしているだけで頭の中はで一杯になってしまう。 みずみずしく張りつめた胸を晒して脚の上に跨られ、欲しがって疼く下腹に、悪戯にあの柔らかさを 押しつけられている。しかも男の生理に疎い本人には、何の悪気も思惑もないときているのだ。 本音を言えば今すぐ主導権を奪って、火照りきった昂りを一息に押し込んでやりたいくらいだ。なのにこいつは それを判っていない。それどころか俺の心変わりを本気で疑っていて、俺をどうにか引き止めようと、 こうして精一杯の媚態で縋りついてきやがる。 「・・・・・・・、ひ。土方さぁん」 「ああ?」 しばらく好きにさせているうちに、の動きがぴたりと止まる。急に彼を見上げてきた。 (これで合ってる?大丈夫?) などと言いたげな不安そうな顔だ。とろりと濡れた唇が半開きで、本人の意思とは関係なしに土方に誘いをかけてくる。 土方は眉を寄せて口端を下げ、実に面白くなさそうに顔を逸らした。 ・・・・・なんだってぇんだこの野郎。おかげで我慢も限界だ。 「おい。俺ぁいつまでじっとしてりゃあいいんだ」 「い、いつまで、って、・・・」 素っ気なく問いかければ、口籠ったはもじもじとうつむいてしまった。 手持無沙汰なのか、土方の鳩尾のあたりをつんつんと指先でつつきながら答えた。 「土方さんが、満足・・・して、くれる、まで、・・・?」 「フン、そうかよ。そういうことならもういいだろ」 両側から身体ごと抑えるようにして、露わになった二の腕を掴む。 ぱちりと大きく瞬きをして、は不思議そうに彼を見上げてきた。 涙に濡れた大きな瞳が向けてくるまっすぐな視線を掻い潜るようにして、背中を屈めた土方が彼女の首筋に齧りつく。 かりっ、と歯を立てて甘噛みすれば真っ白な喉元がびくりと震え、背中が大きく仰け反った。 「あ、っ・・・!」 弱いところを突かれたは思わず土方に縋りつく。背筋を走り抜けた甘い痺れに、小さく背中を震わせていた。 背中に回した腕で閉じ込め、きつく抱きしめてやると、「んんっ」と弱った声を上げて身を捩る。 だがそれもほんの束の間のことだった。途端にぐいぐいと彼の胸を押して抵抗を見せて、 「っっ!や、やだぁ、だめ、今日はそういうの、だめ!」 「はぁ!?ざっっけんなコラ、てめえの焦らしプレイにそういつまでも付き合ってられっか」 「な、なにそれぇ、わかんないっっ、意味わかんないぃ!」 「何とでもほざけ。んなまどろっこしい目に遭わされてこれ以上黙ってられるかよ」 「だめぇぇ!!」 あわてたが両手を振り回して反抗を見せる。しかし土方は動じない。 こいつの扱いはここ三カ月で心得た。このまま押し倒して唇を塞いで、物も言えなくしてやればいいだけだ。 土方は余裕の態度での肩を抑え込もうとする。ところがそこでが沖田にも匹敵するすばしっこさを発揮、 彼の両方の手首を、目にもつかない速さでぱしっと掴んで抑えてしまった。 「だめっ、今日はもう触っちゃだめ!」 女の細腕に動きを止められ、命令された土方が、うんざりしきった表情で彼女をじろりと睨みつける。 ただそれだけで、細腕を捩じ伏せようとはしなかった。赤い頬を膨らませて彼を責めてくる涙目な女の顔が、 見ているとどうも気が抜けるというか、真面目に相手をするのも馬鹿馬鹿しいくらいに必死だったからだ。 「今日は、あ、あたしが、するの・・・!土方さんは触らないでっ。今日はあたしに触っちゃ、だめ!」 ぁんだそりゃ。軽く拷問じゃねえか。 いよいよ不貞腐れた土方はぎりっと奥歯を噛みしめて、むっとした顔でを睨む。 ところが、何とかして土方を満足させたいと夢中なは、彼の不機嫌さにすら気付かないのだ。 さらに姿勢を低めて頭を下げると、今度は鳩尾のあたりにふわふわと唇を這わせ始めた。 ・・・勘弁しろ。くすぐったさと物足らなさで背筋がぞわぞわ騒ぎやがるし、頭は欲求不満で煮えくり返りそうだ。 ちっ、と舌打ちした土方は目の前の肩先を緩く掴み、そこへ顔を寄せていく。開いた唇から伸ばした舌先を ざらりと押しつけ、ちゅっ、と音を鳴らして肌を吸えば、細い肩がびくんと跳ねる。 次はなめらかな素肌に人差し指の先を立て、か細い背中の稜線に沿って爪先をつぅっと這わせて撫でた。 同時にうなじにきつく吸いつき、ちくりと噛みついて紅い痕も残す。 するとが「っっ・・・!」と声をこらえつつ腰を浮かせた。胸元に押しつけられていた小さな頭が 髪を舞わせながら起き上がる。唇を尖らせて土方を睨みつけ、吸われたうなじを抑えると、 「〜〜〜っっっ、何なの、何なんですかぁっ、どーして邪魔ばっかりするんですかぁ土方さんはぁっっ」 「フン、知るか。つーかてめーこそ何だ、俺の邪魔ばっかしやがってっっの野郎ぉぉ」 「はぁ!?邪魔してるのはそっちでしょっっ。〜〜ああもぅっ、もういいですっっ」 と言うが早いが腰を上げ、彼の目の前でちょこんと膝を立てる。土方の目前で跪くような格好になると、 なぜかぶるぶると激しく震えている手の先が、徐々に、少しずつ、土方の腹のあたりへと接近してきて。 「・・・?おい、おま、」 「でっっ、できるもんっ。・・・こっ、このくらい、あたしにだって出来るんだからぁっっ」 ぐいっ。派手に震える女の両手が、止める間もなく行動に出た。 が土方の腰のベルトを引っ掴む。うるうるした涙目に必死の決意を漲らせ、かちゃり、と音を鳴らして金具を外し、 さらには、揺れが震度3ほどまで達していそうな右手でジッパーをぐんと下げようとするのだ。 思わぬ彼女の行動に驚き、土方は「!!?」と絶句して目を剥いた。思考のすべてが強制停止されるくらいの衝撃が 彼の脳裏を雷のように突き抜け、――その直後、女の手をがしっと鷲掴みして、 「っっっっ、いい!それは、いい!!」 「でもぉ!さっき見たビデオの女優さんはこうしてたもんっっ。あ、あたしだって・・・!」 「いい!お前にはまだ早ぇえ、早すぎる!!」 凄まじくうろたえつつも、べりっとジッパーから引き剥がした。 冗談じゃねえ絶対に御免だ、お前にんなことされてみろ。 目の前にうずくまって涙目で男のものを咥えるお前の姿を、ここで俺が目に焼きつけてみろ。 見ちまったら最後、歯止めが効かなくなりそうだ。今夜一晩眠れたもんじゃねえ。いや、たまったもんじゃねえ! …なんて恰好のつかない本音はひた隠しに隠しつつ、どう見ても動揺しまくりな土方が彼女を必死に解き伏せる。 それでもは「そんなことないもん、あのくらい出来るもんっっ」と、一見強気に言い返してくるのだ。 ――しかし、参考にしたモザイクだらけの衝撃映像は、土方に「ガキ並み」と称された彼女の性的知識を 軽く凌駕したものだったらしい。 引きつりまくったその顔は唇が小刻みにブルブル震えているし、目の焦点がまったく合っていなかった。 「み、みみっ、みんなが言ってたもん!お、男のひとはみんな、手とか、くち、とかで、してほしいんだって!」 今にも目を回しそうな顔をして首までぐらぐらとふらつかせているは「そ、それで、それでぇぇ、」と うわごとのように繰り返す。がばっと土方に掴みかかり、声を振り絞っておろおろと叫んだ。 「そ、それで!〜〜〜〜っ、さ、最後は、お、女のひとの、かお、に、っっ!」 「俺をあの素人童貞どもと一緒にすんじゃねえ!」 べしっっっ。を真上から派手に引っ叩き、こめかみにびしっと青筋を浮かせた土方が怒鳴り飛ばす。 冗談じゃねえ、と不愉快そうに言い捨てた彼は女の身体をやや乱暴に引き下ろす。 彼女に背を向けベルトを直し、脱げかけたシャツも早々に羽織り直そうとしたのだが。 「・・・じゃあ。じゃあ、どうしたら、・・・・・・・・・・いいの?」 途方に暮れた女の声に、ぽつり、と小さく尋ねられる。 振り返ってみれば、は叩かれた頭を抑えてうなだれていた。 着物が肌蹴て露わになった肩をへなりと落とし、裾が乱れて太腿が覗く膝のあたりを 心細げにきゅっと掴む。今にも泣き出しそうな、萎れた表情で見上げてきた。 「あたし、いつもわけわかんなくて。余裕なくて。いつも、わけがわからないまま終わっちゃって。 だから土方さんがどうなのかなんて、・・・土方さんがどうしたら喜んでくれるのかなんて、ぜんぜん・・・!」 「・・・・・・・・・・、」 話すうちに大きな瞳から一気に涙が溢れ、赤く染め上げられたの頬を、ぽろり、ぽろりと透明な粒が転がっていく。 彼女の言葉を意外に感じた土方は、しばらく黙って目を見張っていた。だが、やがてその鋭い目元を 気まずそうに細めていった。 ――心外だ。こいつときたら、次から次へと、仕様もねえことばかり気にしやがって。 大体、お前がそれを気に病む必要がどこにある。お前がこれ以上俺を喜ばせる必要がどこにあるのか。 などと、普段は見せない益体もない本音も持ち出し、馬鹿かお前は、と頭でも叩いて皮肉っぽくやり過ごしたくもなるのだが。 ・・・しかしこれも、男慣れしていないにしてみればいかにも真剣な悩みなのだろう。 自分を見つめて潤んでいる大きな目の表情や、ほんのささいな仕草からも、その必死さや不安さが伝わって くるだけにどうもやりづらい。馬鹿に出来ない。 それに、――がこぼした、さっきの台詞も。心底落ち込んでいるこの態度も、 こいつがそれだけ俺を思っていてくれる、という証拠でもある。 惚れた女にそこまで思われていると知ってしまったのだ。これが嬉しくないはずがない。 「・・・・・・・・・ったく。呆れたもんだな」 「・・・っ。わ。わるかったですねっ、こんな時でも呆れさせるよーなことしか出来ないバカな子でっっ」 「ああ。まったくだ」 呆れた女だ。呆れた馬鹿だ。 心中ではそうつぶやきながら、土方はの頭に手を乗せた。 髪を大きく掻き乱すようにして荒めに撫でてやると、はこれ以上泣くまいとでも思っているのか、 紅い唇をきつめに噛みしめ、無理に涙をこらえている。 ・・・俺もつくづく甘くなったもんだ。 腹の底から「呆れたもんだ」と思うのに、こいつをたしなめる気が起こらない。表情にはかすかな笑みが混ざってしまう。 こんなを見るにつけ、毎度毎度に思い知らされるのだ。まったく俺もヤキが回ったもんだ、と。 思えばを拾って以来というもの、俺はこんな目に遭わされてばかりだ。何かと思い込みが激しい女の 見当違いに振り回されてばかり。こいつが突拍子もねえ勘違いで血迷うたびに、こうして手を焼かされてばかりで。 だってえのに何だ。一体どうしちまったのか。物好きにも程があるってもんだ。 どうやら俺は、この先どれだけ振り回されようと、まだまだ、一向に、こいつの馬鹿さ加減に懲りるつもりがねえらしい。 ・・・いや、懲りるどころの話か?これは。 今だってこいつのひたむきすぎる馬鹿さ加減が「いじらしくて可愛い」だなどと、腑抜けた惚気を、 何の臆面もなく思っちまってるじゃねえか―― 「・・・はっ。何なんだてめえは」 「ふぇ・・・?」 「まさかたぁ思うが、全部わざとやってんじゃねえだろうな」 「ひ、土方、さ・・・?」 潤んだ目を丸くしたの腰を抱く。逃げられないよう背中にも腕を回し、閉じ込めてきつく抱きしめる。 熱い胸元に突然押しつけられ、は数秒ほど物も言えず、息も出来ず、 土方の胸の引き締まった感触にぼうっと頬を染め、ただ呆然としていたのだが―― 「や。やめ、ちが、・・・や、だめっ、こ、これじゃ、」 あわてふためいて身を捩って、土方から身体を離そうとする。抗う細い腕を左手でぱしりと抑え、 土方は右手での胸を掬い上げる。ぎゅっと絞るように膨らみを握れば、の動きが途端に鈍った。 「やぁ、・・・だ、だめ・・・・・ぇっ」 顔を寄せて唇を奪い、強引に押し入った口内を這い回れば、さっき捕らえたの腕が だらりと力無く下がっていく。抱きしめた肢体からもぐったりと力が抜け、胸にしなだれかかってくる。 薄目を開けた土方はわずかに唇を離し、弱まっていく女の抵抗を愉快そうに見下ろした。 「っ、だ、だめぇ、もぅ、しちゃ、だめぇ・・・っ。今日は、ぁ、あたしが、」 「ぁんだとこら。お前、まだ俺を焦らそうってのか」 「ぇ、な、・・・・・・・んっっ。・・・んん、っ」 眉を寄せて喘ぐに満足に息をつかせることもせず、濡れた唇を押し塞ぐ。戸惑う小さな舌を奪い、 きつく絡めて喉奥まで押し込む。震える口内を撫で回しながら、背中で稚児結びにされた子供っぽい帯を 慣れた手つきで解いていく。緩んだ寝間着に腕を差し入れ、下着のホックを外して胸元を解放した。 弾力に富んだ膨らみを手の中に収める。手のひらにひたりと吸いつく、その瑞々しい感触が心地良い。 手の内で形を変えていく膨らみを緩く揉みながら、指の間に挟んだ小さな尖りを捏ね回す。 固くなっていく蕾をゆっくりした手つきで嬲りながら、逃げる気力すらなくなった小さな舌を弄ぶ。 きつく目を閉じたは「ん、・・・・ん、んんっ・・・」と息を詰めて苦しげな、 けれど艶のある声で啼き始めた。 短く浅くなっていく啼き声の変化を見計らって、ゆっくりと舌を引き抜く。 互いの舌先から伸びた光る銀糸が自然に途切れてしまうまで、土方は熱を帯びた目つきでを見つめた。 「、」 「・・・っ」 すでに逆らう気を失くしているのか、はたっぷりと涙をたたえた瞳をせつなげに瞬かせ、唇を震わせながら 目を閉じた。羞恥に染まった表情で差し出されたその唇を塞ぎ、姿勢を変えて横抱きにした身体から 白い寝間着と下着を剥ぎ取る。腰を覆っていたショーツも脚から引き下ろす。 「――っ。はぁ・・・、ん、んん・・・っ」 一糸纏わぬ姿にさせた女の胸元に顔を寄せ、土方は色づいた蕾を口に含んだ。 彼の仕草を唇を噛みしめて見つめているに見せつけるように、ゆっくりと舌を這わせ、柔らかく吸ってやれば、 男の口が施した些細な刺激にも、は敏感に反応してくる。 唾液を含ませてくちゅくちゅと舌で揉むと、腰を震わせて土方の頭にしがみついてきた。 「あぁっ、やぁ、それ、つよく、しちゃ、・・・っ」 小さく押し殺した涙声が、喉の奥で快感をこらえている。 どんな顔をして泣いているのか確かめたくなり、土方はわずかに視線を上げる。 涙で掠れた声は彼を必死に拒んでいたのに、はその表情を蕩けさせて彼を見ていた。 身体中を這い回るもどかしさで思考も正気もすべて失くしたようなぼうっとした目が、新たな涙で濡れていく。 「っ・・・。ひ、ひ・・・じかた、さぁ・・・っ。もぉ、やぁっ・・・」 ふっと目を細め、土方はふたたび彼女の胸に吸いつく。 含んだ先に舌を絡ませ、歯で緩く齧りつくようにして貪った。 土方さん、やだ。土方さん。 頭に抱きついてきたの唇に縋るような声を注がれ、耳の奥がかぁっと熱くなる。 頭に回ったその熱に、こらえていた下腹の疼きまで掻き立てられる。はっ、と土方は歯痒そうに笑い飛ばした。 「あ、あぁっ。だめぇ、噛んじゃ、ゃあ、・・・っ、ひぅ・・・っ」 「ったく・・・、何なんだてめえは。 何遍抱いてもぎこちねぇくせに。俺の煽り方だけは最初っから心得てやがる・・・」 「んっ・・・・・・・あ、はぁ、」 大きくかぶりを振ったの髪がはらはらと乱れ、甘い匂いをばら撒いた。 やだ、やだ、と口の奥で小さく拒む頼りない泣き声を無視して、腰から彼女を持ち上げる。 抱き上げた身体を文机に下ろし、机上一面に広がっていた書類はざっと畳へ払い落した。 手荒く降ろされてよろけたは机に肘を突いて身体を支えていたのだが、彼の動きにはっとして脚を 閉じようとする。しかし彼女が動くよりも先に、閉じかけた太腿を土方が強く掴んだ。 雪のように白い腿の付け根を押し開く。そこに印された小さな星型のあざに素早く吸いつく。 「ひぁ・・・っ!」 きつく吸われたその感触で痺れが走り、が腰をびくんと跳ね上がらせた。その隙を狙いすまし、 彼女の脚を膝から左右に大きく広げる。あぁっ、と甲高い悲鳴がの口から漏れた時には、 熱の高い舌が濡れた割れ目を深く舐め上げた後だった。 「あぁっ・・・!んっ、や、やだぁ、ここ、っ」 見えちゃう。 土方に腰と太腿を抑えつけられたの影が、彼女の背後にある障子戸にくっきりと映っている。 男の長い腕に身体の自由を奪われたは、焦らすような弱い愛撫を繰り返す舌の動きに泣きじゃくっていた。 「ふ・・・・ぇえっ。っ、土方、さぁ、おねが・・・ゃめて、ぇ、あ、ぁ、あん・・・、っ」 土方は静かな部屋の薄闇に響く高い水音をぴちゃぴちゃと鳴らし、浅めでゆっくりした動きで の花芯の先を撫でる。じゅくりと吸い上げ、舌先で押し潰す。それだけでの声が跳ね、 さらさらとした透明な滴りが溢れてくる。・・・もっとも、下着を引き下ろした時にはすでに、 の秘部はどこも淫蕩な蜜を纏い、身体の芯から湧き上がる熱ですっかり熟れていたのだが。 「っっ。やだぁ、ここ、誰か、来たら・・・!お、降ろして、ぇ・・・っっ」 「こんな時間だ。誰も来やしねえよ」 「そ、んな、・・・っ、あ、や、ぁあっ、」 太腿の付け根まで流れた水滴をつうっと舐め上げると、土方は彼女の中に指を埋める。 彼が触るまでもなくすっかり蕩けていたそこは、ずく、と容易に最初の関節までを飲み込んだ。 「ふぁ・・・!」 「余計なこたぁ全部忘れろ。もうこんなにしちまってんだ。お前だって早く欲しいんじゃねえのか」 「っっ・・・や、やぁ、あ、はぁ、・・・っっ!」 さらに深く、一息に押し込めば、びくびくと全身を震わせてが喘ぐ。土方は顔を寄せ、 彼の長い指を根元まで飲み込んだその周囲を舌で大きく撫で回した。 「あ、やだっ。それ、や・・・!」 「こんだけ垂らしてんだ。放っといたら濡れちまうじゃねえか」 指を挿れただけで震えを起こしている細い腰の下には、数枚の書類が敷かれたままだ。 彼女が感じるたびに腰を捩る動きのせいで、書面にはすっかり皺が寄っていた。 土方の言葉にはふっと息を詰め、彼の真っ黒な頭をはしたなく挟んだ自分の太腿の合間を見下ろす。 そこでようやく、自分が下に敷いている書類の存在に気付いたのだ。 どうしよう、と涙目でおろおろと土方を見つめ、シャツの肩を引っ張ったりしたが、土方は構うことなく 彼女を指先で掻き回す。 入口を二本の指でぐちゅぐちゅと広げ、きゅうっと狭まってきた内壁を擦って奥まで乱していく。 「あぁ。ふぇ・・・・っだめぇ、待っ、・・・っ!」 いやいや、と口では泣きじゃくっているというのに、の身体は土方の指が伝える刺激に溺れ、 とろとろと雫を溢れさせはじめる。せめて脚を閉じようと精一杯に抗っても、土方の手に掴み戻される。 かえってぐっと強く両足を横に引かれ、恥ずかしさで訳がわからなくなってしまうような格好をさせられてしまった。 「あ、ふぁあ、あっ!」 「じっとしてろ。腰振ると下のもんが汚れちまう」 「土方さ・・・土方さ、っっ、〜〜〜ぁあっ、」 精一杯に声を抑えようと口許を覆い、唇をきつく噛みしめる。 障子戸が間近なここでは、声を必死に我慢しないといけない。薄い障子戸越しでは、自分でも 驚いてしまうようなあの声が廊下まで届いてしまう。いくら夜中で誰も起きていなくても、・・・嫌だ、 そんなことになったら恥ずかしくって耐えられない。だのに土方は彼女の怯みを見抜いたかのように、 奥までぐちゅぐちゅと指を突き入れてくる。 「んんっ・・・!く・・・・ふ、ぁっ、んん、・・・っ」 「閉じるな。もっと見せろよ」 「や、っ、やぁ、あ、あぁっ」 「嫌でもねえだろ。たったあれだけでここまで濡らしやがって」 「ち、ちが・・・!」 言いかけた瞬間、ああっ、と甲高く泣き声を上げる。土方の指の先がある一点を捉え、ぐちゅりと音を立てて 擦り立てた。そこを責められると頭が真っ白になる。ぶるぶるっ、と寒気に似た感覚が背筋を駆け抜けていった。 身体中を甘い痺れで一杯にされたは、文机にぐったりと横たわってしまう。 唇を噛んで声をこらえ、頭を振って乱れた髪が机上に広がり、腰で擦れていた書面がじっとりと濡れて 太腿ににぺたりと貼りついてくる。溢れて腰を伝っていく雫を舐め取り、土方は可笑しそうに笑って言った。 「ほら見ろ。お前のせいで駄目にしちまったじゃねえか」 「・・・・・っ」 あたしのせいじゃない。土方さんがこんなにしちゃうから。土方さんのせいなのに。 そんな恨みごとを言いたくても、達してしまった直後のは息が上がって心臓が騒いで、思うように声も出せない。 泣き濡れた彼女の表情を満足げに見下ろし、土方はしなやかに伸びた太腿を高く持ち上げる。 目の前に晒された柔らかな素肌に口吻ける。それだけでがびくびくと震え始め、 欲しがって喘ぐ中心に向けて舌を這わせ、紅い噛み痕をいくつも刻んでいけば、 は自分の身体をせつなげに抱きしめ、身体の奥を淫らな感覚で縛りつける熱にうち震えていた。 「それにしても・・・すげえな今日は。触る前から感じやがって」 「あ・・・ぅ、やだぁ。やぁ、あ、ああっ」 「それともあれか。・・・おい、いつからだ。奴らと見たあれで、感じて濡れたか」 「・・・っ。ちが、・・・っ」 違う、違う、とは激しくかぶりを振って否定する。それなら何時からだというのか。 感じ始めた時のの、ひどく恥ずかしそうな、ほのかに色づいた無防備な表情。 あれを他の奴にも見られたのなら面白くない。むっとした土方は彼女の肌から唇を離し、目で問いかける。 するとは拗ねた顔で頬を膨らませ、ぷいと横を向いてしまった。 机上にぽろぽろと、目元に溜まっていた熱い雫がこぼれおちる。 「お。・・・・・・・・・お布団の、中で、・・・っ」 「・・・・・、」 「さっき、食堂で見た、・・・・・・・・あれ。思い出し、・・・ら。・・・・からだ、・・・・お腹、が、 きゅうって。熱くて。へ、へん、に、なっちゃって。我慢できなくて、・・・・・こらえたのに、・・・・・・っ」 言いたくなかったことを白状させられたのが悔しいのか、は怒ったようなまなざしを向けてくる。 瞳は潤んで赤く、頬は涙に濡れて迫力のないその表情が、眉をひそめた土方に見つめられて かあっと血の気を昇らせていった。 「あたしも、土方さん、・・・に。・・・・・・このお布団の中で、あれと、おなじ、こと。されてるんだ、って、・・・思ったら・・・」 ・・・・・それで。それで。 途中で声を途切れさせると同時にぎゅっと目を瞑ると、瞼から押し出された涙の粒が机上に散る。 とてもこれ以上目を開けてなどいられなかった。彼女にとってその告白は、死にたくなるほど 恥ずかしいものでしかなかった。 ――もっとも土方にとっては、言葉もなく瞠目してしまうほどに予想外で嬉しい告白でしかなかったが。 「やだ、もう・・・こんなになっちゃうなんて。おかしいよ。こんなの、恥ずかしい・・・」 身体を丸くして鋭い視線から逃れようと、は泣きそうな顔で身を捩る。もぞもぞと動けば、 がさり、と腰の下で紙が鳴った。濡れた書類がぬるぬると太腿に貼りついてくる感触に、羞恥心をさらに追い立てられる。 ふらつきながらも身体を起こそうとした。すると、その動きを伸びてきた腕に阻まれて。 背中から軽々と抱えられ、さっきまでと同じように、土方の膝上に向かい合わせで座らされた。 「肝心なところを訊き忘れた」 どこか和らいだ表情で穏やかに言われ、涙に濡れて冷えた頬を労わるように撫でられる。 え、とつぶやいては目を見張った。 「お前、まだ俺を疑ってんのか」 「・・・・・・、」 「俺がてめえに飽きたってぇ、例のあれだ。あの疑いは晴れたんだろうな?・・・・・おい、どうなんだ」 「ど。どうって、・・・」 普段の鋭さや皮肉っぽさが幾分抜けた、どこか甘さを含んだまなざしが、 こんな時にしか見せない表情で問いかけてくる。日頃はあまり視線を合わせてくれない男に まっすぐに見つめられ、は思わず言葉を濁した。 どこか熱を帯びたその表情から目が逸らせない。心臓がどきんと高鳴る。見つめ返すだけで精一杯で、 言葉が何ひとつ出て来ない。、と吐息を弾ませた低い声に呼びかけられただけで、身体中がぼうっと火照っていく。 「・・・・何だお前、まだくよくよしてんのか」 「だって・・・」 「ならしょうがねえ。納得するまで教え込んでやる」 「っっ、・・・」 煙草の香りがする熱い感触に唇を塞がれた。強引な動きで口内を深く乱されれば、自然と身体が後ろへ仰け反る。 指先がごつごつと固い手のひらに首筋を撫でられ、背中を撫で下ろされ、胸を回すような手つきで揉みしだかれる。 はぁ、と深い吐息が腹の奥から湧いてきた。 互いの息遣いが苦しげなものに変わっていく。舌先で唾液が混ざり合い、火照った粘膜を犯す体温まで 次第に溶けて混ざり合っていく。わずかに唇を離した土方がかちゃかちゃと硬質な音を鳴らしてベルトを外す。 痛みや辛さを苦笑いで凌いでいる時のような余裕に乏しい表情が、呼吸を荒げて問いかけてきた。 「おい、聞かせろ。俺が一度でも、てめえの身体がつまらねえと言ったか」 「・・・・・っ。や。し、しら、な・・・」 「俺ぁ一度だって言ってねえぞ」 「・・・っ、あ、・・・っ」 両手で脇腹を掴まれ、止める間もなく腰が浮く。 はぁっ、ともどかしそうな荒い息を吐き出した土方の呼吸が耳を埋めた。いつのまにか脚を割られ、 広げられたそこへ熱い塊が突きつけられる。押し当てられたその塊がぐっと沈み、の奥から湧き出た蜜を ぐちゅりと強く掻き出して、 「ぁあ。んっっ、ひ、ひじかた、さ・・・っ。んぁ、はぁっ、」 「お前は頭はからっきしだし何かと強情だが、身体は妙に素直で覚えがいいからな。 こうやって一から馴らしてやるのに手一杯で、飽きる暇なんざありゃしねえよ」 「ぁ・・・!」 「いいか。お前に飽きた男が、・・・ここまで、お前を欲しがると、思うか・・・、っっ」 「んっっっ、あぁっ、あぁ・・・っっ!」 ぐちゅ、ぐぶ、と濡れた音が鳴り、硬い先端に狭まった内壁を抉られ、押し広げられ、土方が中へと押し入ってくる。 抱えたの腰を焦らすようにゆっくりと下ろし、ぐ、ぐ、ぐ、と小刻みに穿ち、彼女の内側を張りつめた熱で 隙間なく埋めていった。 「ぅ、・・・・ぁ、あぁっ、や、」 「おい、・・・どうだ、判ったか、・・・・っ」 びくびくと息づいている熱いものが腹の底に当たって、ぐっと押し上げてくる。奥まで一杯に占められている。 土方さんの。熱い。すごく熱い。あたしの中に、入ってる。 そう実感するとそれだけで腹の奥がきゅうっと痺れ、抱えられた太腿がぶるぶると震えて突っ張る。 脱力感に襲われて土方にしがみついただったが、息をつく間もなくずんっと突き上げられ、 熱く潤んだ花芯を長い指に手加減なく弄られる。呼吸出来なくなるほどの快感が頭の芯を突き抜けた。 「〜〜・・・・・・っっ!」 「これが飽きた女の身体なら、誰が仕事放り出してまで抱きたがるかってんだ、・・・」 「ひ・・・!い、やぁ、っ」 「これでもお前、俺がてめえに飽きただのとぬかす気か・・・?」 「っぁあ、あぁ・・・・・・・・っ!」 大きな手に腰を掴まれては持ち上げられ、そのたびに土方の先端に弱い部分を強く擦り上げられる。 ああっ、と泣いて悶えれば腰を真下に落とされ、ずんっ、とふたたび奥を突かれる。 ずぶ、じゅぶ、と粘着質に泡立った音が耳を犯す。 その音を聞いているだけで頭がおかしくなってしまいそうだ。男の欲望で思うままに突き上げられるだけの 腰の奥には、何も考えられなくなってしまいそうな強い快感の予兆が生まれ始める。 「おい・・・・、どうだ、答えろよ。こうまでされても、まだ、判らねぇか・・・?」 「はぁっ、あ、ああっ、ひじかた、さぁ、土方、さ・・・・・っ!」 「はっ。今日は最初っから随分と、・・・」 「ぅ、う、ぁ、・・・・・ひ、っっ、〜〜〜っ・・・・・!」 「・・・・っ、、っ・・・・・」 見た目以上に力強くて仕草が荒い腕に、ぎゅっと、背中が反り返るほど強く抱きしめられる。 何度も抱かれるうちにようやく慣れてきた、近すぎる煙草の香に包まれる。 繋がり合った部分が擦れ合うたびに互いの熱でひとつに蕩けていくような感覚に溺れて、は泣きたくなってしまう。 激しく重くぶつけられるたびに身体が疼いて、呼吸が止まりそうなくらいに苦しい。 なのに嬉しい。嬉しくって泣いてしまうくらい幸せだった。・・・いつも不思議なのだけれど、 こうして土方と繋がると、自分がどれほどこのひとに求められているのかが、言葉にして説かれるよりも 数倍は実感出来てしまう。そのせいで、さっきまで身体にもやもやと広がって彼女を責めていた正体のない不安は もう消えてしまっていた。代わりに身体中を責めてくるのは、うっとり浸っていると意識ごと奪い去られそうに なってしまうほどの、強くて甘い気持ち良さだ。 土方が名前を呼んでくれるだけで、その気持ち良さが膨らんでしまう。身体中を支配した快感が彼女の奥をさらに 蕩けさせ、嬌声が高く跳ね上がる。じゅぷじゅぷと響く淫らな音が、暗く静まった深夜の空気を小刻みに震えさせていた。 「あ、あっ、っあぁっ、い、ぁあっ・・・!」 「・・・、――っっ」 「やぁ、も、だめぇ、つよく、しな、・・・でぇ、っ・・・あっ、――ぁあ・・・・・・・っっ!」 はらはらと涙を散らしながら泣きじゃくっていたが、土方にしがみついた全身をびくびくと張り詰めさせて果ててしまう。 甘い快感に満たされた彼女にきつく絞り上げられる。低く唸った土方も震える裸身を抱きすくめ、熱い精を奥に放った。 上擦った泣き声で唇を震わせ、汗と涙に濡れている女の顔を、土方は眉をきつく寄せて見下ろす。 も辛そうに眉間を寄せている。思考まで快楽に火照りきってしまっているような、 ぼうっと蕩けた目をしている。唇を重ねると、いつも恥ずかしがって出て来ない小さな舌が 自分から甘えて絡みついてきた。土方が深く彼女を追い求める。そのまま離れることなく、 に合わせてゆっくりした律動で身体を弱く揺らしながら、長い間、二人は時間も忘れて求め合った。 の身体が幾度目かの絶頂に震え、ようやく互いの顔が離れると、土方がふっと口端を歪める。 やや細めた、意地の悪そうな目つきで笑って言った。 「こうも燻っちまったんだ、一度や二度じゃ治まりそうにねえぞ。おい、どう落とし前つけてくれんだ・・・?」 無骨な仕草で撫でてくる指の先に唇をなぞられ、固い手のひらで頬を包むようにして覆われる。 気だるげに目を開けたは、はぁ、はぁと息を弾ませながらもうっすらと微笑んだ。 「っ、・・・ひ、土方さぁん」 「あぁ?」 「ごめ・・・なさ・・・いぃ、」 疑うようなこと言って、ごめんなさい。 息の上がった儚げな声で繰り返された謝罪に、土方は軽く目を見張る。 無言のうちに、涙の滲んだ目元にからかうような口吻けを落とした。同じような口吻けを 頬や耳元にも降らせていく。この馬鹿が、とでも思って笑っているような仕草で、軽く触れては離れていく温かさ。 何度も肌を啄ばまれているうちに、満たされた気持ちでの瞼が熱くなる。 ――どうしてさっきはあんなに疑ったりしたんだろう。 自分からは何も出来ないあたしだけど、だからって、つまらない子だと思われてたわけじゃないんだ。 どうして忘れちゃってたんだろう。 そんなこと、こうして繋がれるたびに、いつも身体の隅々まで染み透るくらいに教えて貰っていたのに―― 「あっ、・・・んん、んっ。・・・・・・・ひ、土方、さぁ・・・っ」 全身に教えられた泣きたくなるほど嬉しい実感で彼女の中がきゅうっと縮み、土方をきつく締めつけた。 ぐったりと力の抜けた身体を畳に抱き下ろす。波打って広がった女の髪を撫でてやっていると、 はぁ、はぁと息を乱したが、掠れた声を精一杯に絞り出すようにして「土方さん」と呼びかけてきた。 土方は汗の滲んだ表情を苦笑に変えて問いかけた。 「何だ、」 「いいよ。あたしの、こと、・・・・・好きなようにして。今日は、飽きるまで、いっぱい、して・・・?」 夢でも見ているようなぼうっとした笑顔でが言うと、土方がわずかに息を呑む。 浮かべていた苦笑がすうっと引っ込んで、は途端にしどろもどろになった。 口にしたことに急にはにかみを覚えたらしい。恥ずかしそうに唇を噛んで黙ってしまうが、 それでも彼から濡れた瞳を逸らそうとはしない。恥ずかしさに耐えかねて長い髪の毛先をぎゅっと握り締めながらも、 心臓をどきどきと高鳴らせているような初々しい様子で、土方の返事を待っている。 その表情を眺めるうちに土方は自然と目元を緩め、いつしか再びの苦笑を取り戻していた。 ああ、こいつときたら――またこれだ。 この表情を目にするたびに身体中がぞくりと痺れる。 見えない糸に全身を柔く弱く縛られているような錯覚が生まれて、こいつから目が離せなくなる。 首の後ろあたりをくすぐられているような、むず痒い嬉しさまで湧いてくる始末だ。 ――ったく、つくづく性質の悪い奴だ。ここまでしてやっても、さっぱり判っちゃいねえときている。 慣れようにも慣れられそうにないこの嬉しさに。身に持て余すほどの嬉しさに、どうしたら俺が飽きることがあるというのか。 「言いやがったな。一晩中泣きじゃくって目ぇ腫らしたって知らねえぞ」 「だ・・・大丈夫・・・だもん・・・っ」 「・・・・・もう手加減してやれねえぞ。いいな」 微笑みにほころんだ女の顔が、かすかに涙ぐんでこくりと頷く。 あどけない甘えを浮かべた表情にその手で触れ、自分を求めて腕を伸ばしてくるやわらかな身体を抱きしめる。 光差す朝はまだ遠く、誰もが夜の闇に包まれまどろんでいる。 弱々しく喘ぐ唇にそっと唇を重ねる。細い腰を持ち上げて温かく蕩けた中を再び貫き、深く、深く溺れていった。

「 おおかみさんとまよえるこひつじ 」 end  text by riliri Caramelization 2012/01/12/ ----------------------------------------------------------------------------------- 「No.5土方で甘裏ヒロイン攻め+赤面しちゃう土方さんの台詞」のリクエストを元に書かせていただきました 神理さま ありがとうございました!! 過去編/隊士で彼女時代 24時間年中無休でらぶらぶだった頃の話。